IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:優菜
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こんにちは、転生編最終話でございます。
ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました。

転生編は終わりますが、物語は続きます。
そして次回の話で、突然の急投稿が始まったのか、ご説明します。

では、転生編最終話、最後までお楽しみください。


✩“転生編”最終話✩さようなら。また会える日まで、

《松陽side》

―――ここはどこでしょうか。

目を開けた先に広がる光景は、“現実世界ではない”ということを除いて、全く知らない場所でした。


「松陽さん。」
「!」

私の耳に届いた声は、私が世界で初めて愛した人、

「晴香……?」
「ぼーっとして、どうかしましたか?」

既にこの世にはいない人。

ここは天国ですね、きっと。
だって、晴香に会える場所ですよ、天国以外なんでもありません。


「松陽さん、葵と蒼汰は元気ですか?」
「えぇ、2人とも元気ですよ。
葵はあなたに似て、素敵な女性に育ちました。蒼汰も、お姉さんを守るために、強く優しい子に育っていますよ。」
「そうですか。よかった……。」

そう言った晴香の笑顔は、本当に素敵で、私はいつまでもここにいたいと思いました。

「でも……、」
「?」
「葵には、松陽さんの悪いくせも移ったみたいですね。」
「私の悪いくせ……ですか?」
「自己犠牲をしてしまうところですよ。本当にそっくりです。」

―――全く、困った親子ですね。

そう、困った顔で言う晴香。


―――あぁ、本当にあなたには叶わない。
奈落の頭として存在し続けてきた私を、あなたは一瞬で丸め込んでしまう。

あなたが笑顔になるならば、なんでもしたいと思うし、

あなただけは、困らせたり泣かせたくないと思ってしまう。


「きっとあなたと同じで、葵にも『自己犠牲はやめて。』と言っても聞かないんでしょうから、諦めてあげてくださいね。」
「晴香……」
「自己犠牲に何も言わないのは、信じている証拠です。何かあっても何も言わないのは、守りたいからです。

松陽さんと私がそうだったように、葵もきっとそうですよ。」


ここ最近の葵の自己犠牲。
言われれば、頭に浮かぶことは山ほどありました。

「葵は賢い子です。なんの考えもなしに、自分を犠牲にしたり、みんなのもとを離れたりなんてしませんよ、きっと。」



そう言って微笑むと、突然、晴香の周りが光に包まれた。

「!?」
「松陽さんにお迎えが来たみたいですよ。」

ほら、と言って意識をそちらに向けると、


『父さんっ!』
『松陽先生っ!!』

大切な息子と弟子たちの声が聞こえてきました。

「蒼汰も大きくなりましたね。

松陽さん、みんなを、蒼汰もたくさんの教え子さんたちも、守ってあげてください。ここに来るのは、その後ですよ。」
「晴香っ!」
「それが、私と……葵の願いです。」
「!?」

