幻物語   作:K66提督

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『今月中と言ったな、あれは今日だ!!』

えー、お久しぶりでございます。K66提督でございます。

前回の投稿から約二か月も経っていたんですね。
ほとんど失踪してるじゃねぇか。
もうホントすいません。
人理修複とか塗りバトルとか色々忙しくて……

強めに罵っていただけると幸い……じゃなくて、
今回も楽しんでいただけると幸いです。

それでは『幻物語 参拾』、どうぞ!


幻物語 参拾

119

 

 

パルスィ(さん付けしたら睨まれた)に連れられて到着したのは、すこしくたびれた居酒屋だった。

 

「ここよ、勇儀の事に関してはこの中で説明するわ。霊夢達も中で待ってる」

 

パルスィは敵のいない事を確認してから引き戸を開けた

店の周囲は静寂に包まれているが、用心するのに越したことはないだろう。

 

「お、来たね。暦」

 

「遅い!!一体どこで油売ってたのよ!!」

 

開口一番、顔を真っ赤にして魔理沙に詰め寄る霊夢

 

「わ、悪い悪い……って酒臭っ!お前飲んでたのか!?」

 

「萃香に飲まされた」

 

「私が飲ませた」

 

何故飲ませたし。

何故ドヤ顔だし。

 

「……ま、この状況で居酒屋で飲んでる事を妬みはすれ、咎める理由なんてないけれど。

貴女達、地底の異変を解決しに来たのでしょう?だったらいい加減に作戦会議でもなんでも始めなさいな。いつも通りパッと倒してパッと会心なり縦に割るなりして、何も無かったように意味のない日常を送らせて頂戴」

 

「へいへい。相変わらずの性格だなぁ、パルスィ」

 

と、萃香。

 

「あんたもそのマイペースな所は平常運転じゃない」

 

「いつも通りじゃないのはアイツだけか……」

 

「そうね……全く、鬼の四天王の名が泣いてるわ……」

 

「えっと……その人がさっき言ってた星熊勇儀って人?」

 

「人、っていうか鬼ね。鬼の四天王の一人、怪力乱神こと星熊勇儀。

正直前回の事があるから、今回は生死に関係なく制裁してやろうと思ってたんだけど

アイツが向こう側にいるとなると少しは考えて行動しないとまた逃げられかねないし……」

 

「それで、まずは暦達と合流しようってなったわけだ」

 

「最悪、勇儀か奴のどちらかを暦達に任せて各個撃破になるかもと思ってたけど、

咲夜と美鈴が来てくれたのは嬉しい誤算だわ……って何よアンタ達。なんか口数少なくない?」

 

「霊夢達が気楽すぎるのよ……鬼の四天王って、要するに萃香さんと同じぐらいの強さ

の方が敵戦力にいるってことでしょう?それってかなり深刻な事態なんじゃないの?」

 

「まぁ、単純な『力』だけなら完全に私より上だけどねぇ」

 

萃香のとぼけたような爆弾発言に、僕や咲夜さんの頬に冷や汗が伝う。

 

「そ、そんなのどうやって戦えばいいんだよ。僕達でまとめてかかれば何とかなるのか?」

 

「心配しなくても私達がなんとかするわよ。魔理沙と萃香と私、三人でなら抑え込むことくらいならできるだろうから、あの自称人間はアンタ達に任せるわ」

 

「しょうがない。今回の異変は暦に譲ってやるよ、感謝しろよなっ!」

 

「うーん……まぁ三人いればなんとかなるかなぁ……なるかなぁ?」

 

「あ、それでしたら私も残ります。いいですよね、咲夜さん」

 

「え?あ、そうね。そっちの方がいいかも」

 

「美鈴が?そりゃ近接格闘最強クラスの貴女がいてくれるのは心強いけど……でもいいの?そっちでも重要な戦力じゃないの?」

 

