IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

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こんにちは、優菜です。
最近、お気に入りが急増し、感謝の想いと1年も休んでしまう申し訳なさでいっぱいです。
感想をくださる方も、読んでくださる方も本当にありがとうございます。
後、5日ほど頑張らせていただきます。

さて、今回のお話はオリキャラ蒼汰くんのお話。攘夷戦争の時、彼に一体何があったのか。
登場する土方さんのキャラはこんなんじゃない!と思われる方がいらっしゃったら申し訳ありません。
では、ぜひご覧ください。


吉田葵と周囲のその後【吉田蒼汰】

 

―攘夷戦争―

 

 

それは、彼にとっては、突然自分の生活を壊していったものとしての認識しかなかった。

 

ある日、何事もなく平和に暮らしていた日常から一変。

突然、強くて優しかった、大切な姉を奪われた。

その1年にも満たない後に、血は繋がっていないけども、大切な兄たちがどこかに行ってしまった。

 

父が教えてくれたことは、『兄たちは自分の武士道に従って戦っているのだ』ということのみ。

 

姉が連れ去られた時には理解出来なかったことも、他よりも頭のよかった蒼汰は、1年もすれば物事を正しく認識していた。

 

 

―もう、姉も兄たちも帰ってこないのだということ

 

――父と兄たちは、自分だけは守ろうとしてくれているのだということ

 

―――姉はその事に命をかけたのだということ

 

 

全てが終わった頃、父は蒼汰に少しだけ話した。

 

 

「葵と銀時たちは、蒼汰と私を守るために戦ってくれたのです。」

 

……なのでその分まで生きなければならないと。

 

 

「私は蒼汰のその剣は、たくさんの人を守るために使ってほしいですね。」

 

……“攘夷戦争”という荷物を背負わせなかった兄たちのために、と。

 

 

 

 

それから6年後、蒼汰が12歳になった時に、蒼汰と松陽は江戸付近に出てきた。蒼汰自身が自分の剣の使い道を探すために。

 

そしてそこで出会ったのが、真選組であった。

幕府の犬と言われていても、自分の武士道を持っている。蒼汰には、大切な姉と兄たちの姿が浮かんだ。

 

 

彼らとは違う道かもしれない。

それでも根底にあるものは、きっと同じだと信じて。

 

蒼汰は蒼汰なりの剣を握る場所を手に入れた。

 

 

 

自分が自分にしかできない方法で、兄たちを助けることができるように。

そして、結果的にそれが、彼らなりの兄弟の絆を築いていく。

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「僕はそこで、副長に剣の実力を見出されて、副長の直属の部下になったんです。

役職名は、“副長補佐”ということになっています。」

 

きっと全てではないのだろうけど、話してくれた蒼汰の過去。銀時たちの過去に比べれば、衝撃は少ないにしても、幼いながらに戦争が起こり、大切な者たちを奪われ、それでも自らの道を探した。

 

そこには、彼にしかわからない苦労があったのだと思う。

 

 

「頑張ったな、蒼汰。そばにいてやれなくて、悪かった。」

 

銀時は大切な弟を抱きしめた。

 

