やはり私の青春ラブコメはまちがっている。(俺ガイル全キャラ性転換) 作:Wiiが欲しいと思わない。
でも八幡はいろんな作品に繁用できるから凄い。
そしてキャラを崩壊させないようにするのが難しい……
キャンキャン!
夏休み終盤に差し掛かる時期に我が家に犬の鳴き声が響く。
この犬は由比ヶ浜家から預かった愛犬のサブレ。なんでも由比ヶ浜が家族旅行に行く間預かってほしいとのことだ。なぜ家に?と思ったが、三浦や海老名君は動物を飼ったことがなく、雪ノ下は実家で連絡が取れず、ほかにはあてがなかったらしい……あとサブレが私になぜかなついているから……
「ねーちゃん、サブレがうるさいなんとかしてくれよ」
「あー、はいはい」
私はとりあえずスマホから犬の鳴き声から言葉を翻訳するアプリ『イヌリンガル』を起動してかざしてみる。
キャン!【遊んで!】
キャン!【遊んで!】
キャン!【遊んで!】
何回やってもこれだった。
「壊れてんじゃねーの? これ……」
「壊れるほど使ってないよ? わんわん!」
とりあえず私はイヌリンガルに向かって犬の鳴き真似をしてみた。
【働きたく無いですわ~】
「壊れては無いわね」
「壊れてるのはねーちゃんじゃねーか!」
「まあ、とりあえず遊んでほしいみたいね。夕飯の買い物ついでに散歩にでも連れていくわね」
「あ、んじゃ俺も」
とりあえず私はサブレを散歩へ連れていった。
なんやかんやあり、二日後、由比ヶ浜が旅行から帰ってくると……
わふ?【この人だれ~?】
「サブレェ!?」
ペットは飼い主に似ると言う。サブレもアホなようだ。
あ、だから、うちのカマクラは飼い主の秋太に似て生意気なのか……
「ほら、二日もすれば思い出すわよ」
「……忘れないでほしかったな……でもありがと……あ、そうだ。お礼とかじゃねーけど花火大会一緒にいかね? 雪斗は実家の用事でこれないらしくてよ」
「おー、いいっすね~、行きましょ! と言いたいところなんすけど、俺は受験生なので行けません……」
何を今さら……プールいきたいだの、友達と受験勉強する言いつつゲーム三昧だので過ごしてるくせに……
「だが、しかーし! 俺は祭りでしか食えないようなリンゴ飴や焼きそば等は食いたいから、ねーちゃん行ってきてくれ!」
「は? いや、なんで?」
「いいから! 優さんもそれでいいっすよね!」
「え? あ、お、おう!?」
「よし、んじゃ、けってーっな!」
こうして私と由比ヶ浜は花火大会にいくことになったのだった。
……。
…………。
………………。
そして花火大会当日。
「あれ? ねーちゃんまだいたの?」
「ん? まだ早いでしょ?」
「……まさかねーちゃん、その格好で行く気じゃ無いよな?」
「ん? ちゃんとコーディネートしてるでしょ?」
「いやいや、花火大会だぞ!? 祭りだぞ!? なら浴衣で行けよ! ほら、レンタルやってる店あるだろうから行くぞ!」
「は? いや、なにもそこまで……」
「いーから、こい!」
ちょっ! だから行かないあんたがなんで張り切るのよ!?
