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「…………。」
―銀さんや蒼汰たちを助けた帰り
――力をもらった帰り
―――初めて斬った帰り
「Zzz…Zzz……」
腕の中では、規則正しい寝息で寝ている蒼汰。
私の心は、気持ち悪いぐらい落ち着いていた、…天人とはいえ、“斬った”ことには変わりないのに…。
「葵…姉ちゃん……」
「んー?どうしたの?」
「……んーとね、えーっと…、」
……?
急に困りだす銀さん。
…と思ったら、裾を引っ張られたので、銀さんと同じ目線までしゃがんだ。
―――ぎゅーっっ
「!?」
銀さんは突然、蒼汰を抱っこしてる私に抱きついてきた。
銀「あっ葵姉ちゃん、悲しそうだったから。
僕が悲しんでる時、葵姉ちゃん、抱きしめてくれて…嬉しかったから…。」
ありゃりゃ。銀さんとはいえ5歳の子どもに心配されちゃいました……申し訳ない。
「ふふっ……、」
「……?」
銀さんが驚いて、首をかしげていた。
「ありがとう、銀時。おかげで元気でた。」
そう言って、銀さんのモフモフの頭を撫でた。相変わらず、気持ちいいなぁ…。
「早く帰ろっか、父上も心配してるだろうしね。」
「うんっ!」
既に沈みかけてる夕日が、三人の影を伸ばした。
《松陽side》
「あんたんとこの娘さん、すごいよ!見直したっ!!」
「あの娘は、村の英雄だよっ!」
なかなか帰って来ない、葵たちを探しに行こうとしたら、玄関先で村の方に捕まりました、……一体、どういうことなのでしょうか?
「あの、いまいち話がつかめないのですが…。葵がどうかしたのでしょうか?」
―――そりゃあ、帰ってきたら本人に聞いてみなよ
結局、葵が何をしたのかはわからず、探しに行くこともやめました。葵たちが無事であることは確認できましたので。
「……ただ今帰りました。」
「お帰りなさい、葵………、、、?」
葵の腕の中には、蒼汰と銀時が眠っていました。
いえ、そこに疑問を抱いたわけではありません。葵の…、葵の顔が、服が……至るところが真っ赤に染まっていたのです。
「葵っ!?一体、何があったのですかっ!?怪我はありませんか?」
そう言うと、葵は急にハッとした様子で、顔を上げ目を見開いた。
「……っ、、、。
とりあえず、蒼汰と銀時、寝かしてきます。」
「わかりました。居間で待っていますよ。」
はい、と言って葵は二人の弟を寝かしつけに行きました。
「…………。」
初めてでした。
あんなに悲しそうな顔をした葵を見るのは…。
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銀さんも、話した後から眠くなってきたらしく、目をこすり始めた。…まぁ、無理もない。いくら銀さんといえども五歳の子どもなのだ、刀なんていう物騒な物を向けられてたら、疲れるよな……。
「よっ。」
「へっ!?」
「寝てていいよ、疲れたでしょ?」
「だっ、大丈夫!」
「ふふっ、いいのいいの。お疲れ様、銀時。よく頑張ったね。」
そう言ってあげると、安心したのかなんなのか…、寝てしまった。相変わらず二人とも軽くて、簡単に抱っこできる。
二人が寝て、話す人がいなくなって……、考えてしまった。
―――どうして、こんなにも落ち着いてられるんだろう、と。
斬ったのだ。人じゃないけど、生きてるものを。
刀に赤い血がついた時…、一番初めに天人の心臓を貫いた時……。
あの時、私は何を考えていたのだろう。
思い出そうとしても、全く思い出せない。……何も考えていなかったのだろうか。――どうして…?
『“前世”と“今”は違う』
そんなことは誰も言ってない、でも同じだとも言ってない。
それでも、誰かに言って欲しかった。
私は、
「やっぱり、親子なんだ…。」
人を道具としか思ってない、あんな奴らと…。
人の命を奪うことをなんとも思わない、あいつらと……、
―――私は今日、同じことをしてる
命を奪っておいて、何を感じていたのかすら覚えていない。
そのことを自覚すると、とにかく辛かった。
「………………。」
寝ている銀さんを見て思う。この人は、本当に強いひとなんだ、と。
“殺す”という行為に、『ためらい』というものを感じて、それでも守りたいものがあったから『信念』を持って木刀で戦っているんだと思う。
まだ出会ってないけど、きっと桂とか高杉とか真選組とかも…。
みんなそういう『信念』を
―――それに対して私は?
『信念』なんて綺麗なものを持ってるわけじゃない。
そしてあの時、私は間違いなく『殺す』という行為にためらいがなかった。何とも思ってなかったんだ。
「……っっ。」
悔しい、悲しい。でも涙が出ないのは、なんでだろう。
そんなことを考えていたら、家に着いた。
もう日は沈んでて、周りは結構暗い。
「……ただいま帰りました。」
「お帰りなさい、葵………、、、?」
そうだ、話さなきゃいけないんだ、今日のこと…。
何を…、どの部分を話せばいいんだろうか。
「葵っ!?一体、何があったのですかっ!?怪我はありませんか?」
…うぉっ、忘れてた。
暗くてよく見えなかったけど、私の服は血だらけ。そりゃあ、驚くよな…。
「……っ、、、。
とりあえず、蒼汰と銀時、寝かしてきます。」
「わかりました。居間で待っていますよ。」
そう言って逃げた。
あの松陽先生に隠し事なんて出来るはずかない。
『何かあればいつでも、力になりますからね。』
こんな時に、父上の言葉を思い出して、それにすがろうとする私は、ずるいのかもしれない。
許してください。
あなたを頼りたい。
少しでもそう思ってしまった私を。
もしかして、あなたなら…。
そう願ってしまった私を。