IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

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おはよう、が当たり前に言える場所

 

《松陽side》

 

葵が幼い子どもを連れてきてから1週間、何も変わらず、普段通りの日常が過ぎていきました。と言っても、変わらなかったのは、葵が連れてきた小さな子どもだけですかね。

 

普段から、家のことはほとんどやっていた葵は、更に子どもの看病もやっていました。それはもう、葵の方が先にやられてしまうんじゃないか、というぐらい働いていましたよ。

 

何か手伝いますよ?、と聞いても、

 

「いえ、せめて起きるまでは、私が責任もって看病します。」と。

 

責任感の強い子です。父親としても胸が張れる、自慢の娘です。

 

 

そういう時は、無理強いしても手伝うべきなのかもしれませんが、私は葵の言葉を優先することにしました。彼女の責任感の強さは知っていたので、それなりの信頼はありましたから。

 

それに、初めてだったのです。葵が、頼みごとをしてきたのは。

それが例え、看病という名目でも……。

 

そんな葵の頼みの言葉を、優先しないわけにはいきませんからね。

 

 

 

 

 

もう一つ変わったこと。

 

それは、“村での不思議な噂”。

 

 

『“屍を喰らう鬼”を拾った者がいるらしいぞ。』

『亜麻色の短い髪を持ったものらしい。』

『しかも、女子(おなご)らしいぞ。』

 

 

……完全に葵の事がバレました。

 

そりゃあ、村内でも『下りてはいけない』と言われている階段を上ってきた女子が、銀色の子どもを背負っていれば、嫌でも目に付きますからね。

 

 

そして、葵が看病の合間に外に出た時に、あの子じゃないか?、と噂の事が葵自身の耳に入った時、

 

「葵……?大丈夫ですか?」

「……?何がでしょうか?」

「いえ、その……。噂なんて気にしなくていいのですからね。」

「あぁ、その事ですか。

 

大丈夫です。私は何も悪いことはしていませんから。」

 

 

驚きました。まさか、ここまで大人に成長してるとは…。

 

さすがにその噂が葵自身の耳に入れば、折れてしまうと思ったのですが……。

 

 

子どもの成長には、いつも驚かされてしまいますね。

 

「父上?」

「余計な心配だったようですね。」

「??」

「いえ。何かあればいつでも、力になりますからね。」

「はいっ、ありがとうございます!」

 

 

晴香、見ていますか?

 

 

私の娘は……あなたの娘は……、

 

どこに出しても恥ずかしくない、素敵な子に育っていますよ。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「Zzz……Zzz……、、、」

 

銀さんと出会って、はや1週間。呼吸は落ち着いたものの、未だに目は覚まさない。よって、ご飯も全く食べないわけで……。

 

銀さんは、このまま死んじゃうんじゃないか、ってぐらい痩せてしまっていました。……どうしよぉぉぉぉ!?

はい、軽くパニクってます……。

 

父上には、心配かけないように平静を保ってるけど……、残念ながら、そろそろ心配も末期です。

 

 

そんな私を支えているのは……

 

「ねーねー!」

 

この可愛い天使です。

 

そして、ずっと思ってたこと…蒼汰の見た目、誰かにそっくりだなーって。

 

最近、気づきました。蒼汰は小さい頃の土方十四郎にそっくりだと。

 

弟大好き、土方くん大好きの私には天使以外の何者でもありませんよ。

土方くんに似てなくても天使なのに…。

 

 

「どうしたの?蒼汰。」

「ねーね、遊ぼー。」

 

そうだなー、最近は銀さんの看病で、蒼汰にかまってあげれなかったからなー、、、。

 

「ごめんね、蒼汰。でも、このお兄ちゃんが起きてからにしようね。お兄ちゃんもきっと、一緒に遊びたいだろうからね。」

「うーー、、、」

 

あっ、やばい、泣きそう……。

ごめんね、蒼汰。さすがに、この中で銀さんを死なせてしまうわけにはいかないんですよ、、、。

 

それに、銀さんは本当に遊びたいと思うからさ。

 

「わーった。後で遊ぶー。」

 

あー、いい子でよかった。蒼汰も成長していってるんだな。

 

ありがとう、と頭をなでたら、めっちゃ喜んで走って行った、多分、父上の所だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん、、、?……ぅ。」

「!?」

 

喋った!?って、起きた!?

 

「大丈夫?わかる?」

 

刺激しないように、優しく…優しく…………って……ん??

袖つかまれてる。えっ……誰に?この部屋にいるのは、私と銀さん……。えっ!?

 

 

 

 

えぇぇぇぇ!?!?私、銀さんに袖つかまれてるの!?いやっ、嬉しいけど!

 

「どうしたの?どこか痛い?」

「…………。」

 

黙ったまま、首を横にふる。……痛いところは無いのか、よかった。

ってよくないよね、問題解決してないし。

 

「大丈夫だよ。起きれる?」

 

そう言って頭をなでてあげたら、なんか安心したようで……よかったぁ。

そのまま布団に座らせて、落ち着くまで待ってみた。

 

 

 

「……ここ…………どこ?」

「…ここは私の家だよ。」

「家?」

「そう。そして、これからは君の帰るところ。」

「僕が……帰ってくる?」

 

僕、って!癒されるな〜。

 

 

……帰ってくること、そんな疑問に思うかな、、、?

 

「僕、帰ったら……ダメ。…怒られる。殴られる。帰ったら………、みんな…不幸に……なる。」

 

 

 

 

 

……。

そっか、銀さんって家族から捨てられちゃってるんだよね。

 

 

 

―――ギューーっっ

 

ごめんね、銀さん。私には、松陽先生みたいに銀さんを安心させたり、成長させたりする素敵な言葉はかけれないから。

ただ抱きしめることしか出来ない私を許して。

 

「大丈夫。ここには、君のことを傷つける人なんていないよ。みんな、君の帰りを待っててくれるよ。

 

だから帰っておいで。

 

ここには、君の居場所がちゃんとあるから。」

 

 

つかまれていた袖をさらに強くつかまれて、

こわばっていた身体は緩まって、

 

聞こえてきたのは小さな声。

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

増えた家族は、小さな小さな身体で……でも大きな大きな存在。

 

 

そんな君と巡り会えた私の未来が、

 

君のために輝いているものでありますように。


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