幻物語   作:K66提督

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そすんさー!!(挨拶)

K66提督です。
課題もやらずに続きをアップする⑨がいるらしいですね。

……はい、私です。

だって!なんかアニメ物語シリーズとか熱血編のDVDとか見返したら
テンション上がっちゃったんだもの!
しょうがないよね!

……先生に怒られてきます!

それでは皆様は『幻物語 弐拾』!お楽しみください!


幻物語 弐拾

079

 

「久々に吸血鬼をぶっ殺せてスカッとしたよ。しかもそれが鬼ぃちゃんだし。もう最高だね。」

 

「斧乃木ちゃん……むしろ僕を狙ったついでに霊夢にも当たっちゃったみたいな言い方するのやめてくれないかな……」

 

「え、なんで僕の思っていることがわかったのさ、鬼ぃちゃん。いつの間に吸血鬼に読心スキルなんてついたんだ。」

 

「いや否定しろよ!!」

 

「否定はしないが肯定はしようじゃないか。」

 

「ただの肯定だそれは!!」

 

戦いを終えた僕を待っていたのは、なんと人妖入り乱れた大勢からの称賛の嵐だった。

 

『興奮した』『ただ者じゃない』『セクハラの数々についてkwsk』

 

……最後のは称賛なのか不明だが、みんなが僕達のことを歓迎してくれた。

 

「さて、鬼ぃちゃんをからかうノルマも達成したことだし、僕はそろそろ帰るとするよ。」

 

「そんなノルマは最初から存在しない。ていうか、え?何?斧乃木ちゃん帰っちゃうの?」

 

章をまたいでもまだいたからてっきり阿良々木パーティーに参戦するのかと思ってたのに。

 

「レギュラー陣への仲間入りも名残惜しいんだけれどね、今の僕には貴方の小さい方の妹のひ孫にあたる子と一緒に世界を救うという使命があるんだ。だから今後呼び出したりするのもなるべく控えてほしい。」

 

「世界!?そんな大きなもの背負ってるのか!?」

 

「小さい小さい。世界は一人の女の子の命よりも軽いんだぜ。」

 

か、かっこいい……

 

「八九寺さんに頼まれてしまってね。『私を信仰して魔法少女になっておくれよキュップイ』とかなんとか」

 

「何言ってんのアイツ!?ていうか魔法少女!?」

 

「『魔法少女 よつぎ☆マギカ』だ。」

 

きっと魔法(物理)なんだろうなぁ……

 

「じゃあ帰るよ。世界が平和になったらまた会おう、鬼ぃちゃん。」

 

「それはヘタすると死亡フラグだぞ斧乃木ちゃん。」

 

斧乃木ちゃんの姿が光に包まれ、薄まってゆく。

 

「まぁ、向こうの世界は僕が守ってやるから、鬼ぃちゃんはこっちの世界を守ってあげなよ。『人は勝手に助かるだけ』っていうのがメメお兄ちゃんの持論だったけど、守ってあげることぐらいは他人にもできるんだぜ。」

 

「守る……?斧乃木ちゃん、それって一体……?」

 

しかし、斧乃木ちゃんが答えてくれることはなく、可愛らしく『あかんべ』をして元の世界に帰っていった。

 

「まぁ、ヤツのことじゃ。大方かっこつけたいからそれっぽいことを適当に言ったとかじゃろ。気にするまでもないと思うぞ、お前様。」

 

「忍。…………ごめん、負けた。お前がせっかく激励浴びせてくれたのにな。」

 

「かかっ、それこそ気にする必要もなければ、そもそもお前様は負けとらんよ。」

 

「負けてない?え、でも僕はたった一回霊夢を出し抜けただけで、あいつにはまだ残機が……」

 

「ついこの間忍とやりあって残機全損したばっかりなのにそんな早く増えてるわけないでしょ?吸血鬼の再生力と一緒にしないでよ。」

 

「え、てことは……」

 

「引き分け。と言いたいところだけど、あの女の子がターンした時に先に被弾したのは私だったしね。今回は私の負けだわ。」

 

「か、勝ってた……?」

 

「中々の勇姿じゃったぞ、お前様よ。ま、今回勝てたのもどうやら儂のお陰のようじゃがのぅ?かかっ、かかかっ」

 

自慢気に無い胸を反らす忍。

揉んでやれ、エイ。

 

『ガシッ』

 

「おっと、神聖な学び舎の前でいかがわしい行為は止めていただこうか……?」

 

「痛い痛い痛い!!ごめんなさい!!」

 

「全く……かっこいい所を見せたと思った途端にこれだ。本当に不思議な男だな、君は。」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

右手を握りつぶされながら頭を撫でられたので、なんとも微妙な返事になってしまう。

嬉しいけど慧音さんそろそろ放して、色変わってきました。

 

「お兄ちゃーーーん!!」

 

「ぐふぉあ!!?」

 

背中にフランが激突!!?

