やはり俺が炎術士なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
ようやく物語は進みます。
加筆、修正しました。
とりあえず雪ノ下は、俺と果たし合いをしたいようではなかった。廃工場シチュとか、決闘か罠と相場は決まっている。改変された世界では廃工場は萌えシチュなの?ってくらいに異様な展開に俺は驚いていた。目の前で子猫をあやす少女を俺はまたもや見惚れてしまっていた。
雪ノ下がニャーと言うと、子猫もニャアと返す。何?君ら会話できてるの??
「ニャー」
「ニャァ」
とりあえず空気になっていると、俺に気づいたのか雪ノ下は咳払いをすると、コンビニの袋を取り出した。どうやら猫缶を買ってたらしい。勝手に餌付けしちゃっていいの?とか考えていると雪ノ下からカミングアウトされた。
「私は、猫が好きなのよ。比企谷くんは嫌い?」
「動物は全般的に好きだぜ。忍の世界にも動物をパートナーとした忍もいるしな。」
ガルフォードさんとかな。GO!パピー!あれは動物愛護団体に訴えられるレベルだけど。
「この前の事なのだけれど、ここから声が聞こえたのよ。それがこの子と私の馴れ初めよ。」
「そんで、その猫はどーするんだ?ここに居るって事は飼わないのか?」
当然の疑問を口にする。責任が持てなきゃいけないけどな。何か事情でもあるんだろうか?
「飼いたいのだけれども……きっと許してもらえないと思うから。」
「あのマンションはペット禁止なのか?」
「そうではないの。私、一人暮らしだし、問題はないわ。」
さらりと重大発言しやがった!なんなの?お金持ちなの?もしかして、その歳でFXとか株とかで成り上がった実業家とか??
「一人暮らしなのか!?あの高級マンションで??もしかして、親が許してくれないのか?」
「そうね、厳しい人達だから。一人暮らしもまだ反対されているのよ。」
彼女は苦しそうな、悲しそうな顔を見せると、俯いてしまった。手はしっかり子猫を撫でているが。これが雪ノ下クオリティか。彼女の悲しむ顔をなんとかしたくて、俺は思い付いた事をしてみる。
「ちょっといいか?」
「…どうしたの?」
暗い雰囲気を払拭したくて、いや、彼女の顔が暗くなるのを見たくなかったのかもしれない。だから、とっておきを披露することにした。
「何も無い空間に花が咲きます。御覧あれ!」
俺は屋根が高い廃工場の広い空間に、自作の花火を咲かせる。
パパパパーーーンッ!
五色米ならぬ、五色花火。
「ワァ……」と感嘆の声を出し見つめる雪ノ下。少ない花火だったがご満足いただけたようだ。
「比企谷くん…ありがとう。」
「どういたしまして。」
彼女の顔に笑顔が戻った。あの笑顔は反則だろ!思わず惚れてまうやろー!と叫びたかったが、グッと堪えた。照れ隠しに俺は猫を抱き上げる。
「あれ?コイツ怪我してるぞ。」
他の野良猫にでもやられたのだろうか。後ろ脚や尻尾に怪我が見えた。
「なんてことをっ!」
雪ノ下は駆け寄り、俺から子猫を受け取ると涙目で子猫を抱き締めた。
とたんに子猫の体が眩い光に包まれる。なんだコレは!?雪ノ下は聖母のような顔を浮かべて子猫を抱き締め続ける。子猫も気持ち良さそうにゴロゴロ言ってる。ん?怪我が治ってないか??
光が収まると雪ノ下は優しい表情を浮かべていた。
「良かった…。」
いや、よくねぇだろ!いや、いいんだけども!ツッコミどころが多すぎて頭が混乱する。
「見られてしまったのね。気持ち悪いでしょ?私。」
薄暗い室内は雪ノ下の表情を見えなくさせる。色んな感情を混ぜたような声で雪ノ下は申し訳なさそうに告げる。
「昔からなの。どんな怪我でも治す事が出来るの。自分自身は治せないのだけれど。」
顔に笑顔は無くなり、自嘲するような顔に変わっていく。雪ノ下は自分を理解しているのだ。自身がマイノリティであることを。
「普通ではないもの。異端はいつの時代も異端でしかないわ。けれど、私はそれ以外は普通のただの人間なのよ。」
雪ノ下は、そう告げる。
自らのその能力を隠そうと思えばいくらでも出来たにも関わらずにだ。それよりも目の前で苦しんでいる者に対して、慈悲の心でもって行動していた。後先を省みずに、だ。
ならば、俺も自身の秘密を話さねばならない。明かさねばならない。それが彼女に対する信頼への証左となると信じて。
「確かに驚いたけど、俺も雪ノ下に話さないといけない事が出来た。聞いてくれるか?」
雪ノ下は少し驚いていた。
嫌われると思っていたのだろう。蔑まれると思っていたのだろう。排他されると思っていたのだろう。
だが、そんな幻想は俺がぶち殺す!いかん。シリアスになりきれていない。まぁ脳内だから許してね?
