やはり私の青春ラブコメはまちがっている。(俺ガイル全キャラ性転換)   作:Wiiが欲しいと思わない。

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遅くなりました。文化祭後編です。
男女以外はあまり原作とかわりません……


文化祭エンディング

体育館へ向かうとステージでオーケストラが行われていた。指揮するのは雪ノ下兄。クラブハウスやライブハウスにいるのかと勘違いするように音楽に引き込まれる。

「…………な」

「え? なに?」

「さすがだなと言ったんだ」

「意外ね。あんたが褒めるなんて」

「俺は兄貴の事は高く評価している」

雪ノ下は小さな声で言った……

「俺も、ああなりたかったからな」

指揮を終えて振り向く雪ノ下兄の姿に憧れるのは仕方ないと思ってしまった。だけど、私の意見は――

「ならなくていいでしょ。あんたはそのままで」

――と言った。その発言が雪ノ下に聞こえていたのかはわからない。だけど私の素直な気持ちだった。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

エンディングセレモニーの準備をしようとやって来るとステージの大トリである葉山達がスタンバイしていた。ちなみにやるのはバンド。三浦や戸部は緊張か武者震いか震えていた。大和や大岡は自分の楽器を見つめている。応援に由比ヶ浜と海老名君も居てドリンクをマネージャーのように用意している。

私と一緒に来た雪ノ下はあっちやこっちや行ったり来たり。なにしてんの?

「おい、相模はどうした?」

私も見てみるけどそういえば、いない……

城廻先輩が文実に召集をかけて、相模を探させる。それでも来ないため、校内アナウンスをかけるが来ない。アナウンスを聞いてか平塚先生が来た。

「相模、居ねーと不味いのか?」

「集計結果を知っているのはあいつだけだ。このままではエンディングセレモニーができない……」

「集計し直すのは? 私達の演奏を一曲追加して時間稼ぎをすれば……」

「現実的ではないな。集計する時間も人手もない。君達が二曲追加しても足りないだろうな……」

「……なら、でっちあげましょう。どうせ票数は公開しないわけだし」

「それは……不味いだろ……」

城廻先輩も不満そうで……

「じゃあ、賞の発表を後日にまわす?」

「少なくとも地域賞はここで発表しなければ意味がない」

なるほど。どうやっても相模を探すしかないわけですか……

「探す時間は稼ぐわ。皆、一曲追加よ」

葉山がメンバーに追加曲を指示する。メンバー達は苦い顔しながらも了承する。

「葉山さん達だけでは時間稼ぎには不十分だな……仕方ない……」

雪ノ下は携帯を取り出して誰かに電話をかける。

「兄貴。悪いが急いでステージ裏に来てくれ」

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「ほいほい、雪斗君。なんのようかな? まぁ、だいたい予想はつくけどね~」

