さて、とうとう3月31日、最終投稿日となりました。
1週間、これでもかというくらい小説のことを考えて過ごしました。
とても幸せな時間でした。
たくさんの方が読んでくださるようになった今、受験期にぶち当たるのはとても辛いです。
2018年の3月に必ず戻ってこれるように、懸命に勉強します(汗)
2016年3月に書き始めてからの1年間、投稿が止まった時もありましたが、読んでくださる方・感想で更新を望んでくださった方。たくさんの人の愛を感じ、たくさんの人に感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。
また来年、ぜひこの小説を手に取っていただければと思います。
それでは、2017年最後の投稿とともに、“現代編”最終話を、
過去最長の小説でご覧ください。
1年間、本当にありがとうございました。
「ただいま戻りました。」
「あっ、蒼汰さん!おかえりなさい!!」
「「「お疲れさまですっ!!」」」
立場的には副長の次にえらい立場に立つ蒼汰。最初は慣れなかった隊士たちの態度にも、時間が解決してくれた。
そして、自分のことを認めてなかった者たちも、時間をともに過ごせば、嫌でも蒼汰の実力を知り認めていった。
おまけに土方にそっくりな容姿と反する生来の謙虚な性格は、隊士たちにも気に入られ、2番目に若いはずなのに、“優しい兄”としての立場を確立していっていた。
「あっ、蒼汰さん。お疲れさまです。」
「山崎さん、お疲れさまです。っていうか、敬語やめてくださいよ。山崎さんだけは慣れないんですから。」
松下村塾から帰ってきた次の日。
門まで迎えに来たのは、監察の山崎退。主に土方の下で働くことが多く、山崎のことを蒼汰は先輩のように接していた。
「そんなの無理ですよ。立場は蒼汰さんの方が上ですから、仕事の時は無理です。」
「じゃあ、今度ご飯にでも行きませんか?」
「……それならいいよ。」
そして山崎はというと、蒼汰に先輩として接せられることに喜んでいると同時に、普段は弟として可愛がっていた。
仲の良い2人は、最初は蒼汰の容姿から「副長と山崎が仲良く喋ってる!?」と勘違いされた。
「それよりも、副長が呼んでますよ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
そして蒼汰は、自分の上司のもとへ向かった。
「副長、失礼します。報告に来ました。」
「おぅ、入れ。」
「失礼します。……って、換気してください、窒息死しますよ?」
煙草の煙で充満した部屋にいたのは、真選組副長、土方十四郎。蒼汰の直属の上司。
「こんの忙しい時に、総悟のやつどっか行きやがったんだ。」
「……後で手伝います。」
「頼む。」
真選組で最も若いながら、一番隊隊長を務めている沖田総悟により、彼の仕事が増え、ストレスによりタバコの量が倍増していた。
「今回はなんかあんのか。」
「あぁ、そうでした、大きな要件が一つだけ。」
「なんだ。」
「幕府から1人、監視として真選組に送られるらしいです。」
「はぁ?」
「特に何もしなくていいから、どこへでも必ず連れていけ、と言われました。」
「ちっ、何考えてんだ、あのバカ幕府は。」
「……まぁ、チンピラ警察だなんて呼ばれてるんですから、監視ついても文句言えませんよ。」
「足引っ張るようなやつじゃねぇだろうな。」
「そのような事は絶対ないと言われました。所属も真選組に属するわけではなく、あくまで幕府という立場でいるらしいです。」
「ってことは、真選組を壊滅させようとしてるわけじゃなさそうだな。」
「そうですね。問題起こして壊すことが目的なら、真選組に所属しますからね。」
その他、周辺の攘夷浪士の動きと討伐に関する命など、いろいろなお達しがあった。
「とりあえず、その来客だけか。……いつ来んだ。」
「それが……僕がつく頃にはもういる、って言われたんですけど、、、」
「来てねぇな。」
「局長に挨拶を済ませたあと、探しに行って来ます。」
「総悟の事も探してこい。」
「……努力はします。」