「私の能力は『気を使う程度の能力』、気付けは得意分野なんです。なので上手くいけば星熊さんを正気に戻して暦さん達の所に駆けつけることもできるかもしれません」

 

「なるほどねぇ、うん。じゃあお願いするわ。戦力は大きいのに越したことないからね」

 

「それじゃあ勇儀さんの所には霊夢、魔理沙、萃香、美鈴さん。奴の所には僕、忍、咲夜さんが向かうって事でいいな?」

 

「「「異議なし!」」」

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

避難しにきた子だろうか、可愛らしい女の子がおずおずと話しかけてきた。

 

「古明地さとりと言います……あの、あなたは先ほどの男とは別の方……なんですよね?」

 

「あー、えーっと……」

 

同一人物ではあるんだけど違うっていうか……うーん、どう説明したものか。

 

「なるほど、パラレルワールドの同一人物……」

 

「そうそう……って、え?」

 

「そいつはさとり妖怪、心を読む妖怪よ」

 

霊夢が横に来て教えてくれる。

 

「なるほど」

 

「実はあの男に家族の一人の『霊烏路空』という子が捕まってしまったんです。さっきまで一緒にいたはずの妹もどこかに行ってしまって……きっとあの子を助けに行ったんだと思います。

阿良々木さん、会っていきなりこんなお願い失礼だとは思いますが…………?

え?あ、阿良々木さん?」

 

「ん?」

 

「あなたって、お人良しって言われたことないですか?」

 

「よく言われる。人じゃないのにね」

 

 

120

 

 

「…………いた、あそこだ。」

 

パルスィに案内された地霊殿のさらに奥、曰く旧灼熱地獄のど真ん中に奴は陣取っていた。

 

「『陣取る』の文字通り、何やら魔方陣のようなものが展開されておる……どうやらギリギリ手遅れになる前に辿り着けたようじゃな」

 

「てことは奴の隣にいるのが鬼人正邪ですか?それとも……」

 

「それともの方ですね、あれが霊烏路空さんです。正邪は……見当たりませんね……」

 

「人質か……」

 

あれが阿良々木暦のあり得たかもしれない未来の一つだと思うとゾッとする。

 

「お前様は『ああ』はならぬよ、絶対にな。儂が保証してやる。」

 

「……サンキュー」

 

忍の何気なさそうな言葉に、何気ない態度でそんな事を言ってくれる事実に

温かくなった心で最終決戦に覚悟を決め、刀に手を添える。

 

「じゃあ、作戦通りに。行こう!」

 

僕の合図で三人同時に飛び出す。

 

『咲夜の世界』――……

 

『そして時は動き出す』

 

「うぅぉぉおおおおおお!!!」

 

飛び出すと同時、咲夜さんが時間を止めて、奴から刀を奪いとる。

そうして丸腰になった所に僕が一撃で!!

 

『ドスッ!!』

 

「やぁあああああ!!!」

 

心臓に突き刺した刀を力に任せて振りぬく。

 

『ドサッ』

 

「え?お兄さん誰?あ、あれ?」

 

霊烏路さんが突然現れた同じ顔に戸惑ったように、僕と足元に横たわる死体を交互に見る。

 

「早く逃げて。まだここは危険だ」

 

戸惑う霊烏路さんに咲夜が寄り添い、忍が少し遅れてこちらに来る。

 

「おい、お前様。この死体――」

 

「わかってる、『血が出ない死体』なんてあるわけがない。咲夜さん、刀は……」

 

「あ、こちらに」

 

咲夜さんが差し出した刀を忍が受け取る。

 

「ふむ……」

 

「どうだ、忍」

 

「残念なことに予想通り、じゃな。こいつは『心渡』じゃ」

 

「ってことは……」

 

「こ、暦さん!!し、死体が!」

 

「!!」

 

咲夜さんの慌てた声にそちらを振り向くと、死体が消えていた

 

