まず一言
遅くなり...っていうレベルじゃないですよね...すみませんでした!!!!
生きてます!!!!
今後もよろしくお願いします。
ー伊58サイドー
鎮守府に私の後輩がやってきた。自己紹介によれば元は「海上自衛隊」に所属していた艦らしい。兵装のことなども聞いてみたけど...よく分からなかったでち。50ノットを超える速度で自ら探信音波を放ち敵艦を追尾する魚雷、100km以上離れた敵に打撃を与えることが可能な対艦噴進弾などなど。なんのことやら...
静粛性も優れているらしい。なんでも一旦水中に潜れば鎮守府内で最高の練度を誇る駆逐艦の響ですら探知できなくなるほどだとか...
なんとなく「凄い」という事だけは理解できたでち。きっとこれから沢山出撃して、多くの結果を残すと思うでち。
1つ問題があるとすれば、航空母艦の「蒼龍」さんと名前が同じだということ。共同で1つの任務に取り掛かる時に混乱するのではないか、と。しかしまだそういった問題は発生していない。なぜならば...
そうりゅうが今まで一度も出撃や演習をしていないから。
聞けば着任して戦ったのは性能試験のときだけで、その後はず〜っと出番がないらしい...
いくらなんでもこれは酷いでち!
提督がどんな考えでこんな事をしているのかは分からないけど、戦うために生まれてきた艦に何1つ仕事を与えず低練度のまま放置するのはいけないでち!
この間すれ違ったときなんてこちらの声かけに反応せず焦点の合ってない虚ろな目をして『○○岬...近接限界...』等とブツブツ呟きながら通り過ぎていったでち。
さすがにこれはまずいと思ったのでせめて私達の訓練に参加させてあげようと思ったんだけれども...
ここ数日姿を見ないでち。
「どこに行ったのね...」
そう言いながら隣でどこか疲れた顔をしているのは伊19(あだ名はイクでち)。
疲れるのもわかるでち...今朝からあちこちそうりゅうを探して歩き通しでち。
「...大規模な作戦にでも投入されたのかな?」
はっちゃん...(伊8のあだ名でち)
「低練度の潜水艦を出撃させる程提督も鬼畜じゃないのね...」
そう、そういう事に関しては提督はしっかりしている。しかし練度が上がり、大規模な作戦により弾薬や燃料等の資源が消費されると...
『オリョクル』『バシクル』『カレクル』...地獄のローテーションが始まるでち...
まあ一通り終わるとしっかり休ませてくれるけど...
それはさておき。
「そもそも主力の人たちが鎮守府にいるから『大規模な作戦』は考えづらいでち」
「それもそうかな...」
「本当にどこに行ったのね...」
もう私達だけで探すのには限界があると思うでち...
「そうりゅうと面識がある人たちに聞いてみるしかないでち」
「それもそうなのね...」
そうりゅうと行動したことのある艦娘は響、睦月、吹雪、長門さんの4人だけ。響は対潜哨戒に行ってるし、睦月も遠征中、となると...
「まずは吹雪に聞いてみるでち」
「手がかりが見つかるといいね」
えっと...駆逐艦のフロアは...
「『蒼龍』さんなら防空演習に...」
「いや、そっちじゃなくて...」
「あ、潜水艦の『そうりゅう』さんですか...私も最近見てないですね...」
「そう...」
自室にいた吹雪に事情を話し、どこかで見なかったかと聞いたけど...結果はハズレ。
とりあえずお礼を言って長門さんのところに聞きに行こうかな...
「...数日前までは資料室にいたらしいですけどね...それ以外の事は分からないです」
「資料室?何のようなのね?」
「何か調べ物をしていたらしいですよ?雰囲気が怖くて近寄れなかったって睦月型の子が...」
調べ物...?
「何の調べ物でち?」
「いえ、見ていたわけではないのでそこまでは...」
結局手がかりなし...他をあたるしかないでち。しかし調べ物か...資料室なんて艦の運用法とか戦術とか艦の頃の記憶としてすでに知っているような知識しか手に入らないから調べ物をするのは前世...艦だった頃に実戦に参加できずに終戦を迎えた艦娘ぐらいなもの。そうりゅうは詳しくは知らないけど艦だった頃に結構長い間就役してた筈なのに...謎でち。
「他をあたって見るでち」
しょうがない...次は長門さんかな...
「協力してくれてありがとうなのね」
「Danke!」
「へ?『だん』...なんですか?」
「はっちゃん...ここは日本でち」
「おっと、ついドイツ語が...」
はっちゃんの言った言葉が分からず困惑する吹雪に意味を教えたあと私達は長門型の2人がいるはずの部屋へ...
