幻物語   作:K66提督

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お久しぶりです。
K66提督です。
前回の投稿から2週間と少しが空いてしまい、申し訳ない限りです……

苦手な戦闘描写ということで毎日頭痛に耐えながら
なんとか文字に起こすことができました。

暦と霊夢がかっこよく見えれば嬉しいです。

それでは『幻物語 拾 捌』お楽しみください!


幻物語 拾ㇳ玖

075

 

『神技・八方龍殺陣』!!

 

「ぐっ!!」

 

きつい……!!けど……まだいける!

 

「油断大敵!!」

 

境界『二重弾幕結界』!!!

 

『うおおおおぉぉぉぉ!!!』

 

霊夢のスペルカードが発動するたびに、ギャラリーから歓声があがる。

 

「い、痛ええぇ!!!!!!」

 

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

足が溶けたっ…!!

 

「ったく、スペカ当たっといて当然のように耐えないでくれるかしら?大人しく絶えなさい!!」

 

今度はスペルカードではなく、さっきの陰陽玉が襲い掛かってくる。

 

「お兄ちゃん!」

 

「避けろお前様!」

 

簡単に言うな……っ!!

 

避けろっ、その為には……っ

 

「まずは治れっ……!!」

 

不死力ごと破壊された右足に吸血鬼性を集中させ、回復させる。

 

『一反木綿』!!

 

着ている服に一反木綿を憑依させ、飛行する。

 

『あぁーー!!惜しいーー!!?』

 

またしてもギャラリーが盛り上がる。

まるっきり娯楽の感じだなっ、くそっ!!

あの辺とか賭けてんじゃねぇか!!

 

「あぁ、もう!!回復とかチートよチート!!」

 

「僕からしたらお前の力のがチートだよ!!」

 

ショット・『殺意ある文具』!!

 

「遅い遅い!!」

 

さっきからなんとか余裕を見つけてショットで反撃しているが、その全てが撃ち落とされるか避けられてしまう。

 

「やっぱりスペルカードじゃないとまともなダメージは入らないか……」

 

「ん?そんなことないわよ?全部使いようね。」

 

「なっ、後ろ!!?」

 

今の瞬間まで正面にいたはずじゃ……!?

 

「博麗の奥義、『夢想天生』。そのちょこっとをお披露目したのよ。完全版が見たいって言うなら、さっさと私を本気にさせてみなさいな!!」

 

ショット・『封魔針』

 

「まだショットが……!?っぐうぅぅ!!」

 

御札や陰陽玉と違い、隙間なくびっしりと撃たれる針は避けようがなかった。

避けるのすらままならないんじゃ反撃するなんて無理だ……!

 

「阿良々木君!そうではない!『避けてから攻撃する』のではなく、『攻撃しながら避ける』んだ!幸い君達吸血鬼の耐久性は高く、多少のダメージは耐えることが出来る!とにかく攻めろ!!」

 

「ちょっ、慧音!!アンタどっちの味方よ!!」

 

「私は、頑張っているヤツの味方だ!!」

 

「慧音さん……!」

 

「ふ、ふーん、あっそう。じゃあ私はコイツより頑張ってないってわけね……」

 

さっき巫女としての仕事めんどくさいって言ってたしな……

 

「あぁ、わかったわよ!ちょっと暦の実力を測って遊んでやろうと思ってたけど真面目にやってやろうじゃないのよ!!」

 

『大結界・博麗弾幕結界』!!

 

「しまっ、閉じ込められた!?」

 

「ふっふーんだ。はい私の勝ち。いくら不死身でも死に続ければそのうちピチュるでしょー」

 

『ピチューン。』

 

『ピチューン。』

 

曖昧な、しかし確実に残りの命を削られてゆく感覚。

所詮『ごっこ遊び』なので本当に死ぬことはない。

しかしこれは…………

 

「殺され続けるというのは身体によりも精神に大きなダメージを与える。果たしてあの結界から出て来た後、その身体に我が主様の心が残っておるかどうか……」

 

「お兄ちゃん……」

 

『ピチューン。』

 

『ピチューン。』

 

淡々と僕に己の死を自覚させる音が響く。

ふと気になり、ギャラリーを見てみる。……へっ、おい霊夢、ドン引きされてるぜ。

やり過ぎなんじゃないか?

