まだまだ寒い季節が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
私はなんたらエンザさんのせいでくたばっておりました。
ということで投稿めちゃくちゃに空いてしまいまして申し訳ございませんでしたぁぁ!!!
もうなんか恒例になるつつあるこの謝罪なのですが、今回はホントに長いですね……
前回から一ヶ月以上……ドン引きです。
で、でも失踪はしませんので今後も気長に待っていて頂ければと思います!
それではお待たせ致しました『幻物語 弐拾ㇳ陸』!お楽しみください!
103
「私の能力は『時間を操る程度の能力』。
パチュリー様の時間を停止させる事も難しくはありません。」
「……まぁ、あなたの能力は姫様と非常に似通っているし、同じ措置が
とれなくもないけど……」
「けど、何でしょう。」
「その能力を使った場合、あなたはどうなるのかしら。」
「…………」
「姫様の能力でもできるのは時の流れを一瞬と永遠の間で操るだけなんだから
時の流れを『止める』のには相当の負荷がかかるはず。それが長い間続くとなったら、
最悪の場合あなたまで死ぬことになるわよ。」
「構いません。その位の覚悟、この能力を使うと決めたときに済ませていますので。」
「……構うに、決まっているでしょう……相変わらず、こういう時に頭が固いわねぇ、咲夜は。」
先ほどまで意識を失っていた少女が息を荒げながら、咲夜を窘める。
「パ、パチュリー様!!?」
「驚いた。まだ意識が保てるなんて……今のあなた、心臓が無いようなものよ?」
「はっ……、紅魔館の魔女が、心臓がない如きでくたばるわけないでしょ……
魔女としての核が抜かれたとはいえ……知識まで失ったわけじゃないんだから、
魔法使いの初歩、空気中のマナで多少回復するくらいの事はできるわよ……げほっげほっ、
それに幸いここには治癒を得意とする精霊達が大勢いるみたいだし?」
「……全く、回復したと言っても本当に多少ね。魂と肉体の老化も早まりつつあるし、
まともに動くこともできないでしょう?」
「別に、元々そこまで動くこともなかったし、問題ないわ。」
「軽口を叩ける余裕があるのはいいことだけど、身体保存の代償が無くなったわけじゃないから状況にあまり違いはない。私としてはやっぱりこのままここに残ってほしいわけなんだけど、どうするのかしら?」
「パチュリー様、私……」
咲夜が能力の補助魔道具である懐中時計を取り出し、パチュリーの説得を試みる。
「ダメよ。」
が、パチュリーはこれを良しとする気はこれっぽちもなかった。
「わ、私なら大丈夫です!!パチュリー様もご存じのとおり、私がこの能力を手に入れた時
から覚悟は出来ています!!」
「はぁ……、まったく。咲夜、気持ちはとても嬉しいけどあなたの主人は私じゃなくて
すぐそこでハラハラしながら盗み聞きしてる小さな吸血鬼でしょ?ならそっちの気持ちも
考えてやるべきじゃないかしら?」
「……え?」
パチュリーが苦笑いしながら部屋の扉の方を指差すと、咲夜と永琳の目線がそちらへ移動する。
「う……気づいてたなら早く言いなさいよパチェ……コソコソしてたのが馬鹿みたいじゃない。」
「て~ゐ~…………?」
『ギクッ』
永琳の声にレミリアの後ろに隠れていた兎が飛び上がる。
「私が呼ぶまで治療室には誰も来させないように言っておいたわよねぇ……?」
「あ!そ、そういえば鈴仙に手伝えって言われてたうさー!!」
「ちょっ、こらっ、待ちなさい!!てゐ!!!」
バタバタバタバタ……と永琳、てゐが治療室からかけ出ていくのと入れ替わりに
閉め切っていた部屋の中に新鮮な空気が流れ込む。
「それで?どこから聞いてたのかしらレミィ?」
「あー、正直結構最初の方から……?」
「正確には咲夜さんが死ぬ危険があるってところからです。」
レミィが間が悪そうに頭をかく後ろからぞろぞろと僕やフラン達が治療室内に
入る。
「こ、暦さん、それに皆さんまで……」
「一体どういう事か、説明してください咲夜さん。」
104
