真也「最近落ちてるねー。なにがとは言わないけどさー」
こいし「だいじょーぶ?」
モ、モチベが、モチベがあがらないんです……。
真也「頑張れー」
こいし「頑張って進めてねー」
うっす……。
それでは
「「「スタート」」」
秋も深まり、時々ある寒い日は冬に近づいていることを感じる10月31日。外の世界では有名なハロウィンのある日なのだが……、
真也「やっぱり知らないよねー」
こいし「うん。外の世界のことを知ってそうなのは紫とかだけだし」
まあ、予想通りと言える結果で、何とも言えない表情になる。しかし、すぐに気を取り直すと、
真也「なら知らない人たちにイタズラしちゃおうよー」
悪い笑みを浮かべてそう言った。こいしも乗り気のようで、同じように笑みを浮かべると、こくりと頷き厨房に向かった。
◆
厨房につき、大量のクッキーを焼いた2人は、それらを適当な袋に包み、適度なサイズのバスケットを取り出して放り込んだ。
さぁ外に行こうというところで廊下にでると、ばったりさとりと出くわした。
さとり「あら?2人揃ってどこに行くの?そんなバスケットまで持って」
なんとなく眠そうに見えるが、また夜更かしして本でも読んでいたのだろうか。そんなことを考える真也に対し、こいしはにっこりと笑みを浮かべて魔法の言葉を口にする。
こいし「ふふふっ、おねーちゃん!トリックオアトリート!お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞー!」
そう言いながらさとりに近付き、不敵な笑みで後ろに回り込む。
唐突なことに目を丸くしているさとりだったが、言葉の意味を理解すると1つ頷き真也に向かって手招く。
それになにも考えずに近付いてきた彼から、正しくは彼の持っていたバスケットから1つ小包を取り出すと、後ろに回っていたこいしに渡した。
さとり「はい、これでいいんでしょ?」
こいし「そうなんだけど違うのー!」
したり顔で笑みを浮かべるさとりに、こいしは不満そうだったがノリに乗ってくれたことが嬉しいからかあまり強くは言えなかった。
真也「まーまー。そろそろ外に向かおうよー」
こいし「むー。帰ってきたら悪戯するんだから!」
さとり「その時にはちゃんと作っておくわよ」
ちょいと肩を叩かれ催促されたこいしは、捨て台詞を吐いて歩き出したが、さとりの返しに嬉しそうな悔しそうな顔をして走っていってしまった。
真也もちらりとその顔を見たので、少し笑みを浮かべて後を追いかけていった。
◆
太陽が真上にあるような時間。地底の道中にいたそれなり交友のある人たちに、説明ついでに配りやっと地上に出てきた。
どこから行こうかと話し合っていると、ちょうどよく2人に声をかけるものが現れた。
天子「あら?真也とこいしじゃない。こんな所でなにしてるの?」
話しかけてきたのは天子、その傍らには衣玖もいた。口調が違うのはそういうことかと納得しつつ、2人にここにいる経緯と例の言葉をかけてみる。
天子「うーん。さすがにお菓子は持ってないわね。桃ならあるんだけど、これまっずいのよね」
衣玖「私も持ってませんね。もう少し早く聞いていれば何かしら簡単に作ってきましたね」
2人も予想通り知らなかった様子で、やっぱりかと思いつつ少し肩を落とすが、まあ仕方ないと考え直してクッキーを渡す。
その場で味の感想を聞いてみると……、
天子「んっ、美味しいわよ。2人って以外と料理出来るのね」
以外と言われたことに問い返してみると、天子はあんまり出来ないようで、何かチャレンジするとよく失敗してしまうそうだった。
衣玖「うーん、お返し出来ないのが残念な美味しさですね」
2人から美味しいと言う感想がもらえた真也とこいしは、2人に別れを告げて最初の目的地に決めた紅魔館に向かった。
◆
到着した2人はいつも通りに寝ている美鈴のどことは言わないがとある場所にクッキーを置いて中に入っていった。
入るとすぐ咲夜が出て来た。適当に用件を伝えると、先に向こうから魔法の言葉をかけられた。
咲夜「では、トリックオアトリート」
真也「おっ、咲夜は知ってるんだねー。お菓子どうぞー」
知っていたことに少し驚きつつも、お菓子を渡し、今度は咲夜にかける。
すると、どこから持ってきたのか分からないが、チョコを渡された。板チョコに似た形状のそれは、真也に黒、こいしに白が渡された。2人は一列折って食べてみると、真也はほろ苦さを、こいしは優しい甘さを感じた。向こうの世界で言うビターチョコとホワイトチョコだろう。
2人は咲夜に感謝を伝えると、フランのいる地下室に向かった。
途中図書館を通りいつも通り本を読んでいるパチュリーと、せっせと働く小悪魔にもクッキー渡し、部屋につく。
真也「フランー。遊びに来たよー」
