駆逐イ級と軽巡ホ級を撃沈して海上での試験は終了、俺たちは横須賀に戻ってきた。
上陸した後に長門が「工廠に行って補給をして貰おう」と言ったので一緒について行く。
工廠に入ると、お馴染みの艦娘である工作艦「明石」が俺たちを出迎えた。
早速俺たちの艤装を渡し、補給をして貰う。どうやら弾薬等も種類に関係なく補給できるようだ。どうなってるんだろな?気になるが、明石はもう工廠の奥に行ってしまった。
しばらくすると明石が青い顔をして戻ってきた。
...まさか補給できなかったとか?
「...弾薬の補給はしておきました...」
明石が疲れた表情をしながらそう言った。
よかった...でもなんで青い顔してるんだ?
まあいいか?
礼を言い、工廠から出る。そのまま暫定的な自室のある憲兵隊舎へ。外出許可はもう出てるが、さすがにこの服装のままというわけにはいかない。
部屋に入り、昨日着た制服に着替えて外に出る。
さて...
「これからどうするかな...」
提督から呼び出されるまで特にする事はない。
しばし考えた後、ミリヲタの本能に従いある場所に行く事にする。
『1号船渠』
日本最初のドックだとかなんとか...いやさ、信濃が建造されたという「6号船渠」も興味あったよ?でもさ、遠いんだよ。司令部とかの施設は陸側に集中してるし、提督からいつ連絡あるか分からないからあまり遠くにはいけない。いつか行ってみよう。
岸壁に腰掛けて周囲を見渡す。まあ外洋側は見えないので景色はあまりだが...
それにしても...
「艦がいねぇ...」
どうやら深海棲艦は本当に根こそぎ艦を沈めたらしい。
やってくれるぜ深海さんよぉ...せっかく横須賀に入れたのに...見たかった物がもう無いとは...
「はぁ...」
なんか改めてここが戦争をしているというのが自覚できるな...そして俺はその戦争に巻き込まれてしまった。
ちょっと基地祭にでも行けばそこら中にゴロゴロいたようなミリヲタの1人が、だ。
ちゃんと戦うことができるだろうか?心配でしょうがない...
「む、ここにいたか?」
⁈
突然響いた声に驚き振り向くとそこには長門がいた。
「隣、いいか?」
な、ながもんが隣に...
「あ、ああ。構わない」
な、なんだ?俺に用があるのか?
「さっきまで何か考え事をしていたようだが...何かあったのか?」
結構前から発見されてたんだな...前世の事で悩んでたなんて言えないしな...なんかいい言い訳はないかな...これでいいかな?
「ん?ああ、その事か...いや、性能試験やっただろ?」
「それがどうしたのだ?」
「ちゃんと認められてここに配属されるか心配でな...」
という事にしとこう。実はこれも本心だし。
「はははっ、なんだそんなことか」
うおお...長門の笑顔...レアだ...じゃなくて
「どうして断言できる?」
「断言できるも何も、フラグシップ級の戦艦を魚雷3本で沈める貴様を提督が使わない訳がないだろう?」
「それもそうか...?」
「なにせ貴様は命の恩人だからな、もし解体するなんて事になろうとも私が41糎砲を持って執務室に「説得」に行ってやるさ」
お、おう...提督も大変だな...
でもおかげで自信が出てきた。
「世界のビッグ7が太鼓判を押してくれたのなら安心かな?」
「そうか?」
「ああ」
「ああ、そういえばまだ貴様に礼を言っていなかったな」
「礼?」
なんだろ?
「私の命を救ってくれたこと、感謝する。ありがとう」
ああ、その事ね...礼なんていいのに...
「当たり前のことをしただけだぞ?」
「ふはは!何が当たり前だ、単艦であそこまで出来るのは貴様だけだぞ?その力、これからも頼りにしているぞ?」
長門に頼りにされる程の実力が備わってるとは言えないがな...
「まだ頼りにされるような練度ではないが、君の期待に応えられるように全力を尽くすさ」
「む、そうか」
「なんせ君は俺にとって憧れだった艦だ。強くなくては話にならん」
...あれ、なんかやばいこと言ったか?
ストレートに「貴女は私の憧れです」なんて言っちまったぞ?
どうしようこれ...
「うむ、よろしく頼む」
...あれ、なんか普通だぞ?こっちとしてはかなりヤバいこと口走ったような気がしたんだが...意識すらされてないってことか?若干凹むな...まあいい。
「おう」
それからしばらく他愛もない会話を続けていると、俺を探していたであろう響がこちらに来て、提督が呼んでると伝えてきた。
提督の執務室に行き、ノックをする。
「そうりゅうです」
『...入れ』
「失礼します」
部屋に入ると、提督が執務机の椅子から立った状態で俺を待っていた。
俺の処遇が決まったか...
「そうりゅう、君に命令を伝える」
「はい」
長門に励ましてもらったが、やはり緊張するな...
「SS501 そうりゅうは、海上自衛隊第1潜水隊群第5潜水隊を除隊し、日本海軍横須賀鎮守府に移籍、その指揮下に入れ」
...やっと拠点が決まったか、これでひと安心だな。
「...私はこれより貴官の指揮下に入ります。よろしくお願いします提督」
「ああ、こちらこそよろしく。ようこそ我が鎮守府へ」
笑顔を浮かべた提督と握手する、が、その笑顔はすぐに消え、かわりに提督に暗い表情が浮かんだ。なんだ?
「キミが所属する艦隊なんだがな...」
「?」
何だろう、なんか問題があるのか?
「君は艦隊に入れることが出来ない」
は?
「それは...どういう事ですか?」
艦隊に入れないって、俺はずっと単艦でしか出撃できないのか?訳わからん。
「その理由なんだが...」
そういって提督は一枚の書類を渡してくる。
なんだこれ?疑問に思い題名を見る。
あ、これ俺の補給記録か。
成る程、油が20で弾薬が...
「...⁈」
せ、センニヒャク?
「キミには艦隊とは別に、遊撃隊として行動し、敵の主力のみを攻撃することに集中して貰いたい」
「け、賢明な判断かと思われます...」
俺を主力艦隊に入れるという事は、大和と武蔵を一緒の艦隊に入れてほぼ全ての海戦に投入するようなもん...という事かな?
「主に戦艦や空母などの『大物』を狙ってくれ、それ以外を狙われると...ね?」
必死な表情で提督が同意を求める。
「りょ、了解です...」
やっと鎮守府に着任(正式)しました。
4月1日、長門との会話を修正、ストレートすぎた...