~ 少女説明中… ~
「……というのが現在の状況です。」
「咲夜アンタねぇ(むぐっ)……!?」
「あの、咲夜さん。一つ質問が。」
イライラが頂点に近く、語気の荒いレミリアの口を押えて話題をずらす。
「は、はい。何でしょう?」
「パチュリーにも聞きたいんだけど、咲夜さんの話だと今パチュリーは魔法とかが全く使えないんじゃないのか?ごく普通の女の子と変わりないぐらいになっちゃってるんだよな?」
「(むぐ……)プハッ、でもパチェの身体に魔力を感じるわよ。ただちょっと顔が青白いくらいで……あれ、それはいつもか」
僕の腕から抜け出したレミィがぷにぷにむきゅむきゅとパチュリーの顔を撫でまわす。
「うお、何このしっとりもちもちの手触り。パチェ、アンタこれで一儲けできるんじゃない?」
「お姉様それ私にもやらせて!」
ぷにぷにぷに。
むきゅむきゅむきゅ。
「ちょっ、レミィ、やめなひゃ、やめなさいよ、もう!」
吸血鬼姉妹に弄ばれるが、パチュリーも負けじと抵抗する。
「ったく、……別に賢者の石を失ったからといって何も完全に魔法が使えなくなるわけじゃないわ。……というかさっきから話聞いてたんじゃなかったの?今の私は魔女ではないにしても魔法使い程度の事はできる。自分でマナを生み出して魔法を発動させることはできないけど精霊とか植物のマナを借りれば小規模なくらいは使えるわ。」
「「??」」
僕を含め、室内の多半数が目を点にし、首を傾げる。
「まぁとにかく私は大丈夫だから。今日のところは大人しく屋敷に帰って……」
「いいわきゃねーだろ。」
部屋の一つだけある閉ざされた大きな木と和紙でできた窓を魔理沙が蹴破って入ってきた。
「魔理沙それ不法侵入と器物破損……」
「え?知らねぇよ、なんだそれ?」
幻想郷にはその辺の法律がないのか……?
「んなわけないでしょ。魔理沙が知らない、というか気にしてないだけ。
それで?何しに来たの魔理沙。ここには本はないわよ?」
「あなたを心配してお見舞いにきたのよ、パチュリー。思ったより元気そうじゃない。
安心したわ。」
魔理沙が窓から強引に入ってきたのに対し、金髪の綺麗なお姉さんが部屋の入口から行儀よく入ってきた。
「げ……アリス……」
「『げ』とはまた随分なご挨拶ね、友達が大怪我して運ばれたから心配きて来てあげたっていうのに」
「えぇ~……」
「あ、あの……あなたは……」
「アリス・マーガトロイドよ。アリスでいいわ。阿良々木暦さん。あなた達の漫才、とても面白かったわ。……って、あら?他の二人は神社でお留守番かしら?」
「あ、いや、二人は今……」
あいつらは今僕の影の中でくつろいでいる。
ヤツに見事に騙された忍はかなりの屈辱を受けたようだ。
とういうかサラッと八九寺まで影の中に入らないでほしい。
流石神様、滅茶苦茶である。
「気を付けなさい、暦。ソイツ、レズだから。」
パチュリーがジトッとアリスさんを睨み付けながらとんでもない事を口にする。
「えっ、」
「だっ、だから違うって言ってるでしょう!!?私は可愛い女の子とお友達に(あわよくばそれ以上の関係に)なりたいだけだってば!そ、そんなふしだらな事なんて考えた事も無いというか考えただけで……//////」
「既にその言動がおかしい事を自覚しなさいよ!私にまで手を出そうとした事、未だにトラウマなんだかr、グハァ!!」
「パ、パチュリー様ぁぁ!!?」
その後、興奮状態のアリスさんが鼻血を噴き出したり、血でドレスを汚されたレミィが半ギレで泣き出したりと、軽いパニックが巻き起こった。
105
「……ごほん、それじゃあ話を戻すぞ……おい、パチュリー。」
「げほっ、おえっ、な、何よ……」
「お前、老衰延滞の魔法使うので限界だな?」
「……な、何の事かしら?さっき皆にも説明したけど精霊のマナを借りれば……」
「ダウト」
「……はぁ。はいはい、降参。あなたの言う通りよ魔理沙。」
「なっ、どういう事よパチェ!!」
「今魔理沙の言った『老衰延滞魔法』っていうのは人間のみじゃなく命を持つもの全ての
