幻物語   作:K66提督

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皆さんおはこんばんにちわ!

K66提督です!
季節の変わり目だからか、風邪をひいてしまいました……
皆さんもお気を付け下さい!

それでは『幻物語 拾ㇳ弐』をお楽しみください!



……はっくしょえぇ!!!


幻物語 拾ㇳ弐

047

 

「う~ん……バッキンガム宮殿は噛んでも膨らまないよ……むにゃむにゃ」

 

『タァン!!』

 

「いつまで寝てるつもり!?うちの起床時間は朝6時よ!」

 

突然障子が開かれ、霊夢が怒号をあげる。

 

「う~ん、母さんあと5時間……って熱っちいいいい!!?」

 

「誰が母さんだ!!」

 

「霊夢閉めて!障子閉めて!日光が!日光があああ!!」

 

 

「大げさねぇ、聞いたわよ、あんた達クラスの吸血鬼は日光浴びてもある程度は大丈夫なんでしょ。」

 

「今!今まさにその『ある程度』が過ぎようとしているううう!!!」

 

そこまで言うと霊夢も流石にわかってくれたのか、障子を閉めてくれた。

 

「まぶしかったから閉めたのよ。」

 

「優しさのかけらもねぇ!!」

 

「あっはっは!!面白いねぇ!あんた!期待通りだよ!」

 

「あの、霊夢さん、今知らない人の声が……?」

 

廊下の方から吸血鬼の聴力でも小さめな声が聞こえてきた。

 

「あぁ、あんた昨日はもう寝てたから知らないわね、新しい『居候』の阿良々木暦よ。」

 

そんな『居候』の部分を強調しなくても……

 

「なるほど!あなたが噂の阿良々木暦様ですか!私、少名針妙丸と申します!どうぞよろしくお願い致します!」

 

お、おお、元気いっぱいだな……

 

「こ、こちらこそ。驚いたな……えっと、少名……」

 

「少名針妙丸です!針妙丸とお呼びください!」

 

「あ、そう?じゃあえっと……針妙丸って実は親指姫様……とか?」

 

すると針妙丸は顔を『むっ』としかめて、

 

「失敬な!私は『一寸法師』です!!誇り高き侍なのですよ!!」

 

「ふむ、なるほど。ごめんな、小さくて可愛らしいからてっきりお姫様かと思ったよ」

 

「か、かわっ!!?あ、あわわわわ、そ、そんな、私は侍ですよ!お、お姫様なんていうか弱い者と間違えないで欲しいです!」

 

「おい暦、あたしも小さくて可愛らしいだろうが。お姫様だぞ?」

 

「酒呑童子にお姫様とか言われてもなぁ……」

 

「あら、よく萃香が酒呑童子だってわかったわね」

 

「子供みたいな容姿に無限に酒の湧く瓢箪。おまけに苗字が伊吹ときたら誰でもわかるって」

 

「ありゃ、そうかい。あたしはてっきり『メメ』のやつに聞いたんだと思ったんだけどねぇ」

 

「は?」

 

今、なんと?

 

「だから『メメ』だよ、『忍野メメ』。実はあんたの事もメメのやつから聞いてたよ。『近い未来僕の友人が幻想郷に迷い込むだろうからその時はよろしく』ってさ。」

 

「あいつ……ん?あれ、じゃああいつも幻想郷に来てたのか!?」

 

「違う違う、あたしはたまに外の世界に遊びに行くからね、その時知り合ったのさ」

 

「外に?あれ?でも結界を自由に行き来することはできないんじゃ?」

 

「鬼っていうのは色々と規格外なモンなのよ、あんた達吸血鬼含めてね。」

 

「いやぁ、メメのやつには特別うまい酒を奢ってもらってさ、なんて酒だったかなぁ……すぴ……すぴり……」

 

「スピリタス……?」

 

「おー!そうそう!『すぴりたす』!美味かったなぁ、あれ……あんまりにも美味いから一気飲みしちまったぐらいさ。」

 

