IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

20 / 55
こんにちは。
まだペースは保てています、優菜です。

今回は少し短いですね……すみません。
こんなんですが、よろしくお願いします。


引越し~大きくなる音

 

 

「ふぁ~……。。。」

 

銀さん……、怒られちゃうよ…?

 

「ごらぁ!!銀時ぃぃ!!てめぇ、何サボってんだぁ!!」

「うっせぇな、低杉。人には休憩というものが必要なんだよ。てめぇみたいに、体力バカばっかじゃねぇんだよ。」

「てめぇはさっきから、休憩しかしてねぇじゃねぇかぁあ!!」

 

あーあーあーあー、高杉に銀さん。暴れないでよー、せっかく掃除したのに……。

 

「やめんか、二人とも!葵殿が困っているだろ!!というより、どちらもさっさと働け!!」

「「うっせぇ!ヅラっ!!」」

「ヅラじゃないっ!桂だぁ!!」

 

って、あんたも入るんかい!!止めに来たんじゃないのっ!?

 

 

 

 

「3人とも?何をしているんですか??

掃除をしてくださいと言ったのに、汚くなっているなんてことはありませんよね??」

「「「げっ!!」」」

 

 

この後どうなったのかは、ご想像にお任せ致します。……が、想像通りですよ、多分。

 

 

 

 

 

こんにちは、葵です。

私が原作から大いに外れたことをしてから、僅か1日。既に引越し準備中。

 

が、あの悪ガキ3人が大人しく掃除をするわけもなく、銀さんがサボり、何気に真面目にやっていた高杉もそれにきれて、そして止めに入ったはずなのにとばっちりを食らっている桂。いつも通りといえばいつも通りなんだけどね……。

 

 

「葵姉ちゃん、こっち終わったよー!」

「ありがとう、蒼汰。もう終わるし、休んでていいよ?」

「はーい!」

 

最後まで真面目にやっていたのは弟の蒼汰ぐらい。……5歳児に負けるってどういうことですか。

 

 

「葵姉、俺も休んでいい?」

「んー?何を言ってるのかな?」

「……ゴメンナサイ。」

「わかればよろしい。自分の持ち場終わったら休んでいいよ。」

 

銀さんの教育も兼ねてるだけですよ。笑顔の圧力、いつも使うわけじゃないですよ?

 

 

 

昨日の夜、私が啖呵をきって『すぐにでもここから出ていきます。』なんて言ってしまったばっかりに、次の日にはお引越し……。こうなる事実はあったんだけど……それでも申し訳なさすぎる。

 

 

『父上、本当に申し訳ありません。私が余計なことを言ってしまったばっかりに……。』

『いえいえ。私が葵でも、同じことを言いましたよ。』

 

確かに、松陽先生が言ったことなんですけど……。

 

『引越しと言っても、荷物は少ないですし、門下は増えましたし、楽ちんですから気にしないでください。』

 

そう言って笑顔で言ってくれた父上の顔は、記憶に新しい。

蒼汰にはただの引越しだと伝えた。純粋に喜んでいた蒼汰に少しだけ罪悪感があった。

 

 

 

塾と家が繋がっている広めの家だけど、高杉と桂も手伝ってくれたということで、夕方にはすべて終わった。

 

「疲れたー。」

「銀兄はサボってたしょー。」

「馬鹿、銀さんもやる時はやったよ?」

「僕の方がやったもん。」

「それは蒼汰の言うとおりですね。」

「うぐぐ……。」

 

一足先に休憩している男5人の背中。全員が縁側に集結していた。

 

「みんなお疲れ様。はい、お茶と、頑張ったご褒美にお団子を作ってみました。よかったらどうぞ。」

 

―――バッ!!

 

はやっ!?

そんな4人いっぺんにこられても困るし!団子はどこにも逃げないし!!