生を保つことのできるっていう……まぁ、魔法使いが魔女、魔導士になるのに必須の魔法ね。
それでこの魔法が中々燃費の悪い魔法でね……自分のマナをそのまま使える魔女なら
永久機関が出来上がるんだけど、今の状態じゃ魔力切れの方が早いから結局長くは持たないってわけなのよ」
「「……??」」
先ほどと同じメンバーが同じように首を傾げる。
「と、とにかくヤバイってことなのよね!!?大変じゃない!!どうするのよパチェ!!」
「どうもこうもねぇ……」
「ようは賢者の石を取り戻せれば何とかなるんだよな?」
「そういう事。……咲夜もうまくいくかどうかも分からない事に命を使うくらいなら
私の分まであのド下種野郎の身体中ナイフまみれにしてきて頂戴な。」
「……はい!」
「ん、じゃあ結局はやっぱりあの人間と再戦って事なのね。……上等じゃない、今度こそヤツを血祭りにあげてやるわ。」
「その話……乗ったぁああああああ!!」
ザパァァァァ!!と目を真っ赤に腫らせた忍が影から勢いよく飛び出して来た。
……やっぱり影って液体なのか……?
「ヤツは絶対に許さん!!この儂をコケにしたこと、死後、いや、転生後まで後悔させてやる!!!」
「私も力をお貸しいたしますよ、阿良々木さん。」
「八九寺。でもお前神社は大丈夫なのか?神無月が終ったんだから神社に帰らなくちゃいけないんじゃ……」
「帰る……ですか……改めて聞くととても幸せになれる気がしますね……でも大丈夫なのです!!神無月が終っても私が戻らなかったら斧乃木さんに一時的に代理をやってもらえるよう既に手続きを済ませておりますので!」
「適当だな!神様!!」
「存外神なんてそんなものなのです。気にし出したらきりがないですよ?テケリ・リさん。」
「やめろ八九寺。人の名前をSAN値を持って行かれる神話に登場する宇宙生物の鳴き声みたいに間違えるな。僕の名前は阿良々木だ。」
「失礼、噛みました。」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「噛みマミっt」
「それ以上いけない。」
「それじゃあ行きましょうか。魔理沙、パチュリー。」
「行くのは構わないけど取り敢えず初対面の幼女と少女にその目つきはやめろ。通報するぞ。」
「あら、そんな事したら器物損壊と不法侵入で魔理沙まで捕まっちゃうわよ?」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ。行くってパチェをどこに連れていく気よ?」
「魔界。」
106
「魔界!!?」
「ちょっ、ちょっと待って。それまさかアンタの……」
「うん、実家。」
「嫌!!!絶っっっ対に嫌!!!!」
「えー、なんでよー?これからレミリア達はまたあの男の人と戦う事になるんでしょう?
だったらパチュリーは確実に安全な所にいた方がいいじゃない。」
「安全?安全と言った!?前に初めてアンタの実家に行った時何されたか知らないとは言わせないわよ!!」
「え?」
「アンタのお母さんよ!つらつらつらつら延々と娘自慢を……しかも美化されまくってるから現実とのギャップで頭痛くなるし……」
思い出しただけでも辛そうなパチュリーの肩に魔理沙がそっと手を置く。
「諦めろ、パチュリー。アイツはもう既に魔界入りのゲートと術式を用意してる……」
「そういうこと♪それじゃあ早速行くわよ!あ、パチュリーはそのままじっとしててね。
ベッドごと転移するから。下手に座標がずれると空間の狭間に落っこちるわよ。」
「嫌あぁぁぁぁぁ!!!」
「それじゃあレミリア、パチュリーは私達がしっかり守るから後はお願いねー」
「……えっ?あ、ちょっ、待っ……」
突然名前を呼ばれたレミィが呼び止めるように手を伸ばす。
『じゃねー』
『あああああああ……』
当人達以外がほとんど状況を理解出来ていないまま、アリスさんと魔理沙、パチュリーは魔方陣の光と共に消えてしまった。
「え、えっと……行ってらっしゃい……?」
伸ばしても間に合わなかった手をゆっくり振りながら、レミィは疑問形でそう言った。