starlight☆dragons 〜閃光のギルティアーナ〜   作:星々
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追撃戦

カターコン研究所は、あり得るはずのない奇襲によって混乱に陥っていた。
軍属機関ではるはずの当研究所は、考えられないほどに機能を停止していた。
これも黒螺王国のスパイが仕込んだシナリオの結果だ。
しかしここでの唯一の誤算は、第2格納庫のみが破壊を免れたことだ。
ここだけ設計よりも頑丈に造られていたのだろう。
何にしろ、この事実は今更になって変えることなどできない。
そしてこの誤算という偶然は、2人を皮肉な運命へと導いていくこととなるのだった。











駆動音から尋常のなさが伝わってくる。
シートから伝わる鼓動が、レオスの身体全体に響く。

「地上まで残り3……2……1…!」

派手に土煙を上げ、そのドラゴノイドは飛び出した。
勢いのまま拘束具を引き剥がし、そのまま大空へ飛翔した。
背中の3対の翼から青白い炎が噴き出している。

「バーニアの推力だけでここまで安定して飛行ができるのか…やはり新型スピリットエンジンは伊達じゃないらしい」

トライウイング
その名の由来となった計6枚の翼から生み出される膨大な推力は、羽ばたきを全く必要とせずに機体浮遊させていた。
通常、飛龍型ドラゴノイドが飛行する際には龍と同じく羽ばたきを必要とする。
一般的に変硬金属布(電気的刺激によって硬度を変える特殊合金)と呼ばれる特殊金属によって形成された翼をもつ。
一見便利そうだがこれの弱点としては、非常にデリケートであるため戦闘中の些細な刺激によって機能を失う危険性がある、ということ。
だがトライウイングは変硬金属布による翼を持たない。
翼そのものを盾として使えるほど頑丈なものを持っているのだ。
さらにそれから生み出される推力は従来機の比じゃない。

「高性能なのはわかったが…やはり操作性は悪いな」

レオスは姿勢の安定した機体に周りを見回させる。
内包型コックピットの場合、外部の情報は各カメラから視覚情報として正面およそ150°に広がるメインモニターに映し出され、各センサーからの微妙な風の当たり方や気温はそのまま感覚として伝えられる。
視界は狭くなるがパイロットの生存率はあがる、ギブアンドテイクだろう。

「……見つけたぞ!」

レオスは目下に佇む同型機を見つけた。
同じく塗装されていない状態だったが、背中に背負った巨大な1対の大型ガトリング砲が、トライウイングとの差異を主張している。

「行かせないぞイクス!」

地面から突然飛び出してきたその姿をいち早く捉えていたイクス駆るケルベロスは、急速にトライウイングを正面に置くように反転すると、土煙を上げながら一気に間合いを取った。
最先端技術である静電気式駆動による高速運動は、その見た目の鈍重さには見合わぬ動きを実現していた。

「俺に銃を向けるなレオス! 俺たちはここで戦うべきじゃない!」
「じゃあここじゃないなら戦うって言うのか! この制服を脱げば敵だって言うのか!」

トライウイングはその翼を大きく広げて地面に降臨する。

「お前はいつもそうだ。いつも急に言いだして…あの日だって突然だった!」
「………ッ」
「あいつのあの言葉は、お前を…お前と俺を信じていたが故の言葉だった! 信じてたんだよ!」

レオスの脳裏にあの少女の顔がよぎる。
楽しかったはずの日々が、共に笑い泣いた日常が、何気なくかけがえのない思い出が。
彼らのその記憶にはいつもその少女がいた。
2人にとって特別な存在だったのは明白であるが、それと同時に彼女にとっても、2人は特別な存在だった。
そんな彼女の言葉は、少なくともレオスの胸には強く刻まれ、心の支えとなっていた。
だからこそ、それを裏切るようなイクスの行動が信じられなかった。

「それだけか……」

イクスは俯いてそう答えた。
掻き消えそうな小さな声だった。

「何?」
「言いたいことは、それだけか!」
「何だと…!」

見せたイクスの表情は冷たかった。
その声もどこか冷ややかだった。
しかし、それでも彼の表情の奥には、現状を悔やむような、悲しむような感情が見え隠れしていた。

「大人になれレオス。世界はそんなに甘くなかったんだよ!」
「何を!」
「だってそうだろ! 結局、あいつが一番先にお別れしちまったじゃねぇか! それに俺にだって家族はいるんだ…! 本当はこんなこと……ッ」