 

……っていうスピードで奪われました。動物園の動物に餌あげてる気分です。

 

 

「ありがとうございます、葵。とても美味しいですねぇ。」

「……父上、いつの間に取ったんですか。」

「私ぐらいになればこれぐらい余裕ですよ。」

 

父上は、私に虚だということをばらしてから、こんなふうに自虐的に言うようになりました。……はい、素敵な笑顔です。

 

 

「だぁ!!高杉!てめぇ!食いすぎだぁ!」

「てめぇがとろいからだろ!」

「うるさい!団子くらい黙って食べろ!」

 

そしてこちらは、いっつも喧嘩しています。喧嘩するほど仲がいいとは言いますけどね?し過ぎですよね??

 

「晋助も銀時もうるさい。罰として、残りの団子は小太(こた)と蒼汰と父上で分けます。」

「「はぁ!?」」

「やったぁ!!」

 

 

でも、弟が増えたみたいでとても楽しい。

手のかかる弟たちだけど、毎日が全く飽きなくて……。いつも賑やかなのは本当に嬉しかった。

あっ、なんで呼び捨てなのかって?

昨日、突然、『名字で呼ばれるのは嫌だ。同じ屋根の下にいるのに変な感じがする。』と2人に言われましてね。うむむ……、正直、私が変な感じがします。

 

 

 

 

「さてと、そろそろ出発しますよ。」

「おー!!」

「はい。」

 

この家ともお別れ。

この身体には13年だけど、記憶にないので、事実上、5年くらい。

 

本当に素敵な5年間をありがとうございました。

 

私を愛してくれた晴香さんと松陽先生に出会えて、

かけがえのない蒼汰という弟に出会えて、

銀さんと高杉と桂にも出会えて。

 

 

―目まぐるしく回っていった5年間。

 

――忘れられない記憶になった5年間。

 

―――守ることを誓った5年間。

 

 

ここに出会えてよかった。

ここで出会えてよかった。

 

 

「行きましょうか。」

「はい!」

 

さぁ、次の舞台へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞こえるカウントダウンの音が、

 

大きくなるのを恐れずに。

 

――――――――――――――――――――――

 

「そういえば……気になってたんだけど。」

「ん?俺??」

「うん。銀時さ、昨日の夜、どうして名前偽ったの?」

 

次の家に向かって歩いている途中、私は隣を歩いていた銀さんに話しかけた。

なんだか流した感じになってしまったけど、ずっと気になっていた。正直、あの名前が本人から出てきた時に動揺しなかった私は偉いと思う。

 

 

『松下村塾、吉田松陽が弟子、坂田銀時。』

 

そう、“坂田”銀時と言ったのだ。

 

今までは“吉田”銀時を名乗っていたから、突然出てきたことに、本当に驚いた。……いやまぁ、確かに?このまま吉田で行くのかなぁ、とは思っていたけども!あんなにナチュラルに来るとは思わなかったよ!!

 

「特に意味は無いなー、なんとなく。」

「なんとなく?」

「ん。あのまま俺が吉田を名乗ってたら、俺だけの問題にならないだろ?吉田松陽も吉田葵も吉田蒼汰も目をつけられる。だから、とっさに出た名字を言ったんだ。」

「それが、坂田だったの?」

「結局、一文字同じだけどな。」

 

なんと……。坂田の由来ってそういうことなのか?それとも、私が転生したことによる歪みなのか??

 

どんな理由であれ、あの一瞬でそこまで考えていたとは……。

 

「ありがと、銀時。」

 

 

蒼汰に聞かれるのはまずいから、小さな声で近づいて話していた。

まだ、私よりも小さな背の、可愛い弟の顔に。

 

「べ、別に、大したことじゃねぇよ。」

「ふふっ、そうかなぁ?すっごく嬉しいよ。」

「そう?」

「うん!」

 

こんなに小さいのに、そこまで考えてくれていることに。

私たちを守ってくれようとしていることに。

 

その愛に、応えたいと思ってしまうほどに。

 

 

 

 

 

 

男の子の成長期はこれから。きっとすぐにでも抜かされてしまう。

 

それでも、前の世界では私の弟が私を抜かす前に、私は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次こそは、

 

あなたの隣で、

 

大切な人たちの隣で、

 

成長を見守ってていたいと、

 

 

本当に心から思っていたんだよ。




引越し先は……もちろんあそこです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。