こいし「やっほー!」
扉を叩きその前で待っていると、扉が開いた。開いた瞬間を狙ってこいしがトリックオアトリート!と言うが早いか、向こうからも同じ言葉が返ってきた。
向こうにいたフランは少し驚いたような顔をしていたが、こいしと顔を見合わせるとぷっと吹き出し笑い始めた。
真也「2人ともやることが同じだったねー」
2人のやったことに呆気にとられていた真也も、くすくすと笑みを浮かべてそう言った。
一笑いしたところがフランが中に2人を招き入れた。
中に入りお互いに持っていたお菓子を交換し、お互いのお菓子を食べる。
フランが渡したのは赤いマカロンだ。
真也「んー、甘いねー」
こいし「マカロンって甘いんだねー」
感想は甘いしか出てこなかったが、美味しかったようで満足そうであった。ちなみに血は混ざっていなかった。
2人の渡したクッキーの感想は
フラン「あ、これ好きな味だ。2人で作ったの?」
なかなかの高評価で2人は嬉しそうだった。
真也「作ったのは2人でだけど、主にやったのは僕だよー」
その言葉にフランは驚き、こいしはなんだか恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
こいし「真也ったらほとんど1人でやっちゃうから、私強引にでもなんかやらないと1人で作っちゃいそうだったのよね」
フラン「真也恐るべし……」
厨房でこいしの入る隙もなく、1人でクッキーを作っている真也を想像し、フランは少し吹き出すがこいしは不満げだった。
こいし「なのに僕はそんなうまくないよ、って言うんだから。もー、私が料理を作ることはないかもしれないわ」
真也「いやいやー、向こうにいたときは自分で料理するしかなかったんだからー。それなりに出来ないと悲しくなっちゃうよー」
やれやれと嘆くこいしに、そんな気は毛頭無さそうな口調で真也は言い返す。2人の光景にフランはなんだか食べたクッキーが甘くなったように感じた。
お互い食べ終わったので、最後のターゲット渡しに2人はフランに別れを告げて、紅魔館から移動した。
◆
2人がふよふよと飛んでついたのは命蓮寺。門前に見知らぬ妖怪がいることに気づく。
真也「あれー?君は誰ー?」
?「あっ、こんにちはー!私は幽谷響子って言います!」
こいし「響子って言うのね、私は古明地こいし、こいしでいいよ!」
名前を名乗った響子にこいしが同じく名乗れば、真也もそれにあわせて名前を教えた。響子もやはりハロウィンを知らなかったので、軽く教えるとまだクッキーは残っていたので響子にも渡し、中に入っていった。
寺の中に入ると、目的の人物はすぐに見つかった。青色のUFOに乗っかってふよふよと浮いていた。
こいし「ぬえー!トリックオアトリート!」
ぬえ「ぬぇぇ!?な、なに?なんの呪文よそれ!」
いきなり話しかけられたぬえは、UFOからずり落ちそうになるのをなんとか保って体勢を立て直した。
その様子に笑っている真也とこいし。それに気づいたぬえは顔を赤くしつつ、再度質問した。
ぬえ「で!トリックオアトリートってなんなのよ」
真也「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞっていうことなんだー。外の世界のハロウィンのときに言う言葉だよー。さー、どうするー?」
言葉の意味を簡単に説明したところでじりじりとぬえに近づく真也。その隣でこいしも近づいてくる。その顔に悪い笑みを浮かべて。
ぬえ「えっ?ちょっと、なんでそんな怖い顔してるの?待って。そんな笑顔でこっちこないで、お菓子持ってないけど悪戯はやだよ!?」
こいし「持ってないなら悪戯だよ!」
返答を聞くや否や、こいしはぬえに飛びかかりUFOから引きずりおろす……わけではなく、そのままぬえの背中に飛び乗り、さっと脇に手を入れてわしゃわしゃとくすぐり始める。
こいし「そーれこちょこちょー」
ぬえ「わひゃっ、ちょっ、あふっ、やめっ、いひっ
、くすぐったっ、あひゃっ」
有無をいわさずくすぐりを続けるこいしの顔は、喜色満面で見ている真也まで楽しくなってしまっていた。
しかし、ここで真也も加わる。
真也「さーて、あんまし大きな声を出されると他の人に迷惑かかるからしばらく無音にするよー」
そう言ってきゅっと手を握るとぬえの声が聞こえなくなる。しかし、くすぐりながら笑っているこいしの声は聞こえている。
今は、ぬえの声だけが『無音』になっているのだ。
ぬえはそのことに気づくと、驚きも束の間くすぐったさに表情を崩し、いつ終わるかも分からないくすぐり責めに頭を悩ませることになった。
◆
くすぐり始めて10分程で、ぬえが少しぐったりし始めたので声を聞こえるようにし、くすぐりを止めた。
ぬえ「はぁ、はぁ。もう、さすがに、この長さは、酷いよ」