「なら、話が早い。俺とステージで演奏してくれ」

「ほうほう」

雪ノ下が雪ノ下兄に頼み事とは……

「雪斗君が俺に頼み事とはね~」

「頼み事? 違うな、これは実行委員としての命令だ。拒否権はない」

「へー、でもよ、断ったからって俺に何がある? 俺はもうやることはやり終えた後だから交渉材料なんてそっちにはねーだろ?」

「……俺に借りを作れる……これをどうとらえるかは兄貴次第だ」

雪ノ下兄の表情がニヤケ顔になった。

「へぇ、随分覚悟を決めたな。ま、いいだろ。だとすると俺と雪斗君でギターとドラム。あと……めぐる、キーボード頼めるか?」

「了解っす! 陽さん!」

「あと、静也」

「ベースだろう、わかっている」

「あとはボーカルか……」

周りの視線が由比ヶ浜に集まる。

「頼めるか?」

「えぇ!? 俺ェ!?」

「ああ」

「いやいやいや、無理だって!? 何の曲やるかわかんねーけど俺、歌とかマジ無理だって!?」

「これはあくまで時間稼ぎだ。最後に不満は出るかも知れないが仕方がない。大丈夫だ」

由比ヶ浜は『うぅ~』と唸り出す。

「頼む、由比ヶ浜。君を頼らせてくれ」

「むぐぐぐぐ…………わかった!」

「よし、あとは頼むぞ、比企谷。なんとしても相模を見つけてきてくれ」

「あんまり期待しないでよ……」

「期待? 違うな。お前なら見つけられると確信している」

随分と過大評価してくれますね。

「ま、行ってくる」

私はひとまずクラスへ向かった。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

クラスに来てみたが当然相模は居ない。

「ん? お前……これからエンディングセレモニーだろ? こんなところで油売ってていいのか?」

川崎が私に聞いてきた。

「そのセレモニーのために必要な相模が居なくなったのよ」

「なに? なら代役でいいだろ」

「集計結果持っていったから探さないといけないの」

「ああ、なるほどな……そういやあいつ……クラスでパンケーキ食いまくってたが妬け食いだったのか……」

そんなことしてたわけ……

「どこに行ったかわからない?」

「そうだな……俺なら屋上で雲を見て過ごすな」

「屋上? 確か立ち入り禁止じゃ……」

「特別塔の屋上への扉は南京錠が壊れてんだ。ちょっと動かすだけで開く」

「わかった。ありがと川崎(チュ)」

私はお礼に投げキッスをかまして向かった。

「なっ!? そ、そういうことは好きな奴にやれ!?」

川崎は顔を真っ赤にして言った。引かれるかと思ったのに……

私は急いで屋上へ向かう。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

屋上へ行くと、確かに南京錠が壊れていた。私は扉を開ける。すると……

 

手摺に体を預け雲を見ている相模を見つけた。

 

……本当に居たわよ……

相模は出てきた私の方を見て不満そうな顔をする。

「…………んだよ………お前かよ…………」

探させといて贅沢な奴め。ここで見つけたのが葉山だったら最高のシチュエーションだったんでしょうけど、ごめんなさいね……

「エンディングセレモニー始まるわよ。早く戻りなさい」

「あ? もう始まってんじゃねーの?」

「雪ノ下が時間稼ぎしてるわよ」

「……雪ノ下、雪ノ下って、もうあいつがやればいいじゃねーか!」

「あんたが集計結果もってくから出来ないのよ」

「集計し直しゃいいだろ。データ残ってんだし……」

「誰かさんのせいでそれを行う人材が不足してるのよ」

「んだよ、オレのせいかよ。だったら集計結果だけ持っていけよ!」

「あー、はいはい、そうするわ。早く渡してくれない」

「んぐっ!?」

相模は何やら悔しそうな顔をする。自業自得の癖に……

私は相模から集計結果を取ろうと近づこうとする。

すると……

「あ! こんな所に居たのね?」

ステージを終えて急いできたと思われる葉山と相模が実行委員で仲良くしていた男子二人とやって来た。

「皆心配してるわよ? 早く戻りましょう」

「そうだよ! 早く!」

「皆待ってるよ!」

「わりぃ、みんな……でも……」

この三人も時間がないのはわかっている。相模が望む言葉を真摯に伝えて説得する。

「今さら、オレなんかが戻ってもよ……」

「そんなことないよ、皆待ってる」

「行こ」

葉山はチラチラと腕時計を見る。

タイムリミットが近づいてるわね……

「お前のために皆頑張ってるからよ」

「そうよ」

「だけど、オレ、皆に合わせる顔が……」

あーもう、男子三人もいるんだから力付くで連れていきなさいよ、もうこうなったら仕方ない。

 

私なりのやり方でこの場を打破させてもらうわ。

 

「オレ、最低だな……」

「ホンッとサイテーね、あんた」

空気が止まった。

「相模。あんた『そんなことないよ』って言ってほしいだけでしょ? そうやってちやほやされたいだけじゃない。だからあんたは実行委員長として認められないのよ。本当にサイテー」