「タイミングが悪かったわね...」
「何かあったでち?」
駆逐艦たちがいるフロアから歩くこと数分、戦艦フロアの長門型姉妹がいる部屋をノックすると妹の陸奥さんが出てきた。長門さんに聞きたい事がある旨を伝えたけど...この反応はもしや...
「少し前に長門は砲撃演習に行っちゃったのよ」
終わった...
「きょ、協力ありがとうなのね...」
イクが「倒れないよう耐えるので精一杯」といった様子で陸奥さんにお礼をいったでち。
横須賀軍港はとても広い。
そこを隅から隅まで探し回って疲れないわけがないでち...
「だいぶ必死な様だけど何かあったの?」
あ、そういえば理由を話していなかったでち...
陸奥さんに改めてここに至った経緯を話すと、陸奥さんは少し考えた表情をして一言。
「...提督に聞けば分かるんじゃない?」
............
「...し、失念してたでち」
なんでこんな事に気付かなかったのよ私は!!!!
提督なら艦娘全員の行動予定を把握していない筈がないでち...
というよりなんでまず最初に提督のところに行かなかったのよ私は...
「私達のいままでの行動は一体...」
「倒れそうなのね...」
なんか疲れたでち...
「行ってくるでち...」
「まぁ...その...頑張りなさい」
陸奥さんの同情する様な視線を背後に感じながら一路提督の執務室へ...
「「「訓練?」」」
「ああそうだ、本人曰く訓練だ」
執務をしていた提督にそうりゅうがどこに行ったかを聞いたらまさかの答えが返ってきたでち。
「こんな長期間の訓練なんて聞いたことが無いのね!」
イクに完全に同意でち。出航したまま何日も帰ってこないなんて...出撃ならまだしも...そんな訓練普通はありえないでち。
「いや、内容が内容でな...そうりゅうの方から提案してきたんだが...」
提督はそうりゅうに渡された航海計画の内容を話し出した。
まとめるとこんな感じでち。
艦娘、深海棲艦の音紋を収集、その後対象に対し魚雷発射訓練。それをひたすら繰り返す。
......。
「まんま雷撃演習じゃない!」
私たちは提督に問い詰めたでち。
そうりゅうが自発的に出したという航海計画の内容は私たちがやっているような雷撃演習とほぼ同じ。違うところといえば実弾を使うか使わないかぐらいなもの。なのになぜ今までこんな初歩的なことまでやらせなかったのか、しかも練度の低いまま本物の敵に対して「訓練」をする、というような誰もが無謀だと理解できるようなことをなぜ許可したのか。
このような指示は普通は提督が出すものであって艦の方から言い出すようなものでは無い。どうしてこんな状況になるまでそうりゅうをほったらかしにしたのか。などなど...
すると提督は机から一枚の書類を取り出してはっちゃんに渡したでち。
「お前たちの言いたいことは重々理解している。だがな...容易に行動させることができない理由があるのだよ...」
提督の言った事の意味が分からず、首を傾げていると不意に右から肩を叩かれたでち。
「ご、ゴーヤ...これ...」
振り向くとそこには青ざめた顔をして提督に渡された書類を私に差し出すはっちゃん。な、何があったでち?
受け取った書類を読んでみる。
どうやらそうりゅうの補給完了の報告書らしい。はて、はっちゃんが青ざめる原因なんて...⁈
自分でも顔から血の気が引いてくるのがわかったでち。
「どうしたのね...⁈」
私の様子が気になったのかこちらを覗き込んだイクが絶句してたけど、それを気にする余裕はないでち。
こ、この弾薬消費量は...
「これがそうりゅうを行動させられない理由だ」
提督はさらに続けた。
「これが原因でそうりゅうを運用できず、かといって低練度のまま放置しておくにはあまりにも勿体無い、どうするべきか迷っていたところに当の本人が「魚雷を使わない」練度を上げる方法を提案してきた。
敵に対しても魚雷を使わずに発射訓練をするというあまりにも無謀な内容に私は一瞬躊躇したが、私はここであることに気づいた。
訓練の内容も普通ではないが、目の前にいるこいつも「普通の」潜水艦ではない、と。
「まあこいつなら大丈夫だろう」と、この『訓練』を許可して、今に至るわけだ。」
内容は完全に作戦行動または演習のうちに入るが、実弾を使わんのでは訓練になるな...と続ける提督の話を聞いて、私はようやく納得したでち。
そうりゅうは強いことは確かだ。しかし...
消費弾薬魚雷1発につき「100」
一回出撃するたびに鎮守府の運営に支障が出るほどの資源を消費する。
そしてその消費した弾薬を回復させるために遠征組の軽巡や駆逐艦、オリョクル要員の私達潜水艦組が泣きを見ることになる。
おいそれと出撃や演習をさせる訳にはいかないというのが理解できたでち...
でもいくら強いとはいえ少し心配でち。
今はどこを航行しているんだか...
次回は海です