目が覚めたらSS501   作:にわかミリヲタ三等兵

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長門ってなんでこんなに可愛いんだろう


それぞれの戦い2〜ビックセブンは思い出す〜

 

未だ覚醒しない意識の中、薄暗い天井をぼんやりと見つめる。

大分早くに目が覚めてしまったようだ。

大型艦というのは総じて朝が弱いもので、酷いと一二〇〇頃にやっと動き出す者も居たりする。

最近は早起きを心がけているとはいえ、何故こんな時間に起きられたのだろうか...

なかなか動き出さない頭でゆるゆると自問する事十数秒。

...そうだ、今日は奴の出撃日ではないか!

答えに行き着いた瞬間に目が覚めた。

今日の〇六〇〇に出ると言っていたので到底起きられないと思っていたが...どうやらこの身体は私が思っている以上に性能が良かったらしい。

こうしてはおれぬと急いで、かつ静かに寝間着を脱いでいつもの服に着替えると、隣で寝ている陸奥を起こさぬようにそっと部屋を抜け出した。

起きられたのもなにかの僥倖、門出を祝ってやらない訳にはいかないのだ。

そうして意気揚々と埠頭に出てきたのが〇四三〇で、私以外の見送りが一人も居ないことに疑問と、焦燥感を抱きながら待つこと一時間。

だんだん周囲が明るくなってゆくのに気を取られていた意識が横から聞こえた声によって瞬時に瞬時に引き戻された。

「長門...どうしたんだ?」

もう既に出航したのでは?という不安から解放された安堵と見送ることができるという喜びは名前の後に続いた『余計な一言』により一瞬でかき消され、思わず相手を睨みつけてしまった。

どうやら私がここにいる事は完全に予想外だったらしい。

どうしたも何も、お前に会いに来たに決まって居るだろう。いくら何でもその言い方は無いだろうと。

驚く理由もある程度は理解できたが、つい不満を漏らしてしまった。

こればかりは相手が悪い。

文句を言ってある程度落ち着いた所で、かねてより聞いておきたかった事を口にした。

貼り出された編成表に載っていた、W島の攻略メンバー。

『先遣』としてそうりゅうの名前が記入されている事に妙な違和感を覚えた。

同じ潜水艦の伊19と伊58は『先遣偵察』となっている。

なぜ偵察の二文字が抜けている?

間違ったとは考えにくい。

嫌な予感がしてブリーフィング後に提督を問い詰めてみた所、とんでも無いことが判明した。

海域内の全戦艦、空母を相手にする。

そして、敵の各艦隊には最低二隻以上の駆逐、軽巡がいる。

......。

思わず激務で疲れている提督の襟首を締め上げてしまった。

そうせざるを得なかった訳を聞いてもなかなか納得が行かなかった。

しかし泣きそうな顔の提督にこれ以上は弾薬が...!と言われてしまってはどうする事も出来なかった。

 

不安だったのだ。

提督に聞く限りではそうりゅうが失敗すれば作戦自体が崩壊してしまう。

あまりにも荷が重すぎるのではないかと、心配になった。

たとえ気休めでも、大丈夫かと聞いておきたくなってしまった。

しかし、実際に聞いてみると本人にとってはそれ程の事でも無かったらしい...

簡単とは言い難いという前置き付きだったが、笑みを浮かべながら全力を尽くすと言っていた。

私が思っていたよりは気負った様子が無かったので安心した。

ほっと一息ついて、その流れで新人の初出撃にもかかわらず私以外の艦娘が一人も見送りに来ない事への怒りを口にすると、そうりゅうは『あれ?』というような表情で固まっていた。

...うん?

もしかして、という嫌な予感が胸中を支配する。

彼はとても言いづらい様子で、何も知らない私へと衝撃の事実を暴露した。

門出には寂しすぎる。〇六〇〇起床は重巡以下の艦娘は十分可能である事を考えれば、出航を誰一人見届けないのはあまりにも冷たいのではと憤慨していたが...

見送りは今朝食堂でやっていたという...