「俺には生まれつき不思議な能力がある。もちろん人前では出した事がないがな。」
手を強く擦り合わせる。
すると手から炎が出る。
「これが俺の秘密。ある程度自在に炎を出す事が出来る。」
更に、宙に文字を書く。
その字は『砕』。
「砕羽(さいは)っ!」
俺の腕に炎の刃が形成される。
「竜の炎、弐式砕羽。」
俺は近くにあった廃材の鉄パイプを断ち斬る。鉄パイプはストンっと切れた。
雪ノ下は驚いたのか、開いた口が塞がらない状態だ。さっきまで俺もあの顔をしてたと思うと恥ずかしい…。
「比企谷くん……」
「俺の中には八人の竜がいるんだ。壱式から八式まで型がある。これで俺の秘密は終わり!どうだ?まだ異端児は自分だけだと言うか?」
雪ノ下は軽く深呼吸をすると、落ち着きを取り戻す。
「私だけではないのね…?信じてもいいのよね?」
雪ノ下は俺の腐った目を見つめながら言った。その顔は嬉々としていた。高校生の雪ノ下の世界がどれだけの広さかは知らない。だけど、世界で初めて出会った異端の仲間かもしれないのだ。もちろん、俺だってそうだ。
「勿論だ。誰が否定しようが、異端視しようが、俺だけは肯定してやるよ。」
普段は疑り深く、捻くれた性格の俺だが、この時だけはこの人に信頼されたい、信じたいと思ってしまったんだ。気づけば俺は自分でもとんでもない事を口走っていた。
「雪ノ下雪乃様。これより貴女を我が主とし、貴女だけの忍として、忠誠を尽くす事を誓いまする。」
方膝を曲げ、膝まづく。
先程の能力を見て確信したのもある。あの交通事故で俺を治してくれたのは彼女だ。確かに俺は忍者の生き方に憧れを抱いている。だけど誰でもいい訳じゃない。暴君や無能に仕えたい訳じゃない。身命を賭し、己の信念を貫くその姿勢に心を打たれたのだ。
もう俺の主君として尽くすと決めた!
「な、何を言ってるのかしら?そんな主従の関係を望んでいる訳では……!」
「俺が望んでいるんです。姫と呼ばせて貰ってもかまいませんか?」
「私なんかが、そんな!何故なの!?」
もう一押しか?にしても、女の子に否定的にされると、やはり凹んでしまう。目が腐ってるとこ以外は高スペックなのに。中学の頃、女子の罰ゲーム対象にされてたのを思い出してしまう。
「姫は…某が配下になるのは嫌だと仰るのですか?」
「なんでそうなるのよ!……友達なら、かまわないのだけれど……」
友達!?この俺に??
人生で初めての友達は、なんと人生で初めての主君となりました。まるで桃源郷での義兄弟の契りにも勝る想いだ!うん。なんだか、よくわからなくなってきた。
「光栄です。姫様。」
「その話し方も止めてもらいたいのだけれど…」
あくまでフレンドリーね。
俺は友達のほうが扱いわかんないんだけど。距離感とか。
「わかった。これからは友達として、あらためてヨロシクな、姫。」
「も、もう!…こちらこそヨロシクね、……八幡くん。」
こうして、お互いの秘密が明らかになり、新しい絆が出来た。俺は、この誰よりも優しい我が主を、命を賭けて守ると心に誓った。
テンポよく更新?出来てるかな?
次はスプリガンの更新終わったら更新します(笑)
2話ずつの更新にしてますので、
お楽しみに!