異世界転生の特典はメガンテでした   作:連鎖爆撃
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完全な予定調和。

竜王の城から大量に解き放れる魔物の群れ。
竜王軍との交戦の開始は、真夜中だった。

おそらく、魔物が本領を発揮する時間帯で、有利に戦いを進めようという魂胆が竜王軍にはあったはずである。

だが、いまさらその程度では、おっさんの部隊の勢いを止めることはできない。

陣地から飛び出してくる、兵士たち。
その顔に、疲れによる翳りは既に見えない。

戦闘時における、一時的なドーピング。
今の今まで、兵士たちは全員、床に伏すのではなく、《瞑想》を行っていたのだ。

俺はといえば、《瞑想》なんてできるはずもなく、かと言って熟睡することもできないので、おっさんと他愛もない話をしながら夜を明かそうとしていた。



陣地から飛び出していく兵士たちに、おっさんが出した指示は恐ろしく簡潔なものだった。

―――――“同士討ち”は、避けろ。

―――――応!

散開していく兵士たち。

そして、戦場中であがる声。

「この剣の!」

「届く範囲に!」

「入ってくるんじゃねぇ!」

「「「「「《皆殺し》!」」」」」



………俺、いる?

目の前の(敵の)惨状を眺めながら本気でそんなことを考える。
おっさん、たった二ヶ月で部下のことを魔改造し過ぎである。

………いや、始めから本気出しとけよラダトーム軍。

「何を呆けているんだ!行くぞ!」

おっさんに手を引っ張られる。

「女僧侶を救いに行くんだろ!」

……ああ、そうだな。俺はそのために来たんだ。



……でも当然のように戦場の真ん中を突っ切って行こうとしないでもらえます?

 ◆ ◆  ◆   ◆

俺は、玉座の間へと続く階段を駆け上がっていた。

下の階では魔王軍の“幹部”の、影の騎士をおっさんの部下たちが、死神の騎士をおっさんが抑えてくれている。

「必ず、応援に行く!先に行け!」

早く来てくれよ。
じゃねぇと、おっさん達の分が、残って無いかもしれないからな。

玉座の間に辿り着く。



竜王は、玉座に座して待っていた。

「よく来たな、勇者よ」

「お前は、殺すには惜しい若者だ」

「そして、特別な才を持つようだ」

「その《メガンテ》の秘法を差し出し、私の部下になるというのならば、行く行くはこの世界の半分をくれてやろう!」



開幕《メガンテ》でゲームオーバーだと意気込んでいた俺は、竜王を前にして動くことができなかった。

何かの罠にかけられた、だとかじゃない。
好き勝手言いやがる竜王に呆れたから、だとかじゃない。



竜王 Lv.99★ ♂
HP/MP:5500/システム上無限
現在装備 
頭:なし
上:黒のスーツ(上)
下:黒のスーツ(下)
武器:ボールペン(魔導師の杖)
盾:スケジュールノート(龍革の盾)
腕:ほしふる腕輪
特技:
(※システムによる閲覧規制)
スキル:
ザオラルガード(ザオラル系の呪文への完全耐性、蘇生アイテムも効かない)
メタルボディ(呪文系によるダメージを無効にする)
(※システムによる閲覧規制)

おっさんから教わった、敵の力量を確認する《立ち会い》のスキル。

《メガンテ》をぶつける前に、ボスキャラだから効くかどうかの確認だけしておこうと思ったら、とんでも無いものが見えてしまった。

こいつ、転生者の上に、《メタルボディ》持ちだと!

竜王も俺の出で立ちを見て気が付いたらしい。

「おまえ、まさか……転生者か?」



夜が明けて、日差しが差し込んでくる。

俺が異世界転生してから、今日でちょうど13ヶ月。

転生者同士の、この世界の覇権を争う頂上決戦が繰り広げられようとしていた。



……いや、《会心の一撃》しか通らない敵って、どうやって倒せばいいんですかね?

……おっさん早く来てくれ。

 ◆ ◆  ◆   ◆

考えてみれば、いくらでもヒントは転がっていた。

Q.なぜ、竜王はローラ姫と16歳の侍女を間違えていた?
Q.なぜ、竜王は侍女が18になるまで手を出さなかったのか?
Q.なぜ、闇を好む“魔物”のはずの竜王が地下に潜っていない?
Q.そもそもどうしてチート勇者に竜王は勝てたの?

>A.竜王も現実世界から来たチート持ち転生者だった。


「《ベギラゴン》!」

竜王の攻撃を避けながら、現実逃避的にそんなことを考える。

「どうした勇者!避けてばかりでは勝負に勝てぬぞ!」

うるせぇ。

今どうするか考えてるわ!

だが、だと言って、選択肢は始めから1つしか無い。
《疾風突き》と《どくばり》による必殺コンボ。

《魔人斬り》系統の物理技は使えない。
俺の筋力では、レベルカンスト竜王の体力を一撃で削りきれはしない。
そして、この系統の技には、致命的な弱点がある。
攻撃後、大きく隙を晒すのだ。

そうすれば。

「ええい、面倒だ!《ザキ》!」

この死の呪いを躱すことはできないだろう。



くそ、埒が明かねぇ!

―――――《疾風突き》!

「―――――ふん、くだらん」

《オリハルコンソード》による《疾風突き》を、竜王はスケジュールノートで受け止める。

竜王の右腕に、キラリと光る腕輪が嵌められていた。

《ほしふる腕輪》。素早さを大幅に上げるアイテム。
この世界におけるそれは、使用者の動体視力も大幅に上げる。

思わず、舌打ちが出る。
物理ステータスで特技を無理やり無効化するとか、インチキすぎるだろ!

あの《ほしふる腕輪》をどうにかしないと、俺に勝機は無い。
そして、まず、どうにかする前に俺がやられるだろう。



………どうする?



本編で触れられない設定

33.他愛もない会話
「坊主、実はな、この戦いに勝ったら、また彼女にプロポーズしようと思うんだ」
「……おっさん、滅多なことを言うもんじゃないぜ」
「……?お前さんは祝福してくれるものだと思ったんだが」
「祝福してるさ。ただ、こんなときにそんなことを言うと、死神に目をつけられちまうぞ……」
「おまえさんは何のことを言っているんだ?」