異世界転生の特典はメガンテでした   作:連鎖爆撃
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Side 神様

「……あれ?何がどうなってこうなっているんだっけ?」
「神様覚えていないんですか?『ロリヒロイン最高!』とか言ってローラ姫の年齢をいじってたじゃないですか………」
「あ、そうじゃんそうじゃん。あ、それで。いやぁ、そう考えると竜王にはわるいことしたな。10年間騙されてたわけでしょ?」
「(何故まず悪役に謝る)」


たすけてください勇者様!(前)

俺が戦線参加した後、数時間がけの攻防は、ラダトーム側の辛勝で幕を閉じた。

最後は、俺の部屋にストックされていた《魔法の聖水》を使い切りながらベギラマを連射し、おっさんを援護。
敵の陣中に一人切り込んだおっさんが、魔物の軍団を率いていた()()スターキメラを切り捨てたことで、魔物の軍団が統率を無くす。
魔物達はそのまま散り散りになっていった。

おっさんは、追走部隊を率いて町の方へ逃げていった魔物を追う。



そして、俺は玉座の間でラルス16世の懺悔を聞くことになる。

 ◆ ◆  ◆   ◆

勇者の役目。それは竜王を倒すこと。
そう、俺は説明されていた。

この世界はゲームが元となる世界だ。
それ故に。
最初だけ費用を渡され、後は自ら生計を立てつつ竜王討伐のために命懸けの冒険を繰り広げなければならないという理不尽に、俺は疑問を抱くこと無く勇者としての使命を全うしていた。

もっとよく考えるべきだった。
そんなことがあるわけが無い。ここは、曲がりなりにも『現実』なのだから。

若者達を勇者に仕立て上げる真の目的。



竜王から、本物の“ローラ姫”の存在を秘匿すること。



10年前、確かに竜王はローラ姫をさらうためにラダトーム城を襲撃した。
だが、何故か当時16歳だった侍女の一人を連れ去り、引き上げる。

まだ幼い、本物のローラ姫には、目もくれずにだ。

なぜ、侍女がローラ姫と間違われる事態になったのか?
いくつか、理由が考えられた。
その侍女が翌日の婚礼のために着飾っていたこと。
侍女が、才ある魔法使いだったこと。
はたまた、竜王がローラ姫の歳を勘違いしていたのではないか?

竜王が再び攻めてくる様子は無い。
どうやら、侍女のことを完全にローラ姫だと思っているようだ。

そこで、である。

何も知らない若者たちが竜王に抵抗し、命を散らしていくことで、竜王は城からさらった娘のことを“ローラ姫”と勘違いし続ける、当時、王と家臣たちはそう考えついたのだ。

勇者たちの扱いがぞんざいな理由。
俺達“勇者”は、はじめから捨て駒だったのだ。

竜王を倒すなどとは、期待などされていない。

ただ、早く死ぬと次を探すのが面倒だから、精々長生きしてくれ………。



おっさんが城を離れない理由。
ローラ姫が、城にずっといるから、その護衛のため。

とっくの昔に、ラダトームでは情報を掴んでいた。どこに侍女が幽閉されているか。

おっさんが俺についてきた理由。
毒の沼地を突破可能になった俺が、万が一にも侍女を救い出し、ローラ姫の正体に気がつくことを防ぐため。
俺を監視し、必要とあらば、俺を抹殺するという密命を王から受けていたから。



だが、王と家臣たちは1つの考え違いをしていた。

おっさんが、耐え切れなかったのだ。
自らの婚約者を見殺しにするということに。

竜王の襲撃の翌日に行われるはずだった婚礼は、その侍女と、おっさんのものだった。

おっさんは女の子の髪飾りを見て、ひと目で女の子の正体に気が付いていた。
この娘は、あの侍女の子だ。
間違うはずが無い。だってこの髪飾りは、自分が彼女に送ったものだ。

そして、考えた。
おそらく、この娘は侍女が逃がしたのだろう。
だが、だとしたら、彼女の命が危ないかもしれない。
女の子を逃したのは、もしかしたら、正体が明らかになり、母娘ともども殺されることを危惧してのことではないか。



おっさんは命令違反を犯し、侍女を連れだした。



それが、今回の襲撃の引き金となってしまった。



そして、久方ぶりにラダトームを攻めた竜王は気づいてしまったのだ。
城の奥。
魔力を秘めた一人の若い女の存在に。

―――――クハハハ、騙されていたぞ!可怪しいとは思っていたのだ!芽の出ない娘だと!よもや、あの幼子の方がローラ姫だったとは!

―――――許そうではないか!この攻めを凌ぎ切れたらのならば!

