やはり俺が炎術士なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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ついにバトルに発展しました。
描写は拙いです。


更新遅れてますが、御容赦を(笑)





第13話 影法師

 

 

薄暗い廃工場の中は、夜でも少しだけ明るい。高い天井には月明かりが射し込む天窓があり、俺達を少しだけ照らし出した。

 

 

相対する女からは幽鬼のような雰囲気が出ているようで、まるでそこに居ないように錯覚させる。俺は恐怖する。得体が知れないモノに恐怖するのは仕方がない事だ。

それでも後戻りは出来ない。

俺は恐怖を飲み込んで話しかける。

 

 

 

「すみません。さっきの言葉はどういう意味ですか?」

 

 

ビビってたら低姿勢になってしまった。見た目が歳上で知らない女性ならしょーがなくね?俺のコミュ力舐めんなよ!

 

 

「あらら?もっと聡明な子かと思ったんだけどな~。どうしよっかな~?」

 

 

少し暗闇に眼が慣れてきた。

女の顔は嬉しそうに困った顔をする。どこか嘘臭い顔だ。俺の忍(ボッチ)センサーがビンビンに警鐘を鳴らしてる。

『今すぐこの場から逃げろ』と。

 

 

 

「とりあえずそうね…まずは警告かな♪」

 

 

 

女が言い終わるより先に、左腕と右足に違和感を感じる。気になった俺は視線を落とすと、左腕と右足に針?のような物が刺さっていた。瞬時に激痛が走る。

 

 

「グッ!?」

 

 

相手に弱味を見せたくないのと、少しの強がりで俺はなんとか声を堪える。本当は叫んで転がり回りたいぐらい痛い!

 

 

「うふふふ。あの子に、雪乃ちゃんには近づかないでね?わかったかな~?」

 

 

普段の俺ならもう簡単に屈してる!てか、逃げてる!こんな痛みと恐怖を与えられて立ち向かえる高校生がいんのかよ。いいや、いないね。本当だよ?八幡嘘つかない。

 

 

……少しテンパってたけど意外と余裕あんな俺。ならば……!

 

 

 

「ヒィッ!わかりました!わかりましたよ!もう許して下さい~!!」

 

 

「あら残念ね~抵抗して欲しかったんだけどな~。」

 

 

 

女が小さな声で「命拾いしたな」と呟いたのが聞こえた。俺はこの時ほど難聴系主人公になりたいと思った事はなかった。

何コレ?もう帰りたいんだけど。

 

 

「近付かない上手い言い訳でも考えといてね?それじゃ…」

 

「ま、待ってくれ!」

 

「…まだ何か用かな?」

 

 

 

明らかに不機嫌な顔をする女は、返答を間違えれば俺を殺さんばかりの殺意を向けてくる。だが、俺の小悪党ぶりを舐めるなよ!プランAだ!

 

 

「ひ、一つだけ聞きたい事があるんだ。い、いいですか?」

 

 

 

ビクビクした小物の演技で女に情報を吐かせる作戦だ。マンガとかでよくあるだろ?こういう時、本当は喋りたいんだよ、コイツらは。冥土の土産に教えてやる、とかな。

 

 

 

「冥土の土産とか無いわよ?」

 

 

 

ニッコリ笑いながら言われた。あと絶対に俺の心読まれてる気がする!うーん、仕方ないなぁ。腹を括ろう。

じゃあ、プランBでいきましょうか!なんか楽しくなってきたし!

 

 

「じゃあ、質問ではなく独り言です。どうして貴女は『雪乃ちゃん』と呼んだんですか?まるで親しい人みたいな呼び方ですね。」

 

 

「…勘の良いガキは嫌いなんだけどな~っと!」

 

 

 

女はまたもや、言い終わる前に針みたいな物を飛ばしてくる。俺もすでに火薬玉を飛ばしてるけどな!

