目が覚めたらSS501   作:にわかミリヲタ三等兵

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レベリング(?)回です。


襲撃訓練

ー電サイドー

いつもは秘書艦業務で忙しい妹の響が抜けて、残りの3人で任務をこなすことが多かったのですが、秘書艦が一時的に変更されたことによって久しぶりに第六駆逐隊の4人が揃いました。今日はみんなで鎮守府近海の対潜哨戒なのです!

そんなに頻繁では無いものの、たまに敵の潜水艦が横須賀港に侵入しようとしてくることがあるので油断はできないのです...

 

「さっさと任務終わらせて提督に間宮券貰うわよ!」

暁...

駆逐艦のみんなは任務を無事完了させると、提督に1人1枚甘味処「間宮」のアイスがタダで食べられる「間宮券」というのを貰えるのです。楽しみなのは分かるのです...でももう少し真面目に...それでも「レディ」なのですか?

「......こっちは潜水艦らしき反応は確認できないよ」

半ば呆れたような表情で暁を見ていた響が私に報告してきました...妹の筈なのに姉の暁よりお姉さんに見えるのです...

まぁいいです。こちらの水中聴音機にも水中探信儀にも反応がありません。第六駆逐隊のみんなは練度が高いので敵がこちらの対潜哨戒をすり抜けるのは難しいと思うのです。

「電っ!ぼうっとしてないで早く行くわよ!」

ソーナーに集中していていつの間にか遅れてしまったのか、雷お姉さんに怒られてしまいました。

「はわわっ!待ってなのです!」

鎮守府近海異常なし、なのです!

 

 

 

ーそうりゅうサイドー

頭上で甲高く響いていたアクティブソーナーの探信音も遠く離れ、静寂が海底に戻りつつあった。

探知したスクリューノイズは4隻、音紋を照合したところ全て特Ⅲ型...暁型駆逐艦で、内1隻は「響」と断定、後の3隻はデータが無い...まあ多分6駆だろうなぁ...さて、そろそろ動くか...

(潜望鏡深度まで浮上)

『メンタンブロー』

浮上を指示すると、直後に潜航指揮官の号令が頭の中に響く。背中の艤装から僅かに空気の泡が出てきて、自分の身体がゆっくりと浮き上がってゆく。

(潜望鏡、上げ)

潜望鏡深度へ到達した直後に周囲の状況を確認するために、あらかじめ潜望鏡を上げておく。暗くて分からないが、視界が切り替わったような気がする。

暫くすると視界いっぱいに広がる海面と、雲ひとつ無い青空が現れる。

『浮上停止』

妖精さんの号令が飛ぶ中、俺は今回の「獲物」を見つけていた。

照準線の向こう側に4人の艦娘、陣形は単横陣。左から順に「雷」「電」「暁」「響」、第六駆逐隊だ。仲良く会話しながら航行している。距離は2000mかな?

一部の提督が見たら悶絶しそうだな...味方相手にこれやると気がひけるが...

『音紋データ取得完了』

よし、やる事はやった。後は...

(発射管1〜4番発射用意)

『1〜4番注水完了、外扉開きます』

すると腕についてる艦首の魚雷発射口が...開かない。

それに構わず次の命令。

(発射)

『発射よぉーい...てぇ!』

そして魚雷が目標に向かって...いかない。

(潜望鏡下げ、回避行動に移る。潜舵下げ舵、進路変更180、機関全速)

魚雷を発射してもいないのに水測長から「目標撃沈」の報告が入り、「敵」の反撃を避けるため海中深く潜ってゆく。

何をやっているかというと...レベリングだ。

他の艦娘みたいに敵相手に戦ってレベリングができればいいのだが、俺の場合魚雷1発につき弾薬を100消費、という鬼畜仕様だ。そんなことやったら間違いなく提督に殺されてしまう。

だからこんな感じで襲撃訓練をしている訳だが...実は俺がここにいることは誰にも教えていない。

そしてついさっき俺が「攻撃」した4人の艦娘は本当に対潜哨戒をやっている訳で、もし見つかったら高練度の艦娘に囲まれ、本物の爆雷によって袋叩きにされるのは確実。

まぁ「見つかれば」の話だが...

大戦中のソーナーの性能で静粛性に優れた現代の潜水艦を発見することは困難だと思う、ていうか探知できたら逆に凄い。だからさっきの4人も頭上を何事もなかったかのように素通りしていった。吸音タイル貼ってるからな...

ただちょっとあの4人のASWパトロールは問題だな。なかなか微笑ましくて見てるこっちとしてはほんわかとした気分になるのだが、

それでも各艦の間隔はもっと開けて、速度は落とすべきだ。

そうでもしないと俺じゃなくても海底に着底して静かにしてればやり過ごせてしまう可能性がある。うーん...帰ったら提督にMk60機雷の設置でも具申してみるかな?あと六駆の面々にお説教かな?

俺は先程の襲撃訓練時の、潜る前に4人の後ろ姿を捉えた潜望鏡の画面を画像データとして保存してある事を確認すると、変針してこの場を離れた。

とまぁこんな感じで数日前から味方相手に実戦さながらの訓練を繰り返しているのである。

そしてこの航海にはもう1つ重要な目標がある。

音紋データ採集だ。

深海棲艦や艦娘の登場によって今まであったデータのほとんどが役に立たなくなり、本来ならそのデータを集めるはずの音響測定艦等はほぼ全滅。よって俺が集めるしか無い。敵味方の区別がつけば、潜航しながらでも魚雷を撃てる...というわけである。

戦いに出てもしっかりと役に立てるように...まだ一度も出撃した事は無いが...まあいいか。

『40度、砲撃音』

おっと、いつの間に演習場まで来ていたか...

機関止めてるのかな?スクリュー音が聞こえないので艦の区別がつかない...よし、見てみよう。

機関を停止してから浮上し、潜望鏡を海面に出す。

...長門だ。真剣な表情で的に向かって主砲を撃っている。

しかしなんだな...その凛とした表情と主砲発射時の衝撃波によって流れる髪が絶妙にマッチして...

「かっけぇぇ...」

『...艦長?』

⁈やばいやばいつい見惚れてた...

『しっかりしてくださいよ艦長...』

...よし、こっちも頑張らないとな!

(潜望鏡、下げ)

味方のデータはほぼ集めたし、そろそろ行くか...

進路を変更し、港を離れ沖へ向かう。

次は敵のデータだ!




そうりゅうは発射管6門なので魚雷1斉射で弾薬600消費です。それで演習やったら提督の胃が死にますねw
第6駆逐隊の4人については竣工年月日で姉妹関係を区別しました。

距離の描写を追加しました。
11/12
機雷の名称を変更
91式は対潜にはちょっと...

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