息も絶え絶えにそう言う彼女の額には汗が見える。しかし、2人は満足そうな笑みを浮かべて何も言わない。
ぬえ「さすがにくすぐり責めはきついよぉ」
UFOに乗っているというよりは、布団を干すようにぐったりと置かれているような状態だった。背中の羽も、似たようにぐったりとしている。
真也「それじゃあ本題だよー。クッキーあげるー」
ぐったりしているぬえを気にすることもなくクッキーを差し出す。彼女は力の入っていない手をなんとか持ち上げてクッキーを受け取った。小包を開け、クッキーを口に放りこむ。
ぬえ「あぁ、うん。普通に美味しいわ。さっきのことの後だからか余計に美味しく感じるよ、ねえ」
最後の方に皮肉満載でそう言うも、2人はにこにこと笑ったまま動じることはなかった。
命蓮寺の残りのメンバーの分をぬえに渡すと、2人は手を振って地底に帰っていった
◆
地霊殿に帰ってきた2人は、食堂のテーブルに座って自分達用に取っておいたクッキーを食べていた。
真也「うーん、もう少し焼いても良かったかもねー」
こいし「そーぉ?私はこれでもいいと思うなー」
さくさくと食べながら談笑していると、厨房からさとりが出てきた。
さとり「あら、お帰りなさい。クッキーは渡せたみたいね」
頭に三角巾をつけ、エプロンをしているさとりは手に何かを持って話しかけてきた。
2人は軽く返しつつも手に持っているものが気になって仕方なかった。
さとりもそれに気づいており、ふふっと笑うとそれをテーブルにおいた。
それにかかっていた蓋を取ると、中から何かのパイが出てきた。
真也「おぉー。カボチャパイかなー?」
こいし「そこはパンプキンパイじゃない?」
さとり「どっちにしても変わりはないわ。2人が行く前に言ったとおり、ちゃんと作ったわよ。さ、冷めないうちに食べましょう」
キレイに焼かれたパイに2人は小さくお腹が鳴った。その音に2人はくすっと笑い、いつもの格好に着替えたさとりを交えてパイを食べ始めた。
こいし「んー!おいひい!さすがおねーちゃん!」
さとり「ふふっ。ありがとう、こいし」
幸せそうな顔でパイを頬張るこいしに、さとりも幸せそうに笑っていた。その様子をパイを食べながら見ていた真也は、
真也「(僕は料理の美味しさよりも、こうやって幸せそうに食べてくれる方が嬉しいと思うんだよね。そういう意味で、僕の料理はまだまだなんだろうなー)」
思い浮かべたのは、隣に座る大好きな彼女と囲む食卓。もしかしたらそこには2人以外がいるかもしれないが、それが誰なのかなんて分からないし、考える気にもならなかった。真也にとって、今はただ幸せに彼女といれればそれでいい、そう思う彼の無い心は何かで満たされ始めていた。
◆
食べ終わるかどうかのあたりでさとりがふと呟いた。
さとり「そういえば、私まだ言ってなかったわね」
こいし「んぅ?」
なんだろうと言ったようなこいしの反応に、にやりと悪い笑みを浮かべるとその言葉を呟く。
さとり「トリックオアトリート」
こいし「んぐぅ!?」
さとり「どっちにする?お菓子?悪戯?」
呟かれた言葉に、こいしは食べていたパイを詰まらせそうになるのをなんとか回避する。しかし、さとりは無情にもどちらにするか追求してきた。
こいし「ちょ、待って、私クッキー持ってない……」
さとり「なら悪戯ね。さて、なににしましょうか」
青ざめた顔でこいしが言うと、にやりと笑いさとりはどうしようかと考え始める。そこに真也が割って入った。
真也「ならさー、こいしにくすぐりをしなよー。こいしはやってはいるけどやられてはいないんだよねー」
こいし「ちょっ、真也!?」
唐突な敵への加勢。考えていたさとりはそれがいいわねと、手を叩き、こいしはまさか裏切られるとは思ってもいなかったので驚きが隠せない。
真也「もちろん、僕もやるよー?」
さとり「ふふふ、たまにはいいかもしれないわね」
こいし「えっ、ちょ、待って?話せば分かるって。落ち着いてね?ちょっ、そんな手をわきわきしながらこっちにこないで!やだやだやだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
抵抗する間もなく、2人に連行されたこいしはこいしの部屋で誰にも聞こえぬ悲鳴と叫声をあげることになった……。
はい、どうでしたかな。
真也「楽しかったー。いろんな意味でー」
こいし「最後のでどっと疲れが……」
ご愁傷様だね。まあ、仕方ない。
真也「さとりがあんなに活き活きしてるの久しぶりにみたかもー」
こいし「前は温泉だったような」
ツヤッツヤになってそうですねぇ。
さて、次回こそはコラボを進めたい。進めたい(願望)
まあ、最近はモチベの低下でかなり怪しいんですけどね。
では次回まで
「「「ばいばーい」」」