 

『ピチューン。』 『ピチューン。』

 

フラン、慧音さん、大丈夫だよ。何も死ぬわけじゃない。

だからそんな顔するなって、たかがお遊びじゃないか。

 

『ピチューン。』 『ピチューン。』

 

忍。ごめん、やっぱり初めからお前に任せてれば案外あっさり勝ってたのかもな。

ごめん。

 

『ピチューン。』

 

気が遠くなる。恐らく次の死で僕の敗北が決まるだろう。

……勝ちたかったなぁ

 

「勝てよ、お前様。」

 

しの、ぶ…………!?

 

「許さんぞ、儂は許さん。こんな所で負けるようなら、儂はお前様を一生軽蔑する。吸血鬼、『忍野忍』の余生の全てを尽くし、お前様を軽蔑する。負けるな、勝て。阿良々木暦!!」

 

無茶苦茶言ってくれるなっ……!

 

「お前様がここで負けたら、吸血鬼の一生を使い、これまでの阿良々木暦が犯したセクハラの数々を全世界に知らしめてやる!!後世に語り継いでやる!!!!」

 

「そんなの負けられるわけねぇだろぉぉぉぉぉ!!!???」

 

『扇符・rbjrkm:bv]pjg』!!!!

 

……暴走でも何でもいい!!この状況を打開してくれ!!

噴出した黒い霧は霊夢の弾幕を飲み込み、消滅させていく。

 

「なっ、ちょ、アンタそれまだ制御できないんじゃ……!?」

 

「できないよ!!それでもとりあえずこの場をなんとかできればいい!」

 

「きゃー!お兄ちゃんかっこいいー!!」

 

「カッ「カカッ「カカカカカッ……!それでこそ我が主様じゃわい!後先のことなんぞ考えるな、どうせ出来ることしか出来んのじゃから、持ってる手札は全て切れ!!」

 

持ってる、手札!!

 

『怪異譚・レイニーデビル』!!

 

――――ドクンッ……

 

「『ぐ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!』」

 

言うことをききやがれっ、僕は怪異の王、吸血鬼だ!!!

 

「『グ、我問フ。汝我ニ何ヲ願ウ。』願い?違うね、これは命令だ。この僕の力の一部になれ!レイニーデビル!!」

 

その瞬間、頭の中で騒ぐレイニーデビルが静かになり、僕の姿が変化する。

 

「雨合羽に……猿の腕……?」

 

「『流石、鋭いな霊夢。でも猿じゃない、悪魔の手だ。吸血鬼にはお似合いだろ?』」

 

「……アンタ何か性格変わってない……?」

 

「『じゃあ始めよう霊夢。ここからは俺のステージだ!!』」

 

「一人称まで変わってるし……上等!掛かってきなさい!!」

 

ショット・『封魔針』!!

 

「ハアア!!」

 

霧とレイニーデビルで針を受けきり、すぐさまこちらも反撃を行う

 

ショット・『殺意ある文具』!!

 

「っとと……少しはまともになってきたじゃない。それじゃあ次はこれよ!」

 

『霊符・夢想封印』!!

 

「来たか……!」

 

霧がスペルカードを消すことができるのはさっき証明された……

後はこの霧を操れれば……!

 

「く、痛っ……」

 

「ほらほらぁ、さっき切った啖呵は何だったのかしら!?」

 

考えろ……!どうすれば、どうすれば霊夢に勝てる……!

 

076

 

「あちゃー、結構苦戦してますねぇ」

 

「あれ?オウギちゃん?」

 

「やぁフランちゃん」

 

「なっ、貴様消えたはずじゃ!?」

 

「ふふふ、阿良々木先輩のピンチ有るところ扇ちゃん在りですよ?」

 

「むしろ貴様がピンチに引きずりこんでるような気もするがの……」

 

「はっはー、まぁ概ねその通りですかねー」

 

――――――『霊符・夢想封印 集』!!

