皿洗いを再開した、私の脳内思考を占めるもの……
「ねーねー!」
銀さんに名前つけちゃったよぉぉぉ!?どうしよぉぉ!?
「ねーね?」
いやでも、原作では誰がつけたとか書いてなかった…と思う。
えっ、まさか親がつけたのを本当は覚えてたとか!?
「ねーね!!!」
「葵姉ちゃん……?」
葵「……うわぁ!?蒼汰…?銀時……?」
うわぁ……私どんだけパニクってんだろ…。2人の天使が見上げてるのに、全然気づかなかったよ…。
「ごめんね、2人とも…、どうしたの?」
……うん、でも私の焦る気持ちもわかってほしい。だって、主人公の名前だよっ!?しかもイレギュラーな存在であるはずの私がだよ!?
せめて、松陽先生がつければよかったのかな…。
「ねーね、お外!遊ぶ!!」
「お外?寒くない??銀時も休んでなくて大丈夫?」
銀さん、さっき起きたばっかりだよ…?
「僕も…外………行きたい……。」
……うん、若いってすごいな。
いや、私もまだ9歳なんだけど…ね、生前の年齢はもう少しで19歳になるからね?
「銀時が大丈夫ならいいけど…、辛かったら我慢しないで言うんだよ?」
「うん。」
「よし、じゃああったかくして行こうね。」
蒼汰おいで、と言って着込ませて…、
あっ、銀さんどうしよう……。
「……!銀時、蒼汰。父上のところ行こっか。」
一応、私塾という名の、いわば学校のようなものをしている…、松陽先生と呼ばれるくらいなんだから。
なら…、着替えとかきっとある……と思う。
「とーとのところ行くの!!?」
蒼汰…そんな喜ばなくても……。毎日会ってるでしょ?
「父上…、葵姉ちゃんの父さん…?」
「そうだよ。銀時は初めて会うっけ?」
首を縦に振る銀さん。
そっか…、会うべき2人がやっと会えるのか……。前の時は銀さん寝てたし……。
自分の着流しの裾をつかむ銀さん。……なるほど、“裾をつかむ”っていうのは、銀さんが不安に思ってる時の合図なのね。
…まぁ、一種の人間不信みたいなんだろうな。
――ん?じゃあ、蒼汰は、、、?
「大丈夫。とっても優しいし、銀時にここに住んでもらおう、って提案したのも父上なんだよ。」
だから大丈夫、ともう一度言うと、裾をはなしたので……安心したのね。――よかった、よかった
「よし、じゃあ行こっか。」
「うん。」
「やったぁ!!」
そんなこんなで、父上の私塾へ。ちょうど、休憩時間なのか廊下でたくさんの生徒に会い、その度に銀さんの身体が硬くなっていく。……大丈夫かな??
「とーと!!」
「蒼汰?それに、葵も。……!!」
あっ、銀さんに気づいた。……銀さんも気づかれたことに気づいた。
「目を覚ましたんですね。」
「はい。」
父上はそう言うと、銀さんの目線の高さまでしゃがみ、笑って言った。
「初めまして。起きて急に違う場所で驚いてるかもしれませんが、ここは君の家ですからね。安心して下さい。」
銀さんの手が緩む。さすが、父上ならぬ松陽先生だ。お口が達者でいらっしゃる。
「銀時です……。お願い…します。」
あっ、私が名付けたこと、後で教えなきゃ、、、。
「それで、葵?どうしてここへ?」
――そうでした。忘れるところだった。
「実は、銀時の服がないので、こちらで借りれないかと思いまして…。」
「そうでしたか。
構いませんよ。自由に持っていってください。」
「ありがとございます。」
銀さんと蒼汰を連れて服のある場所へ向かう。
蒼汰…、そんなに必死に手、振らなくても、、、
「葵姉ちゃんの父さん…優しそう……。」
「安心してもらえてよかった。父上ね…、多分優しいよ。」
こういうふうに言うのは、私が原作での松陽先生を知ってるから。
だってそうじゃんっ!父上の拳骨とか、絶対にくらいたくない!
でも、蒼汰も銀さんも大きくなったら、くらうんだろうな…。
「ねーね!早くー!!」
2人ともドンマイ!、とか考えたら、蒼汰に急かされちゃいました。
「ごめんね、蒼汰。
よしっ、銀時もいいよ。多分、寒くないと思うけど。」
「ありがとうございます。」
「ふふっ、敬語なんて使わなくていいよ。私は銀時のお姉ちゃんだからね。」
「うん……、ありがとう…?。」
「よしっ!行こっか。」
蒼汰を連れて部屋を出る。次の授業が始まるのか、父上が向こうから来た。
「父上、蒼汰と銀時と少し出てきます。」
「わかりました。最近は物騒ですから、帯刀して行ってくださいね。」
「はい。」
「行ってきまーす!」銀「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。葵、蒼汰、銀時。」
銀さんの1件があってから、常に帯刀するように言われました。嬉しいことに、まだ一度も鞘から抜いたことはない。
だから今日も大丈夫だろうな。
……なんていうことを思った日に限って、
何かあるものなんだ。