 

「お兄ちゃん!凄かった!!なんかブワーってなったのがシューってなってゴァーって!!」

 

「お、おおおおおお、おち、落ち着けってフランンンンン今睡鵬解けちゃってるから、死ぬ、死んじゃうううう!!!」

 

「おいおいフランドール。それ以上はやめておけ?本当に死んでしまっては笑い話にもならん。」

 

「あ、ご、ごめんね?お兄ちゃん。」

 

「ん?あれ……あ、そうか……はは。」

 

「なんじゃ?どうした、お前様よ?」

 

「いや、何でもないよ。」

 

「何でもないならさっさと買い物して帰りましょうよ。お腹が減ってしょうがないわ。」

 

「そうだな、それじゃあ行こう。」

 

080

 

翌日、天気曇り。気温はそこそこ快適。

僕たちは再び人里の学校に訪れた。なんでもフランが学校生活に興味を持ったらしく、今日は見学だけでなく授業に参加させてもらっている。

僕は昨日と同じく見学。忍は相変わらず影の中でお昼寝中だ。

 

「じゃあ……チルノ。この問題やってみろー」

 

「zZZ……」

 

「チルノー」

 

「zZZ……」

 

「チ、チルノちゃん……!起きて……!」

 

「……はぁ、もういい、大妖精。後でチルノに居残るよう言っておいてくれ。」

 

「ぁ、は、はい……」

 

「(死んだな……チルノ……)」

 

「(あぁ……あの顔はお仕置き頭突きの顔だ……)」

 

全く、何処の世界でも授業をまともに聞かないやつはいるもんだな。

はいそこ、お前もだろとか言わない。

 

「それじゃあ代わりにーー、フラン!やってみてくれ。」

 

「は、はい!!」

 

お、ついにフランの出番か……!

さて記念すべき第一問は……

 

「ふむ、因数分解か……懐かしいなぁ……」

 

…………。

 

「って因数分解ィ!!?小学生レベルじゃないだろそれ!!!?」

 

「どうしましたーお父さーん。授業参観中はお静かにー?」

 

「誰がお父さんか!!ちょっ、待ってくださいよ慧音さん!たしか昨日の授業では『ひっ算』とかでしたよね!?」

 

「そうだな。」

 

「それでなんでいきなり因数分解なんですか!?」

 

「おかしいかな……?」

 

「うーん……僕のいた世界ではもっと沢山の事を学んでから勉強したけど、幻想郷ではこれが普通なのかなぁ……?ちなみに皆はこの問題わかるのか?」

 

「えっと……一応……少しくらいは……」

 

「ぜんぜーん。」

 

「わかんなーい。」

 

唯一首を縦に振ったのは大ちゃんだけだった。

確かに頭良さそうだもんなぁー。

 

「え?あ、あれ……?」

 

まさか理解しているのが自分だけだったとは思わなかったようで、戸惑っている。

可愛い。

 

「しかし、そうか……」

 

やっぱりまだ難しすぎるよなぁ……

 

「慧音さん。」

 

「なんですお父さん。」

 

気に入ったんですか、それ。

 

「良かったらなんですけど、この授業だけ僕に先生をやらせてもらえないですか?」

 

「阿良々木君が……?構わないが……大丈夫か?」

 

「はい。実は僕もそんなに勉強ができるというわけではないんですが、こと算数・数学に関しては自信があるんです。」

 

僕のことが大嫌いなアイツに教えてもらった数学の楽しさを、ぜひこの子達にも知ってもらいたいのだ。

 

「……そうか、うん。わかった。それじゃあよろしく頼む。阿良々木先生。」

 

「任せてください。」

 

暦のパーフェクト算数教室の始まりだ。

 

081

 

「博麗神社行きのバスがあります!始めに三人乗りました!途中で一人降りて、五人乗りました!博麗神社で二人降りて、残りは何人でしょう!!」

 

「はーい!」「はい!」「はいはいはいはい!!」

「うぁぁぁぁぁい!!」「わかったーーー!!!」

 

「はいじゃあサニー!」

 

「百人乗っても大丈夫!!」

 

「それは物置だ……バスにそんなに入らないし……じゃあ次!チルノ!!」

 