 

「あらあら、危ない。そもそもなんですかあの霧みたいなやつ。まるで操れてないじゃないですか」

 

「何って、貴様が渡したスペルカードじゃろうが。名前がぐちゃぐちゃになった訳のわからんスペルカードじゃ」

 

「ぐちゃぐちゃって、え、もしかして阿良々木先輩あれの名前を読んでないんですか?」

 

「だから読むも何も名前がわからんと……」

 

「あちゃあ。やっぱりあの愚か者には言わないとわかりませんでしたか」

 

「……どういう意味じゃ」

 

「あのスペルカードにはまだ名前が無いんですよ。そりゃまともに動くわけがない。」

 

「つまりはあれに適当な名前を付けてやれば、それでちゃんとした効果が表れるという事か?」

 

「いいえ、残念ですがそれもないでしょう。少なくとも阿良々木先輩は心の中であのスペルカードがどんなモノなのかを曖昧ですが、イメージを元に発動させてるみたいですからね。

そのイメージにあった名前を付けてあげないと。」

 

「名前……か……確かに大事かもしれんの。儂ら怪異にとっても名というのは存在を確固にするための最低条件みたいなものじゃし。『名無しの怪異』なんぞ、怪しくはあれど結局何の怪異か分からんしの」

 

「ま、そんなところです。所詮あれも吸血鬼の具現化能力で生み出された物。

イメージすることが大事ですからね。」

 

「それで、問題はこの事をどうやって主様に伝えるかじゃのう。貴様なら直接伝えられるか?」

 

「うーん、えっとですね、今の阿良々木先輩の中レイニーデビルがいるせいで凄い居心地悪いんです。半分追い出されたような感じでしたし?」

 

「むぅ、ならばどうすれば……」

 

「いやいや、普通に伝えればいいじゃないですか。さっき叫んだみたいに。」

 

「そう何度も叫んだら恥ずかしいじゃろうが」

 

「フッ、」

 

「鼻で笑うな!!」

 

「まぁ、吸血鬼の聴力ならどうせこの会話も聞こえているんでしょうけどね。」

 

「早く言えよ、貴様。」

 

077

 

「名前……名前かぁ……」

 

つまりは名称を付けることによってイメージをしやすくするということか?

 

「何を独りでブツブツ言ってんのよ!集中しないと即死するわよ!」

 

「神技・八方龍殺陣」!!

 

「っっ!?考える暇も無しかっ、」

 

『怪異・子う守り』

 

フラン騒動の時に忍が使っていた怪異。流石フランの攻撃を受けきっただけあって

霊夢のスペカにも耐えられるようだ。

 

「腹立つわね……攻撃はてんでダメなくせにこっちの弾幕は打ち消したり完全に防御したり……」

 

「負けるわけにはいかなくなっちゃったからな、持久戦だ。単純な体力勝負なら人間に吸血鬼が負けたりしないさ。」

 

「そうね、いつまでもこんな事やってられないか、夕飯の準備もあるし。」

 

『夢想天生』

 

霊夢の姿が完全に消え、間もなく後頭部に強い衝撃を受ける。

 

「がっ…………!?」

 

「『空を飛ぶ程度の能力』、つまりは宙に浮く程度の能力を応用し、この世界の全てから浮くことで私を認識できなくする。それが博麗の奥義、『夢想天生』。これからアンタは私も見ることも触れることもできない。」

 

そう言って霊夢は再び姿を消す。

 

「……へっ、そんなのが博麗の奥義かよ……全然たいしたことないな……、ゲホッ、僕だって……クラスでしょっちゅう浮いてたぜ!!」

 

霧を限界まで放出するイメージで、僕の周りを取り囲ませる。

いくら見えなくたってこれなら霊夢も近づけな、

 

『ガスッ。』

 

直後、顎に鈍痛が響き、意識が遠のく。

 

「え、あ、なん……で……」

 

「『全てから浮く』って言ったじゃない。私のさじ加減次第でどこに存在してどこに存在しないかが決まるの。」

 

脳が揺れる。意識が薄れ、レイニーデビルや一反木綿を保つことができなくなる。

いくら不死身といえどそもそも欠損がなければ再生することもない。

―――――気絶。

流石妖怪退治の専門家だ。吸血鬼の倒し方くらい簡単に思いつくわけか。

 

「ていうかお前が妖怪じゃねぇの……」

 

「こんなんでも人間よ、悪いわね。」

 

くそ、こんなのチートだ。

不条理で、非常識で、理不尽だ。こんなの間違ってる。

 

 

――――――だったら、どうします?

