異世界転生の特典はメガンテでした   作:連鎖爆撃
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Side 神様

「神様、動画の方はどうなったんですか?」
「ん?ああー、あれはお蔵入りだな」
「え?いい出来とか言ってませんでした?何があったんですか?」
「ああ、いい出来だったんだけどな。なんというか、“オチ”が気に入らなくてさ……途中で撮るの止めちった」
「……“オチ”、ですか?」
「ああそうなんだよ。なんていうかさー……チートで下手に俺TUEEEしても全っ然、面白く無いだろ?」


俺TUEEE!

ただひたすらに、攻め立てる。

―――――《疾風突き》

「ふん、馬鹿の一つ覚えか!」

―――――《疾風突き》

「くだらん、無意味だ!」

―――――《疾風突き》

「ええい、ふざけているのか貴様!」

失礼な。
馬鹿の一つ覚えではあるが、無意味でもふざけているわけでもない。

今の、俺の狙いはあのスケジュールノートの破壊である。
竜王が気が付いてはいるかは知らんが、攻撃を弾く度、少しずつ表紙が剥げていっているのだ。

これ、壊せんじゃね?とか思ってしまったわけで。

 ◆ ◆  ◆   ◆

Side 竜王

くそ、やり辛い。

脳裏にあのチート勇者の顔がちらつき、目の前の男と重なる。

手帳で何度も弾き、何度も即死の呪いで狙っているというのに、臆せず攻めてくるこの男。



この勇者の“特典”の正体は何だ?



くそ、情報が足りなすぎる。



クソ真面目にレベル上げるだけでは俺に勝てるはずがない。
だが、コイツの目には確信の光がある。

“絶対に竜王を殺せる”という、確信の光が!

何だ?

一体何なのだ!?

特典の正体がわからん以上、一撃も、もらうわけにはいかない。
今勇者の手に握られているあの剣が繰り出す攻撃が、全て即死判定持ちかもしれないのだ。
あの神のことだ、その可能性は極めて高い。
だが、《ザキ》を避けながら正面から切り込むような真似、正気の沙汰ではない。
こいつ、まさか《ザオラルガード》をつけられなかったのか?

守りに慎重になるうち、攻撃の手が鈍る。

そうすると、さらに攻めの手を強くしてくる勇者。

くそ、埒が明かん!
何故だ!
何故一撃も攻撃が当たらん!

 ◆ ◆  ◆   ◆

竜王が焦っているのがわかった。

盾そのものを狙っていることに気づかれたか?
あれだな、早々に決着をつける必要があるな。

とか、思ってたら案の定攻め手を変えてくる竜王。

「ええい、《イオナズン》!」

……え?

周囲で“圧”が大きくなったのを感じた。

空裂呪文《イオナズン》。イオ系最強の魔法。

ヤバイ、コイツはヤバイ!
イオ系呪文の真に恐ろしいところは破壊力ではない。
聴覚に対するダメージである。
イオですら受けたあとは耳がしばらくは聞こえないってのに、最上位のイオナズンなんて受けた日には………!



反射的に飛び出していた。



おっさんの声が頭のなかでリフレインする。

―――――“いいか、大事なのは構えじゃない”

弾けるような音が周囲で鳴り出す。

―――――“考えてもみろ。ドラゴンの鱗を切り裂くんだぞ?正気の沙汰じゃねぇ”

チリッ、と頭の隅で何かが焼き切れる音がした。

―――――“あ?もうドラゴンなんざ倒せる?ちげぇねぇ。だがな、本当にこの技を極めたのなら”

灰色に染まる世界。何もかもがスローモーに見える。

―――――“あの竜王の野郎に、一泡吹かせることが可能なはずよ。だから、《ドラゴン斬り》って、名付けたんだしな”



呪文は、強力であればあるほど、チャージ時間が長くなる。
そのため、術者自身の集中を途切らせることが出来れば、呪文をキャンセルすることが可能だ。
だが、別に俺はそこまで深く考えちゃいなかった。
ただ、勝手に体が動いていた。

命懸けではぐれを狩っていた3週間。そして、ひたすらダースドラゴンを斬っていた4日間の経験が土壇場で、俺に《ドラゴン斬り》を放たせたのだ。



一気に駆け抜ける。

竜王の反応が遅れた。
違うな、俺の反応が速いのか?