「幻想郷にバスはないからゼロ人!」

 

「誰がトンチの問題だと言ったよ!!問題そのものを否定するんじゃありません!!次!フラン!」

 

「えーっとえーっと、ご、五人!」

 

「大正解!おめでとう!正解者にはノブえもん人形をプレゼントだ!」

 

「……おい慧音。儂が寝とる間に何があった。あとノブえもんって何じゃ」

 

「授業ももう終わりだから最後にはおさらいを兼ねたクイズ大会だそうだ。それで賞品が無いのも面白くないので、正解者には阿良々木君お手製のぬいぐるみが進呈されるという話だ。」

 

「む、確かによく見れば色々と種類があるようじゃな。蟹、蝸牛、蛇、猫、そしてノブえもん、と。……ってなんで儂だけ名指しなんじゃ!!!」

 

「それじゃあラスト二問!」

 

こうして、僕も含めた授業に参加した全員が楽しく算数を学ぶことができた。

その後、他の科目はおとなしく見学し、今日の全ての授業が終了した。

 

「じゃあ今日はここまで。お前達寄り道せず帰るんだぞー。」

 

「「はぁーい!」」

 

「アララギ先生、ばいばーい!」

 

「おーう」

 

ワイワイガヤガヤと教室を後にする子供達に手を振り、お別れする。

 

「お疲れ、フラン。学校はどうだった?」

 

「楽しかったー!!みんなとも沢山お話したんだよ!!」

 

「阿良々木君、今日はありがとう。とても楽しそうな授業で、参考になったよ。」

 

「いや、そんな。途中から僕も一緒になって遊んでたみたいなようなものですし……」

 

「そうは言うがな、阿良々木君。あのぐらいの歳の子供達と同じ目線になって一緒に遊んでやれるというのも実は凄いことだったりするんだぞ?」

 

「こやつは元から精神レベルが九、十歳くらいで止まっておるだけじゃ。

ま、慧音は少し頭が固すぎる気もするがの?」

 

「失敬な、『少年の心を忘れない』と言ってもらおうか。」

 

むしろそれしか覚えていないが。

大人の雰囲気なんて僕には似合わないだろう。

 

「うむ、頭の硬さには自信があるぞ。瓦二十枚くらいなら頭突きで割れる。」

 

「誰が物理的な意味での『かたさ』と言った。」

 

「ところでフラン、君さえ良ければ今後もここに通ってみないか?他の子とも打ち解けているようだし、きっと楽しいぞ?」

 

「えっ……行きたい……けど……」

 

何かを気にした様子で、フランが僕を見上げる。

 

「僕は良い事だと思うけど……流石にレミィに相談するべきだろうなぁ……」

 

「そうだな。まずは家族に相談してみるのがいいだろう。それじゃあ、レミリア・スカーレット嬢の許可を得られたら、フランはめでたく私の新しい生徒というわけだな!よろしく!」

 

「う、うん……」

 

慧音さんが差し出した手をフランがおずおずと握り返す。

今のフランならきっと大丈夫だ、そんな気がする。

 

082

 

慧音さんと別れた後、霊夢に頼まれていた夕飯の買い出しを済ませ、神社へと帰還した。

 

「……おかえり。」

 

何故か不機嫌そうな霊夢が僕達を迎えてくれた。

 

「何だよ霊夢、そんな仏頂面して……あれ?」

 

「おかえりなさい。暦、フラン。忍は影の中かしら?随分と遅かったわね?」

 

「あ、あぁ、夕飯の買い出しに行ってたから……」

 

何故か博麗神社の居間には、優雅に紅茶をたしなむレミィとその横に控える咲夜さんがいた。

しかし何というか、ちゃぶ台で紅茶飲んでる光景って物凄いシュールだな……

 

「それで?レミリア。夕飯の支度で忙しいような時間にウチに押しかけてきた理由を教えてもらえるかしら……?」

 

『返答によっては今すぐに叩き出す』という語気を込めて、鬼巫女様は問いかける。

 

「こ、今晩はここで暦達を待っていた方が話がスムーズに進むって運命の流れが見えたから……そ、それで?フラン。私に何か言いたいことがあるみたいなんだけど、どうしたの?」

 

「あ、うん……えっとね、私……学校に、行きたいの……!」

 

「へ?が、学校?人里の……?でもあそこは……」

 

「うん。人間も、妖精も、他の妖怪もいた。あっ、お友達もいっぱい出来たんだよ!!」

 

「と、友達……?フランに……?」

 

レミィが驚いた様子でフランと僕を順に見る。

ついこの間初めて屋敷から出たフランに友達ができたというのだ。驚くのが普通だろう。

 

