今日も朝からアルフと特訓
時間が過ぎるのはあっと言う間だから、時間は大切にしないと。
でも、今日は最初から飛ばし過ぎたかな?
朝からなんだか胸騒ぎがして「特訓しなきゃっ」て思っていたら、ついついやりすぎちゃったみたい。
アルフからも「ちょ、ちょっと、フェイト!飛ばし過ぎじゃないかい!?」って言われちゃったし、私もまだまだ子供かな。
元おばあちゃんだけど・・・。
特訓を頑張りすぎたせいで体に力が入らないから、今は壁に寄りかかって休憩中。
この調子で行けば、ジュエルシードも何とか無事に集めれるかな?
少なくとも、子供のなのはには負けないはず。
それだけの特訓を、アルフと一緒にしてきた自負はある。
思い返せば、アルフと一緒に特訓するようになってから、大分時間が経ったよね。
アルフとは、リニスと別れてから使い魔契約を結んだから、もう3年ぐらい経つのかな?
前世では、リニスがいるときに母さんがアルフを連れてきて、使い魔契約を結んだんだよね。
アルフと私で、一緒になってリニスに怒られていたのが懐かしいな。
今世では、母さんが私の魔法習得度合を見て、使い魔契約よりリニスとの修業を優先したのかな?
私が意図したことではなかったけれど、結果的には、アルフと使い魔契約をする前にリニスとの別れの時期を迎えられた。
リニスを無事に鳴海市に転送することが出来たから、良かったんだよね。
でも、こうやって、少しずつだけど、私が知っている未来とは違って来ている。
まぁ、そもそも私自身の存在もイレギュラーだし、何が起こっても不思議ではないけどね。
未来が変わっていくなら、願わくば、みんなが幸せに過ごせる未来を創れたら・・・って思っているけれど、私まで幸せになりたいと思っちゃうのは、都合がよすぎるかな?
休憩中にもかかわらず、色々考えちゃっているけれど、最近は特訓しながらも色々と考え事をしてしまっているんだよね。
考えていることは、「山田君は本当に母さんの病気を治せるのだろうか??」という疑問。
山田君は単純そうで、意外とガードが堅い。
この前は、悪女になるって言ったけれど、人を利用するとか、嘘をつくとかは正直得意じゃない。
だから、いつも「どうやって母さんを治すの?」って素直に訊いてしまっている。
そんな質問に対して、山田君は「王の力の根源は秘密だ。フェイトが俺様のものになるなら教えてやる」って言っているばかり・・・。
山田君は、本当は何も考えていないだけなのかもしれない。
でも、不思議なアイテムをたくさん持っているようだし、全てが嘘と言う訳ではないと思う。
不信は募れど、私が抱えている悩みを解決できる現時点の唯一の可能性。
余り無碍には出来ないよね。
色々考えていたら、何やら話し声が聞こえてきたんだけど、母さんは出掛けているはずだよね?
アルフはそこで寝ているし、山田君とは違う声・・・。
侵入者?でも、どうやって時の庭園に・・・。
山田君も来ているし、不可能ではない・・・?
疲れた体に無理を言わせながら、顔を上げると見慣れた顔をした女性が一人。
「フェイト、そんな恰好でいると風邪をひきますよ」
と、優しい声を私に掛けてくれる。
その声を聞いたアルフは飛び起きて警戒したけれど、私はアルフを制止する前に、女性に飛びついてしまった。
一瞬偽物かもしれないって思ったけれど、私が・・・、私が間違う訳がない。
「リニス!!」
この姿を、この声を、雰囲気を・・・忘れるわけがない。
私が好きだったリニス、そして助けたかったリニス。
私が待ち望んだ時間、願いが叶った瞬間。
次にリニスに会うときは立派になった姿を見せようって思っていたけれど、駄目だ、涙が止まらない・・・。
「リニス、無事でいてくれてよかった。本当によかった。」
そう言いながら泣き続ける私を、リニスは優しく抱きしめてくれる。
アルフも最初は唖然としていたけれど、私の様子を見てリニスを敵ではないと認識してくれたみたいで、私が落ち着くまで見守っていてくれていた。
私が落ち着いたところで、アルフにリニスを紹介したの。
「あのババアの使い魔だったんだね。それは大変だっただろうね」ってアルフに言われて、リニスも苦笑いしていたのが印象的だったかな。
そしてリニスから、隣にいた男の子を紹介して貰おうと思っていたら、リニスから「フェイト、彼が私を助けてくれた菜之葉です」って言われて、私は戸惑ってしまった。
えっ?