一瞬頭が真っ白になった。

やってしまった…

疑問符を大量に浮かべたような様子のそうりゅうにどう言い訳すればいいのか…

『お前と話がしたくて起きて直ぐにここに来たので食堂の件は分からなかった』と、面と向かって事情を話すにはあまりにも恥ずかし過ぎた。

何とか誤魔化して、その後も言葉を交わしたがほとんど頭に入ってこなかった。

こんなことなら恥を忍んで誰かを捕まえて予定を聞いておけば良かった...そうすればもっと上手く立ち回れたのだがと少し後悔した。

「まぁ...見送りができたのならそれでもいいか...」

一応本来の目的は果たせたのだからと無理やり自分を納得させて、誰もいなくなった埠頭から寮へと戻る事にした。

...............

.........

......

「......門、なーがーと」

「...?陸奥か、どうした?」

「どうしたって...ほら、索敵機報告」

「ん?あ、ああ、すまんな」

「全く...艦隊旗艦なんだからしっかししなさいよ」

当時の事を思い出していたらいつの間にか周囲の音が耳に入らなくなってしまっていたらしい。

...弛んでるな...気を引き締めねば...

あれから数日、私は陸奥と一、二航戦の合計六人でポートダーウィンへと向かって南下していた。

偏った編成だが後で呉所属の艦隊が合流する事を考えると妥当と言うべきか...

目的地までまだ距離があるとはいえ一応ここも敵地だ。

気を引き締め直して陸奥から渡された索敵機の偵察報告を読む。

『我西進中ノ巡洋艦ヲ旗艦トスル敵艦隊見ユ...』

送信元は赤城から偵察として出した九七艦攻のようだ。雷装はさせていない。

どうやら敵がいたらしいな...

編成からすると偵察部隊か?このまま進むと鉢合わせしそうだな...

「どうする?」

「戦ってもいいが報告されると厄介だ、転進してやり過ごそう」

今回の作戦は同時多発的に複数の拠点に奇襲をかけなければならない。

その事を考えると現地に到着するまでは戦闘は避けるべきだな。

「それもそうね...赤城さん、索敵機には艦隊の位置を逐一報告するように連絡よろしくね。あと後続には左十五度転進してやり過ごすって言っといて」

「もぐ...はい、分かりました!」

陸奥が後ろを航行する赤城へと進路変更を伝える。

赤城の頬におにぎりのご飯粒が付いているのは気にしないでおこう...

澱みなく転進を終えて航行を続けていると陸奥が声をかけてきた。

「ねえ長門」

「何だ?」

「最近ぼんやりしてるけど何かあったの?」

何だいきなり...まぁ確かに最近気が抜けている時があるが...

「いや...特に何も」

「ふ〜ん...」

何故か知らんが私をニヤニヤと見つめる陸奥。

「な、何だその笑みは?」

「ねぇ長門...良かったわね二人きりになれて」

「んなっ?!」

あの時の事が、ば、ばれていた...だと?

陸奥は寝ていた筈では無かったのか?

「ウフフフ...」

さては陸奥貴様狸寝入りをッ!

「な、何がおかしい、ほら、行くぞ!」

いい加減その笑顔を止めろ!

「陸奥、べ、別にお前が想像している様な事は無いからな!あくまで私は新人の見送りに...」

失礼だとばかりに私が訂正しようとした途端、陸奥がしてやったりとばかりに笑みを浮かべた。

「あら?私がどんな事を想像しているのかしら?」

「なっ!」

嵌められた...

「あらあら〜?」

ニヨニヨとこちらを眺める陸奥。

だぁぁぁああ!しつこい!

「いい加減にしろ!」

「はい、艦隊旗艦殿〜...ウフフ」

うう...別に邪な考えなど持っていないぞ!

あくまで私は新人が心配でだな...

べ、別に二人きりで話ができて嬉しかったとか考えて...

あぁぁぁぁあ!!

 

謎の思考に陥りそうになったのを必死に振り払い自らを落ち着かせること数十秒。

その後は訝しげにこちらを見る後続艦への釈明に四苦八苦した。

 

 




長門可愛い

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