バカは死ななきゃ治らない   作:しろねこパンチ

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episode3

茅場晶彦が消え広場の静寂を壊したのは誰かの叫び声だった。

 

「ふざけんな!ここから出せよ!」

「この後約束があるの!お願い出して!」

「そうだ!これは何かの間違いだ!そうに決まってる!すぐにでもログアウト出来るはずだ!」

「お前男だったのかよ!騙したな!」

「お前だってリアル20歳って嘘だろ!」

 

誰かの叫び声を皮切りに広場は阿鼻叫喚と化した。

 

「ジャック、クラインこっちに」

 

神妙な面持ちでキリトに呼ばれ路地に入っていく。

 

「ジャックは分かってると思うが聞いてくれ。デスゲームとなった今この世界で生きていくためにはひたすら強くなるしかない。始まりの街の周りはすぐにリソースの取り合いになるはずだ。俺は今すぐこの街を出るつもりだ。2人も一緒に行かないか?」

「気持ちはありがてぇけどよ・・・ダチ達と一緒にログインしてんだ。そいつらを置いて行くなんて出来ねぇ」

「そうか・・・。ジャックは?」

「僕はついて行くよ。キリト1人じゃ死んじゃいそうだし」

「誰が死ぬかよ・・・それじゃあクライン、またな」

「友達によろしく」

「おう!二人とも色々教えてくれてありがとよ!」

 

僕とキリトはクラインと別れ始まりの街を去った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「キリト、今どこへ向かってるの?」

 

「ホルンカさ」

 

「ホルンカって事はあのクエストを受けるんだね」

 

ホルンカの宿で受けられるクエスト《森の秘薬》だったかな?その報酬のアニールブレードは強化すれば3層くらいまでは使えるはずだ。

 

「にしてもジャックの武器は凄いな。1層でその性能ってバランスブレーカーじゃないか?」

 

「まあ・・・そうだね」

 

始まりの街の西の外れに古びた小屋があって、その中に痩せこけたお爺さんが販売していたのを見つけた時は正直ビビったね。一瞬アンデッド系のモンスターかと思っちゃったもん。

 

《ジャック・ザ・リッパー》

 

切り裂きジャックの英語名にして僕がプレイヤーネームを変えようと思ったきっかけだ。

 

「武器自体が成長するってやば過ぎだよ」

 

モンスターをジャック・ザ・リッパーで倒すと僕だけでなくコイツにも経験値が入り性能が上がるらしい。

 

「無強化でもその性能なら3層までは余裕だろうし、その間に性能が上がるから武器もういらないじゃん。上限がどこまでかは知らないけど。いいなぁレア武器」

「運がよかっただけだよ」

 

そう、本当に運がよかっただけなんだ。猫探しのクエストがあって猫を追いかけたらたまたま見つけただけだからね。

 

「でも何種類かある中で1つ買ったら他のが買えなくなるなんてベータの時はそんなこと無かったんだけどなぁ」

 

話しながら歩いていたらいつの間にかホルンカについていた。

 

「クエスト受けてくるから少し待っててくれ」

 

キリトが宿屋に入っていくのを確認してから村を見て回る事にした。

 

「武器にコル使っちゃったから防具が紙なんだよなあ」

 

僕の防具は初期装備のままでこの辺りのモンスターの攻撃を受けたら死んじゃうな。

 

「まあ当たらなかったらいいか」

「ジャック!クエスト受けたから行こうぜ!」

 

キリトがクエストを受けて戻ってきた。

 

「行こうぜって僕もやるの!?」

「えっ!?手伝ってくれるんじゃなかったの!?」

「経験値欲しいから手伝うけどさ、前提で話されるのはアレだね」

「悪かったってそれじゃあ行こう!」

 

意気揚々と進むキリトの後を追って森へと向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「リトルペネント2体発見、1人1殺ね」

「OK!」

 

リトルペネントの攻撃は左右の蔦の振り下ろしと薙ぎ払い、前方への粘液攻撃の3つ。よく見れば確実に避けれる。最初は振り下ろし・・・半身引いて避け、続く薙ぎ払いをバックステップで避ける。粘液攻撃は前方だけ、しかも弧を描くように飛んでくるから!