リニスは「なのは」って言ったのかな?「なのは」と同名さんかな??
ちょっと戸惑っちゃったけど、リニスが紹介してくれたのに、私が名乗らないのは良くないよね。
「初めまして、私はフェイト・テスタロッサと言います。貴方がリニスを助けてくれたんですね。本当に有難うございます!」
この人にはいくら感謝をしても足りない。
私の夢を、私の願いを叶えてくれて、本当に有難うございます!
そんな気持ちで彼の言葉を待っていたら、「フェイトちゃんって呼んでいいかな?初めまして、鷹町菜之葉です。リニスと使い魔契約を結んでます」って挨拶されたよ。
リニスと使い魔契約をしているのは良いとして、今、「高町なのは」って言ったのかな!?
名前だけじゃなくて名字まで一緒!?ま、まぁ世の中には同姓同名なんて沢山いるよね。
ちょっと考え込んじゃっていたら、「フェイトちゃんって、黒いバリアジャケットを着ているけれど、黒が好きなの?僕としてはフェイトちゃんは女の子っぽいから、ピンクとか好きそうかなって思うんだけど」って質問が・・・。
ピンク・・・ピンクはダメ。
なのはの・・・うん、思い出したくないけれど、ピンクはダメ。
「ピ、ピンクはですね、色々あって苦手なんです・・・。バリアジャケットが黒いのは、色々考えてこれがしっくりきたというか、着慣れているというか、何と言うか」って答えたけれど、無難な答えだったかな?
子供の頃に来ていたバリアジャケットは、露出が多くて今の精神年齢で着るのはちょっと・・・。
自分で実際に着ておいて言うのも何なんだけどね。
今のデザインは、大人になってからずっと着ていたから愛着があるんだよね。
何より無難な格好だし・・・。
また色々悩んでいると「フェイトちゃんは相変わらずだね。昔と何も変わってない。まぁそれがフェイトちゃんの良い所なんだろうけど」って彼から言われたの。
「え~っと」
彼は、彼は何を言っているんだろう。
「彼は同姓同名なだけで、なのはじゃない」って、自分に言い聞かせていたら「フェイトちゃんが先に死んじゃってから、ヴィヴィオも私も、皆も凄く寂しかったんだよ。でも、今は元気そうだね。また会えて嬉しいよ、フェイトちゃん」って。
私が先に死んじゃった?
今はいる筈のないヴィヴィオを知っている?
私がピンクが苦手なのを知っている?
全てが一つにつながった。私が今いるんだから、なのはがここ居ても不思議じゃない!
彼はなのはなんだ、高町なのはの生まれ変わりなんだ!
そう分かったら、また涙が止まらなくなっちゃった。
「なのはより、なのはより先に死んじゃって、私も自身も凄く悲しかったんだよ。でも、また、こうして会えるなんて・・・。これは夢・・・じゃないよね」
思わず抱き付いちゃったけれど、なのはは優しく抱き留めてくれた。
なのははちょっとはにかみながら「私もまた会えて嬉しいよフェイトちゃん、私は性別が変わっちゃったけど」って言ってきたらか、「性別が変わっても、なのははなのはだよ」って答えたよ。
なのははなのはだよね!私が好きななのはだよね!!
アルフはまた唖然としちゃっているから、なのはのことも説明しないといけないよね。
リニスは私となのはの関係を知っているのかな?
優しい笑顔で見守っていてくれているから、知っているんだろうな。
感動の再会を果たした後、なのはに色々訊いてみると、今は「鷹町菜之葉」と言うらしい。
読み方は同じで、感じが違うって言うのはややこしいよね。
何より、この世界には「高町なのは」も存在しているらしいし。
2人のナノハ。
一人は私がずっと一緒に過ごしてきた菜之葉。そして一番大事な人。
一人は私がこれから友達になるであろうなのは。どんな付き合いになるかは分からないけれど、また良い友達になれると思っている。
今の私は、前世での二つの後悔を晴らすことが出来た。
あとは母さんを救えれば・・・。
母さんを救う方法を、リニスは、菜之葉は持っていないだろうか?
山田君を信じる以外にも選択肢があるのではないか??
フェイト・テスタロッサ、リニスと菜之葉に協力を仰ぎます!