「い、一気飲みって……!?そ、そのまま飲んだのか!?水とか、氷とかで割らずに!?」

 

「いやいや、流石の私もそれはないって、」

 

「だ、だよねぇ……」

 

「ちゃんと7:3で焼酎で割ったって」

 

「焼酎で割るなよ!てかそれはもうお酒じゃないよ!火気厳禁の何かだよ!アルコール120%だよ!」

 

「強い酒ほど美味いってもんだろう?それがわからないうちはまだまだだね。」

 

「ええ……」

 

じゃあ僕ずっと『まだまだ』でいいや……

 

「はら、いつまでもお喋りしてないで、顔洗ってきなさい。朝ご飯にしましょう。」

 

「え!?」

 

「何よ」

 

「あ、いや、何だろう……?」

 

何故か博麗神社では食べ物にはありつけないと思っていた……?

でも一体なぜ……

 

「あんた今もの凄い失礼な事考えてるでしょ。」

 

「え!?いや、そんなことないって!いやぁ、楽しみだなぁ、霊夢の手料理!あ、味噌汁のいい匂いがしてきたぞぉ!」

 

「はぁ……今日は味噌汁じゃなくてお吸い物よ。もういいから早く顔洗ってきて。」

 

「アッハイ、すいません。」

 

048

 

博麗神社は井戸を引いているらしく、外で朝の身支度を整えるらしい。幸い井戸のある場所は神社で影になっているし、僕はこういう『昔ながら』な暮らしも趣があって好きなのだが、

 

「寒っ!!冷たっ!!無理、マジ無理。そもそも儂吸血鬼だから汚れたりしないし。それじゃあ。」

 

「おおおおお、おに、おにおにおにおにおにい、おにいちゃああん……さ、さむいィィ……」

 

ちなみに今現在の幻想郷の暦は外と同じく神無月。10月である。

 

「寒さに弱すぎるだろお前ら!現代っ子か!?」

 

そしてなぜフランは頭から水を被った!?

 

「風邪もひかんのに寒さに強くなる意味なんぞないわい。儂ら怪異の王は常に最先端、最上級の生活を送る義務があるのじゃ。」

 

「わけわかんねぇよ」

 

「おにいちゃぁん……」

 

「あぁ!?やばい!おい忍!フランに新しい服作ってやってくれ!暖かくて、可愛いやつ!」

 

「なんで儂が、お前様が作ればいいじゃろうが。」

 

「僕は八九寺に『私服のセンスがアララ木さん』とか言われてんだよ!チクショウ!」

 

「いやいやお前様よ、劇場版の私服のセンスはなかなかじゃったぞ?」

 

「え?まじ?」

 

「あー、なんだか寒くなくなってきたぁー、わぁ、お花畑と綺麗な川がみえるぅー……」

 

「フラァーン!!?ダメだ!!戻ってこーい!!」

 

「あー、お姉ちゃんがいるー」

 

「レミリアまだ生きてるから!不死だから!!」

 

「フランドールもじゃろ。」

 

「今は半分人間みたいなものなんだってば!!」

 

下手するとまじで死んじゃうんだって!

 

「む、それは流石に後々面倒そうじゃな。」

 

そういうと忍はフランを僕の影のなかに押し込んだ。

 

「とりあえず影の中なら寒かったりはせんじゃろ」

 

……そういえばフランは半吸血鬼化してるのになんで影に入れるんだ?

 

「なんか儂、幻想郷にきてからあらゆる影を操れるようになったみたいなんじゃよな」

 

「美鈴さんが言ってた、幻想郷に迷い込んだ人が能力に目覚めるってやつか」

 

じゃあその内僕も目覚めたりするのかな?

