―――グーーーっ
ん?……あっ、そっか。1週間ぶりに起きたんだもんね。しかも、ここに来る前に食べてた物なんて、たかが知れてる……、そりゃあ、お腹もすくよなー。
「……ごめんなさい。」
私が抱きしめたままで顔を埋めていたから、顔は見えなかったけど、、、耳、真っ赤ですね。
「ふふっ……謝ることじゃないよ。ご飯、作ってくるからちょっと待ってて?」
「……。」
ありゃ?無反応……。
もしかして、独りになるのが怖い?
「……んー、やっぱり一緒に行こっか。」
「……!!」
おっ、反応あり!
世でいう“上目遣い”で、見上げてくる銀さん。
うぉっ!――葵は100のダメージを受けた
「よしっ、じゃあ行こっか。」
そう言って銀さんを抱っこする。……ほんとに軽いんだよな。
抱っこされた銀さんはビックリしてた。
確かに原作で、松陽先生は銀さんをそんなに甘やかしていなかった……気がする。
でもいつも言ってるとおり、私は松陽先生とは天地の差なので…、銀さんを思いっきり甘やかすことにした。
きっとこの先、父上の塾に通って、そこで厳しくされる。私が甘やかしても大丈夫だろう…。
私だって、厳しくする時は厳しくするけどね!
「さてと……何作ろっかな。」
銀さんを台所の近くに座らせておいて……銀さんにガン見されながら、料理いたします。
「まぁ、やっぱりお粥とかでいいかな。」
初めてお粥を作ったのは、蒼汰が熱で寝込んだ時だったっけ。
もちろん、この時代にお粥なんてもの無いけど、お米はあるわけだし、作れんじゃね?みたいな感じで作ったら、大好評だったからね。
それから、お粥は私の得意料理に認定。生前の世界じゃ、全然胸張るないんですけど……ね、、、。
というわけで、さささーーーっ、と作る。我ながら美味しそうだな。
ついでに一緒に頂いちゃおー、ということで机の上には2人分のお粥。
「どうぞ。熱いから気をつけてね。」
「……。」
ん?そんなにまずそうかな……?結構、自負してたから恥ずかしい、、、。
「どうしたの?」
「…………どうやって…食べるの……?」
………………。
あっ、なるほど!!おにぎりみたいに、手で食べれないから戸惑ってたのか。
「それは、こうやって食べるんだよ。」
銀さんにスプーンの使い方を教えて、フーフーして食べさせてみる……世でいうアーン、というやつだな
―この時代に、スプーンってあるんだ…
「……!!!」
銀さんの目がキラキラしてるよっ!嬉しいし、可愛いよっっ!!
「美味しい?」
「……うんっ。」
スプーンを渡すとすごい勢いで食べ始めた。うん、作った方も嬉しい限りです。
「お姉ちゃん……、」
ご飯を食べ終わり、台所で片付けていると銀さんがやってきた。
……今、お姉ちゃんって!!
「どうしたの?」
片付けの手を止めて、銀さんの目線までしゃがむ。
「僕、本当にここにいていいの?」
「どうしてダメだと思うの?」
「……僕のせいで、お姉ちゃんが不幸になっちゃうのは嫌だ…。お姉ちゃんのこと、大好きだから………、、、。」
主人公に告白されちまったぜ!……まぁ、好きってのは姉として、ってことだろうけど、、、。
でも、こんなに小さいのにそんな事考えてるんだな……
一体この小さな身体の中で、どれほどのものを抱えているんだろうか。
原作知識を持っている私でもわかんないのに、松陽先生はきっとわかってたんだろうな。
「ありがとう。
でもね、私は君がいなくなちゃった方が、不幸だよ。
君が辛いことを、独りで抱え込んでしまうのを見る方が悲しいよ。」
「…………。」
銀さん、私はあなたや松陽先生みたいに、強くない。
今ここに立っていられるのは、あなたや松陽先生、蒼汰に会えたから。
だから、3人は私のすべて。
どれか1つでも欠けてほしくないもの。
「自分がいなくなった方がいいなんて、言わないで。
君がいることを、ここにいる人たちは誰も拒まないよ。
君が君である限り。」
「…………。」
銀さんが黙って聞いてくれた。まだ小さいし、理解出来ないところもあるだろうけど…、大きくなったら分かってくれたらいいなぁ。
「君は、ここにいていいんだよ。もう、家族だから。」
「かぞく……?」
「そう。だから、もう1人で悩まないで、泣くことを我慢しないで。いつでも、家族を頼って。みんな君の味方だから。」
ねっ?、と言い終わると、銀さんが泣きながら抱きついてきた。
原作で、泣くところなんてあったかなー?
少しは役に立てたかなぁ?
「大丈夫、大丈夫。」
銀さんが落ち着いたところで、
「君、名前は何?」
ずっと気になってたことを聞いてみました。
「なまえ……、、、鬼。」
名前と間違えるほど、呼ばれたのか…。
一体、誰が名付けたのか知らないけど、ここまで来たら私が名付けてもいいよね?
「じゃあ、『銀時』にしよっか。」
「ぎん……とき……?」
「そう!ごめんね、私が勝手に名付けちゃって。」
「銀時っ!僕、銀時!」
おぉ、そんなに嬉しかったのか……、よかった、よかった。
僕、ドラ〇もん!みたいな感じで言わないで欲しい……、面白いし、かわいい、、、。
「お姉ちゃんは?」
「ん?」
「なまえ……お姉ちゃんの名前は……?」
「あぁ!私は葵、吉田葵。」
「あおい……、葵姉ちゃん……。」
「よろしくね、吉田銀時。」
「……!!うんっ!!」
銀魂主人公、銀時と原作知識ありありの私、吉田葵。
私たちの未来が……素敵なものでありますように。
いや、あなたの未来が、原作と同じくらい、素敵なものでありますように、
……例えそこに私がいなくても。