そう言って、竜王は女僧侶を連れ去った。
魔物の軍団を残して、だ。

それが、今回の事件の顛末。

そして、若者を勇者に仕立て上げるシステムの残酷な真相だった。

 ◆ ◆  ◆   ◆

王様が呻く。

「あつかましいことを言っておるのは、わかっている。だが、兵隊長ではどう足掻こうが、竜王には勝てぬ」

「奴は、魔族の一人であり、魔術師として究極の域におる。兵隊長が“戦士”であるかぎり、奴にはかなわぬのだ……」

「どうか、頼む。勇者よ、今一度命じたい。魔王を打ち滅ぼし、この世界に光を………」

王様の言ったことを何とかかんとか理解する。



………えっと、ギャグですよね?

命懸けではあったけど、俺はもっとゆったりと竜王を倒すつもりだったつもりだったんだけど、え?

え?



もう、何が何だかわかんねぇよ。
俺の中の勇者像は、もっと、こう、……

ああクソ!

この世界、全然ファンタジーじゃねぇ!

 ◆ ◆  ◆   ◆

Side 竜王

「私は、ローラ姫なんかじゃありません……」

力無く項垂れる女僧侶を見て、つい笑みが漏れる。

この女は本当に自分がローラ姫だとは思っていない。
おそらく、《メダパニ》による記憶操作。
勿論、本来ならばこの時代、この地域にメダパニは伝わっていない。
何者かが、それを開発したということだ。
素晴らしい。あの城には、まだ奪うべき才能が残されているということか。
もし攻め滅ぼされていなければ、ローラ姫との婚礼の後に再び攻めることとしよう。

お前が間違いなくローラ姫だ。
記憶が無くとも関係ない。
子を産ませればハッキリすること。

「……何を……言って」

私が、お前を欲しがる理由は『血』だ。

君と私の子ならば、申し分ない。
間違いなく、《バギ》の特技を覚える子が生まれるはずだ。

「特技ってなんですか……?何のことを……?」

くくく、わかる必要はない。
私に逆らうことさえなければ、危害は加えない。
従順にしていたまえ。



Side 女僧侶

竜王が部屋から去った後、私は、願った。

助けに来ないでください、勇者様。
きっと、あなたじゃ敵わない。

もう、誰かが死ぬ姿を見たくないから僧侶になったのに、私のせいで勇者様が死んだなんて、聞きたくない。

あれだけ辛くあたったのだ、私のことなんて嫌いでしょう?

変な気をおこして。
何も考えないで。
ちょっとフザケてなんて。

絶対に助けに来ないでください。
そんないい加減な勇者様は、嫌いです。

私は聖職者です。元々、誰とも結ばれてはいけないんです。
ただそれが、未来永劫、絶対に望む人と結ばれることが無くなったってだけで。
私は、傷つきなんてしないから。

絶対に助けに来ないでください勇者様。

助けに来て死んだりしたら。
私は絶対にあなたを許しません。










「………助けに来てください……勇者様」

 ◆ ◆  ◆   ◆

状況を整理しよう。何か気がつくことがあるかもしれない。

俺は勇者で。
竜王に女僧侶が浚われてしまって。

俺は、彼女の事を絶対に見捨てることが出来なくて。

………なんだ、簡単な話じゃないか。



グチャグチャ考えるのを止めたら、胃はもう痛くなかった。

 ◆ ◆  ◆   ◆

ガライの墓のダンジョンを俺は攻略していた。

勇者 Lv.31 ♂
HP/MP:129/120
現在装備 
頭:なし
胴:洋服の上に鋲のついた皮の鎧
武器:どくばり&鋼の剣・改
盾:なし
特技:《ギラ》《メガンテ》《ホイミ》《レミーラ》《リレミト》《疾風突き》《トラマナ》《燕返し》《ゾンビ斬り》《ベギラマ》《連続攻撃》

メトロゴーストを切り捨てる。
ラリホーを使わせる暇なんて与えない。

しばらくは、チェーンメイルなんてクソ重たいものを着込んで動いていたのだ。
元の装備が、羽根のように軽く感じる。

そして、俺はあの地獄のような沼地の洞窟を抜けてきたのだ。

ガライの墓なんざ、今更この程度のもので!



「ヒャヒャヒャヒャ!」

  トン……

背中に、軽い衝撃。

背後からヘルゴーストのラリホーを受けたのだ。




まぶたが………





口の中の、カプセルを噛み砕いた。



振り返る。
ヘルゴーストが3体、群れになっていた。

手応えがあったのに、眠らない俺を見て驚愕の表情を皆浮かべている。

おいおい、良いのか、呆けたままで?

