前回の投稿から時間空けすぎたのでもう一話書き溜めてから投稿しようと思ってたんですけど、それやろうとすると一生投稿出来ないような気がしたので。
自宅のアパートからほど近い、小さな児童公園。
私は新川くんに呼び出され、ここへとやって来た。遊具二つに小さな砂場が一つだけのうら寂しい場所だからか、日曜日にも関わらず遊ぶ子供の姿は無く、この公園にいるのは私たち2人だけだった。
片側のブランコに座り、ぼうっと空を見ていた新川くんは、私の姿を見つけるとゆっくりと立ち上がった。
私も少し急ぎ気味に彼の元へと向かう。
「おはよう、朝田さん。ごめんね、本戦を控えてるこんな時に呼び出したりしちゃって」
「ううん、良いよ。それよりも大事な話って⋯⋯なに?」
急かすようにして申し訳ない気持ちはあるが、早めにGGOに潜ってコンディションを整えたい私としては、なるべく話は早く終わる方が有難い。
新川くんは苦笑いを浮かべて、頬を掻いた。
「⋯⋯うん、そうだね」
それじゃあ、言うね。
そう前置きしてから、新川くんは予想だにしなかった言葉を口にしたのだ。
「朝田詩乃さん、あなたが好きです。僕と付き合ってください」
「⋯⋯え?」
数秒、思考が止まる。彼の言葉の意味を理解するのに、ある程度の時間を要した。
新川くんが──私のことを?
「何で⋯⋯?」
真っ先に口をついたのは、そんな、どうとでも取れるような単語だった。
何で、私のことが好きなのか。
何で、そんなことをBoB本戦の直前である今、言うのか。
そんな私に、新川くんは真面目な表情で答えた。
「朝田さんは、いつもクールで超然としててさ。とってもかっこよくて⋯⋯強いんだよ、すっごく。朝田さんのそういうところ、ずっと憧れてた。僕の理想なんだ、朝田さんは」
新川くんは静かに、噛み締めるように呟く。まるで、懺悔のように。
私が、強い⋯⋯?
いや、私は強くなんかない。いつも、隣にアイツがいてくれたから。安心できる居場所があったから余裕が出来ていただけだ。
しかし⋯⋯それも今は。
眉を伏せ、顔を俯かせる。微かに、声が震えた。
「私⋯⋯強くなんか無いよ。君も知ってるでしょう。銃とか、見ただけで、発作が⋯⋯」
「シノンは違うじゃない。あんな凄い銃を自在に操ってさ⋯⋯僕、あれが朝田さんの本当の姿だと思う」
違う、と反感を覚える。私の本当の姿は、ずっと前から心の中で救いを求めてる、弱い私なんだ。
「きっと、いつか、現実の朝田さんもああなれるよ。僕に出来ることがあったら、何でもしてあげる。だから⋯⋯」
違う。私が本当に求めてるのは──
そこまで反射的に考えて、気付く。私が本当に欲しかったものに。今までの関係が心地よすぎて、それを変えないようにと気付かないフリをしていた、その気持ちに。
「僕と、付き合ってください」
そう、頭を下げた新川くんに、暫し時間を空け、私も頭を深く下げた。
「ごめんなさい。新川くんの気持ちは嬉しいと思う。⋯⋯でも、私は君とは付き合えない」
顔を上げると、新川くんは少し困ったような、しかしそれでいて優しさを感じさせる笑顔でこちらを見ていた。
「理由を聞いても、いいかな」
多分、新川くんは分かっている。1番私たちのことを近くで見ていたんだ。振り返ってみれば自分でも分かりやすいと思うようなことに、気付かないはずがない。
でも、私の答えが聞きたいと、彼は言っている。
「私は──」
そこで止めて、一度息を深く吸う。これを口に出したら、もう止まれない。
いや、もう止まる必要なんて、無いんだ。
「私は、幸人が好き。⋯⋯だから君とは、付き合えない」
「⋯⋯うん」
「ありがとう。新川くん」
頭を下げると、彼は静かに首を振った。
「僕は朝田さんに告白しただけだよ。お礼を言われるようなことなんて、何もしてない」
言葉の終わり際が何かを堪えるように震えたが、私はそれに気付かないフリをした。私は彼の想いを拒絶したのだから、慰めを言う権利なんて有りはしない。
「本戦、頑張ってね。応援してる」
そう言って、私の返事を待たずに新川くんは踵を返して早足で去っていった。その際、目尻に浮かんでいた雫に、私は気付かなかった事にするしか無かったのだった。
登場キャラ達の性格をしっかり考えてみたら、遅くても2話後から始まるはずの本戦が当初の予定通り進まない事が確定してしまって色々考えてます。