その後、局長である近藤勲に帰ってきたこと、そして近いうちに松平長官が来ることを伝え、蒼汰は再び屯所を出たが、
「……そういえば、来客の人の様子、僕知らないじゃん。
いいや、先に沖田隊長を探そう。」
ということで、来客探しが真選組の隊長探しに、すぐに変わった。
――――――――――――――――――――――
一方その頃……、蒼汰が沖田隊長を探している頃、
「むっ!あれは……」
―――ニシシ、全く気づいてないアルナ。
「いざ、尋常に勝負アル!!」
「ちょっ、神楽ちゃん!?」
背後からこっそり襲っている時点で、尋常とは言えない。が、そんなツッコミ、神楽には通用しない。
新八が止める間もなく、神楽はその見慣れた後ろ姿に、
「勝負ネ!チンピラチワワぁ!!!」
沖田総悟の背中に突っ込んだ。
「えっ?」
「はっ!?……だ、誰アルカ!?」
そして、ギリギリで気づいた。この人は、沖田総悟ではない、と。確かに隊服は来ていないし、よく見れば髪の色が少し薄い気がする……。
神楽には、呑気にそんなことを考える余裕さえ無かった。
「か、かわしてほしいアルゥゥゥ!!!」
「か、神楽ちゃんっ!?」
「神楽!止まれっ!!」
1番そうしたいのは神楽本人である、が出来ないものは仕方ない。
夜兎である神楽の攻撃を受けられるのは、あの沖田総悟だからである。一般市民がその攻撃が受ければ……。銀時も新八も大事故を予想した。
―――シュンッッッ…
しかし、現状はその予想に反した。
「……あれ?」
「大丈夫ですか?」
攻撃を受けたその人物は、周囲になんの被害も出さずに、鞘から刀を出さぬまま神楽の攻撃を受け流した。
「……。」
「すごいてすね、あの人……。って、止まってる場合じゃありませんよ、銀さんっ!」
その光景を、少し離れたところにいた銀時と新八は、信じられないと言わんばかりに見ていた。
「ごめんなさいアル。人違いだったネ。」
「いえ、あなたに怪我がなくてよかったです。」
「……似てるアルナ。ま、アイツはそんなふうに笑ったりはしないケドナ。」
「??」
―――そんなことしたら気持ち悪いアルナ。
目の前にいる、沖田総悟よりも少し薄い色の髪の毛、瞳も赤くなく深い緑のような色、なにより、表情豊かな青年が立っていた。
「神楽ちゃんっ!赤の他人、攻撃しちゃダメだよ!」
「だって、新八も見てみろヨ。あのドS野郎にそっくりネ!!」
「いや、沖田さんでも攻撃しちゃダメなんだよ!?
すいません、お怪我はありませんか?」
神楽の言葉に理解が追いつかない中、更に人がやって来て、どんどん混乱に陥った。
「えっ、あ、僕は大丈夫です。
あの、チンピラチワワ…とは何でしょうか?」
「あぁ、それは真選組一番隊隊長のことですね。勝手に神楽ちゃんが呼んでるだけですけど。」
「真選組ですか。そちらの場所はわかりますか?」
「えっ?」
「屯所のことだろ。わかるぜ、案内してやろうか?
万事屋に任せな、あっ、ちなみに依頼料は頂くからな。」
「では、ぜひお願いします。」
万事屋に突然の依頼です。
~~~~~~~~~~~
「社長の坂田銀時。」
「志村新八です。よろしくお願いします。」
「神楽アル!」
「
案内の途中で自己紹介をし、あとは連れて行くだけ……
「にしても、あんな税金泥棒のもとに何の用アルカ?」
「神楽さん、それは僕が答えますよ。」
「「「??」」」
その道中で、目的の場所の人物に出会った。
「蒼汰!」
「昨日ぶりですね、みなさん。」
土方にその来客者を見つけるよう命を受けた蒼汰だった。先に沖田を探そうとして、神楽の声が聞こえたので来てみたら、なんと沖田ではなく探していた人物だった、という事だった。
「探しましたよ、来るのであれば迷わないでください。」
「なんと、君ほどの人が、迎えに来てくれるとは思いませんでした。大変申し訳ありません。」
潮屋が深々と頭を下げた。そして、万事屋の方に向き直った。
「自分の紹介が遅れました。僕は、幕府から真選組の監視の命を仰せつかった者です。」
「僕が幕府に行った時に、対面はしなかったんだけど、少し話したんだ。」
「神楽さん、すみません。さらにタチの悪い者で。」
――依頼料はあとで払いに行きますので。
