俺とシノンのお隣さんライフ   作:ラビ@その他大勢

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あれです。
投稿できない理由は完全にモチベーションの問題です。
投稿遅れてすみません!


詩乃の本音

――目が覚める。

 

真っ先に見えたのは、見慣れた天井だった。先程まで視界にあった鬱蒼と生い茂る森林ではなく、自分の部屋のものだ。それに気付くのに、そう時間はかからなかった。

 

「――っ」

 

訳が分からないまま体を起こそうとすると、鈍い頭痛が走った。思わず顔をしかめて頭を抑える。

 

痛みが収まり、少し経った後。

 

ところで――

 

何で俺、自分の部屋に居るんだ?

 

ろくに回らない頭で、それでも真っ先に脳裏に浮かんだのはその事だった。

ついさっきまで闇風と戦っていたはずなのに、なぜ今俺はここにいるのか、という単純な疑問である。

普通に考えれば、大会が終わってログアウトした後、寝落ちしたんだろうが……その記憶が全くない。

記憶が無くなるほど激しく戦ったのかとも考えたが、それとは何だか違う気がする。

俺が一人首をかしげていると、不意に。洗面所から詩乃がひょこっと顔を出した。そして、俺の姿を見て少し安堵したように息を吐く。

 

「あら、起きた?」

「……詩乃?」

 

何で詩乃が俺の部屋に?

 

その疑問が余程顔に出ていたのか、詩乃は「ちょっと待ってて」と心持ち固い声で答えると、再び洗面所に顔を引っ込めた。

 

「……?」

 

何をしているのかは気になるが……まあ、詩乃のことだ。多分変なことはしないだろう。

そう割り切って意識を別のことへと持っていく。

あぁ、そう言えば。

起きてから訳の分からないことの連続ばかりで頭が混乱しているが、取り敢えず起きて着替えるべきだろう。

 

「よっと……っと?」

 

そう考え、ベッドから出たは良いものの――

いざ立ち上がろうとした途端、目眩がして再びベッドへと座り込んだ。

何故だろうか。さっきから、自分の体が思うように動いてくれない。

不思議に思って首をかしげていると、洗面所から詩乃が出てきた。手に持っているのは濡れタオルと――俺の寝間着。

 

「まだ寝てなさい。熱酷いんだから」

 

そう言われて、ようやく自分が風邪を引いていたことに気付く。さっきから思考が上手く回っていなかったのもそのせいかもしれない。

 

納得してそのまま寝ようと――したところで、それよりも気になることがあることに気付き、勢いよく体を起こす。そう、今は俺の不調なんかよりも、新川の死銃化を阻止できたのかが問題だ。

 

「BoBはどうなったんだ! 優勝したのは!?」

 

詩乃は普通ではない俺の剣幕に少したじろぎながらも小さく溜め息をついた。

 

「……それより前に、私も幸人に聞きたいことが幾つか有るんだけど」

 

そして、視線を尖ったものに変える。

 

「――何でこんなになるまで無茶したの?」

 

 

* * *

 

 

何故こんなになるまで。無茶をしたのか――

 

私がそう問うと、幸人は視線を虚空にさ迷わせた。

……いつもこうだ。

彼は私を誤魔化すための言い訳を探すときには、いつもこうやって私から目を逸らす。

幸人は気まずそうに一瞬顔を伏せた。

 

「……えっと……まあ、ゼクシードに優勝はさせたくなかったからさ」

「――ふざけないで」

 

いつもなら頼ってくれないことに少し不満を覚えながら引くところだが――今回は流石に我慢できなかった。

アミュスフィアに強制切断されるほどの無茶な行為をしていたのだ。まさか、それだけのためである筈がないだろう。

 

「ふざけるなって……何がだよ」

「そうやって誤魔化すのをやめてって言ってるの」

 

私の言葉を聞いた幸人の瞳が、少し揺れた。

 

「……別に何も誤魔化してない」

「嘘。たったそれだけのためにアンタがそこまで入れ込む筈が無いもの。今だって自分の体よりBoBなんかの試合結果を気にしたり……」

 

断言すると、幸人は気分を害したように眉を潜める。

 

「詩乃だって俺の全部を知ってるわけじゃないだろ。そう言いきれる訳がない」

「それくらいは分かるわよ。ずっと隣に居たんだから。何年の付き合いだと思ってるの?」

「……っ。……もしそうだとしても、詩乃には関係ないだろ」

 

――お前には関係ない。

そう言いきられ、私は自分の頭にカッと血が登るのを感じた。

 

パン、と乾いた音。

 

それが、自分が幸人の頬を叩いた音だと気付いたのは、その少し後だった。

怒りを抑えきれないまま、怒鳴るように叫ぶ。

 

「ふざけないで! 何も言わずに黙って無茶して! 相談もせずに心配かけて! 話を聞こうとしたら誤魔化して……挙げ句の果てには『お前には関係ない』!?」

 

視界が滲む。声が掠れる。頬を熱いものがつぅっと流れていく感覚があった。

 

「もう一度……ううん、何度でも言うわ」

 

一息おいて、幸人をしっかりと見据える。

 

「ふざけないで」

 

私は震える声でそう呟くと、踵を返して幸人の部屋を後にした。


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