真也「今回はシリアス展開だよー」
こいし「悲しい……」
はい、ちょっとテンション下がり気味ですが
「「「スタート」」」
真也とこいしは勇儀と戦った場所を離れると、真也の疲労が酷かったため地霊殿に向かっていた。真也はまだ動けそうには見えるがこいしの目には無理をしているのが一瞬で分かった
こいし「大丈夫?能力使いすぎた?」
真也「んー、大丈夫なんだけどー最近能力使ったときの疲れがだんだん重くなってきた気がするんだよねー。いつもみたいに無意識とかなら大丈夫なんだけどー、さっきみたいに強いものだと疲れが酷いみたいー」
空をふらふらと飛びつつ2人は地霊殿に向かう
そして
地霊殿に着いた2人は
騒然とした
さとり「……疑いたくはないけど、嘘だと思ってはいるんだけど、どうしようもないのよね……ごめんなさい、真也、こいし……」
お燐「あたいも嘘だと思いたいけど、こうも被害が多いとね……ごめんなさい、こいし様、真也」
お空「うにゅ、とりあえず捕まえないと駄目なんだってー」
先鬼「やっと帰ってきたな!この化けもんが!」
子鬼「これでおまえの帰る場所はないぞ!」
地霊殿の前に集った先鬼と子鬼の率いる妖怪集団
そして、さとりとお燐とお空だった
真也とこいしは妖怪集団よりも、さとり達がいることに驚いた
こいし「お姉ちゃんも、真也が犯人だと思ってるの?」
そうであってほしくはないが現実はそうとしか思えない光景にこいしは悲しみと嫌気が差しつつ、さとりに聞いた
さとり「……やってないとは思いたいけど……こうも出来る人が限られてしまうと、どうしようもなのよ……ごめんね、こいし……」
本当に申し訳無さそうに顔を俯かせ、どこか消え入りそうな雰囲気でさとりは言った
その様子にこいしはやるせない気持ちになり、同じ様に俯き手をぎゅっと握り小さく震え始めた
真也「(……こいしが悲しそうだから、みんなに痛い目を見てもらたい。でも、どうしてもやるのには抵抗があって出来ないよ。こいしが悲しむなら、例えさとりであっても関係ないはずなのに、なんで、なんで抵抗があるんだろ。こいしのためなら、誰にだって手加減なんてしないって決めたのに)」
隣のこいしの様子を悲しそうな目で見ながら、そう考えていた真也ははたと気づく
真也「(もしかして、これが『情』なのかな。誰かを思う気持ちはその人に何かするときも出ちゃうのかな。今までなら誰に対してもそんなことはなかったはずなのに。こんなときに取り戻さなくても良かったのに。なんで、なんで僕は……)」
気付いてしまった取り戻したものに、真也は頭を抱えてうなり始める
それに気付いたこいしは自分が悲しいことも頭の隅に置いてすぐに寄り添い心配し始める
さとり達も心配していたが、妖怪集団はそんなことを気にする様子もなく
先鬼「なんだかわからねぇが、ちょうどいい。今とらえて吐かせるぞ!」
子鬼「やっちまえ!」
先鬼と子鬼の声と共に妖怪集団は襲おうとした
が
ヤマメ「やめな!真也はなんもしてないんだから!」
キスメ「……真也はやってない……」
パルスィ「やめなさいよあんた達、みっともないわね」
妖怪集団が真也達に攻撃を仕掛けようとした矢先、2人の前にヤマメ、キスメ、パルスィが現れ立ちふさがった
妖怪集団はなぜか真也に味方するヤマメ達にどよめき始めた
先鬼「なぜだ!なぜそいつを庇う!そいつが犯人で間違いないだろう!」
子鬼「そへにお前らも被害者だろう!そんなやつ庇ってないで此方側につけよ!」
先鬼と子鬼は憤慨しヤマメ達に怒声を投げかけるが、ヤマメ達は冷めた目つきで見据え
ヤマメ「犯人だという証拠はあるのかい?」
キスメ「……被害者だからって何でもして良い訳じゃない……」
パルスィ「多勢に無勢で1人を責めて、あんた達、それでいいの?それで本当に解決すると思ってるの?」
淡々と、それでいて確実に妖怪集団を落ち着かせるように話した
先鬼と子鬼以外の妖怪達は、今まで先鬼と子鬼の指示で動いていたようなものなのでああも言われると何も言えないらしく黙り込む者しかいなかった