 

両者の間で衝突、爆発する。

素早く煙玉を使って、周囲を見えなくさせる。まさかの反撃に相手の反応は少し遅れている。ここからは俺のターンだ。

 

 

「竜の炎、陸式、塁!」

 

 

 

煙幕が視界の妨げとなっているうちに、苦無と火薬玉をあの女か居た場所に向けて投擲する。破裂音と苦無を弾いたと思われる金属音が聞こえてきた。女は余裕があるらしく話しかけてくる。

 

 

「君って面白いね~。興味が湧いてきちゃったよ。名前はなんて言うのかな?」

 

 

「比企谷八幡だ!覚えとけ!」

 

 

さらに火薬玉を3発声のした方向に放ち、自身の位置を相手に悟られぬよう移動する。もう煙幕が薄れており、お互いの姿を視認出来るぐらいになっていた。相手の姿を確認する為に室内を見渡す。

 

 

(どこにもいない?まさか逃げたのか?)

 

 

完全に煙が晴れると室内には俺しか居なかった。周囲を警戒してみたが、気配は無い。

終わったのか?と、考えていた矢先に、十数本もの針が俺の身体中を貫いた。

 

 

「あっははは!比企谷く~ん?油断は大敵だよ~♪」

 

 

 

驚いた事に、女は『俺の影』から出てきた。女は不適な笑みを浮かべながら得意気に語り始める。

 

 

「うふふふ♪比企谷くん、頑張ったご褒美に種明かしと、私の名前を教えてあげちゃうね!」

 

「私のことは影法師と呼んでね?そしてこの玉は影界玉という魔導具だよ♪」

 

 

 

女の持つその玉が光ると、影を自由に出入り出来るアピールをする。影から影へと。なるほど。あれなら急に消えたりすること等、造作もないわけだ。

 

 

「比企谷くん、ちょっとイイ線いってたんだけどね。残念だったね~。……え?」

 

 

 

驚く影法師を余所に、針まみれになっていた俺の体が突如として、炎に包まれて消えていった。

竜の炎、陸式の塁は炎で幻を生み出す。つまり、針まみれになっていたのは幻で、本物の俺は物陰から気配を消して機会を伺っていたのだ。

 

 

「な、何よこれ…!?」

 

 

「竜の炎、壱式、崩!」

 

 

 

影法師に向けて複数の火球が襲いかかる。竜の炎、壱式の崩は自身の炎を火球へと変え攻撃する。質量を持たないはずの炎が、弾丸のように飛んでいく。被弾する音が響き渡る。着弾を確認すると俺は床に倒れ伏す影法師に勝利宣言をする。

 

 

「影法師さん。俺の勝ちだ。いくつか質問させてもらうぞ。」

 

 

影法師が死なないように威力は抑えてある。だが、それでも女性に対し火竜を使うのは妙な罪悪感があった。

 

 

「あんたは何者だ?背後に組織はあるのか?あるなら組織の規模は?」

 

 

 

いくら手練れでも一人で行動しているとは限らない。背後関係があるなら聞いておきたい。聞きたい事は山ほどある。

 

 

「…ホントは駄目なんだけどなぁ。比企谷くんに負けちゃったから特別に教えてあげよう♪」

 

 

手加減したとはいえ元気だな、オイ。

 

 

「組織には属しているけど、単独犯だよ。それ以上はちょ~っと言えないかな?」

 

 

口が堅いのか軽いのかわからない返答だ。この手のタイプはやはり苦手だ。なら質問を変えるか。

 

 

「あんたは火影を知っているのか?」

 

 

影法師は一瞬表情を変えた。すぐに元の強化外骨格のような笑顔に戻るが、その顔はどこか懐かしむような、慈しむような穏やかな顔だった。

 

 

「ふ~ん。本当に君は面白いね♪ますます興味が湧いてきたよ。」

 

 

影法師はニコッと微笑む。

その笑顔にドキッとした!よく見ると、端正な顔立ちの中に幼さを秘めた日溜まりのような笑顔だった。何よりも、俺の一番大切な姫と重なって見えた。

 

 

その時、俺の大きな隙を逃さずに影法師は姿を消した。室内に影法師の言葉が反響する。嫌な捨て台詞を残していった…。

 

 

 

「今はまだ、雪乃ちゃんを預けといてあげるね。いずれまた会いましょ♪」

 

 

 

少しの謎が解け、多くの謎を残した一日だった。

帰ったら小町にこれまた質問責めにあったのは、また別の話だ。

 

 

 

 




影法師とは何物なのか?
気になる展開ですね~。

次回はあのキャラが登場予定です。



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