……。
…………。
………………。
駅の近くで私は由比ヶ浜を待っている。
「おう、ヒッキー。待った………」
「ん、結構待った……って、どうしたの?」
「い、いや、まさかヒッキーが浴衣で来るとは思わなくて……」
「あー、秋太が浴衣で行けってうるさくて……レンタル品だけどね……」
「そ、そうなのか……に、似合ってるよ……」
「お世辞言わなくていいよ」
「へ? いや、お世辞じゃなくて……」
「私みたいな体系じゃ和服系は似合わないから……」
浴衣や着物はスレンダーな人の方が似合うだろうからね。
「そ、そんなことねーよ! 日向だって言ってただろ! ヒッキーは磨けば輝くタイプだって!」
「いや、海老名君みたいな目線で見られるのも嫌なんだけど?」
むしろ、見られることや注目されること全般が嫌である。
「いや、でも……と、とりあえず行こーぜ」
「ん」
私と由比ヶ浜は出店へ向かう。
えっと秋太から頼まれたものは……
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焼きそば 400円
わたあめ 500円
りんご飴 600円
ラムネ 300円
たこ焼き 500円
花火を見た思い出 プライスレス
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なにこれ? 特に最後のは意味がわかんないんだけど……つまりは『これらだけ買ってすぐに帰る』って選択をさせない気か……
まあ最後のは冗談だろうし、適当にやって帰るか……
「うおっ!? プレステあたんのかよ! このくじ屋……」
「いや、それ、当たんないよ?」
「え? でも紐ついてるし……」
「紐の本数と商品の数が明らかに違うでしょ? あの紐が何処に繋がってるかは知らないけど……とりあえずあっちのわたあめの屋台行くよ」
「あ、おう!」
そんな感じにメモの物と自分の分を買う。すると……
「ん? 由比ヶ浜?」
「お、相模じゃん」
なにやら男子と由比ヶ浜があった。
「ん? なんだよ由比ヶ浜~。お前は女つれか~、裏切り者め~」
「いや、同じクラスだろ……比企谷八千代。んでヒッキー、こっちはクラスメイトの相模 勇(サガミいさみ)」
え? 同じクラスだったの? そういえば見覚えはあるような……
「え? マジ? こんな娘いたか?」
はいはい、認知されていないのね。別にいいですよ、いつもの事ですし。
「いーよな~。こっちは男だらけで花火大会だぜ? 羨ましい」
「あはは、いや~、別にそういうのじゃなくてな……」
なんか二人とも表情が固いね……まあ三浦や海老名君ならともかくそこまでは仲良くないってことかね? 助け船を出すか……
「由比ヶ浜。焼きそばの屋台混んでるから私、先に行くわよ」
「え? ちょっ! 待ってくれよ! あ、相模。じゃーな」
「おー、頑張れよ~」
由比ヶ浜はこっちへ来た。
「悪いなヒッキー」
「別に……早く帰りたいし……」
「いや、花火はまだ始まってねーぞ!?」
……。
…………。
………………。
秋太のメモの品を全て買い終え、花火を見る場所を確保しようとしていたが、想像以上に混んでいる。
「ねえ、こんなに混むものなの?」
「ああ、ヒッキー来たことないのか?」
「無いわよ。ここ何年かは……人混みも苦手だし」
「あー、そっか……悪いな、言っておけば」
「別に……予測できなかった方が悪いし……」
人混みにもみくちゃになり、開けた場所に出たが、ここは有料エリアだった。
すぐに離れようとすると―――
「あんれぇ~? 比企谷ちゃんじゃなーい」
私を呼ぶ声が……雪ノ下兄だった。
「親父の名代で来ててな~、挨拶回りばっかでひましてたんだ。いやー、比企谷ちゃん来てくれてよかったよ~」
雪ノ下兄に導かれて一緒に見ることとなった。
「いいんですか?」
「いいのいいの、てか比企谷ちゃんが浴衣とは意外だね~」
「はあ、弟が着ていけと……」
「んで、そっちの君は……あ、雪斗君の友達の……あれ?名前聞いてなかったね」
「ゆ、由比ヶ浜っす」
「そうか、んじゃガハマ君だ」
「ははは、んで雪斗は……?」
「雪斗君なら、家じゃないかな? ああ、実家の方ね。こういう外向きのことは俺のやることだからな。親父の名代で来てるからさ」
「えっと……雪斗は来ちゃいけないものなんすか?」
「まーな、わかりやすい方がいいしな」
なるほど、後継ぎは一人だけだとアピールするわけか。
「いや~、うちの親父は怖いぞ~。ドラマとかに出てくる頑固親父がそのまま出てきたような人だからな」
どんだけ怖いのよ……雪ノ下なんて序ノ口なわけか……
「だから一人暮ししたいなんて言い出したときは驚いたよ。まあ、親父はお袋には甘いから何とかしたけど……」
「母親とは仲がいいんですね」
「おんや~? 気になるかい? 姑が」
「いーえ、全く」
「うわー、そこまではっきり言うと雪斗君傷ついちゃうぞ~? てか浮気は感心しませんの~」
「いえ、浮気じゃないので……」
「じゃあ本気かい? なお悪い」
「本気でもないです」
「ふーん。でも今日はおめかししてデートだったんだろ?」
「いいえ」
「むー、全く『君は』動揺してないね。でももしそうなら……」
雪ノ下兄の言葉が花火の音と少し重なった。
「……雪斗君はまた選ばれないわけか」
また? いったいなんの事だろう?
