東方無集録   作:生きる死神

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はいどーも。
今回は1人です。

珍しく八千文字もいってます。読むときは注意よー。

それと、今回は最後の重要人物、かつ、2人の変化の回です。

とっても大切なお話です。
(砂糖かなり多いよ、たぶん)

それではスタート


開かれた瞳、受け取れた愛

 

 

 

 

こいし「寒い!」

 

真也「そろそろ厚着した方がいいんじゃないー?」

 

冬も近づき、雲一つない晴天でも日差しより空気の冷たさに負けるある日。

地上をふらふらと飛ぶ2人は、一足早い冬の手厚い歓迎にまいっていた。

真也は長袖のいつもの格好、こいしは首もとにマフラーを巻いてはいるが、その他は普段通りの格好をしていた。彼はそれなりに厚着しているため、そこまで寒そうではないが、彼女の方は全体的に薄着で寒そうだった。

 

こいし「そうなんだけどね。持ってる服が似たようなのが多いんだよね」

 

二の腕辺りをさすりつつ、寒そうに震えるこいしは暖を求めて真也にひっつく。

ひっつかれた彼も少し顔を赤くしつつ、頭の中で彼女の衣服がわりとワンパターンなことを思い出す。

 

真也「じゃあさー、服でも買いに行こうよー。僕も防寒具欲しいしねー」

 

閃いた彼の案に、こいしも賛成と笑みを見せて2人は人里に向かった。

なお、くっついたままである。

 

 

  ◆

 

 

人里に着くと、いつも通りあまり人目に付かないうちに服屋に入る。

 

真也「どんなの買うのー?」

 

こいし「うーん、いつもの色違いでいいかなって。あとは上に羽織れるものがいいかな?」

 

店内を周り良さげなものを選んでは軽く試着して、これというものをいくつか見つけた。

ちなみに、地底にも服屋はあるのだが、向こうのはこいしの趣味に合わないらしい。一応買わないわけではないが、地上の人里の方がよいとのこと。

こいしは紺色のケープと薄い水色のポンチョと黄緑色のスカート、さらに黒いシャツと黒いスカートを買うことにした。お揃いだねと嬉しそうに言っており、真也はなんだか嬉しそうだった。

真也はマフラーを買おうとしたのだが、こいしが作ってあげるからと言ったので断念した。なので、いつでも着れそうな黒の羽織と紺色の甚平を買った。

 

真也「これで冬はしのげるかなー?」

 

こいし「ダメだったらまた買えばいいと思う!」

 

お互い買った服を持ちつつ、そのまま甘味処に向かった。

 

 

  ◆

 

 

甘味処で団子と温かいお茶を楽しむ2人。ここだと2人の嫌なことも聞こえてこないというか、空気を悪くすると店の人が怒るので誰も話さない。

なので2人はこの店を贔屓していた。よく来るので店員にも顔を覚えられている。

 

真也「んー、温かいお茶と美味しい団子はいい組み合わせだねー」

 

こいし「ねっ。体も温まるし、値段も良心的で嬉しいよ」

 

店のことを褒めつつ団子を食べ進める2人。

すると、2人の近くに誰かが立った。

立ったのは少女。桃色の髪に頭にかけられたひょっとこのような顔のお面。チェック柄の緑っぽい青色のシャツ、独特な模様をした髪と同じ色のバルーンスカート。それに黒色のブーツ。

 

?「後で話がある。人里の外の森で待ってる」

 

口早に少女はそう言うと、店からそのまま出て行った。

2人は少し固まっていたが、待ってると言われてしまったので、残っていた団子をすぐに食べ、お茶を飲んでお金払って少女のあとを追った。

 

 

 

  ◆

 

 

言われたとおりに人里の外の森に着くと、先ほどの少女が、少女の周りにいくつものお面を浮かばせて待っていた。

 

?「来たね。私は秦こころ。用があるのは、あなた」

 

自身の名を名乗って、指差したのは────こいし。

 

こいし「私?私、あなたとは初めて会うはずだよ?」

 

首を傾げて不思議そうにするが、別のところで実は会っている。

まあ、こちらでは初めてなので間違ってはいないのだが。

一応こいしと真也も名を名乗るが、特に反応はなかった。

黙り込んだ真也は、こころの顔を見て考え事をしていた。

 

真也「(んー、この子が無表情なのは、そういう妖怪なのかなー。それともなにかあったのかな?)」

 