 

「本体正面真下が最短安全圏!」

 

リトルペネントの懐に今現在の最速で滑り込みソードスキルを叩き込む!

 

「はぁ!」

 

短検二連撃ソードスキル《サイド・バイト》をリトルペネントの胴体に叩き込みHPの7割を削る。・・・やっぱりコイツはバランスブレーカーだな。いくらソードスキルとはいえここまで削れるとは。スキル硬直が解けてすぐに斬撃を入れHPを全損させる。

 

「キリトこっちは倒したよ…ってまだか」

「ジャックが速すぎるんだよ!」

 

片手剣単発ソードスキル《スラント》を当てキリトもHPを全損させた。

 

「全く武器がチートの癖にプレイヤースキルもチートってどうゆうことだよ。攻撃くるの分かったのか?」

「あはは、回避に関しては日頃の賜物かな?」

 

毎日毎日、クラスメイトに散々追いかけ回されたからなぁ・・・

 

「おーい、目が死んでるぞ、大丈夫か?」

「はっ!大丈夫だ、問題ない」

「・・・いやそれフラグだからね?」

 

 

 

《森の秘薬》クエストで宿屋の娘の病気を治すのに必要な素材を取ってきて欲しいと頼まれ、森の中でリトルペネントを狩っていた。かれこれ5時間も狩り続け僕らはある問題に直面した。

 

「・・・キリト」

「・・・なんでしょうか」

「花付きの出現率ってどれくらいだっけ?」

「1%だったと思います」

「通常のリトルペネント倒せば確率って上がるんだよね?」

「その通りです」

「今何体くらい倒したっけ?」

「2人合わせて500体は倒してると思います」

「そっか」

 

僕はウインドウを開いて時間を確認した。

 

「ねぇキリト」

「なんでしょうか」

「なんで1体もドロップしないんだよ!」

 

かれこれ5時間ぶっ通しで狩り続けているが1体もポップしていなかった。

 

「ベータの頃は長くても2時間位で終わったよね!?なんで僕らは5時間もやってるのさ!」

 

「知らないよ!公式アップデートで下方補正かかったんだろ!」

「こっちは紙装甲なんだよ!通常攻撃が致命傷なんだよ!」

「とか言いつつ被弾ゼロじゃん!紙装甲とか関係無いじゃん!こっちは武器がもうボロボロなんだよ!」

「精神的にヤバイの!デスゲームでなんで縛りプレイみたいなのやんなきゃいけないんだよ!」

「それこそ自業自得じゃないか!って囲まれてるぅ!?」

 

2人で言い合っているうちに10体近くのリトルペネントに囲まれてしまった。

 

「キリトのせいで囲まれたじゃん!これ終わったら飯奢りだからね!」

「ばっ!死にフラグ立てんな!」

 

 

 

「・・・僕の方で1個ドロップしてたよ」

「・・・やっと終わった、ありがとう」

 

倒している間に花付きが現れ無事にノルマを達成できた。

 

「早くクエスト報酬貰って戻ろうよ。お腹空いた」

「そうだな、実付きが出ると面倒だしな」

「それフラグじゃ・・・げ」

「どうし・・・マジかよ」

 

ホルンカの方向に実付きのリトルペネントがポップしていた。このフラグメーカーどうしてくれよう。

 

「無視していこう、流石に疲れた」

「僕も同感、それじゃあ競走だね!」

「あっ!卑怯だぞ!」

 

実付きのリトルペネントの左右に別れ走り抜けた。

 

否走り抜けようとした瞬間

 

パァン!

 

実付きの実が破裂した。

 


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