「やっぱ、そう簡単には行かないよな……なぁ、人間!」

 

「ん……何だよ、いつもみたいに『』で登場させろよ、化物」

 

「いい加減お前に遊ばれるのも嫌気が指してきたからな。すぐに決着を付けさせてもらうぞ」

 

「鬼人正邪、アナタももう年貢の納め時よ。命が欲しかったら投降しなさい」

 

「おいおいおい、私は天邪鬼だぜ?そんな風に命令されて『はいわかりました』なんて言うわけねぇだろ」

 

「なるほどの。心渡を手放した時点で想像はついたがやはり、か」

 

「――――。――、―――――――!!!!」

 

「中身はまだ未完成か。しかしまぁ、主様だけでなく儂まで出てくるとはのぅ……二度目とはいえ慣れんわい」

 

「じゃあ元キスショット……忍ちゃんだっけ?心渡を返してくれよ。流石にこの男相手に夢渡だけじゃ辛いからさ」

 

「元キスショット、と呼べ。貴様だけはな。貴様のお仲間のセリフを借りるわけじゃないが

それで『はいどうぞ』と渡すと思っているのか?」

 

「あー、じゃあいいや。もう返してもらったし。」

 

「なっ!?」

 

驚きの声をあげたのは僕だったか忍だったか。

いつの間にか奴の手には心渡、夢渡が握られていた。

 

「それじゃあお見せしよう、本土初公開、『隠渡』の作り方だ」

 

「かくしわたり……?」

 

「『斬る』力と『生かす』力。二つを矛盾させて両立させる。俺の専門家としての真骨頂は

『辻褄合わせ』でさ。都合よく、手順よく、思い通りに。それが俺の専門技術だ」

 

そう言い終わるころには奴の手に『隠渡』が握られていた。

 

「じゃあ始めようぜ。お、3対3で丁度いいな」

 

化物と人間、元伝説と未完の伝説、メイドと天邪鬼が対峙する。

 

「「死ね!!阿良々木暦!!」」

 

お互いに持ちうる最大の憎悪をもって、二人の男は雄たけびをあげた

 

 

121 

 

 

「おら、くらえ!!」

 

『神宝・ブリリアントドラゴンバレッタ』!

 

『扇符・愚か者には相応なる修正を』

 

「ごっこ遊びなんてする気はないぞ!」

 

鞘から『宿木』を抜き、『隠渡』と刃をかち合わせてしのぎを削り合う。

 

「うおっ、物騒な奴だなぁ、殺す気満々かよ」

 

「何を今更!!」

 

『怪異・おもし蟹』!

 

「効くわけねぇだろ、こんなの」

 

『ドスッ』

 

おもし蟹の重力増加をものともせず、涼しい顔で刀を蟹に突き刺す。

 

「それぐらい知ってる!」

 

出し惜しみは無しだっ……!!

 

『怪異譚・障り猫』

 

「『エナジードレイン!』」

 

「づっっ……ああ˝あ˝あ˝あ˝!!」

 

流石に堪えたのか、僕の手を振り払いスペルカードを発動させる。

 

『召喚・黒イ嫌ワレ者』、『幻朧月睨』!!

 

「狂っちまえぇ!!」

 

「『ワンパターンだな!させるかよ!』」

 

『神童・机上の数論』、『怪異・狐火』!

 

空間把握、未来予想、幻覚を無効化!

 

「クソがぁ!!」

 

小細工は通用しないと踏んだのか、刀での打ち合いに切り替わる。

 

「『くッッ……!』」

 

怪異退治でずっと刀を使ってきたコイツ相手じゃ流石に不利か……!?

 

「死ね!死んじまえよ主人公!!!」

 

「猫!交代だ!」

 

『怪異譚・レイニーデビル』!!