 

「ほう、どんないやらしい能力に目覚めるのかのう?」

 

「なんでいやらしい能力限定なんだよ!サイコキネシスとかテレポートとかいろいろカッコいいのだよ!!」

 

「アー、ハイハイ、カッコイイノー。じゃあそろそろ儂も影に戻ろうかの。」

 

「朝ご飯らしいから早めに戻ってこいよ」

 

「支度が終ったら戻る。」

 

忍も影の中に戻り、辺りがシンと静まり返る。

 

「さて、僕も戻ろうかな。」

 

「―――!―――!!」

 

「――――!!?」

 

「ん?」

 

何かの気配を感じ、振り返ったが、神社の裏山が広がっているだけで特に何もいなかった。

 

「忍かな?」

 

余計な仕事を作られて怒っているのかもしれないな、後で頭でも撫ででやろう。

 

「あんた顔洗うだけでどれだけの時間かかってるのよ。」

 

「あ、霊夢、ごめんごめん、今行くよ。」

 

 

「―――あいつがこの異変の犯人……!」

 

049

 

「おお、おいしそうだね。」

 

「紅魔館で咲夜の料理食べてたやつに何言われても皮肉にしか聞こえないわね。」

 

「そんな事ないって、可愛い女の子が作ってくれた手料理がまずいわけないじゃないか」

 

「……はぁ、そうやって無際限に自分のハーレムを広げていこうとするのはやめてくれる?諦めなさい、私は絶対に落ちないわよ。」

 

「ハーレム?何の事?」

 

「えっ」

 

「えっ?」

 

「おい腋巫女、我が主様には何をいっても無駄じゃ。朴念仁どころか植物よりも鈍感な男じゃからの。」

 

忍が影から頭を出してそんな事を言い出した。

 

「そ、そうみたいね……」

 

「??」

 

何だろう。僕は今ものすごく『主人公』している……?

 

「あれ?なぁ、忍。フランは?」

 

「着慣れない服を着て照れておるんじゃろ、ほれ、はよう出てこい。」

 

忍が影に手を突っ込み、かき回す。

なんで『チャプチャプ』いってんだろ……影って液体なのかな……?

 

「あ、待って、待って忍姉。」

 

「な、忍姉……だと……?」

 

「言っておくがフランドールが勝手に言っておるだけじゃからな、……ほれ、出て、こいと……!」

 

「いやあぁぁぁ……」

 

「おおおっ!かw「可愛いぃーー!!!」ん?」

 

意外も意外。僕よりも大きなリアクションをとったのは、霊夢だった。

 

「ちょっとフラン!何よこの服!あんた引きこもりだったくせにこんなに可愛い服持ってたの!?そうか、咲夜、咲夜ね!よし、ちょっと紅魔館まで行って私の分も作らせてくる!」

 

いくら日ごろから異変を解決してまわっている霊夢といってもやはりまだ高校生くらいの女の子。オシャレなどにも興味があるのだろう。

あ、ちなみにフランの服装は、

ニットの帽子にポンチョ、ホットパンツ、ブーツという、非常に可愛らしい仕上がりになっている。

忍様マジGJ。

 

「あぅぅ……こんなに足出してたら恥ずかしいよう……それに忍姉にはかされた『ぱんつ』ってやつ、ドロワーズと違ってなんだかぴっちりしてて落ち着かないし……」

 

「忍、その時の話kwsk。あとフランのドロワーズは僕が預かる。」

 

「黙れロリコン。性犯罪者予備軍。」

 

「『ロリ』じゃない!『ロリも』なんだ!!」

 

「あの~……霊夢さん行っちゃいましたけど~」

 

「その服、吸血鬼の具現化能力だろ?外の世界で同じような服装を見たことがあるよ。」

 

そういうと萃香は意地の悪そうな笑みを浮かべ、

 

「霊夢のやつ、珍しく満面の笑みで出かけてったからねぇ、今のうちに霊夢の喜びそうな服を一着二着作っといたほうがいいと思うよ?」

 

『障らぬ巫女に鉄拳制裁なし』ってことさ

 

「忍先生!お願いします!!」

 

まだ死ぬわけにはいかないんです!