そう言って、蒼汰と潮屋は去っていった。
どんでん返しで、幕府のものだと明かされて、混乱していた3人。万事屋に着くと、突然我に帰った。
「銀さん、僕らまだ依頼料もらってませんよね?」
「あぁ。」
「みっくん、幕府の人だって言ってたアルナ。」
「みっくん……??」
「今の僕らは、お金よりも欲しいものがあるじゃないですか。」
「万事屋の依頼料は高いアル。みっくんなら、税金泥棒どもよりも絶対、いろいろ持ってるネ。」
「お前ら、銀さんより考えてること黒いよ……?」
「「あんたのが移ったんじゃっっ!!!」」
盛大なツッコミのあと、3人は再び出かけた。
~~~~~~~~~~~
「潮屋みどりといいます。よろしく、したくはないと思いますが、お願いします。」
「何が目的だ。今更俺らを監視して何になる。」
潮屋が到着した真選組で、早速始まった自己紹介。ピリピリしている空気の中、すぐに副長の土方が聞いた。
「監視されるのはおかしいと言いきれますか?」
「はぁ?」
「今までの行動を振り返って、本当に幕府に目をつけられていないだなんて思っていないですよね?」
その言葉に気を悪くした隊士たち全員が、刀に手をかけた。
「言うじゃねぇか。」
「……っていうのが、幕府の見解です。
わかっているであろうにも関わらず、監視に対してなんの異も唱えなかった、そのことを不審に思っているんです、向こうは。」
「……はぁ?」
それは土方だけではない。
最初と同じ言葉とは思えないほどの、間の抜けた言葉が、全員の口から飛び出した。
「僕は監視としてこちらに寄越されましたが、特に何かを報告するつもりもないので、安心していつも通りやっていただいて結構です。
ただどこに行くにしても、僕を連れて行ってくれれば、幕府に言い訳も聞くのでそれだけはお願いします。」
「……真選組に危害を加えるつもりは。」
「ありませんよ、信じてもらえないと思いますが。というより、僕がこの立場で何かしても真選組には、全く影響がありません。
僕をここに監視に来てることは幕府の決定で、周知の事実ですが、僕が幕府という立場でここにいることも全員が知っています。
僕が何かすれば、それは幕府の責任になると、全員が存じているということです。」
特に信じられるわけでもないが、疑う余地もない。そして、真選組でないのであれば、今すぐ斬り捨てることも出来ない。それはただの、一般市民殺害になる。
「あの馬鹿な幕府の頭でも、僕を幕府の人間として送った時点で、僕が真選組を壊滅させることは無理だと分かっているでしょう。」
全てを信じることは出来ない、なんせあの幕府だ。しかし、話す彼の目はどうしても嘘をついているように見えなかった。
「うむ。とりあえず埒が明かないわけだし、潮屋殿を迎え入れよう。いいな?」
悩んでいた隊士たちも、局長の一言で全てを受け入れる。
自分たちの頭が受け入れたにも関わらず、その下が拒絶することなどない。
「ありがとうございます。僕になにかお手伝いできることがあれば、言ってください。出来る範囲であれば、何でもします。」
「……それは幕府の情報でもか。」
ようやく解け始めた空気が、再び張り詰める。
土方は土方なりに、彼を見極めそして、真選組に受け入れよとしているのだ。
次の答えで、全てが決まる訳では無い。
しかし、答えによってはどちらかに大きく傾くのは明白であった。
「えぇ、別に構いませんよ。」
「「「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」」」
潮屋の返答は意外にも即答だった。
それは真選組が最も求めていた回答だった。
「いいのか。」
「なんの問題もありませんね。ここに、身勝手な理由で幕府転覆を狙う人などいないでしょうし。
幕府のしたで働く君たちが、幕府にたてつく態度をとるのと同じで、僕も従順に従っている訳では無いんです。」
決して全てを信じることが出来た訳では無い。
そこには、間違いなく“真選組に所属していない”“危害を加えない可能性が高い”という理由が先行するが。
少し笑った彼を、これ以上非難する者はいなかった。