会ってから全く変わらない表情を気にしていた。自身が時折浮かべているであろう表情と同じであり、なんとなく不気味さを感じる。

まあ、自身も浮かべていることがあるので、見ている方はこんな感じなのかと内心思っていたり。

辺りに浮かんでいるお面も何かしらの意味がありそうだなとは思うが、なにかは分からなかった。

 

こころ「確かに初めて会うが、あなたから希望を感じる。今の私に足りないもの、それを知るために戦ってもらう」

 

そう言って虚空から薙刀を顕現させる。霊力で創り出したであろうそれは、青白く輝いていた。

一方的に勝負を仕掛けられたこいしは、どうするか迷っていた。

 

こいし「(私から希望を感じるって言われてもなぁ。私の希望、希望…)」

 

自身の希望を考え、すぐさま思いついた彼女は構えるのではなく、隣に立っている大好きな彼の手を握った。

今まで考えることの無かった自分にとっての希望。言われて考えれば、すぐに彼が思い浮かんだ。

それは、彼女にとって今、彼が一番大事であるということだった。

肉親である姉や、長く共にしていたペット達、初めて出来た地上の友すらさしおいて、一番。

閉じた心を半分開かせる程に、彼女は彼のことが好きだった。初めて会ってから今まで、いろいろなことがあった。喧嘩はしたことはないが、時々してほしくないことをする彼に少しうんざりとすることもあった。

それ以上に一緒にいることが楽しくて仕方なかった。

彼と過ごす日々は彼女にとって何よりも忘れがたい思い出だった。

その途中で開きかけた瞳、それは今日ようやく完全に開いた。信じることの出来なかった人間に希望を持つことで、ついに開かれた。

 

こいし「私の希望は、真也だよ。今の私があるのは真也のおかげだから」

 

そう言って微笑んだ彼女の笑顔は、真也が何時見たどの表情より輝いており、そして、開いた第三の目が彼に衝撃を与えた。

 

真也「こいし、それって…!?」

 

こころ「完全に開いている?」

 

いつもは語尾を伸ばして感情をこめない喋り方をする真也も、今回ばかりは驚きが隠せなかった。先ほどとは変わった状況にやや戸惑うこころ。

開いた瞳に優しく手を添え、彼女は笑みを浮かべた。

 

こいし「うん、やっと開いたみたい。あと、こころが思ってるとおり、元々は半開きだったよ」

 

思っていることを先に言われたこころは表情は変わらぬが、常に一つ頭にかかっていたお面が驚きを表しているのであろうものに変わっていた。

 

こころ「もしかして、覚り妖怪?」

 

こいし「うん。その通り。前は閉じてたんだけど、彼のおかげで開いたよ」

 

心を読んでも出来るだけ口にしないようにするこいしは、普段通りに会話しているように見える。内心、こころの心が表情以上にころころと変わっているのが見ていておもしろいと思っているが。

一方、開いた瞳を見ながら真也は自身の心について考えていた。

何時か言った、愛は心が無いと受け取れない。今日こいしが心を開いたことによって、彼女は愛を受け取れるようになった。いや、前々からお互い愛し合ってはいたが、『愛』という形ではなく、『好き』という形だった。

今の彼にとって、彼女が心を開いたことは自身の心を取り戻すまたしてもない機会であった。

しかし、彼には1つ悩みがあった。

それは、取り戻し方が分からないということ。

今まで取り戻した『感情』、『関心』、『情』はすぐにわかった。

『感情』なら、怒り、哀しみ、喜び、楽しみを感じた。

『関心』は興味の無かった人たちに持つことが出来た。

『情』はこちらに来てからお世話になった家族に敵対されたとき、今まで通り何も思うことが無かった。それが無くなった。

どれも本人にとっては分かりやすい変化があったし、取り戻したのもこいしが鍵だった。

今回の心も、鍵はこいしなのだが、分かりやすい変化が分からなかった。

 

真也「(心、心ってなんだろう)」

 

今更ながら無くしてはいるが、心というものを深く考えたことがなかった。

どこにあるのかもわからないが、誰もが持っているというそれ。真也にとっては早々に無くしているので、どういったものかわからなかった。

自分で言ったことを思い出しても、やはり分からない。

誰かを好きになれる心、誰かを悲しめる心、誰かを怒れる心、誰かを喜べる心。

それは誰かを想うためだといつか言ったような気もする。それだったらいつでも彼女のことを想っていた。

四六時中というわけではないが、何かあれば彼女を真っ先に思い浮かべ、何よりも優先した。

これが心があるという証拠なら、もしかしたら『心が無い』というのは嘘だったのかもしれない。

こちらに来て、彼女に会って、好きになって、お互いの想いが重なって、彼女を何よりも大切に想った。

それが心だというのなら、彼女に会ってからずっと心があったんじゃ?

