幻物語   作:K66提督

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よいてーこしょ!

どうも、K66提督です。

前回と比べて結構短い内容になっているので、早め(?)の更新となります。
博麗神社編が終わり、阿良々木さん達は次の舞台へと身を移します。

少しではありますが、『幻物語 弐拾ㇳ壱』をどうぞお楽しみください!!



幻物語 弐拾ㇳ壱

083

 

妖怪の山中枢、白狼天狗詰所。

自衛天狗軍、白狼天狗部隊隊長、犬走椛は部下からの報告を受けていた。

 

『報告、深夜3時。妖怪の山麓にて侵入者の反応有り。現在、白狼天狗第六部隊が捜索を行っております。山の木々には何やら刀傷のような痕跡があり――』

 

「おい、……そこにいる貴様、貴様が侵入者だな。」

 

「おいおい、何の証拠もなしに人を犯人扱いはちょっと酷いんじゃないか?」

 

持ち前の狼の嗅覚は侵入者の怪しげな臭いをしっかりと嗅ぎ取っていた。

柱の向こうからは、笑顔をむりやり貼り付けたような表情の不気味な男が姿を現す。

 

「ここは山の住民でも許された者にしか立ち入りを禁止された場所だ!それを知らないというのが何よりの証拠!覚悟しろ、侵入者!!」

 

短剣と盾を構えた白狼天狗は、両の眼を赤く光らせ、侵入者へ斬りかかる。

 

「へぇ、一人だけこんな小屋の中にいるから、きっと外の雑魚達よりも強いんだろうと思ってたけど、予想以上だ。君を喰えば『コイツ』はもっと完成に近づくだろう。」

 

『ザシュッ』

 

「ガフッ…………!?」

 

「でも、赤い眼っていうのはちょっと飽きたな。次はこの子達のボスでも狩りに行こうか」

 

灯火に照らされた男の顔は不気味な笑みを浮かべていた。

 

084

 

フランのチャーム発動後、結局レミィは生徒ではなく、イギリス生まれであることを生かし、英語教諭として学校へ通う事に決まった。咲夜さんもそれで何とか納得し、この一件は解決した。

その後皆で晩御飯を食べ、約束通りフランはレミィ達と一緒に紅魔館へ帰っていった。

 

「……寂しいけど何も二度と会えないわけじゃないもんな。また何度か学校に顔を出してみよう。」

 

『れーいーむーさぁーん!!おはようございまーす!!霊夢さーん!?いらっしゃいますかー!!?』

 

時は少し進んで、翌日の朝六時半過ぎ。

一時間ほど前に神社の裏の大樹で暮らしているという光の三妖精達、

サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアに叩き起こされて、

ついさっきまで鬼ごっこで延々と鬼にされていた。

あいつら音も姿もなくてどこにいるかわからないし、どうも僕の居場所が把握されてるっぽいんだよなぁ……

 

「しかし誰だろ?こんな早い時間に……」

 

先ほどから神社の前でずっと霊夢に話しかけて(というか叫びかけて)

いる誰かさんがいるのだ。

 

「女の子の声っぽいけど……」

 

「あ、」

 

「あ?」

 

「見つけました!阿良々木さん!!お久しぶりです!!」

 

「さ、早苗ちゃん!?なんで君がここに!?」

 

「ふっふっふっ、何を隠そう私は幻想郷の住民だったのですよ!」

 

「ナ、ナンダッテー!?」

 

『バァン!!』

 

「うるっさいわね!!朝っぱらから迷惑なのよ!!まだ営業時間外……って早苗じゃない、何やってんのよ。」

 

そこにいた少女は、緑の髪に緑の瞳、そして霊夢とは若干異なったデザインの巫女服を着た女の子だった。

また、かつて僕が外の世界で出会い、共に怪異に翻弄された、旧知の仲だ。

 

「今日は阿良々木さんをお迎えにあがりました!」

 

085

 

「迎えにきたって、コイツを?アンタ達今度は何を企んでるのよ。」

 

「な、何も企んでなんていませんって、だからそんな怖い顔しないでください……」

 

「……はぁ、まぁ何もしてなくても気づいたら事の元凶になってるような奴らだしね、

アンタ等は。何言ってもしょうがないか。それで?アンタ達二人知り合いみたいだけど、どういう仲なの?」

 

霊夢が部屋の中に戻っていくので、僕と早苗ちゃんも部屋にあがる。

 

「昔の知り合いだよ。もう五年は前だったかなぁ……あの時は早苗ちゃんも女子高生だったよね。」

 

「あー、もうそんなに昔になるんですねぇ」

 

「そのジョシコーセイってのが何なのかは知らないけど、要するに早苗がまだ外の世界に

いる時に知り合ったってわけね。」

 

「はい!それで、色々お世話になったお礼に、ウチで泊まってもらおうと思って昨日から人里で探してる時に、慧音さんに阿良々木さんはここだって聞いたので!」

 

「ふーん、それでアンタはどうすんのよ。行くの?」

 

霊夢が何故か置いてあった煎餅をくわえながら、聞いてきた。

 

「行くって……どこに?」

 

「だから早苗ん家。妖怪の山の、守谷神社。」

 

「うーん……霊夢にも大分お世話になったからなぁ……」

 

「私としては、居候が減るのはありがたいわね、食費も浮くし。」

 

「はは……それじゃあお世話になろうかな。忍もそれでいいか?」

 

『どーでもいい。眠いんじゃから起こすでないファァ……zZZ』

 

「いいってさ。」

 

「ホントですか!?やった!きっと御三方もお喜びになります!」

 