 

「『オラァァ!!』」

 

『ガキィイイイン!!』

 

吸血鬼と悪魔の全力で振り払った刀は相手の刀と強く打ち合い、甲高い音をあげる。

瞬間お互いに後ろに下がり、距離をとる。

 

「ころころころころと……バラエティ豊かなこって、羨ましいねぇ!特撮ヒーローみたいだな!」

 

「日曜朝にこんな戦い放送できるかよ。子供は確実に泣くぞ」

 

「はっはー、違いない」

 

「……おい人間、いや、阿良々木暦。どうしてお前はそんな風になっちまったんだよ。忍野も、羽川も、戦場ヶ原とも出会っている僕が!どうしてお前みたいになっちまうんだよ!」

 

「っ!……はっ、おいおい、随分と残酷なこと聞いてくれるな、阿良々木暦。逆に俺も教えてほしいね、どうやったらそんな幸せそうになれるのかをさ」

 

「幸せ……?」

 

「そうだろうがよ、裏切ったキスショットと和解して、それなりに愉快な人生を送って、一緒に生きて来た皆が死んだら今度はこっちの世界でまた愉快な生活を送っている。そんなの理不尽だろ。

なんでお前だけ笑っている。なんでお前だけ慕われる。なんでお前だけ!!!」

 

「…………」

 

「だから俺はやり直す。あの惨劇を、春休みをやり直すんだ。なぁ、頼むよ正義の味方。

自分を助けると思って、見逃してくれよ。もういいだろ?もう満足しただろ。俺を、お前にさせてくれよ」

 

男は笑った。初めて見た時の不気味な笑いではなく、自らを嘲るような悲しい顔で笑った。

 

『日符・』

 

「っ!しまっ……!?」

 

『吸血殺しの黒い太陽』

 

その手に生み出されたのは、吸血鬼の最大の弱点。

闇を浄化する聖なる光。

『太陽』そのものだった。

 

 

122

 

 

自らとの闘いを繰り広げる暦さんと距離をとり、私と空さん、そして鬼人正邪は地霊殿の前まで移動してきた。

 

「ここまで来れば暦さんの邪魔にはならないでしょう……さて」

 

「おい、いいのかー?自分同士の戦いなんてお互いに死んじまうんじゃねーの?

ほら、戻って加勢してやろうぜぇ」

 

「……奇襲の作戦が失敗した場合は私があなたの担当なのよ。それに暦さんがあんな胡散臭い男に負けるわけないじゃない」

 

本当は忍さんも暦さんと一緒に戦うはずなのだが。

むしろあっちの方が心配だ、

あんな殺意の塊を一人で相手にするのは危険すぎる……

 

「霊烏路さん、街の酒屋であなたの主人と橋姫が待ってるわ。ここは私に任せてあなたは…………え?」

 

「お、始まったかな?」

 

視界の端に突然現れた途轍もない光に、つい眼を奪われる。

 

「何よ……あれ……」

 

パチュリー様のロイヤルフレアに似てもいるが、光の色がおかしい。

『黒い光』、そう呼ぶのがふさわしい禍々しい太陽が先ほどまで私達がいた場所で

煌々と燃え盛っていた。

 

「って、太陽!!?」

 

悪い予感がして、今度は空さんの方に振り替える。

 

「八咫烏の力、盗られちゃった……神様に悪いことには使っちゃいけないって言われたのに……」

 

八咫烏……!太陽の化身の力……!?

 

「対吸血鬼用最終兵器。思ってたより早い発動だったなぁ、意外と苦戦したのかな?」

 

「暦さん!!」

 

「おっと」

 

すぐにでも駆けつけようとする私に正邪が通せんぼうする。

 

「貴様……!そこをどけ!!さもなくば殺す!!」

 

「全く。わかってねぇなぁ、だぁーかぁーらぁー、天邪鬼にそんな事言っても逆効果だって」

 

『逆符・天邪鬼の夢』

 

「上下左右、裏表。全てが逆さまなこの世界、果たして攻略できるかな?」

 

 


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