「な!? ん、だ、と……」

「みんな気づいてるわよ? あんたに興味の欠片もない私がわかるんだもん」

「お前なんかと一緒にすんじゃねーよ」

「じゃあ、あんたは私の何を知ってるの? たぶん何も知らないでしょ?」

「そんな……事……」

相模は言葉につまる。当然よ。もしこれで相模が私について詳しかったらただのストーカーだもん。

「ほらね、つまり同じよ。最底辺の世界の住人……だいたいよく考えなさいよ。あんたに興味のない私がなんで真っ先にあんたを見つけたのか、そんなの、私以外誰もあんたを真面目に探してなかったって事でしょ、違う?」

「ぐっ……」

「わかってるんでしょ? 自分がその程――」

――度と言おうとした瞬間……

 

 

パァァッッン!!!

 

 

屋上に綺麗なビンタの音が響いた。

「比企谷、少し黙りなさい」

葉山が私を叩いたのだ。

その行動が周りの空気を元に戻した……

「は、葉山さん。もういいよ……」

「は、早く行こうぜ……」

「勇、大丈夫か?」

「てか、んだよ? つか誰だよあいつ……」

「知らね、メイド服だから相模のクラスだろうけど……」

相模達三人が居なくなり、葉山が扉を閉めながら言う。

「……なんで、そんなやり方しか出来ないのよ」

何が問題なのよ?

結果見れば相模はセレモニーに向かったわけだし、問題ないわ。

 

――誰も傷つかない世界の完成よ。

 

私は体育館に戻り。雪ノ下達のライブを見た。

「……すご……」

私はそれしか言葉が出なかった。

そしてエンディングセレモニー

相模の挨拶は発表は忘れるわ。噛みまくるわで、散々の結果に終わった。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