そんな考えが頭を埋める。そして、それは喜ぶよりも先に、彼女を騙してしまったと思ってしまう。

 

真也「(でも、さとりは僕の心を読めなかったはず)」

 

心があったならば、さとりが読めたであろう。

しかし、彼女は読めないと言った。心が無いと断言した。

つまり、彼の心はやっぱり無いのだ。

だとしたら、彼女を想うこれはいったい何なのだろうか。

想いだけが形になって、しかしそれはただの言葉や一時の考えであったのか。

いや、そんなことはない。そんなはずはない。

彼にとって彼女は最も大切で唯一無二の理解者だ。眠れない夜に彼女を想ったことも、嫌なことがあって少し無茶な行動に出たのも、特別な日にした好きという証の行動も、全てその場限りだったわけじゃない。

誰よりも好きで、誰よりも想っていた。

それでも、今の彼には答えが出せそうになかった。

 

真也「(よく分かんないよ…)」

 

もし今の彼を見てこいしが心を読めたなら、彼女はどうするのだろかと、彼は考える。

気にすることはないと慰めるか。

大丈夫だよと励ますか。

それとも、一緒に考えようと同じように背負ってくれるか。

先の見えない自問自答に頭を悩ませるが、彼女の発言を思い出して彼はようやく光を見つけた。

彼女の希望は、自身。ならば、彼の希望は?

 

真也「(そっか。僕の希望も…)」

 

もしかしたらずっと考え続けていたかもしれない悩みの答えは、案外すぐに、そして少し前にヒントがあった。

彼女は希望を明確に意識して、心が開いた。だったら、同じように希望を意識してみれば、見つかるのではないか。

そう思った彼は、同じく希望を考え、やっぱり同じように答えが出た。至極簡単な答えだった。

 

真也「(僕もこいしが好き…いや、愛してるさ)」

 

外の世界で蔑まれ、親しい人達と死別し、生きる希望すら無くしかけていた。

気づかぬままこちらに来て、初めてあった彼女に興味を持った。

外の世界はみんな同じような思考で、してもいないことばっかり考え、やってもいないことの可能性まで視野に入れる。

だから、真也は恐れられた。その能力で何をするか分からないから。張り付けた笑みが不気味で、深いところを知ろうともしなかった。

こちらの世界はそんな外とは違って全てが輝いて見えた。自身の能力を受け入れてくれた新しい家族、過去を知ってもなお仲良くしてくれる友達、誰よりも自身を理解してくれる愛しい恋人。

気付いてみれば簡単で、すぐ近くにずっとあったのだ。心を取り戻すためのヒントは。

ただ別のことに夢中で、それらをそっちのけにしていただけだった。

 

真也「(うん。もう、大丈夫。今度は無くさないように大事に持っていられる)」

 

あることが確認できなくても、確かに感じる彼女からの想いを受け取る心は、誰も分からなくても誰にも否定させはしない。

今まで受け取ることの出来なかった愛を、2人はようやく受け取ることが出来た。

隣の真也の雰囲気が変わったとこいしは何となく感じた。ちらりと目を向けてみれば、今度は彼女が驚かされた。

 

こいし「えっ、真也。もしかして!?」

 

真也「だーいせーいかーい!」

 

読めた心が自身への想いでいっぱいで、すぐに顔が熟れたトマトみたいに赤くなる。

読まれた真也は何も気にした様子もなく、むしろ、もっとちゃんと自身の想いが伝わってることが分かってとても嬉しそうだった。

 

こころ「…今度はなに」

 

置いてけぼりにされているこころは、なんだかもう投げやりだった。

 

真也「あー、ごめんごめん。僕も希望を意識してみただけだよー」

 

口調もいつも通りに戻し、浮かべる笑みもまたいつもと同じだが、無くした全てを取り戻した彼は、今一番希望でいっぱいだった。

直感的にそれに気づいたこころは、今度は真也を指さす。

 

こころ「なんだか分からないけど、あなたからも希望を感じる。こいしは戦う気がなさそうだから、あなたに変わってもらうわ」

 

改めて薙刀を構えたこころに、真也は全く動じずただ手を開いて握った。

 