「ん?御三方?ねぇ早苗。あの二柱以外に誰か来てんの?」

 

「えっ!?あ、あはは……」

 

「面倒起こすんじゃないわよ……?」

 

「は、はいぃ……」

 

同じ巫女でも、霊夢と早苗ちゃんでは全く違うんだなと思った。

 

086

 

あの後、早苗ちゃんも一緒に朝食を食べて、霊夢、萃香、針妙丸にお礼を別れを告げて、博麗神社を後にした。

 

「それにしても早苗ちゃんも飛べるのか……幻想郷の住人はみんな空を飛ぶのか?」

 

「いえいえ、もちろん飛行能力を持ってない方も割といますし、私も霊夢さんみたいな

変態機動できるわけじゃないですから。あ、今の霊夢さんには言わないでくださいね!?」

 

「…………。」

 

「え、言わないでくださいよ!?絶対ですよ!?」

 

「冗談だよ。話を戻すけど、僕は服や靴に一反木綿っていう怪異を憑依させて飛んでるわけなんだけどさ、早苗ちゃんはどんなトリックで飛んでるんだい?」

 

「私はこの世界に来るとき、現人神に転生して風祝の力を授かりましたから。その能力です。」

 

「現人神……か……」

 

その言葉には聞き覚えと、死に覚えがあった。

かつて僕の知らないところで神になり、

僕の知らないところで人に戻り、

僕の知らない人生を歩んだ、妹の友達で、僕の――

 

「僕の、なんだろうな……」

 

「阿良々木さん?」

 

「あ、いや、ゴメン。何でもない。」

 

「そうですか?あ、そろそろ見えてきますよ!」

 

「おぉ……!!これは凄いな……!」

 

人里と飛び越え、収穫が終わった田んぼを見送った先には、とても色鮮やかに紅葉した

山々が連なっていた。

 

「神無月で秋の神様がいらっしゃるのが遅くなるので、幻想郷の紅葉はこれからなんです。あ、収穫は神無月前にできるようにしてくださるんですけどね?」

 

「じゃあつまりあれは神無月から秋の神様が帰ってきたって合図なのか……!」

 

興奮冷めやまない僕は少し高度を落とし、紅葉を間近で楽しむことにした。

 

「そういや大学生時代にひたぎと紅葉狩りに行ったことがあったなぁ……」

 

(椛をやったのはお前か……!!)

 

「え?うわっ!!?」

 

どこからか声がしたと思ったら、突然の突風に襲われた。

 

「あ、文さん!?何を!!?」

 

「おや、早苗さんも一緒でしたか。」

 

わけがわからず、早苗ちゃんが話しているほうへ視線を向けると、

 

「て、天狗……!」

 

烏の翼に高下駄、そして恐らく先ほどの風を巻き起こしたであろう羽団扇。

一目で天狗とわかる少女は僕に向かって殺気を発し続けている。

 

「文さん、どうしたんですか……?そんないきなり攻撃するなんて……」

 

「驚きましたよ、早苗さん。まさか貴女がこんな凶悪犯と一緒にいるだなんて。」

 

「き、凶悪犯!?」

 

僕は何もやって……な…いはず?だよね?

 

「確かに阿良々木さんは少しえっちなところとか意地悪なところもありますけど、そんな、凶悪犯だなんて……!」

 

「早苗ちゃんフォローになってないぞ!?」

 

「早苗さん、その男は妖怪の山に無断で侵入し、白狼天狗数十名に重傷を負わせ、さらに我々の長である大天狗様を殺害した大悪党です!!」

 

「なっ!?」

 

「そんなっ……阿良々木さん!?」

 

「や、やってないよ!!僕じゃないって!そもそも本物の天狗と会ったのだって初めてだ!」

 

「犯人は皆そう言うんです。それに外見も目撃者の証言に一致してます。

黒髪で身長は平均、性別は男。スペルカードや『程度の能力』ではない不思議な術を使う、外来人。種族が人間と書かれていますが……まぁ誤差の範囲でしょう。」

 

紛れもなく彼方だ。と天狗の少女はまるで犯人を追い詰める探偵のようなセリフを口にした。

 

「阿良々木さん、いささか状況がマズいです。ここは一旦霊夢さんの所に戻って、アリバイを証明してもらうのがいいでしょう。」

 

今にも殺されそうな状況でも、早苗ちゃんが冷静に最善策を提案してくれる。

 

……だが。

 

「……どうやらそうもいかないようだぜ、早苗ちゃん。」

 

「逃がしませんよ。」

 

周りを見渡すと、既に僕達は大量の天狗軍に完全包囲されてしまっていた。

 

「早苗ちゃん、君は地上に降りて安全な場所で待っててくれ。」

 

「そんな!阿良々木さんを置いてなんていけません!」

 

「頼む、君も戦ってしまうと一緒に犯人扱いされてしまう。それはダメだ。」

 

「……分かりました。相変わらずですね、阿良々木さんは。絶対に無事でいてくださいね!!」

 

未だにまだ納得のいかないような苦笑いで応援の言葉をくれる。

 

「忍。」

 

「なんじゃお前様。あの娘には巻き込めないような事を言っておいて、儂には手伝えと言うのか?」

 

「意地悪な事言うなよ、お前だってこういうのは嫌いじゃないだろ?」

 

「かかっ、まぁ確かに寝起きのラジオ体操変わりぐらいにはなるかの。」」

 

「全軍!かかれぇ!!」

 

『ウオオオオオオオォォ!!!!』

 

天狗軍約数百人の咆哮が、秋の乾いた空を揺らした。

 


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