バカは死ななきゃ治らない   作:しろねこパンチ

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episode6

私は迷宮区に3.4日程篭りひたすらにモンスターを狩っていた。しかしある時ふらっと体から力が抜け倒れてしまった。目の前にモンスターがいるにも関わらず、その時思ったのはゲーム内で疲労で倒れるというのはどうゆう理屈なんだろう、そしてこれから私は死ぬのだと。薄れゆく意識の中で視界にふらりと黒い影が現れた。モンスターかと思ったが攻撃はしてこない。モンスターがポリゴンとなり四散する音が聞こえ、黒い影は私に近づき一言だけ囁いた。

 

『もう、大丈夫』

 

その言葉を聞いてわたしの意識は暗転した。

 

 

・・・あたたかい。

 

目が覚めて肌に感じたのは、冷たい地面ではなく柔らかく暖かい丘の野原だった。辺りを見渡すと1人の少年が背を向けて立っていた。

 

「・・・貴方が私を助けたの?」

 

少年はただ首を横に振るだけで何も答えなかった。しかしその背中から哀愁のようなものを感じた。信じていた者に裏切られた様なそんな感じがした。そして何故かは分からないがその少年を放ってはおけなかった。

 

「・・・貴方はそこで何をしているの?」

 

少年は何も答えない。ただ抜剣した剣を強く握り締めるだけだ。ああ・・・彼も何か悩みがあるのだ。直感的にそう感じた。私と同じく彼も苦しんでいる。苦しいのは私だけじゃない。ふと時計に目をやると私が記憶の残る時間よりかなりの時間が過ぎていた。倒れていたにも関わらず生きているという事は私は守られていたのだろう。

 

「・・・ありがとう」

 

その言葉を聞いた彼は勢いよく振り向いた。目から涙を溢れんばかりに貯めていた。

 

「俺はっ!俺は何もしてない!」

「それでも、いてくれたんでしょ?」

 

ボロボロと涙を流し言葉を漏らした。

 

「それは、アイツが、そう、したから・・・」

 

“アイツ”というのが誰かは分からないけど、彼にとって大切な人で私を助けてくれた人なんだろう。

 

「その人が私を助けてくれたの?」

 

少年は僅かに頷いた。なら私はその人に会わなくてはならない。助けられてお礼も言えないのはイヤだ。

 

「その人はどこにいるか分かる?」

「・・・分からないんだ、俺も探してる」

 

第1層しかないのに人1人を見つけられないという事は相当隠れるのが上手いのだろう。どうにかして見つけなければ・・・

 

「なら2人で探しましょ。目的はお互い一緒ですもの」

 

私1人では限界がある。そもそも私はこの世界に詳しく無い。彼は私よりも知っていそうだ。

 

「・・・分かった、俺はキリト、よろしく」

「アスナよ、よろしくねキリト君」

 

この出会いと出来事が私の人生を大きく変えた。

 

 

2人が街へ戻る後ろで黒マントの男が1人嬉しそうな寂しそうな表情をして佇んでいた。

 

「あの子も大丈夫だし、キリトも元気そうでよかった・・・けど」

 

 

「キリト君の泣き顔って可愛いね」

「それは忘れてくれ・・・アスナのほうがよっぽど可愛いよ」

「もうキリト君たら///」

 

 

「イチャつくのは止めてくれないかな・・・」

 

 

「探すって言ったけどどうすればいいと思う?」

「それについては考えがある」

 

アスナと迷宮区最寄りの《トールバーナ》に来てある場所に向かっている。

 

《トールバーナ》のメインストリートを抜けると噴水のある広場へと出た。広場には40人程のプレイヤーが集まっていた。装備を見るからに高レベルプレイヤーだろう。

 

「この人たちはいったいなに?」

 

「今日これから第1層攻略会議が開かれるんだ。こいつらは腕に自信のあるプレイヤー達だ」

「どうしてここに来たの?」

「俺達に共通する目的は2つ。ひとつは人探し、そしてゲームを攻略して現実に帰ること」

 

アスナは忘れていたように驚いた顔をしていた。

 