そこまで言いかけると、ケルベロスは口内ランチャーから煙幕を吐き出した。
それから一拍置いてその背後から弾幕が降り注いだ。
敵部隊が合流したのだ。

「くそッ…! イクスーーー‼︎」

トライウイングは煙幕の中に飛び込んだ。
その中で機体を高速でスピンさせ、煙を吹き払った。
煙を切り裂いてバイザー内のカメラアイを一閃させるトライウイング。

「コンディションレッド…武装解放……」

レオスは逃げ行くケルベロス含む敵部隊を睨むと、トライウイングの前腕部からコンバットナイフを引き抜いた。

「逃がしはしない!」

閃光が走った。
轟音と共に、とてつもないスピードで走り出したトライウイング。
運動性能や機動力に優れるトライウイングの速度は他のドラゴノイドを寄せ付けないほどの速さを実現していた。
いち早くその動きに気が付いたのは敵部隊長の飛龍だった。
エース級の実力の持ち主であり、先ほどレオス駆るドラグーン-ハイを撃墜したのも事実。
その眼差しには自信が秘められていた。

「邪魔だ、お前に用はない」

レオスの声色が変わった。
だがそれを聞く間もなく、敵飛龍はその首を飛ばした。
ようやく反応してきた敵ドラゴノイドは、ケルベロスを守るように前に出、その手に持ったバズーカをこちらへ向けてきた。
が、鮮血に染まったナイフがいち早く敵のマニピュレーターを切断する。
態勢を低くして放たれた回転斬りは、同時に2機の足を奪った。

「逃がさないと言った!」

何も出来なくなった雑魚を踏み台に、大きく跳躍してケルベロスに飛びかかった。
とっさに取り出したナイフで間一髪受け止めたケルベロスだったが、勢いと重力を味方にしたトライウイングに押し負けて大きくノックバックした。

「アンジュ協定はどうしたレオス!」
「先に破ったのはそちら側だろうが!」


トライウイングは間髪入れずにテールマシンガンで追撃を入れつつ大きく右に弧を描くように滑空し、姿勢を低くしながら翼先端部のスティンガーを横一文字に薙ぎはらった。
右翼の強烈な一撃を、ケルベロスは左翼のビックシザースで挟み込んで受け止めると、ナイフを持った右手を突き出す。
半身になってそれを躱し、左腕で抱え込んでケルベロスの腕を固めるトライウイング。

「軍規違反で軍法会議モノだぞ!お前が処罰を受けることになっちまう!」
「だがここでお前を逃すわけにはいかない!」

トライウイングの右ストレートは左手で迎え撃たれ、鷲掴みにされる。
ケルベロスはすかさず右翼ビックシザースで反撃するが盾と化したトライウイングの左翼に防がれる。
両手両翼の動きを封じられた双方だったが、火力に重きを置かれたケルベロスにはまだ大型ガトリングとペネトレイトレールガンの自由が残されている。
対して機動力が売りのトライウイングは、その最大の武器を封じされたことで打つ手がほとんど無くなってしまった。

「レオス…悲しいがチェックメイト宣言だ……その機体から降りろ、俺に撃たせるな」
「………」

沈黙で答えるレオス。

「ここでの最悪の結果は、お前が黙りこくって俺が発砲せざるを得なくなって大火力に2人とも巻き込まれて死ぬか、どちらかの増援が来てドンパチが始まるかだ」

そこに決着なかった。
どちらに転んでも、レオスの敗北であり、イクスの勝利ではなかった。
勝者のいない終結だった。

「…………クソッ!」

レオスはゴーグルを乱暴に脱ぎ捨て、大腿部の器具を外した。
コックピットから這い上がり両手を挙げる。

「俺の…負けだ………ッ」

屈辱の涙を堪えるレオスはゴーグルその表情を隠そうと俯向く。



どうも星々です!

だいぶ間隔が開いてしまいましたね(汗
最近何かと忙しくなってきてしまったので今後も間が開いてしまいそうです…






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