「いつまでもここにいても意味ねぇだろ。とりあえず解s「ちょっと!旦那ぁ!!!」……。」
「今の声って……」
一通りの議論が終わり、解散するところだった部屋に、突如山崎の声が響いた。
そして、その山崎が呼んだ相手……
「今の話聞かせてもらったぜ。」
「てめぇ、警察に不法侵入たァいい度胸してんじゃねか。」
「旦那方じゃないですかィ。なんですか、自首にでもしに来たんですかィ。」
「自首するのはお前らの方ネ、税金泥棒が!!」
「あぁ?税金まともに払ってねぇやつにゃ、言われたくないでさァ。」
「こんのクソサド!!」
「へっ!」
銀時と土方がにらみ合い、神楽と総悟が喧嘩をおっ始めた。
「なんなの土方くん。俺ら、依頼料もらいに来ただけだからね?別に、お前らのことなんて、不法侵入してまで覗きたくもないからね?」
「誰の依頼だ。」
「副長、多分潮屋さんの事ですよ。彼を最初に
「はぁ?」
「そーゆことー。ごめんね、大串くん。」
「土方だ!!」
神楽と総悟は相も変わらず、殺し合いという名の喧嘩をしているのを横目に、銀時が訪ねた。
「幕府の情報、教えてくれるんだろ?」
「んで、てめぇらにも適用されると思った。」
「えぇ、いいじゃん土方くん。万事屋さん忙しいから、幕府の情報が必要なこともあるんですー。」
「黙れ、万年金欠天パ。」
そのまま口喧嘩に発展しそうなところを、新八が止めた。
「なんの情報が知りたいのでしょうか?」
「幕府の重役どもの若ぇ頃の、遊びの記録。」
「遊びというのは……」
「吉原通いの記録だよ。そこである人物と繋がっているやつを探してほしい。」
銀時たちも高すぎる依頼料であることは重々承知している。だが、もう既に候補がここしかないのだ。
いつになく真剣な銀時に、周りも耳を傾けた。
「なるほど、町のものでは知らない情報であった、と。」
「あぁ。」
「……、
わかりました、名前を教えてください。」
それはどこかで想定していた答え。
きっと受けるのであろうと思っていた隊士の、期待を裏切らないものだった。
「いいのか。」
「えぇ。それで、どなたについて調べれば良いのですか?」
「……、
“傾城・鈴蘭太夫”と深く関わった人物だ。」
「傾城……」
「知ってんだろ。」
「はい。城が1つ傾くほどのお金を叩いてしまうほどの美女。伝説の花魁の方ですね。
その方に関わった方を調べればいいんですね。」
「どのくらいで調べられる。」
「急ぎですか。……では、明日の朝までには集めておきます。」
「まじか。」
幕府の重役など、絞られていて絞られていないようなもの。
とんでもない量の情報を一人で集めると言ったのだ。
「では、僕は今から幕府に戻ります。明日の朝、またお会いしましょう。」
潮屋は頭を下げて、屯所から出て行った。
「あいつって、いいやつ?悪いやつ?」
「知るか。」
正直、全員が感じた疑問だった。
次の日の朝、潮屋は本当に情報を集めて終わっていた。
「鈴蘭太夫とか関わった方は大勢いました。ですが、多分探している情報は、
『ある時期の鈴蘭の限定された顧客に関して』でしょうか。」
「!!いたのか。」
「はい。
鈴蘭太夫に限らず、花魁は限定した人物を作りません。
ですが、鈴蘭にはある時期、ある1人の客にのみ接待をしていた時期がありました。あなた方が探しているのは、その人物でしょう。
その客こそ先代将軍、徳川定々。
今の幕府の征夷大将軍です。」
この情報から始まる、
花魁の想い人探し―――
そして敵からの仕掛けは、
数十年前、自分たちの意図しないところで、
勝手に行われていた。
―吉原の女への愛しき想い
――それを利用した外道の者を……
―――いざ“傾城”の名のもとに
「さぁて、城とり合戦といきますか。」
誓った愛を―――
―――つなぐために。
【1年後の次回予告】
「しょーぐんさまーー!!あーそびましょー!」
いざ、“城とり合戦”へ。
―そこで出会うものとは
――鈴蘭の想い人とは
―――そして、
「葵姉ぇぇぇぇ!!!!」
彼の想い人の存在は……
全てが明らかになる『一国傾城編』へ
2018年3月20日、投稿再開予定!!