「ボス攻略に参加する理由はクリアする事を大前提にして他に3つ。ボス戦は多くの経験値とコルをゲットできる事、上位プレイヤーの顔を知っておく事」

「あとの1つは?」

「アイツを探すこと」

「っ!?彼がいるの!?」

「アイツのメインアームの《ジャック・ザ・リッパー》はバランスブレーカーだ。そしてアイツはベータの時極度のレベリング厨だった。たぶん今現在全プレイヤー中最強だ」

 

アスナは呆然としていた。

 

「つ、つまり彼もこの会議に来る確率が高いのね」

「そうゆうこと・・・そろそろ始まりそうだ」

 

前のほうがざわめきだし1人のプレイヤーが喋り出した。

 

「はーい!そろそろ始めたいと思います。そこの人達、あと3歩こっちに来てくれ!」

 

堂々たる喋りをするのは長身で青髪の片手剣使いだ。

 

「オレの呼びかけに応じてくれてありがとう!とりあえず自己紹介しとくな!オレは《ディアベル》、気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

冗談交じりに自己紹介する彼はなぜこんな奴がVRMMOをやっているのかと思ってしまうほどのイケメンだった。しかもコミュ力がカンストしているようだった。

 

「さっそく本題に入るけど昨日オレ達のパーティーが、ボス部屋を発見した!」

 

集まったプレイヤー達からどよめきが起こる。

 

「1ヶ月、ここまで1ヶ月かかったけど・・・それでもオレ達は示さなきゃならない、ボスを倒して第2層に行って、このゲームはクリア出来るんだと他のみんなに教えてやるんだ!それがオレ達トッププレイヤーの義務だ!そうだろみんな!」

 

喝采が沸き起こる。まるで非の打ち所の無い演説に感動したようだった。誰かがやるべき事を適任の奴がやってくれてよかった。

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

雰囲気を切り裂くように低い声が広場に通る。人垣が割れ声の主が見える。小柄だががっしりとした体格に特徴的な髪型、やや大型の片手剣を背負うその青年はディアベルの美声とは正反対のダミ声で唸った。

 

「コイツだけは言わてもらわんと、お仲間ごっこは出来へんなぁ」

「コイツってのは何の事かな?でも発言の前に名乗って欲しいな」

 

青年は鼻を鳴らし数歩前に出て名乗り始めた。

 

「わいは《キバオウ》ってもんや。こんなかに詫び入れなあかん奴らがいるはずや」

「詫び?誰が、誰にだい?」

「決まっとるやろ!ベータ上がりのクソ共が!死んでいった2000人にや!」

 

キバオウが吼えるように話し出す。

 

「ベータ上がりのクソ共はあの日からすぐ始まりの街から消えよった。そして旨い狩場を独占して自分達ばかりつよーなりおった。こんなかにもおるはずや、知らん顔して仲間に入れてもらおう思てる小狡い奴らが。そいつらに土下座させてアイテムとコルを出して貰わんとパーティメンバーとして命は預けられへんなぁ!」

 

ベータ上がりである俺に重く伸し掛るその言葉は、あの日見捨ててしまった野武士ヅラの男を思い出させた。同時に叫びたかった。ベータ上がりが誰1人死んでいないとでも思っているのかと。俺はアスナと出会う前にとある情報屋からベータテスターの死者数を調べてもらった。ベータテストを受けたのは1000人、その中で正式サービスに参加したのは恐らく700~800人、さらにその中で400人程がこの世界を去っている。現在死んでいったのは2000人そのうち新規プレイヤーの死亡率はおよそ17%、ベータテスターの死亡率は50%とベータテスターのほうが高い。知識と経験が必ずしも安全と言うわけでは無いことを示している。むしろ知識と経験があった分慢心し、本サービスでの変更点に気付けなかったのだろう。

 

「発言いいか?」

 

ディアベルの美声ともキバオウのダミ声とも違う、豊かな張りのあるバリトンボイスが響く。

 

発言と共に立ち上がったのは190はあるであろう巨漢だった。彫りが深く、肌はチョコレート色でスキンヘッドと


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