しかし、先鬼と子鬼は諦めてないらしく
先鬼「証拠なら、そいつの能力があるだろ!それが確固たる証拠になる!」
子鬼「そいつは強いんだから人数でどうにかするしかないだろ!それで解決しないなら、また他の奴を捕まえて吐かせればいい!」
なおも真也を犯人だと疑うように言った
その言葉にヤマメ達はまた反論しようとしたが、それをする前にあがった声で止まる
こいし「もういやっ!!!!」
未だうなっている真也に寄り添うこいしが、ついに耐えきれなくなったのか目から滴を流しながら叫んだ
そのままこいしは滴が溢れ出るのも気にせず叫ぶ
こいし「もうやだよっ!みんなして能力で決めつけて!そんなに能力で決めつけるんなら、私の能力でも出来るでしょ!なんで……なんで真也を……真也だけを犯人だなんて決めつけるの!」
辺りに自分の最も好きな者を差別されたこいしの悲痛な叫びが木霊する
叫びはやがて静粛を生み出し、場を覆う
静かになった場にこいしの嗚咽が小さく響く
それは、こいしと真也の仲を知るものにずしりとのし掛かるようにも思えた
さとりとお燐は特に2人のことを考えていたこともあり、苦虫を噛み潰したような表情で少し俯く
2人の仲を知らない(忘れてる)お空やヤマメ、キスメとパルスィにも、それは同じだった
先鬼と子鬼は少し顔を苦々しくしていたが、それでも真也を犯人だと思っていることには変わりないようで
先鬼「……悪いが、それでも俺達にはそいつ以外には犯人はいないと思う」
子鬼「……悪いとは、思ってる」
こいし「悪いと思ってるなら!それだったら他の犯人を捜してよ!1つのことで決めつけないでよ!」
2人が申し訳なさそうに言ったのを、こいしが真也に縋りながら叫び咎めた
こいしの半分くらいまで開いていた第三の目は、少し、また少しと閉じられていく
そして
完全に閉じられたとき
その場の空気が変わった
さとり「……っ!なに、これ……」
お燐「これはいったい……」
お空「な、なんだか怖いよ」
ヤマメ「何が起きてるんだい……」
キスメ「……怖い……」
パルスィ「これは……妬ましいなんて言ってられないわね……」
先鬼「な……なんなんだ……」
子鬼「もしや、そいつなのか……?」
急に変わった場の空気にどよめく人々
しかしその中でこいしだけは、気付いた
こいし「(あ、真也が……真也が怒ってる……だめ……怒りに任せて行動したらまた敵が増えちゃうよ……お願い……落ち着いて……!)」
今までうなっていた真也が、嘘のように静かになっていたこと、いつのまにか胸元のペンダントを弄っていたこと、そして、明らかな怒気と、何とか抑えようとしている殺意に
このままだとまた敵を作ってしまうと思ったこいしは、ペンダントを弄っている手に自分の手を重ね、なんとか抑えようとしていた
しかし、今まで動かなかった真也が唐突に動き
真也「ごめんね、こいし。もう、駄目だよ」
こいしの耳元に顔を近づけ、それだけ言うとこいしの手を握りながら、前に出た
そして
真也「もう許さないよ?例え僕を捕まえて違ったらまた他の人に同じ目に逢わせようとすること、なにより、こいしを泣かせたこと、絶対に後悔させるからね?アハハハハハハハハハハハハハハッ」
その声は冷たく、しかし、怒りや悲しみ、それを上回る憎悪、それらが混ざり合って聞く者を震え上がらせるようだった
さらに笑い声をあげているはずなのに、顔は笑っているはずなのに、目が全く笑っておらず、光がないことはこの先の未来が良いものではないことを見た者に予感させる
ただならぬ雰囲気の真也に、このままでは良くないと思ったさとり達や妖怪集団はなんとか取り押さえようとスペルを用意する
スペルを取り出したことを確認した真也もポケットからどことなく黒いスペルを取り出し、宣誓しようとした
?「そこまでよ」
それは、唐突に入った乱入者の声で遮られた
はい、乱入者登場
真也「あー、あいつかー」
こいし「誰?」
次回は乱入者の話です
では次回まで
「「「ばいばーい」」」