リニスと別れて、3年が経過。時間が経つのは、あっと言う間だね。
この3年間、母さんを救うという最終目標を果たす為に、アルフと一緒に修業してきた。
前世での力をすべて引き出したとは言えないけれど、出来る限りのことはやった。
前世の私に比べれば、天と地ほどの差があるはず。少なくとも、今のなのはには絶対に負けない。
間もなく、ジュエルシードが海鳴市にばら撒かれる。
ジュエルシードを確実に手に入れる為には、どうしたら良いんだろう?
ばら撒かれる前に、ユーノから無理やり回収する?
駄目だ。ユーノは管理局に即座に連絡するだろうし、管理局と正面から敵対するのは得策ではない。
やっぱり、ばら撒かれた後に自然を装って回収して、そして管理局が来る前に立ち去るのが一番かな。
クロノとか来たら、色々と面倒だしね。
私だけが救われるなら、前世通りでも良いかもしれない。
でも、私の目的は母さんを救う事。その為に、この数年間を費やしてきたんだ。
ただ、ジュエルシードは、母さんが姉さんを救うために使ってしまう。
山田君も、ジュエルシードを完全にして、助けるって言っていたし。
姉さんを助けることは私も賛成だ。むしろ助けたい。
でも、姉さんを助けた後、ジュエルシードに余力はあるのかな?
分からない・・・。でも、「ない」と言う答えでは困る。どうしたら良いんだろう。
山田君は、時々時の庭園に来ている。
何しに来ているかは良く分からないけど、時より「よぉ、俺の嫁!」と声をかけて来る。
嫁・・・。相変わらず良く分からない子だよね。
お互いのことを、ほとんど知らない関係なのに、嫁なんて呼んでくるなんて。
実際、男性の好みで言えば、なのはみたいな男性が理想だから、山田君には興味がないんだよね。
まぁ、なのはは同性だし、そんは人いないんだろうけれど・・・。
でも、山田君の力には興味はある。
山田君に、ジュエルシードを完全にする力があるならば、彼ならば母さんの病気を治せるのかもしれない。
だから、「山田君、君は人の病気を治す手段とかも知っていたりするのかな?」と試しに訊いてみたら、「なんだフェイト、ついに俺様に興味を持ったか?俺様の魅力は半端ないからな!」って言われたの。
安定の山田君だね・・・。山田君自身には、極めて興味はないんだけど。
「もしかしたら」って思って。訊いた私が馬鹿だったかな?
半分諦めてというか、呆れていたら「あ~、病気の話だったな。病気を治す?天下の山田様に不可能なことはないわ!」って返事があったの。
この容姿で「山田」はやっぱり違和感があるなぁ。何度聞いても慣れない。
でも、彼の回答は私の求めていたものだ。
「どうやったら治せるの?」って、訊いたら「それは王の力の根源たるものだから秘密だ。フェイトが、今すぐ俺様のものになるなら教えてやる」だって。
う~ん、残念な回答だ。でも、母さんを救う手段が見つかったかもしれない!
後はどうやって山田君を利用するかだよね。おだてておけばいけるかな?
思考は単純そうだし。
それはそうと、彼は海鳴の近くに住んでいるとのことだから、期待を込めて「街で茶色い山猫を見かけなかった?」って訊いたら、「知らん」とだけ返答があったの。
正直、回答には期待していなかったけれど、はっきり言われるとショックかな。
でも、「そういえば、茶色い猫なら、いつもなのはの周りをウロチョロしているモブが肩に乗せていたな。・・・あのモブ、いつも邪魔ばっかりしやがって!思い出したらイライラしてきた!!」
だって。
もしかしてリニス!?って思って「そ、その猫って、魔力があったりした?」って訊いたら、「魔力があった気がするが、モブの飼っている猫なんて知らん!それよりも俺様の魅力をもっと語ってやろう」って言われたから、とりあえずおだてる為に、相鎚だけ打っておいたよ。
興味のない話を聞くのは、疲れるね・・・。
けれど、リニスが生きている可能性があるのは嬉しいかも!
助けてくれた人は、どんな男の子なんだろう?
リニスを助けられるってことは、魔法使いなんだよね。
なのはの周りにいるって言っているけれど、私が知らない子だから、イレギュラーな人なんだろうな。
でも、なのはが一緒にいるって言うし、リニスを助けてくれたなら良い人だよね。
フェイト・テスタロッサ、リニスの事を喜びながら、山田君を利用する為に悪女になります。