真也「今日は戦うような気分じゃないんだー。それに、君の希望も僕らが持ってるものとは違うと思うよー」

 

こころ「薙刀がっ!?」

 

手に持っていた薙刀が一瞬で無くなり、驚くこころ。

それを気にした様子もなく話していた真也は、突き放すだけにするのはどうかと思った。

だから、さらに話しかける。

 

真也「でもまー、君が希望を見つけるのを手伝ってあげるよー。僕らの希望を見つけてくれたお礼にねー」

 

握った手はすでにおろされ、どうすると暗に聞くような静寂。

悩む様子を見せるこころは、ころころと、お面を変えつつ、1分程でようやく答えを告げる。

 

こころ「手伝ってもらう。2人の近くにいたら何かに気づけそうだし」

 

やれやれと手を振っているが、なんだか嬉しそうに見えたのは気のせいだろう。

なんだかんだこころと仲良くなった2人だが、こころがいつもどこにいるのか知らなかった。

それを聞いてみると、命蓮寺と言われた。ぬえに会うことも出来るのでちょうどよいと想ってしまったのは2人の秘密である。

また今度話そうということでこころと別れ、真也とこいしは地底に向かう。

しかし、ここで1つ問題が発生した。

それは、こいしが無意識を操れないということ。

 

こいし「開いちゃったら操れないかなとは思ってたんだよね。まあ、なんとかなるよ」

 

第三の瞳を開き、無意識の世界を抜けたこいしはもう無意識を操れない。いつものように無意識で地底に帰ったりすると、もしかしたらまた瞳が閉じてしまいそうだと彼は思った。

その心を読んでいる彼女は苦笑いをして口を開く。

 

こいし「そのときはそのときだよ。読めなくても損はないしね。あ、でも真也の心が読めなくなるのはなぁ」

 

平気と言うわりには、ちょっとのことで頭を悩ませてしまうその様子に、真也は小さく笑みを浮かべ繋いだ手を引く。

 

真也「そのときに考えればいいよー。荷物もあるから帰ろっかー」

 

先に浮かび上がった彼に引っ張られて浮かび上がるこいし。ペースを合わせて帰る様子はどこか夫婦のようにも見えた。

 

 

   ◆

 

 

 

地底の道中で何人か知り合いに会い、こいしの第三の目のことを聞かれた。全部開いちゃったとだけ言って切り抜けたが、心の読めるようになった彼女は、聞いてきた知り合いの心が拒否を考えていないことに感謝した。

そして、地霊殿についた。

真っ先に向かったのは、さとりの部屋。ドアを開ければ窓の前の椅子に座って本を読んでいるのが見えた。

何の気もなしにお帰りと声をかけるさとりだが、その時に()()()思考に驚き、そして2人に目を向けた。

視線の先に立っていたのは、遠い昔に閉じてしまった瞳が開いている大切な妹。

そして、初めて会ったときに心が無くて読めなかった外来人の彼。

2人の変化に驚き、心を読んで何があったかを把握したさとりは、とても嬉しそうに笑顔を見せた。

 

さとり「開いてくれたのね…こいし」

 

こいし「うん。開いちゃった」

 

何もなさそうな会話だが、2人ともお互いに心を読んで考えていることに同じように考えて答えていた。

最初の一言からはそれが続いているが、さとりは途中で思考を区切ると2人に近づいた。

 

さとり「似たようなあなた達が心を開いてくれたのがとっても嬉しいわ。こいしの心を開いてくれた真也にも感謝じゃ言い表せないくらいの思いよ」

 

いつもは抱きしめられる側のさとりが、こいしを優しく抱きしめ、表情を隠してそう言った。

心の読めるこいしはさておき、読めない真也も何で隠しているのかはすぐに分かった。

取り戻したそれに暖かいものを感じながら、さとりが落ち着くのを待った。

5分ほどその状態で固まっていたさとりは、ようやく顔を上げ、こいしから離れる。

 

さとり「痛かったかしら」

 

こいし「そんなことないよ。お姉ちゃんに抱きつかれる日が来るなんてね。今日はいろんな事があり過ぎて眠れそうにないよ!」

 

軽く思い出しながら話したこいしは、未だに心がどきどきしていた。それは帰り道の道中で自身の目を見た者たちの思考を読んだこともあるが、一番は彼の暖かくて受け止めきれないほどの想いを読んだからである。

