万に一でも続きを楽しみにしてくださっている方のために、なるべく早く投稿したいと
思っていたのですが…
難しい!阿良々木さんをシリアスムードに持っていくのがとても難しいですね!
二か月ぶりくらいにこんなに頭使った気がします。
うんうん唸りながら書きましたので色々と矛盾しているところがあるとは思いますが
「やれやれ、困った新人だな☆」という感じのイケメン顔で読んでくださると
心がぴょんぴょんします!
それでは!「ご注文は吸血鬼ですか?」をお楽しみください!(違う)
018
「こちらが客室となっております。」
美鈴さんと別れた後、もう2分ほど歩いたところで僕らはようやく客室へとたどり着いた。
ちなみに忍は疲労が限界を迎えてしまったらしく、現在僕の肩に頭を預け、眠っている。
「ありがとうございます、咲夜さん。」
「それでは私はディナーの支度をして参りますので、何か御用がございましたら屋敷の妖精メイドたちになんなりとお申し付け下さい。」
「わかりました。」
「それでは、またディナーができましたら参りますね。」
「あ、咲夜さん。」
「はい、なんでしょう?」
「忍はこのとおり疲れ切って寝てるんですが実の所僕の方はそこまで疲れているってわけでもないんですよ。」
「あら、そうだったんですか。」
「はい、だから泊めてもらえるせめてものお礼として何かお手伝いさせてもらえないかなぁ、と。」
「そんな、暦さんはお客様なんですから、お部屋でお休みになっていてください。」
「でも…」
「ダメです。」
「はい…」
正直部屋の中でじっとしてるのも暇なんだよなぁ。
「あ、じゃあこの中探検させてもらってもいいですか?」
「探検、ですか?」
「ええ、さっきレミィが言ってたパチェさん?でしたっけ、その人にも挨拶したいですし。」
「そうですか、まぁそれぐらいでしたら大丈夫だと思います。お嬢様方地下の大図書館にいらっしゃると思いますので、迷子になったりしないでくださいね、ここは広いですから。」
パチリ、と咲夜さんがウインクするのでついドキッとしてしまう。
「あ、ところでレミィの妹さんにも挨拶したいんですけど、どこにいますかね。」
「!?」
「え?あの、咲夜さん?」
「あの、暦さんお嬢様の妹様とは…」
「え、あれ?いないですか?おっかしいなぁ、レミィの様子からして絶対二人姉妹の姉だと思ったんだけどなぁ…」
「………確かに、お嬢様には妹様がいらっしゃいます。」
「あ、やっぱりそうなんですね。」
「ですが……」
「え?」
「妹様にお会いすることは、お嬢様以外許可されておりません。」
「な、なんでなんです?」
「もうしわけありません。これ以上は暦さんでも教えることはできません。」
「でも……教えることはできませんが……1つだけ。妹様を、救ってあげて下さい。」
そう言って、咲夜さんは一瞬で姿を消した。
019
「レミィ、君の妹に会いたい。」
「…余計なことを言ったのは咲夜かしら、それともハートアンダーブレード?」
「僕の勝手な妄想だよ。君の言動から二人姉妹の姉だと推理した。」
「そう。でも無理よ、あの子を部屋から解放するわけにはいかない。日常を保つためにはね。」
「…僕は、女の子を助けるためならなんだってする男だ。レミィ、君の妹がどんな子なんかなんて関係ない。どんな子だって、僕は笑顔にしてみせる。」
たとえ僕がその笑顔を見ることができなくたっていい。『この世に生きている』ということを、後悔なんてしてほしくない。
「その男の人が、阿良々木暦さんかしら?レミィ。」
本棚の影から本を抱えた少女が姿を現す。
「どうも、あなたがパチュリーさんですか?」
「ええ、パチュリー・ノーレッジ。動かない大図書館とか、なんだか不名誉な名で呼ばれたりもするわね。ま、好きに呼んでちょうだい」
「僕は阿良々木暦。女の子の味方だよ。」
「あらそう、すてきね。…ところでレミィ?揉めていたようだけどどうしたのかしら。」
「別になにも、話ももう終わったしね。」
「終わってなんかない。レミィ、なぜそんなに妹のことを隠そうとするんだ。君たち姉妹に何があったんだよ。」
「隠すというか、封印かしらね。あの子は危険すぎるのよ。」
「封印…?」
「パチェ、あなたどういうつもり?」
「どういうつもりもなにもないわ。私の聖域で吸血鬼二人が物騒な妖気を出さないで欲しかっただけ。あなた達、自身の影響力をもっと自覚した方がいいわね。」
「レミィ、封印って、どういうことなんだ。君は自分の妹に、何をしているんだ。」
「はぁ、いいわ。あの子に会わせてあげる。条件があるけどね。」
「いいよ、なんだって言ってくれ。」
「いさぎがいいわね。やはりあなたは何かが違う。あのキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードを打ち負かした力。見せてもらうわ。パチェ、この前言ってたあれをお願い。」
「図書館で暴れられても困るし、しょうがないわね。」
そういってパチュリーは持っていた本に手を添え、術式を唱える。
「固有結界を展開。地形イメージを阿良々木暦に委任。…構成完了。『特殊戦闘フィールド』解放。」
図書館が光に包まれた次の瞬間、目の前には懐かしの学び舎、私立 直江津高校のグラウンドが広がっていた。
020
「…これは、一体?」
「へぇ、不思議なところね、ここがあなたの思い出深い場所、ということなのね。」
「え?」
「ここは私が開発した『特殊戦闘フィールド形勢結界』。この中ならどんなに激しい戦闘を行っても現実世界に影響しないから、思う存分やって頂戴。私はこの建物の中でも見てくるわ。」
「…つまりは、レミィに勝てたら僕は妹さんに会わせてもらえるってことでいいのかな。」
「ええ、それでいいわ。そのかわり私が勝ったら、二度とこの事は口に出さないこと。」
「わかった。」
「それじゃあ…あら、曇っていて月が見えないわね、つまらないわ。うーん、そうね…」
「僕はもう、自分の選んだ未来に後悔なんてしない。僕は最善ではなくとも、最良の選択を選ぶんだ。」
『今夜は月が出てないけれど、あなたは本気で殺すわね。』
『したたかに、高らかに、愚かに、それでも僕は生きてやる。』
021
三人が結界に消えるほんの数秒前、暗い地下の部屋で、幼く、恐ろしい少女が目を覚ます。
「この妖気、お姉様のと…誰だろう。殺気がピリピリ伝わってくる。いいなぁ、私も遊びたい。」
「外、出ちゃおうかなぁ。」
少女は小さな手のひらを扉に向け、握りしめる。