リニスの魔力が、日に日に弱くなってきている。
考えたくはないけれど、リニスと母さんの使い魔契約が、終わってしまったのかな・・・。
・・・遂にこの日が来てしまった。
来て欲しくないと思いつつ、いつか来るこの日に向けて、私は準備してきた。
先月、私のデバイスであるバルディッシュが完成。
そして、バルディッシュをある程度使いこなせるようになったから、母さんはもう、リニスは不要と考えたんだろうな。
前世では、リニスは何も言わずに私の前から姿を消した。
私が必要以上に悲しまないように、リニスなりの配慮だったのかもしれない。
いなくなって悲しんでいた私に対して、母さんは平然と「使い魔契約を終わりにしたから、出て行ったわ」とだけ告げた。
当時の私はショックで、悲しむことしかできなかったけれど、今の私は全てを知っている。
間もなく、リニスが私の前から消えてしまうということを・・・。
賭けるなら今しかない!
私はそう思って、リニスに私のありったけの魔力を込める。
リニスは驚いた顔で「フェ、フェイト、魔力を私に使うなんて何を考えているんですか!」って怒って来たけれど、私は今出来る最高の笑顔で「少しでも長く生きて・・・。またね」とだけ言って、リニスを海鳴市に転送したの。
最後の別れにしては、呆気なかったかな。でも、これで良かったんだよね。
リニスは優しすぎるから、素直に私の魔力は受け取ってくれなかっただろうし。
でも、「さよなら」とは言わなかったのが私の決意。
海鳴なら、なのはが・・・。なのはじゃなくても、きっと誰かが助けてくれる。
「また会える」
そう信じているから。
リニスがいなくなった後、私は修業に明け暮れた。
寂しさを紛らわす為?母さんを助けるという、二つ目の目的に向かって気を引き締める為?
私にも、どちらが理由なのかは分からない。
リニスが私の前から去ってから暫くして、時の庭園に銀髪の子供が現れたの。
何故この場所に子供が?どうやって来たのだろう・・・。
見た目は私と同い年ぐらい?
銀髪、オッドアイで独特な雰囲気な子だね。
前世では見かけたことがないから、この子もイレギュラーな存在なのかもしれない。
突然の来客に母さんも驚いているし、招かざる客なんだろう。ただ殺気は感じられない。
警戒する母さんに対して、銀髪の子はいきなり「アリシア・テスタロッサを救ってやろう」って言ったの。
何故、この人はアリシアの事を知っているの。
アリシアの名前を呼ばれて、母さんは明らかに動揺している。
「貴方、どうしてアリシアの事を知っているの!」
母さんの怒声に近い問いかけに対して、銀髪の人は「俺は王だからな。何でも知っているさ」と平然と答えたの。
自分で自分の事を王とか言っているし、ヤバい人?
でも、この人の魔力は物凄く高い。前世の私以上かもしれない。
でも、魔力の制御が全くできていない。強いのか、弱いのか正直良く分からない。
母さんも、そのことは判っているみたい。
母さんは敢えて「貴方がアリシアを知っている理由は判らないけれど、アリシアを救って貴方に何の得があるのかしら?」と銀髪の人に問いかけたら、「アリシアを救った見返りとして、フェイトを戴くぞ」と銀髪の子は一言。
この人は、どうして私の事を知っているの?私はこの人の事を知らないのに。
それに私を戴くってどういう事かな?
私は銀髪の子に興味はないんだけど・・・。
「アリシアだけではなく、フェイトのことまで知っているとは驚いたわね、まぁ良いわ。本当に救えるなら、フェイトのことは好きにして良いわ。但し、救えなかったら・・・。解っているわね」との母さんは言い放つ。
「ふん、王に不可能はない。3年後、ジュエルシードというロストロギアを集めろ。このロストロギアは、誰の願いでも叶える。そのままでは不完全なものだが、王の力で完全なものにしてやる」と、銀髪の子は応諾する。
ジュエルシードのことまで知っているなんて、私と同じイレギュラーな存在だね・・・。
「分かったわ。3年後ね。それはそうと貴方の名前は何というのかしら」
母さんの問い掛けに対し、銀髪の子は「我は全ての頂点に君臨する王、山田太郎だ」と言い放つ。
山田太郎・・・。見た目に反して普通の名前だね。
フェイト・テスタロッサ、山田君の登場に驚きを隠せません。