 

「ちっ、……お前様……最近本当に儂をド○えもん扱いしとらんか?」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

050

 

午前10時現在、博麗神社では幻想少女達による

小さなファッションショーが行われていた。

 

「ねぇ、どう?これ!」

 

霊夢がワンピースを体にあわせ、なぜかいる金髪魔法使いに感想を求める。

 

「おぉー!いいんじゃないか!?似合ってるぜ!!」

 

「咲夜、ちょっとこの執事服着てみなさいよ。」

 

「え、執事服……ですか……?」

 

あの後、霊夢が鬼の形相で帰ってきて、その道中で「おもしろそうだ」と魔理沙とレミリア、咲夜さんを引き連れてきた。

霊夢の分の服は忍がいくつか用意してくれていたのだが、思わぬ来訪者に僕と忍の二人態勢で、あらゆる知識、想像力を総動員して服を作り出した。

 

「お、お前様……」

 

「どうした忍?僕はここにいるぞ、わかるか?」

 

「お前様よ……儂はやりきったぞ……」

 

「あぁ、あぁそうだ。よくがんばったな、皆も喜んでるよ……」

 

満身創痍な忍の頭を感謝と労いを込めて撫でてやる。

 

「お前様……すまんが手を握っていてはくれぬか……儂はもう疲れた……」

 

「お、おい……?忍……?忍!!」

 

「次に目が覚めたら……ドーナツを……たらふく……(ガクッ」

 

「し、忍ーーーー!!!」

 

 

茶番終了。

 

 

疲れ果て、爆睡している忍をなんとか影の中に押し込んで、咲夜さんの用意してくれた紅茶とお茶菓子に手を伸ばす。

 

「うん、流石咲夜さんだ、やっぱり美味しい。」

 

「ねぇ、ちょっと暦!この服もう1サイズ下のやつ作ってよ。肩の部分がブカブカなの。」

 

「鬼よりも鬼らしいな!忍も僕も既に限界だよ!!」

 

「えぇー、しょうがないわねー、レミィ、あんたこれ直せる?」

 

「悪いけどオリジナルも見たことないのに具現化させるのは無理よ。仕立て直しくらいなら咲夜に頼みなさい。」

 

「咲夜ー。」

 

「もう終わったわ。」

 

「え?あぁ、ありがと。」

 

「おい霊夢!見ろよこの服!胸の所に穴が開いてるぜ!!」

 

「なにそれ、不良品?……ではなさそうね……外の世界ではこんなの着てる人がいるわけ?痴女専用の服ってことかしら」

 

「お姉様見てー!猫ちゃーん!」

 

「フランそれ下着よ!?早く上を着なさい!!咲夜!!」

 

「かしこまりました。」

 

ダメだ……みんな元気すぎてついていけない……

 

「老兵は退散じゃあー……」

 

風に当たりに縁側へ出ると、

 

「百年やそこらで何が老兵だい、情けない。」

 

「萃香、ここにいたのか。」

 

「あたしはオシャレなんかには興味ないからねぇ、酒が飲めればそれで十分さ。」

 

「血液すらもアルコール入ってそうだよな」

 

「そうそう、メメのやつからあんたに伝言があったのを思い出したよ。」

 

「伝言?忍野から?」

 

「なんでも、『近々僕の後輩が阿良々木君を訪ねてくるだろうから、よろしくね。』だってさ。」

 

近々……?

 

「ちなみにそれはいつ預かった伝言なんだ?」

 

「さぁ、40年前だったか、もっと前だったか……?」

 

「忍野のやつ……何時から数えて『近々』なんだ……」

 

「あいつは鬼のあたしから見ても掴みどころのないやつだったからねぇ、まるで雲を相手してるみたいだったよ。」

 

「萃香ー!暦ー!咲夜がお昼用意してくれるらしいからこっち来なさーい!」

 

「お、紅魔館のメイドの飯か、いいねぇ。」

 

「わかったー!今行くー!」

 

ちょうどよかった、ついでに忍用にメイドーナツを揚げてもらおう。

 

 


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