 

 

間違ってるから……

 

 

「その間違いは、僕が正す。」

 

『扇符・愚か者には相応なる修正を』……!!

 

078

 

スペルカードが漆黒の扇子へと変化し、黒い霧がそれに吸収されてゆく。

 

「ふーん、それがそのスペカの本当の名前ってわけ。愚か者とは言ってくれるじゃない?」

 

「名前についてはお互い様だろ。『夢想天生』って、一体どこの世紀末だよ。ジャンプでやってくれ。」

 

「はぁ?世紀末?知らないわよそんなの。大体このスペカは博麗の巫女に代々受け継がれてきたものなんだから私が名付けたわけじゃないし。」

 

「…………それじゃあそろそろ終わりにしよう、霊夢。僕ももう残機0で後がない。

どっちが負けても恨みっこ無しだ。」

 

「どっちがって……アンタ以外に誰が負けるってのよ。」

「……さぁ、誰だろうなぁ!!」

 

僕が半ば不意打ちでショットを放つが、霊夢はまたしても姿を消してしまう。

間に合うか……!?

 

「届けっ……!!」

 

黒扇子を閉じたまま、疑似的な『くらやみ』を撃ち出す。

 

「……え!?あれ!?」

 

上手く霊夢が触れてくれたらしく、夢想天生が強制的に解除される。

 

「うおおぉぉお!!」

 

扇子を開き、今度は『黒い霧』を発生させる。

 

「アンタ……一体何を……!?」

 

「最初に撃った『くらやみ』が消去、次に撃った『黒い霧』が修正の役割を持った二つの弾幕が僕のスペルカード、『愚か者には相応なる修正を』だ。

霊夢、君の能力は元々『空を飛ぶ程度の能力』であって、『浮く』ことはできない。

なぜなら『浮く』と『飛ぶ』は結果が同じでも実際は全然違うものだからだ。

『黒い霧』の弾幕でその間違いを修正して、『全てから浮く』のではなく、『全てのルールを読み飛ばし、無視する』技に改変した。」

 

「改変ってアンタ……ウチに代々伝わる奥義って言ったわよね……?長い間積み重なった博麗の歴史に何してくれてんのよ。」

 

「えっ、あ、やばい?」

 

「まぁでも別に問題はないか、ようするに『飛ぶ』と『浮く』みたいに結果は同じってわけでしょ?

『姿が見える』ってルールを無視して、

『触れる』ってルールを無視して、

『弾幕に当たったら負け』ってルールを無視すればいい。」

 

まさに無法地帯。

『夢想転生』っていう名前にはもってこいのスペルカードになったわけだ。

 

「使い方が若干変わったのは面倒だけど、やっぱりアンタが負けるって結果は変わらない。一発で綺麗に消し飛ばしてあげるからそこ動くんじゃないわよ」

 

流石の才能を存分に発揮し、早くも改変されたスペルカードを使いこなす。

霊夢の姿、音、気配が消える。

 

「こっちこそ、綺麗に消し飛ばしてもらうぞ、霊夢!」

 

放たれるのは、法の外にも届く審判の一撃。

無際限の無慈悲な法典。

 

『怪異・斧乃木余接』

 

「斧乃木ちゃん、僕ごとでいい、綺麗さっぱりやっちゃってくれ!」

 

「うん。まぁ、元からそのつもりだよ、鬼ぃちゃん。どちらかと言えば、そっちの方が主だ。」

 

『例外の方が多い規則』

 

必殺技の名を恐らくはキメ顔で宣言した童女はその人差し指を驚異的な速度で膨張させながら、その場でクルリと一回転する。

 

『『ピチューン』』

 

生命のルールを無視する吸血鬼と物理のルールを無視する少女を消し飛ばし、

甲高いゲームセットの合図が夕焼けの空に鳴り響いた。


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