「フランの言ってることは本当だよ。今日もみんなと一緒に勉強してきたんだ。」

 

「お兄ちゃんも先生でね!楽しかった!」

 

「へ、へぇ……あのフランが……」

 

「それに聞いて驚け?実はフラン、昨日から『睡鵬』憑いてないんだぜ?」

 

「「はぁ!!?」」

 

驚いたのはレミィだけでなく、霊夢もだった。

咲夜さんも声には出さないものの、目を見開いて驚いているのが丸わかりだ。

 

「あれ?霊夢も気が付かなかったのか?」

 

「気が付くって、昨日からでしょ?てことは昨日の夜も……えぇぇ??」

 

「今日は曇りだったし、日光も大丈夫だろうと思って実験してみました。」

 

「実験ってアンタね……」

 

「じゃ、じゃあフランは吸血鬼状態のままで人里を歩き回ってきたってこと……?それで何ともなかったの……?」

 

「正確には里の子供達と一緒に授業も受けた。買い物中わがままも言ったけど能力が暴走したりもなかったよ。」

 

もうフランは自身をコントロールすることができる。

それに気づいたのは霊夢との勝負の後、フランに飛びつかれた時だ。

冗談で死ぬ死ぬ言ってはいたが、その余裕があった。本能的にフランに恐怖がなかった。

ちゃんと『手加減』がされているとわかったからだ。

期待が確信に変わったのはもちろん今日一日を通しての事だ。

慧音さんと握手した時、手を『握った』のに能力が発動することはなかった。

僕に対してだけでなく、誰にでも相手のことを考えて行動するということが出来ている。

当たり前のようで、とても難しい事だ。

 

「嘘……私、全然気が付かなかった……」

 

「ってフランも気づいてなかったのかよ。無意識でやってたってことかな?」

 

「フランが……ね……」

 

「お姉様……?」

 

「フラン、学校は楽しかった?」

 

「……!うん!とっても!!」

 

「そう。……わかった。学校通うことを許可しようじゃない。」

 

「やったぁ!お姉様大好き!!」

 

よかったな、フラ……

 

「ただし!」

 

ン……?

 

「まず学校に『通う』というからには自宅から、紅魔館から通うこと。

それと学校にはこの私も同行するわ。」

 

「お、お嬢様!?」

 

「何よ咲夜。フランも自分をコントロールできるようになったみたいだし、別に学校くらい許可してあげてもいいじゃない?」

 

「い、いえ、そうではなく……以前も申し上げましたように、お嬢様は紅魔館の当主なのですから屋敷にいていただかないと……」

 

「嫌。」

 

「!?」

 

おっと、何か面倒なことになってきたぞ?

 

「あー、なんか長くなりそうだし私晩御飯作ってくるわ。萃香ー、手伝ってー」

 

「あいよー」

 

霊夢と萃香が居間の暖簾を分け、台所に入ってゆくのと同じくらいのタイミングで、

二人の言い争いもヒートアップしだした。

 

「お嬢様!!いつもいつも思いつきでそういう事を言わないで下さい!」

 

「なっ、お、思いつきじゃないわよ!私はフランは心配だからついて行くだけで……」

 

「嘘です!!大方さっきの話を聞いて『楽しそうだな、羨ましいな』とでも思ったんでしょう!!今日だって人里で直接暦さん達に会いに行けばいいのにわざわざ神社まで!!」

 

「一々口うるさいわね、演出ってモンがあるのよ!!ロマンを弁えなさい!」

 

「ロマンもマロンも知りません!!紅魔館の主ともあろうお方が学校に通うなど!

里の人間達にバカにされるのがオチですよ!」

 

「ばっ、バカになんてっ、この私のカリスマがあれば全然平気よ!」

 

「カリスマ(笑)」

 

「今なんで笑った!なんで笑ったぁぁぁぁ!!?」

 

 

結局二人のケンカは霊夢が晩御飯を作り終わるまで続き、

鬼巫女降臨の寸前のフランの一言で終結した。

 

「私も……お姉様と一緒に行きたいな……ダメ?咲夜?」

 

『魅了』。

 

天使のような悪魔の上目遣いに勝てる生物など、この世に存在しなかった。

 




……え、もう弐拾!?
ということで、初心者投稿もとうとう20回目に到達しました!
えっと、コメントやお気に入りしてくださった方々、これまでありがとうございました!
失踪しないよう頑張って疾走していきますので、皆さまの温かい応援をこれからもよろしくお願い致します!

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