IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

2 / 55
『鬼子』まだ出てこないです……。


愛を受けた一年、これから愛を受ける生命

「母上、あまり無理なさらないでください。お身体に障りますから。」

 

 

転生して一週間。大パニックだった私の頭も、ようやく落ち着いてきました。

 

「ありがとう、葵。」

 

そう微笑む私の母上、晴香さん。

 

 

私は五年も病に伏せていた(ことになっている)ので、とりあえず言葉を喋れることに驚かれた。まぁ、そりゃそーだ。二歳の時に寝たきりになったのに、次起きたら普通の子になってるんだから。

それから、家事が出来ることも驚かれた。

勉強や剣術の稽古……生前やったことなかったことも、なんとなく、なんとなくだけど、アニメの銀魂を意識したつもりでやった。

 

私は十六歳で死んでいる。生前、家が家であり弟もいたので、家事は全般こなした経験があった。

勉強は、最初はちんぷんかんぷんだったが、母上である晴香さんがいつも教えてくれた。

松陽先生……じゃなくて、父上も勉強や剣術を教えてくれた。

 

というわけで、私は目覚めてからわずか一週間で完全回復。

 

それから、そこで過ごしていくうちに、いろいろわかったこともあった。

 

 

まず、私の母上、晴香さんは身体が弱い。私を産んだ時も生死の間をさ迷ったんだと……。そんな身体で二人目を産んだらどうなるのか?そんなこと聞かなくてもわかる。

 

私も止めましたよ?いや、そりゃあ確かに、弟が欲しいって言ったのは私だけど、母上が死ぬくらいなら……ね?でも、

 

「いいのよ、葵。母さんはそのことをわかった上で、この子を産もうと思ったんだから。松陽さんに迷惑かけちゃうと思ってたけど、葵も目を覚ましてくれたし、安心して産めるわ。」

 

素敵な母上でした。

 

私の生前じゃ考えれない、ってか、絶対聞くことのない言葉ですよ。

だって産んだ子ども、殺そうとする親ですからね?

あー、最悪。変なことを思い出してしまった。

 

 

私が生まれた時代、銀さんはまだいなかった。もちろん、桂や高杉もいない。でも、父上は私塾を開いていたので、もうそろそろかな?とは思ってるんだけど…。

なんせ、松陽先生が何歳で銀さん拾ったのか忘れてしまった、っていうかそんなこと書いてあったっけ!?って感じなんで。

 

まぁ、なるようになるでしょ。父上が拾ってくるのを待ってればいいわけで。

 

 

次に私の容姿……、いや、わかってたけど。

確かに原作読んだ時から、『沖田くんと松陽先生ってそっくりだなぁ』って思ってましたけどもっ!!

 

……ここまで似ますかね、、、?

私の容姿は、沖田くんの髪を長くして、瞳の色を赤とか青じゃなくて茶色(?)みたいな、緑(?)みたいな中性的な色にした感じ。

 

えっ?全然違うって??そんなことないんですよ。

鏡を見た時、すっごい驚いて、そんな私を見て父上もすっごい驚いてました…。

並んだら双子に見えちゃうんじゃないかな…?

 

 

最後に立場…?っていうか、私のポジション…?

とりあえず私塾では『姐さん』と呼ばれている。みんな、私より幼いから、たくさん弟がいるみたいで楽しい。

後は『先生』と呼ばれることもしばしば。やっぱり家に先生がいるのもあるし、私自身、たくさん勉強したかったくて、たくさん教えてもらっていたら、私塾の子たちよりは頭が良かったからかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、私は生前の、何十、何百、何千倍もの愛を受けまして、育ちました。

生前の十六年より幸せな一年を過ごしましたよ。はい、気づけば転生してからもう一年ですよ。

何事も無かったわけじゃないんだけどね、それなりに天人が近くまで来たり、それなりに戦場の状況が伝わってきたり。でも銀さんはいなかった。村を探してみたけど、桂も高杉もいなかった。

 

とりあえず、私がとーっても愛を受けた一年でした。ということですかね。

 

 

そして、ちょうど一年がたった今日は……、

 

弟が産まれそうです。

 

 

うん、びっくりだね。私の生前の弟も、私が八歳のときに産まれたんでね。これは、あのキモイ神様の仕業なのか…?

 

―――キモイってひどくなぁい?

 

そういえば、頭の中にいるって言ってたっけ?

…………放っとこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オギャァァァァ!オギャァァ!!!」

 

元気に生まれました。私の願い通り弟が、

 

 

 

 

 

母上の命と引換に。

 

 

母上は、弟を抱いて笑って泣いてました。

その顔は、死に際の人の顔だとは思えないくらい綺麗でした。

 

「葵。」

 

「何ですか、母上。」

 

「松陽さんと弟をよろしくね。あなたとちゃんと過ごせた一年、すごく幸せだった。本当にありがとう。丈夫に産んであげれなくてごめんね。娘と過ごす時間がこんなに楽しいものだと知らなかったから、これからもう過ごせないと思うと、それだけが悲しいかな。

 

目を覚ましてくれてありがとう。

声を聞かせてくれてありがとう。

母上…って呼んでくれて、ありがとう。

 

葵、愛してるわ。」

 

 

私は初めて泣きました。生前でも泣きませんでした。

泣いたら、うるさいと殴られる。そんな家だったから。

 

しかも怖くて泣いてるんじゃない。嬉しくて泣いてる。

父上は、私と母上と弟を抱きしめてくれました。

 

 

「ふぅ……。出産は何度経験しても、素敵なものだわ。

 

でも疲れちゃったから、少し寝るわ。おやすみ、松陽さん、葵、蒼汰(そうた)。」

 

そう言って私を初めて愛してくれた女性は、この世を去った。

その顔はすごく穏やかで、やっぱり綺麗でした。

 

私の腕の中には、母上の綺麗な黒髪を受け継いだ弟の蒼汰。

父上に聞いたところ、生まれる前からちゃんと考えていたらしい。

 

「蒼汰、というのは『健康で元気に』という願いが込められるんです。」

 

妻である母上も娘である私も、病に侵されていたから、元気に育って欲しい、っていう意味だったんだろうな。

 

 

 

 

 

こうして吉田家に新しく命が生まれました。

 

吉田蒼汰。私の大切な弟。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。