文化祭は無事にエンディングセレモニーを迎えて終了した。

『それマジかよ~』

『ヒッデー』

『俺、ヒキタニさんちょっといいかなって思ってたのに……』

『いくら胸でかくて料理上手でもあれはねーよな~』

『ま、まあ、口は悪いところはあるけど……』

『早美は優しいな……』

『そーそー、いくら口が悪かろうとヒキタニさんのおっぱいに罪はな――ゲッホォォォ!?』

『だからそういうことを堂々というな!?』

葉山グループと他数名による談笑。

説明するとエンディングセレモニーでの相模の失敗は私がしたことが言いふらされてなっている。

私は体育館を出ると雪ノ下がいた。

雪ノ下が私に言う。

「……本当に誰でも救ったな」

「はぁ?」

「普通に考えれば責任放棄の相模が責められるハズだが、戻ってきた相模を女子から罵倒された被害者にすれば彼のせいにしづらくなる」

「考えすぎよ。ただ私は文実でたまったストレスで堪忍袋の尾が切れただけよ」

「だが、結果としてそうなった。だから殆どの人間は気づきはしないだろうがお前は良い仕事をした」

それは違うわ。私のやり方は認められて良い行動じゃない。

「ま、仮にそうだとしても相模の取り巻きだけじゃなく葉山も居なくちゃ成立しないわ」

「またまた謙遜しちゃって」

雪ノ下に似ているが別人の声がした。

「……兄貴、まだいたのか? さっさと帰れ!」

体育館の扉から雪ノ下陽斗と平塚静也先生が出てきた。

「いやー、比企谷ちゃんは最高だね。みんなから聞いたよ。そのヒールっぷり、俺は好きだね~、雪斗君にはもったいない」

「もったいないのは兄貴と会話する時間だ。さっさと帰れ」

「冷てぇなぁ、一緒にバンドやった仲良し兄弟じゃねぇか」

「よく言うな。あれだけ好き勝手やらかしやがって誰が合わせたと思っている?」

「盛り上がったし良いじゃねぇの」

「たしかに盛り上がってましたけど……」

「……見ていたのか?」

「ん、最後の方チラッと」

「……兄貴、頼むからもう帰ってくれ」

「わぁお、雪斗君が照れてるぅ、ま、帰りますよ。親父に今日のこと話したら驚くだろうなぁ」

雪ノ下兄が言い終わると雪ノ下は鋭い眼差しで睨み付けていた。

「そろそろホームルームの時間になる。お前らも教室へ行け」

「はい、わかりました」

「それでは……」

私も行こうとすると……

「比企谷」

平塚先生に呼び止められた。

「何と言えば良いのか……スローガンの時といい、相模の一件といい、結果的にお前の尽力は大きかった。文実はちゃんと動くようになったし、相模のスケープゴートにもなった。だが、素直に褒める気にはなれんな」

「褒められることはしてませんからね」

「そうだ。比企谷、誰かを助けることは、お前自身が傷ついていい理由にはならんぞ」

「別に、傷ついてなんか……」

「……お前は傷つくのに慣れすぎている。だがお前が傷ついて、痛ましく思うのはお前だけじゃない。それをわかれ」

先生は私の肩に手をおいて言う。

「説教は終わりだ。行け」

私は無言で歩いた。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

帰りのホームルームでは私は無言の圧力や視線を受けた。

打ち上げの計画などたてているが私には関係ないことなのでホームルームが終わったらさっさと部室へ向かった。

いつの間にか私も素直に部室へ向かうようになったな……

「おや、ようこそ、校内一の嫌われ者さん」

「喧嘩売ってる? 今なら有料でも買うわよ?」

「打ち上げはどうした? 行かないのか?」

「わかってるでしょうに」

「本格的に嫌われた気分はどうだ?」

「はん、存在を認められるのは良いもんね」

「呆れたな……その弱さを肯定するところは嫌いではないが」

「そうね、私もそんな自分が大好きよ」

「ま、本格的に嫌われたとは言ったが喜べ。うちのクラスの一部では『あの虚ろな瞳で罵られたい』などとわけのわからん連中に少しばかり人気は出たようだぞ?」

なによそれ、全く嬉しくないんだけど……

「んであんたこそなにやってんのよ」

「進路希望表を書かなくてはいけなくてな、お前こそ何をしに来た」

「報告書のまとめ」

「似たようなことを考えるわけか」

「選択の幅が少ないだけよ。私とあんたが似てるわけじゃないわ」

ただ静かな場所を求めてきただけ。私たちは全く似ていない。

だからこそ――

「………ねぇ、雪ノ下。私と」

「悪いが無理だ」

「……最後まで聞こうよ」

「お前と友達になることはない」

「そうですか……」

「俺は虚言は吐かない」

暴言も失言も吐くけどね。たしかに雪ノ下は自分から事故の話は全くしていない。だから虚言は吐いてない。

すると……

「やっはろー!」

由比ヶ浜が来た。なにしに来たの?

「文化祭お疲れ~! って事でみんなで後夜祭に行こう!」

「「行かない」」

「二人揃って即答!? いや、行こーぜ!? 早美ちゃんが駅前のライブハウス予約取ってあるんだってよ! クラスの人だけじゃなくて、たくさん呼ぼうって!」

「それで比企谷にまでお声がかかったわけか」

「私はクラスの人のカテゴリーに入ってるわよ」

「まぁ、ギリな。早美ちゃんもヒッキー誘ってあげてって言ってたし」

「ギリと義理でダブルネーミングなわけ? こっちから願い下げよ」

「おいおい、そこまで卑屈になるなよ行こーぜ! なんか仕事あるならそれ終わるまで待つからよ~」

「いやよ。行っても隅っこに一人でいるだけだし」

「むー」

祭りは終わり。

後の祭り。

人生は何時だって取り返しがつかない。こんなどうしようもない一幕でさえ、いずれは失う。

失ったことをいつか悔やむのだろうと思いつつ私は報告書の結びを記した。




次回から体育祭編です。オリジナル要素は考えてあります。

てか本当に早く折本、一色、玉縄を出したい……

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