《ベギラマ》で1体目を倒しながら目眩まし、2体目を《燕返し》で斬り伏せる。飛び出して、最後の1体を《ゾンビ斬り》で片付けた。



剣を鞘に戻しつつ考える。

今のは、かなりヤバかった。
だが、《目覚めの粉》をカプセルに詰めて口の中に入れており、戦闘中に噛み砕いたのだとは夢にも思わないだろう。
人類の知慧の勝利というやつだ。

独り言を呟く。

ははひひんへんほはへるは(あまり人間を舐めるな)……。

……。

…………口の中がヒリヒリする。

《目覚めの粉》って、マジックアイテムじゃなかったのかよ。
マジで何でこんなに真っ赤なんだ?

……こんなの《目覚めの粉》(物理)じゃねぇか。

 ◆ ◆  ◆   ◆

ガライの墓の攻略に七日。
おそらく、かなり難解なダンジョンだった気がするが、好タイムだろう。
こちとら、とうにLv.が30超えである。
《銀の竪琴》の宝箱の目前で、()()大魔導に襲われた気がしたが、どくばりの攻撃に確率で引っ掛かって、即死していた。
経験値多かったし、中ボス的な奴だったのか?



だが、気にしている暇はない。時間は全然足りないのだ。
おっさんの助けた侍女が言うには、竜王は女をさらった後、その女と婚礼を行うらしい。

へっ、無理やりさらっておいて、何が婚礼だ。

いいか、結婚てのはな!好きあったもの同士が皆に祝福されながら行われるものであってだなぁ!

………。

……俺もできるといいなぁ、結婚。

なんか、逆に竜王が格好良く思えてきた。
颯爽とヒロインをサラッていけるって、相当ポイント高そうだよな……。

それはさておき、である。

おっさんが救出した侍女の話によると、竜王は18になるまで、丁重に彼女の事を扱ったらしい。その後婚礼を行い、彼女に……。

おっさんの前で取り乱す彼女にそれ以上の追求は無理だったが、それだけで十分だった。

今までの話を照らしあわせて推測されるに、おそらく竜王がローラ姫を求める理由は、自らの才能を受け継ぐ強い“子”を産ませる“母体”が必要なため。

そこまで悟った時、体中の毛が逆立ったのがわかった。
……おぞましいとか、そんなふうに思ったわけじゃない。むしろ、ラスボスに相応しい身勝手さだと、感心したくらいだ。

そして、無性にそのことが許せなかった。
女僧侶にそんなことをされると思うと、胸が張り裂けそうだった。
この感情の正体は………何だ?

だが、その感情については頭の片隅に追いやる。

冷静になるんだ。

竜王の目的がそれだとすると、おそらく18まで待った理由は母体の成熟を待つためだろう。竜王は、強い子を作るために万全を期したかったのだ。

なら、これはあくまで希望的観測に過ぎないが。
今、女僧侶は17歳と、十ヶ月だ。
あと二ヶ月の猶予がある。

どのみち、今の俺では竜王の足元にも及ばないだろう。

俺は、その二ヶ月でできるところまで強くなり、婚礼とやらに乗り込んで、それをぶっ壊せばいいのだ。

 ◆ ◆  ◆   ◆

北の祠にて、そこにいた魔女さんに、《銀の竪琴》と《雨雲の杖》とを交換してもらう。

《雨雲の杖》をラダトーム城に届けると、俺は魔の島に渡るために必要なアイテムの最後の1つ、《ロトのしるし》、その在処のヒントを求め、メルキドに一人向かったのだった。










………無理ゲーすぎる。

距離が長すぎるのだ。

まさか山岳地帯がまとめて吹き飛ばされ、平地になっているとは思わなかったがそれでも長い。

ずっと歩き通したとして、ガライの街から5日かかる距離。

途中に落ち着いて休むことができる場所は、無い。

そして、メルキドに近づいて行けば行くほど強くなっていく敵。

それでも、引き返す時間は無い。



動かなくなる足、上がらなくなる腕に、《ホイミ》をかける。

まぶたが重くなると、《目覚めの粉》を噛んだ。
それでも徐々に効かなくなってくると、頬の内側を噛む。
《ホイミ》をかけて、また噛む。

敵との戦闘は、もうガムシャラだった。

《雄叫び》をあげながら、敵に《躍りかかる》。



おっさんの話が本当ならば、俺は一秒でも早くメルキドに着く必要があったのだ。



ガライを発って八日目。俺はメルキドの街の門の前に立っていた。

「ウガァァァァ!」

侵入者に襲いかかろうとする門番のゴーレムに対し。

「メガンテ」

必殺の呪文を、一言。

爆音。

ゴーレムが崩れる。

とうにアイテムを使い切り、回復が出来なかった俺は、ゴーレムが灰になるのと同時に意識を手放してしまった。