最後の言葉の意味がわからないまま、晴香に伸ばした手は触れることなく、空をきった。

『松陽さんとお話できないのは、寂しくなりますけど、私は待ってますから、早く来たら怒りますからね。
触れるのはそれまでお預けです。』


―――そうですね。

あなたに触れてしまえば、私は弱くなってしまう気がします。

あなたとの約束、私に守れるならば、全力を尽くして……。
大切な人たちを守れるように。


~~~~~~~~~~~


「――!!――っ!!」
「――先生っ!!」
「父上っ!」

次に目を開けると、そこは晴香のいた場所ではなく、小屋のような場所。
そして、少し泣きそうな、焦った顔をした3人。

「晋助、小太郎、蒼汰……。どうかしましたか?」
「松陽先生っ、さっきから死んだように寝てて、全然起きなくて……。」
「目覚ましたら、知らない場所だし、葵も銀時もいねぇんだ!!」
「銀兄の布団はあるけど、葵姉の布団はないから、葵姉はそもそもここに来てないみたいだし……。」


全く起きなかった……。

「睡眠薬か何かでしょうか。」

それが何かに入っていたとしか考えられません。
そして、蒼汰が言ったこの状況が表すこと。


「葵が仕込んだ……?」

でも一体、何のために?

「父上……、」
「どうしました、蒼汰?」
「銀兄の刀がない……。」
「!?」
「あの野郎、どこ行きやがった!?」

意外にも頭がきれる銀時なら、葵の行き先に多少の覚えがあったのかもしれません。
そして、私にもありました。

「3人ともここで待っていてください。」
「ちょっ、松陽先生っ!!」

3人から反対される前に飛び出し、限界のスピードで走りました。










―――松下村塾に向けて

いるならそこしかない。

どうか2人とも、無事でいて下さい。


――――――――――――――――――――――


「さて、この後どうしましょうか?」


静寂の空間に存在しているのは、葵と目の前の奈落のみ。他はどうなったのか……

「短期間で何があった。」
「さぁ。強いて言うなら、突如起こったことではなく、覚悟を持って起こしにいったことだからでしょうか。」

家の周囲を囲むようにあちらこちらにいた奈落たちは、全て絶命されていた。……葵の手によって。


「これでようやく、あなたと話ができます。……話というよりは、取り引きでしょうか。」
「取り引き、だと、、、」
「えぇ、あなたも狙っていたのであろう“吉田松陽”についてです。」
「………。」

奈落の雰囲気が一瞬硬直したのを、葵は見逃さなかった。

「私が大人しくそちらに捕まる代わりに、松下村塾と吉田松陽には決して手を出さないと、約束してほしいのです。」
「我らへのメリットはなんだ。」
「……“あなたがた”というよりは、“あなた”へのメリットならあります。」
「なんだ。」
「一つだけ忠告するならば、吉田松陽を殺したところで、吉田松陽はあなたの下へ帰ってきたりなどしません。」
「!!」
「吉田松陽が吉田松陽であり続けること、そして、あなたがあなたでいること。
それが、吉田松陽とその周りの者たちを守る最善の手段だと、私は思っています。」


葵が一通り話したあと、その者は再び口を開いた。

「……貴様、一体何者だ。」
「私が何者なのか、それは私が最も知りたいです。私はなぜここに生まれて、どうしてあなたと出会ったのか。
長い年月をかけて出した私なりの答えを、今あなたに示しているつもりですよ。















『“吉田松陽”を守りたい』


あなたと私の利害、一致していませんか?





朧……さん??」





――未来を知っている私が出来る、


―――精一杯の未来への抗い


――――――――――――――――――――――


《~side》


「……ハァハァハァ、……ハァハァ、、、」

全力で走った。
体力の限界を感じても、何度こけそうになっても。

―――辛い、苦しい

そんなことよりも、大切な人がいなくなってしまう―恐怖―の方が強かった。

「葵姉……っ!」


目を覚ました時、最初に探したのは松陽だった。松陽の気配を感じないほど、松陽は熟睡していた。

すぐに生きてるとわかって、次に探した人は葵姉。
俺の頭は気持ち悪いくらいに働いて、すぐに危険信号を出してきた。

――葵姉の寝た形跡がない

――葵姉の刀もない

――俺たちが松下村塾ではない所にいる


―――葵姉が俺たちを眠らせてここに運んだ

どうしてこんな時ばっかり、頭が回るのか。
自分の頭を恨んだ。

松陽や蒼汰たちを起こさないように、

俺は刀を持って松下村塾に急いだ。



―――どうか何も無いで

―――全て俺の思い込みだった

―――葵姉が念のためにしたことだ


そう……信じたかった。














「葵姉ぇぇぇっっっ!!!!」

そしてそれは、

俺のちっぽけな夢で終わった。


――――――――――――――――――――――


「てめぇ!葵姉を離せっ!!」

刀を抜き、私をとらえている奈落に向かって来たのは、物語の主人公。


―――あぁ、この光景も知ってる。

違うところは二つ。
捕まっているのが松陽先生ではない。
塾が燃えていない。


―――私は頑張った。

自己満足でも、

その成果の代償に大切な人の今を傷つけたとしても。


きっと未来は素敵になっている。

松陽先生がいるのだから、きっとそう。


……そうだと、信じてる。




「動くな小僧。貴様の大切な者の首が、貴様のせいでとぶことになるぞ。」
「っ!」

松陽先生なら動けたかもしれない、

でも銀さんも強いとはいえ、普通の人間。

裏切った私なんかのために、そんな辛そうな顔をしないでほしい。


「銀時。」
「!」
「蒼汰と晋助と小太を、

松陽先生を守ってあげてください。
約束……ね。」

振り向いた時、私は普通の顔でいられたでしょうか。
平常心を保てていたでしょうか。






これから先出会う時、

私はあなたの敵であるかもしれない。


でもどうか忘れないで欲しい。

あなたと過ごした時間が、

私の人生でもっと素敵なものであったことを。

誰かを守るために、自分の命を差し出す、

そのことが、

恐怖と一緒に喜びもあることを。











「銀時っ!」
「「!」」

あと少し、

あと少しだったのに。

あなたとは会わずに、

この場を去りたかったのに。


「葵姉……、葵姉……がっ」
「葵が!?」

僅かに振り向いた瞬間、

確かに父上と目が合った。

父上は想像していなかった顔をしていました。

失望というよりは希望

悲しみというよりは期待


そして何かを悟った顔。


―――あなたならわかってしまうのかも知れませんね。

でも、絶対にバレてはいけない。



全て“吉田松陽”を守るためであることも。

未来を変えるためであることも。





『吉田葵』の未来改変は、

まだまだ始まったばかり。


この先君たちのそばにいられなくても、

私は私の信じた武士道を行くために。




「さようなら、吉田松陽、坂田銀時。







ありがとう。」



次回……【現代編】

それぞれが松下村塾、万事屋、真選組、鬼兵隊に。

の前に、攘夷戦争の話。