背後で、魔力がどんどん高まっていくのを感じた。
でも、それですらもう遅い。

―――――“もっと、こう、引き寄せる感じだ”

そうか。わかった。

疾風突きでは、二歩手前で踏み切っていたのを、一歩手前で踏み切る。

剣を振り上げる。

剣尖で切り裂くんじゃない。もっと、柄に近い部分で。
思いっきり、ぶん殴るように!

 ◆ ◆  ◆   ◆

Side 竜王

しまった、この技は《疾風突き》ではない!

土壇場での、踏切のタイミングの変更。
コイツ、これを狙っていたのか!

しまった、間に合わな―――――!

 ◆ ◆  ◆   ◆

勇者の渾身の《ドラゴン斬り》。
竜王は、なんとかノートを差し出したが、勇者の一撃を受け損なった。

スケジュールノートが粉々に砕け散る。

勇者の剣はそのままの勢いで、竜王の手首を打ち据え。

《ほしふる腕輪》を破壊した。

 ◆ ◆  ◆   ◆

全力で後ろに飛び退る。

俺は、今の一撃で、イオナズンのキャンセルと同時に、ノート、腕輪の破壊までこなしていた。

ヤベー、今のはヤベー!死んでた!半分死んでた!
上手く行ったのはたまたまに過ぎない。もう一度やれば確実に死ぬ!

……落ち着け、俺。

呼吸を整える。
だが、今の一合で、この勝負の流れは大きく俺に傾いたはず。



―――――ククク、と竜王が笑い始めた。

 ◆ ◆  ◆   ◆

Side 竜王

今のは肝を冷やしたぞ。

だが、この勝負はもう終わりだ。
お前のその手の剣は、特典ではないな?

なら、何を恐れる必要がある?

―――――《ドラゴラム》

 ◆ ◆  ◆   ◆

竜王の唱えた呪文に思わず、げ、と声を出してしまった。

ここで第二形態かよ!早いわ!
いや、早いほうがいいのか?



竜王の上半身の筋肉が異様に盛り上がり、スーツがはじけ飛ぶ。
その皮膚は赤黒く染まり、両手の爪が鉤爪状に変形する。

それで変身が終わった。



………そんだけ?およ?

でっかいドラゴンになるわけじゃないの?



だが、次に竜王が唱えた呪文を聞いて、俺は血の気が引いた。

―――――《ピオラ》

―――――そして、《バイキルト》だ。



もしかして、あれか?

《ドラゴラム》って、物理で戦うためのモードチェンジなのか!?

 ◆ ◆  ◆   ◆

三撃。たった三撃だった。

反応できない速度で、突っ込んできた竜王に、何とか《刃の防御》だけ発動するも。


一撃目で《オリハルコンソード》を折られた。


二撃目で顎を砕かれた。


三撃目で壁際までぶっ飛ばされる。


内蔵がやられたかもしれない。口から血が溢れてくる。
顎が砕けては、満足に呪文を唱えることもできない。
手元もおぼつかない。きっと、アイテムを使う前にトドメを刺されることだろう。



本当の本当に、“詰み”だった。

 ◆ ◆  ◆   ◆

竜王が変身を解いた。

「今ので、死ななかったのか……見上げた男だ」

「最後は、慎重に行かせてもらおうか」

―――――《マヌーサ》

もう、ただでさえ焦点が定まっていないのに、ここでのこの追い打ち。



俺は、最後の力を振り絞り、腰の《どくばり》に手を伸ばしていた。



竜王が不用心に、こちらに近づいてくるのを感じた。



マヌケなことに、俺には竜王が、《マヌーサ》の効果で、周囲から何人も近づいてくるように見えていた。

このうちの一体が本物の訳で。



俺は、竜王に《メガンテ》が効かないなら、と考えていた最後の手段を実行する。



強い気を感じるその方向に、《どくばり》を抜いて、投げつけた。



どうだ?
俺は、賭けに勝ったのか?










「ククク、どこに剣を投げている。そんなに上に投げては、当たるものも当たらんぞ?」

竜王が嘲笑してきた。
そして。

「トドメだ。《ザキ》!」



体中に冷たい感覚が走る。さらに、心臓を掴まれたような苦しみ。
ああ、これで俺は終わりなわけか。



俺は、意識がブラックアウトする直前に1つの事を考えていた。










それで?



俺は賭けに勝ったのか?

 ◆ ◆  ◆   ◆










「おお、勇者よ!死んでしまうとは情けない!」
「なぁに、150までしかくらわん!」
「毎回、何を言っておるんじゃお主……」










「リオレウス狩ってくるわ」



本編で触れられない設定

34.リオレウス
初出は「モンスターハンター」。
もはやドラクエですら無い。