「くそっ……!!もう一回だっっ!!」
「はぁ……?お前、それ今日何回言ってんだよ。俺もう疲れた~。」
―――銀さんの原作通りの性格が、作り上がってきてるなぁ……。
そんなふうに思う今日このごろ。
私はお昼を作っています。
「うん……美味しそうだなぁ。」
自画自賛できるほど、今日の出来栄えは素晴らしいです。
「ふぅ……疲れた。」
弁当一つ作るぐらいで疲れるなって?
いやいや、もっと視野を開くして見てみてくださいな。
はいっ。
以前は4個だった重箱のような弁当箱が7個になりました。
……いや、純粋に人数が増えたってのもあるんですよ?
でも……あの時期を食べ盛りだと思っていた私自身を恨みたい。
7個目を作り終えて、時間は12時30分,。うん、いい時間だな。
本当は道場に持ってきたい。
蒼汰や銀さんの稽古姿を見てみたい。
でも……出来ないんです。……はぁ。
なぜかって?それはもうすぐわかりまs……
「お姉ちゃーん!!」
……ナイスタイミングっ!
「お疲れ様、蒼汰、銀時。」
「疲れた~。葵姉、水ちょうだい。」
「はい、
今日はずいぶん激戦してるみたいだね。」
「銀兄が全部返り討ちにしてやったよ!」
「そうなの?銀時、すごいじゃん。」
「別に、、、多分葵姉に比べたら全然……、」
「そんなことないと思うよ。見てないからわかんないけど……。」
そんな雑談をして、2人は道場に戻って行った。
……弁当箱を持って。
そう、目的はこれ。
2人は、私と高杉を会わせないように道場に来ることをすごく嫌がる。
うぅぅ……私だって見たいのに、、、。
自分で言うのもあれだけど、弟2人はとってもシスコンだと思う。
そんな2人に守られてます。
「……まぁ、前世で守っていた存在に守られるのも、悪くないか…。」
前世では、私が弟を守ってた。
私を守ってくれる存在なんていなくて……
不安で押しつぶされそうになって、投げだしたくなった時もあった。
それを思うと、今の状況は幸せなんだな、って思う。
――――――ザァァァァ……
縁側に出て少し休憩。
気持ちのいい風か吹いている。
田舎ならではの……落ち着く静かさ。安心できる静かさ。
静かで安心できる場所もなかった。
家に一人でいても、いつも誰かに見られている感覚。
本当はそんなことなかったのかもしれないけど、警戒を解かないのが自然な状態になってしまっていた。
外に出て大きく伸びをする。
「~~~~~~っっ!気持ちいいなぁ……。」
今日は洗濯日和だ。ちゃっちゃとやっちゃおうっと……!
なんて言っても、生前と違って電気なんてないですよ、もちろん。
ここはいわば江戸時代。洗濯は手洗いです。
うん……ちゃっちゃと出来るわけが無い……。
「文句言ってても仕方ないや……。」
銀さんも蒼汰も高杉も頑張ってることだし、私も頑張ろっと。
……あれ?そういえば、もう一人はまだ登場してない「こんにちは。」……。
前言撤回。今まさに登場してきました。
ロングヘアーが特徴の彼。今は一つにしばってて、顔立ちが整ってるからすごく女の子みたいだ……。
「あの……、顔に何かついてますか?」
わぁ、声可愛いなぁ。
「ううん、ごめんなさい。えっと、君は?」
「初めまして。桂小太郎といいます。
今、道場破りに来ている奴……高杉晋助というんですが、そいつの連れみたいなものです。」
丁寧にお辞儀をされた。
「そうでしたか。」
「すみません、面倒くさいかもしれませんが、本当は純粋にあなたに会いたいだけなんです。」
「ふふっ……知ってますよ。大声で叫んでるの見てましたから。」
桂に、高杉を始めてみた時のことを話すと、爆笑していた。
っていうか、綺麗な日本語。これがあの厨ニ病発言しかしない奴になると思うと、人間どう転がるかわからないもんだな、と思う。
「名前を伺ってもよろしいですか?」
「あっ、吉田葵といいます。よろしくお願いします。」
そう言って微笑むと、顔を真っ赤にされた。
―――まじか。
……まぁいいんだけど…さ。
「葵さんは、高杉のせいで道場に行けないんですか?」
……ん?えーっと、、、そういうわけじゃないよね…?
「そんなことないですよ。弟たちがうるさいので、行かないだけですよ。
実際そうだし……。
「では、やるべき事が終わったら道場に行けますかっ!?」
「えっ!?」
急に声が大きくなり驚いた。
「えっ、えーっと……。そういうわけにもいかないかな、、、。」
「では……葵さんは、いつ稽古をなさってるんですか?」
「け、稽古……ですか?」
「はい。
俺も高杉も、葵さんが天人を倒していたところを見ていたんです。
あの動きは、素人のわけがない。」
「……。」
「俺たちはあなたに学びたくて来たんです。」
あぁ、あれを見てたのか……。
稽古……、まぁ蒼汰が産まれる前に、父上に少しだけ教えてもらった。
それぐらいなんだよな…。
どうやって答えれば、彼を納得させることが出来るか……。
考えていた時に、道場から大声があがり、
「「!?」」
ドタバタと走ってくる足音。
「葵姉!!」
「銀時??どうしたの?」
よほど焦ってたのか、額にうっすら汗をかいている。
「た、た、高、高杉がっ!!」
「えっ……?」
「!?……高杉がどうかしたのかっ!?」
「高杉が、道場で倒れたっ!しょーよーが、葵姉呼んでこいって!!」
何かあったのか。
とりあえず、急いで向かおうとする。……あっ。
いい解答あった。
「小太郎くん。」
「!?……はい。」
「君が見たあれは、私の精一杯です。無我夢中でやってたのであんまり覚えてませんが……君も鍛錬すればあれくらいになんてすぐなれますよ。
私はあれ以上強くなることはありません。
私に戦いは、もう必要ないんです。私には
父上と約束したから。
刀をふるという意味を理解してからふると決めたから。
「……。」
「限界の見えてる私に学ぶより、無限の可能性を持ってる先生と仲間たちと学んでください。」
「……、、、。」
「それで、君が私より強くなったら手合わせしてみましょう。」
「……!!」
その時に、私の中で決まっているものがあれば……。
いや、決まってるものを作らなきゃダメなんだ。
「さて、行きましょうか。」
「ではっ!!」
「!?」
行こうとした私の背中に、桂は叫び、
「お願いです……。高杉に会ってやってください。
あいつを、助けてやってください。」
頭を下げた。
何から助けて欲しいのか。
今倒れている、ということからか……。
それとも彼の家のことか……。
「わかりました。心配しないでください。」
それは、すべてに対しての答え。
私に出来るなら、やりたいと思う。
君らの未来につながるなら、なんでもやりたいと思う。
そう。
『なんでも』やりたい。