血は繋がっていないけども、お互いがお互いをちゃんと思い続けていた。

 

~~~~~~~

 

 

「で、最近どうよ、桂と高杉は。」

「……どうもこうもないよ。天導衆の目を欺くの大変なのに、暴れすぎだよ2人とも。」

「今はなんとかなってんのか。」

「今回、僕が幕府に赴いたのも大きいみたいで、とりあえず大丈夫かな。

幕府と攘夷浪士に挟まれて、副長のタバコの量は増えた気がするけど。」

 

「「??」」

 

全く話についていけない、新八と神楽。

それに気づいた銀時が、2人に説明した。

 

「ヅラと高杉が幕府から逃げられてんのは、あいつらの実力だけじゃねぇ。

まぁ、ほとんどはあいつらの力だろうけど、それでも内通者の協力が必要な時もある。」

「そんな時に、僕が少しだけ働いているんです。……と言っても、葵姉ちゃんに関する時だけですけれど。」

 

 

―――いやいや、すごいな!

 

と2人が思ったのは言うまでもない。

 

「内緒ですよ、こんなことバレたら怒られるどころじゃすみませんからね。

もちろん、真選組に関する情報は絶対に教えませんけど。」

 

 

兄たちとともに姉を助ける手助けをしたい自分と、真選組の役に立ちたい自分の間で、蒼汰は器用に生きていた。

 

 

 

―そこにはそれなり覚悟を持って。

 

――バレたら、と言いつつもバレることも覚悟して。

 

―――裏切らないようにと意識しながらも、

 

 

――――その間で苦しみながらも、

 

 

 

 

 

―――――それでも彼にとって、どちらも大切だった。

 

 

 

――――――どちらにも裏切れない恩があった。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

《蒼汰side》

 

 

僕の人生には転機が2回あった。

 

1回は、葵姉ちゃんが連れていかれて、銀兄たちがいなくなった時。

それまで守ってくれていた人が一気にいなくなって、その立場に自分がなることになった。

松下村塾には、僕よりも小さな門下たちがいて、銀兄たちがいなくなったら、その子たちは僕が守っていかなくちゃならなかった。

父上と2人で大変だったけど、今まで以上に稽古もして、葵姉ちゃんたちみたいになれるように励んだ。

 

 

 

そしてもう1回は、副長と出会った時だと思う。

僕はあの日のことを、一生忘れるつもりはない。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

真選組に入隊したての頃、沖田隊長の次に若かった僕は、かなり疎まれていた。

隊士との木刀での打ち合いをする入隊試験に、簡単に受かってしまったのも、入隊早々一番隊に所属したのも、要因の一つだったのかもしれない。

 

 

初めて討ち入りの仕事は、副長と沖田隊長率いる一番隊の小さな攘夷浪士の壊滅。

情報ではそんなに大きな集まりではなかった。真選組最強と言われる一番隊を率いているとはいえ、隊1つで済むと考えていたレベルだった。

 

 

 

 

 

『御用改であるぅぅぅっ!!!真選組だぁぁぁぁ!!!』

 

副長の一言で飛び込んだ敵のアジト。そこで見たのは……

 

 

「(……情報よりも多いっ!?)」

 

情報の倍はいるのではないかと思われる人数の攘夷浪士だった。

伊達に一番隊に所属しているだけあり、人数の差など関係なく敵をなぎ倒していった、が、隊士たちも人間であり、剣の腕ではどうしても埋めることの出来ない人数の差があった。

 

それが明確に出たのが体力の問題だった。

 

 

「ぐあっっ!?」

「!!」

 

突然敵が強くなる訳では無い。明らかに、こちらのキレが悪くなったのだ。

斜め前の先輩隊士が傷を負う。が、誰も助けない。……いや、助けることが出来ない。

 

その人を守りながら戦うほど、平隊士たちに体力は残っていなかったのだ。

 

隊から離れた人に狙いを定めて、浪士たちが襲いかかった。

 

 

 

どうしてかは分からない。

ただその時、その隊士の姿が自分に重なった。

 

―葵姉ちゃんや銀兄たちに守られる自分に

 

実際に守られたことなんてないけど、

自分が浪士に襲われそうになったこともないけど、

多分自分が理解していない時から、あの人たちは自分を守ってくれていたのだと思ったのかもしれない。

 

そして、姉や兄たちならあの人を見捨てることなんて絶対にしないと思ったのかもしれない。

 

 

 

 

 

―――キーンッッッ!!!

 

気づいた時には、襲ってきた攘夷浪士の刀を受け止め、そのまま斬っていた。

守られた隊士は信じられないものを見たような目で僕を見ていた。

 

「早く立ってください。」

 

その隊士にかけることの出来た言葉はそれだけ。なんせ、自分が驚いていたから。

 

―――自分の体力が全く減っていないことに

 

 

それに気づいてからは、なるべく隊士たちを守りながら戦った。

若い僕に守られるのが納得いかないのか、結果的に他の隊士たちも元気になり、壊滅まで後少しとなった。

 

 

――決して、気を緩めた訳では無い

 

―――ただ、少し疲れていたのかもしれない

 

 

 

「調子に乗りやがって!!」

「!?」

 

一瞬の隙をつかれて、死角になっていた場所から1人、刀を振り上げて飛び出してきた。

 

さっきとは逆の状況。違うのは、助けることが出来そうな人がいないということ。

助けたくない訳では無いらしい。ただ既に体力がなかった。

それがわかっただけでも良かった。一瞬でも真選組に受け入れられた気がした。

 

 

スローモーションで自分に振り下ろされる刀。

避けようにも既に刀は目の前だった。

 

 

―――ダンッ!!!……ザシュッ!

「!?」

 

斬られる寸前、僕は誰かに強く押された。そして、自分ではない誰かが斬られる音もした。

 

 

 

 

 

 

「「「「副長っ!?!?」」」」

 

それが副長だった。

傷を負った副長は、心配して駆け寄る隊士に向かって、

 

「守られるだけ守られて、あとは見殺しってか。全員、士道不覚悟で切腹させんぞ。

心配してる暇あったら、1人でも多く片付けやがれ。」

 

と言い放った。

激を受けた隊士たちはすぐ様攘夷浪士たちを片付けに行った。

 

 

しばらく放心していた僕も、我にかえり攘夷浪士たちを片付けに行こうとした。……が、

 

「おい。」

「!?……なんでしょうか。」

「お前ここに残れ。」

「……分かりました。」

 

副長に止められた。

最初は、自分のせいで傷ついたのだからここにいて守れ、という意味なのかと思ったが、

 

「テメェのせいじゃねぇ。」

「……?」

「俺が勝手に受けた傷だ。テメェのせいだなんて間違っても思うんじゃねぇぞ。」

 

副長はそんな人じゃなかった。

 

「ですが……っ、」

「どうしてもテメェのせいだと思うんなら、この場で俺のこと守れ。」

 

 

考えてみれば、副長はあの時僕に守られることで、僕の責任を軽くしようとしたのかもしれない。

 

 

あの後、怒涛の反撃を見せ真選組は自分たちの4倍はいたであろう攘夷浪士を、死亡者なしで壊滅させた。

 

その事があってすぐ。僕は副長の直属の部下になった。副長に理由を聞いても教えてくれず、もやもやしていると、局長の近藤さんが話してくれた。

 

 

『トシはな、小せぇ頃の自分とお前を重ねてんだよ。

他を守ることに夢中で、自分のことなんかお構い無し。昔は俺が怒ったが、今度はトシが怒る側かもな。

 

お前のことを守りてぇんだよ、あいつも。』

 

 

副長に直接聞いたわけじゃないから、真実かどうかはわからない。

でも、僕にとってそれが真実で、それだけが副長への絶対の信頼につながっている。

 

 

 

 

 

それなのに今のお前の立場は何なんだ、と言われればそれまで。

僕の立場を知れば、切腹だと思う。そのときの介錯は、是非副長にお願いしたい。

 

 

 

 

―全てが均衡している今を大切にして。

――あの人の隣で働ける今に感謝して。

 

 

―――葵姉ちゃんや銀兄たち

 

 

この人たちと天秤にかけられるなんて、この先もあの人しかいない。





さて、後どのくらいでしょうか……。

1話か2話程でしょうかね?

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