心を読むと頭の中にそれらが浮かんでくるのだが、彼の心はそれがすべてこいしのことで、しかも絶え間なくずっと流れてくる。そのままだとあまりの想いでパンクしてしまいそうなのだ。

先ほどちらりと読んだ際も、あまりの多さにしばらく頭が茫洋として周りが安定せず雲の上に立っているようだった。彼と手を繋いでいなければ、もしかすると座り込んでいたかもしれない。

それくらい彼の想いは強くて、心地の良いものだった。

そんなこいしの思考すら読んで、さとりは嬉しそうに微笑んだ。

 

さとり「ほら、そろそろ部屋に戻ったらどう?こいしも少し整理したいでしょ?」

 

見事に考えを読まれたこいしは赤面するが、事実なので何も言えず小さく頷くことしかできなかった。

その様子に笑みを浮かべる真也も、さとりの言うことに賛成だった。

 

真也「そうだねー。僕も戻るよー。こいし?戻ろっかー」

 

軽く手を引いて、思考の世界から彼女を引き戻す。

小さく頭を振って彼女はさとりに後でねと言って部屋から出た。

 

さとり「あなたが彼に希望を持って心を開いたなら、私も少しは人間に希望を持ってもいいのかしら…」

 

2人のいなくなった部屋に1人呟き、今まであった過去を振り返る。すぐに思考を変え、夜ご飯を考えながら席につき本の続きを読み始めた。

その表情はいつも以上に嬉しそうで幸せそうだった。

 

 

   ◆

 

 

真也と分かれて部屋に戻ったこいしは、ベッドに座り込んでそのまま横になった。

頭の中は相変わらず真也の心の中のことでいっぱいだ。

そもそも自身への強く、熱い想いをあんなにぶつけられたら忘れるのも難しい。

頭の中を埋めるように彼の想いが駆け巡り、身体はまたも感覚が無くなる。

ふわふわと浮かんでいるような感覚に囚われるが、それすらどうでもよくなるほど頭の中のことでいっぱいだった。

 

こいし「ある程度は予想してたんけどなぁ。こんなに強いとは…あうぅ」

 

想定していた何倍もの想いを見て、もはや一種の快楽的な何かに変わっていた。

身体を痺れさせるような麻薬にも似た、強い想いだったが、彼女にとってはなによりも安らげるベッドのようでもあった。

このまま慣れるまでじっとしていようと思い、そのまま頭の中を埋め尽くす想いに思考を委ねていった。

 

一方真也はというと、部屋に戻ってからベッドの上で座ったまま動かなかった。

ずっと取り戻した心の中で、彼女のことばかり思い出すのだ。

 

真也「うーん、嫌じゃないんだけど、これだとこいしがまた赤くなっちゃいそうだからなー」

 

ちょっと彼女のことを想っていたら顔を真っ赤にして固まってしまったので、もしかしたら考えすぎていたのかもしれない。

実はこいしが読んだのは真也の想いの半分にも満たない。すぐに目をそらしたので何とか固まる程度で収まったが、もし半分も見ていたらどうなっていたことか。

 

真也「…愛が強すぎるってねー」

 

苦笑しながらも、やっぱり頭の中は彼女のことだらけ。

今度何も考えないことでも練習しようかなと思いつくが、なんだか怒られそうな気がした。

 

真也「能力で読めなくする手もあるけど…」

 

それだとこいしが確実に怒ると分かっていた。

そしたらもう手段は1つしかない。

 

真也「こいしには諦めて心を読んでも赤面しないようにしてもらわないとねー」

 

慣れてもらうしかないと思った真也は、ベッドから立ち上がると愛しい彼女の部屋に向かった。

そのおかげというか、せいというかは不明だが、彼女の部屋から驚きと幸せが混じったような声が聞こえたとか。




ほいどーでしたかね。

真也「こいしの悲鳴が可愛かった」

書いてはいないけど、ぴゃあぁぁぁぁぁ、って感じ。

こいし「やめて!」

ふぁぁぁぁぁ、でもいいかも。

真也「いいねー」

こいし「ただでさえ真也の心読んでるんだからやめてよ」

お熱いことです。
ようやく最後の1人が出せて、2人の心も戻ってなんだか一安心してます。

次回はコラボか、番外かも。

真也「思ってるよりペースが遅くて焦ってるよねー」

こいし「いろいろと計画が間に合わないんだってねー」

そうですよ、夏休みにサボってたあの頃の自分を海にぶん投げたい。

まあ、それはおいといて。
それでは次回まで

「「「ばいばーい」」」

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