IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

12 / 55
お気に入り登録、70件!ありがとうございます!!

評価・コメント、お待ちしております。


“斬る”ということ、“殺す”ということ、

 

「…………。」

 

―銀さんや蒼汰たちを助けた帰り

――力をもらった帰り

 

―――初めて斬った帰り

 

 

「Zzz…Zzz……」

 

腕の中では、規則正しい寝息で寝ている蒼汰。

 

 

私の心は、気持ち悪いぐらい落ち着いていた、…天人とはいえ、“斬った”ことには変わりないのに…。

 

「葵…姉ちゃん……」

「んー?どうしたの?」

「……んーとね、えーっと…、」

 

……?

急に困りだす銀さん。

…と思ったら、裾を引っ張られたので、銀さんと同じ目線までしゃがんだ。

 

 

―――ぎゅーっっ

 

「!?」

 

銀さんは突然、蒼汰を抱っこしてる私に抱きついてきた。

 

銀「あっ葵姉ちゃん、悲しそうだったから。

僕が悲しんでる時、葵姉ちゃん、抱きしめてくれて…嬉しかったから…。」

 

 

ありゃりゃ。銀さんとはいえ5歳の子どもに心配されちゃいました……申し訳ない。

 

「ふふっ……、」

「……?」

 

銀さんが驚いて、首をかしげていた。

 

「ありがとう、銀時。おかげで元気でた。」

 

そう言って、銀さんのモフモフの頭を撫でた。相変わらず、気持ちいいなぁ…。

 

 

「早く帰ろっか、父上も心配してるだろうしね。」

「うんっ!」

 

既に沈みかけてる夕日が、三人の影を伸ばした。

 

 

 

《松陽side》

 

「あんたんとこの娘さん、すごいよ!見直したっ!!」

「あの娘は、村の英雄だよっ!」

 

なかなか帰って来ない、葵たちを探しに行こうとしたら、玄関先で村の方に捕まりました、……一体、どういうことなのでしょうか?

 

「あの、いまいち話がつかめないのですが…。葵がどうかしたのでしょうか?」

 

 

 

―――そりゃあ、帰ってきたら本人に聞いてみなよ

 

結局、葵が何をしたのかはわからず、探しに行くこともやめました。葵たちが無事であることは確認できましたので。

 

 

「……ただ今帰りました。」

「お帰りなさい、葵………、、、?」

 

葵の腕の中には、蒼汰と銀時が眠っていました。

 

 

いえ、そこに疑問を抱いたわけではありません。葵の…、葵の顔が、服が……至るところが真っ赤に染まっていたのです。

 

「葵っ!?一体、何があったのですかっ!?怪我はありませんか?」

 

そう言うと、葵は急にハッとした様子で、顔を上げ目を見開いた。

 

「……っ、、、。

とりあえず、蒼汰と銀時、寝かしてきます。」

「わかりました。居間で待っていますよ。」

 

はい、と言って葵は二人の弟を寝かしつけに行きました。

 

「…………。」

 

初めてでした。

あんなに悲しそうな顔をした葵を見るのは…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

銀さんも、話した後から眠くなってきたらしく、目をこすり始めた。…まぁ、無理もない。いくら銀さんといえども五歳の子どもなのだ、刀なんていう物騒な物を向けられてたら、疲れるよな……。

 

「よっ。」

「へっ!?」

「寝てていいよ、疲れたでしょ?」

「だっ、大丈夫!」

「ふふっ、いいのいいの。お疲れ様、銀時。よく頑張ったね。」

 

そう言ってあげると、安心したのかなんなのか…、寝てしまった。相変わらず二人とも軽くて、簡単に抱っこできる。

 

 

 

 

二人が寝て、話す人がいなくなって……、考えてしまった。

―――どうして、こんなにも落ち着いてられるんだろう、と。

 

斬ったのだ。人じゃないけど、生きてるものを。

 

刀に赤い血がついた時…、一番初めに天人の心臓を貫いた時……。

あの時、私は何を考えていたのだろう。

思い出そうとしても、全く思い出せない。……何も考えていなかったのだろうか。――どうして…?

 

『“前世”と“今”は違う』

そんなことは誰も言ってない、でも同じだとも言ってない。

 

それでも、誰かに言って欲しかった。

私は、あの(・・)両親と血のつながりのない子なんだ、と。

 

 

「やっぱり、親子なんだ…。」

 

人を道具としか思ってない、あんな奴らと…。

人の命を奪うことをなんとも思わない、あいつらと……、

 

―――私は今日、同じことをしてる

 

命を奪っておいて、何を感じていたのかすら覚えていない。

そのことを自覚すると、とにかく辛かった。

 

 

「………………。」

 

寝ている銀さんを見て思う。この人は、本当に強いひとなんだ、と。

“殺す”という行為に、『ためらい』というものを感じて、それでも守りたいものがあったから『信念』を持って木刀で戦っているんだと思う。

 

まだ出会ってないけど、きっと桂とか高杉とか真選組とかも…。

みんなそういう『信念』を持っ(感じ)て斬っているんだと思う。

 

 

―――それに対して私は?

 

『信念』なんて綺麗なものを持ってるわけじゃない。

そしてあの時、私は間違いなく『殺す』という行為にためらいがなかった。何とも思ってなかったんだ。

 

 

「……っっ。」

 

悔しい、悲しい。でも涙が出ないのは、なんでだろう。

 

 

 

 

 

そんなことを考えていたら、家に着いた。

もう日は沈んでて、周りは結構暗い。

 

「……ただいま帰りました。」

「お帰りなさい、葵………、、、?」

 

そうだ、話さなきゃいけないんだ、今日のこと…。

何を…、どの部分を話せばいいんだろうか。

 

 

「葵っ!?一体、何があったのですかっ!?怪我はありませんか?」

 

…うぉっ、忘れてた。

暗くてよく見えなかったけど、私の服は血だらけ。そりゃあ、驚くよな…。

 

「……っ、、、。

とりあえず、蒼汰と銀時、寝かしてきます。」

「わかりました。居間で待っていますよ。」

 

そう言って逃げた。

あの松陽先生に隠し事なんて出来るはずかない。

 

 

 

 

『何かあればいつでも、力になりますからね。』

 

こんな時に、父上の言葉を思い出して、それにすがろうとする私は、ずるいのかもしれない。

 

 

許してください。

 

あなたを頼りたい。

少しでもそう思ってしまった私を。

 

もしかして、あなたなら…。

そう願ってしまった私を。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。