まあいい、話を変えよう。えーとさすがに雪ノ下兄って呼び方は失礼だろうから……
「えっと、雪ノ下さんは……」
「ん? 俺のことは陽斗でいいぞ。あ、もしくはお義兄さんと呼んでいいぞ、むしろ呼んでくれ」
「はあ、んで雪ノ下さんは」
「おやおや、強情な娘はモテないぞ? 俺は好きだけど」
一瞬私は背筋がゾクッときた。
「雪ノ下さんはうちの学校の卒業生なんですよね?」
「おう、ちょうど君らとは入れ代わりだったな三つ上の国立理工系大学2年だ」
「うわー、頭いい……」
「兄弟揃って理系ですか?」
「ほう、雪斗君は理系志望か」
え? 家族なのに知らなかったの?
「あ、あの……雪斗のお兄さん」
「だから陽斗でいいって、言いにくいだろ?」
「あ、んじゃ陽斗さんで……んで、陽斗さんは雪斗が嫌いなんすか?」
「ん? いや、俺は雪斗君の事は嫌いじゃないよ。ガキのころなんかいっつも俺の後ろをついてくきて面白かったぞ。でもな俺の後ろばっかり追うのは良くないと思ってる。雪斗君は雪斗君だしな」
本当にそう思っているのだろうか?
この人はニコニコ顔で本心を語っていないようにも思える。
「なあ、ガハマ君は雪斗君をどう思ってる?」
「え? そりゃ、頭いいし、運動できるし、色々ハイスペックでかっこいいと思ってます」
「だろ? 今までもそんな感じに近づく奴はいた。でも時がたつにつれて誰もが雪斗君に嫉妬し出して叩き落とそうとしてくるんだ。雪斗君は何もしていないのにな……」
そういえば奉仕部に入部したばかりの頃そんな話を聞いたね、もっと言えば告白されて断ったら殴られたとか……
「だから、君たちはそうならないでほしいな」
「わかってます! てか、俺はむしろダメすぎて雪斗に嫉妬するのもおこがましいというか……」
「私はそもそも雪ノ下とはなんにもないので」
「ははは、ありゃ、話してるうちに花火大会が終わってしまった」
ほとんど見ていないような……
「どうする? なんなら二人とも車で送らせるけど?」
「へ? いえ、結構です」
「遠慮すんなって、ほら駐車場いくよ」
私たちは駐車場に移動した。そしてそこにあったのは……リムジン……私と由比ヶ浜はまじまじと見ていた。
「いや、そんなにまじまじと見てもへこみや傷なんて残ってないから」
「え!? じゃ、じゃあやっぱり」
「ん? あれ? 雪斗君から聞いてなかったのか?」
「ええ」
「そうか~、全く……あー、でも雪斗君は悪くないからさ。雪斗君は乗ってただけだし。責めないでやってくれるか」
「いえ、そもそも治療費出してくれた時点で特に言い様はないので……あと、やっぱり自分達で帰ります」
「あー、うん、わかったわ。じゃ、また機会があれば」
「はい、また」
……。
…………。
………………。
駅のホーム。
私と由比ヶ浜は電車を待っている。
「あのさ……ヒッキーも知らなかったんだよな?」
「うん、まーね」
「そうだよな……でも、タイミング逃すと言えなくなることってあると思う。どうしてもな……俺もそうだったし……準備してからとかよく考えてからとかずるずる先にいっちまう……それに雪斗は家の事情もあるかもしれない。なんつーか……陽斗さんは怖いし……」
ほう、由比ヶ浜が陽斗さんを怖く思ったとは意外ね。
「まあなによ。事故もあっちの家も知らぬ触れぬでいいでしょ」
「それでいいのかね……」
「『知らない方がいいこともある』って言葉があるわ、実際情報がありすぎて邪魔になることだってあるわ」
「でも俺は知りたいよ……お互いをもっと知ってわかりあえたいよ……力になってやりたいよ。だからヒッキー。もし雪斗が困っていたら助けてやってくれ」
はあ? 何を言っているのやら……
「無いわよ。あいつが私に助けを求めるなんて……」
「ヒッキーはそれでも助けるよ」
由比ヶ浜は電車に乗った。私も乗らないと……
「えっと……家まで送る?」
「いーわよ。浴衣、レンタル店に返さないといけないし」
「わ、わかった」
そのあとから、私たちは一言も話さなかった。
……。
…………。
………………。
二学期始業式。
私は登校してすぐに雪ノ下と会った。
「久しぶりね」
「ん、あ、ああ、そ、そうだな……比企谷」
「部活。今日から再開するの?」
「あ、ああ、そ、そのつもりだが……その兄貴と会ったんだよな」
「ん、たまたまね」
「それで――」
「――んじゃ、放課後に」
私は、雪ノ下の話を聞かずに自分の教室へ向かうのだった。
次回から学園祭編です。
男版城廻さん登場。