私がこの世界に生まれて数日経ったけれど、私は母さんの前で、どのように過ごしたら良いのかな。
姉さんを演じて、母さんを満足させるのが良い??
それとも、私は姉さんではないという事を、早々に打ち明ける??
でも、前者を選んだとしても、私に姉さんを演じ切ることは出来ない。
今、私の中には私自身の前世の記憶と、姉さんの5年間の記憶が混在している。
前世の私は、姉さんの記憶を自分の記憶と思い過ごしてきた。
私は姉さんのクローンであって、オリジナルではない。
でも、姉さんを恨んだことはないよ。
姉さんのお蔭で私が生まれて、なのは達との幸せな生活を送れたのだから。
80余年生きてきた経験と、姉さんの記憶を合わせれば、ある程度母さんを誤魔化せるかもしれない。
でも、決定的に魔力光が違う。私は金色で姉さんは空色。
姉さんの魔力光を実際に見た訳じゃないけれど、前世で母さんが言っていたのを覚えている。
そして、母さんが私の”金色”の魔力光を、嫌いなことは知っている。
次元エネルギー駆動装置の暴走事故の爆発光と、私の魔力光が被っているから、ある種のトラウマみたいなものだと思う。
私がどんな選択肢を選んでも、母さんに嫌われる結果は変わらない。
それでも、私は・・・。私は、私の知っている結末とは、違う未来を描きたい。
姉さんを助けたい!そして、母さんに生き続けて欲しい!!
その為には、私はどんな努力でも惜しまない!!
母さんは非常に頭の良い人。私の本質を見抜いたのか、姉さんと違うという事を悟ったみたい。
極端に毛嫌いされていることは無いけれど、待遇は前世とあまり変わらないかな。
私の教育係には、母さんの使い魔であるリニスがあたってくれている。
リニスに会った時には、泣いてしまった。嬉しくて、懐かしくて・・・。涙を止められなかった。
リニスは、会った瞬間に泣いてしまった私に戸惑っていたみたいだけれども、「なんでもない・・・。なんでもない・・・」と言い続ける私を、静かに撫でていてくれた。
リニスにとっては初対面、私にとっては久々の再開。
立ち位置は違えど、二人の関係は昔と変わらず。短い間かもしれないけれど、リニスといる時間を大切にしたい。
リニスと暮らす中で、私は前世の記憶に基づき、着実に魔法を覚えている。
前世のようにいきなり高火力は出せないけれど、私の攻めのスタイルであるスピードを重点的に鍛えて貰っている。
でも、これじゃ駄目!もっと早く!全盛期のように早くならないと!
ジュエルシードを集める際は、なのはともまた戦闘になるよね。
前世でもそうだったし。なのはには最後負けてしまったけれど、今回はそれでは駄目。
なのはには悪いけれど、私は闘わない。「戦い」とはせずに、初撃で墜ちてもらう。
勿論、手加減はするし、怪我しないように配慮はするけれど、邪魔はさせない。
フェイト・テスタロッサ、なのはには負けません!