やはり俺が炎術士なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
シリアス展開、描写難しいですね。
加筆、修正しました。
あれから何事もなかったかのように振る舞った。
姫の手料理は美味かった。どれもプロレベルだと思った。ついつい、がっついてしまった。姫はふと、感想を聞いてくる。
「その…お味はどうかしら?」
「美味し過ぎて、毎日食べたいレベル!」
姫は「そ、そう…」と呟くと、小さくガッツポーズを作っていた。何それ、可愛い。
姫の手料理を堪能したあと、少しの雑談を交わした。といっても、他愛のない話ではない。俺には聞かなければならない事がある。姫の周りで起きているこの異常事態を解決する為には情報が必要不可欠だ。かといって、姫に打ち明け不安にさせる訳にもいかない。
「姫。聞きたい事があるんだが、いいか?」
「どうしたのかしら?急に改まって。」
やはり俺には自然に聞き出すような対人スキルは無いらしい。
「いや、あまり家族の事を話したがらないからな。聞いてもいいもんかなってな。」
「そう。別に内緒にしてた訳ではないのだけれど。」
「嫌ならいいんだぞ?誰にも話したくない事の一つや二つはあるからな。」
そう。誰にだってあるもんだ。俺だって家族にも話せない事もある。それはもちろん、姫だって例外じゃない。彼女自身も言っていたではないか。能力以外は普通の人間だと。だから姫が自分から話すまで待とう。
「…八幡くんなら、かまわないわ。少し長くなるわよ?」
姫はぽつりぽつりと話してくれた。
要約すると、両親と姉がいる。
家はお金持ち。雪ノ下財閥という。
政財界にも太いパイプがある。
姉は万能超人。
母はそれに輪をかけた万能超人。
自分以外は冷酷な人達らしい。
(言葉を濁すから自己解釈)
そんな家族が嫌で、反発するように一人暮らしを押し切ったらしい。
正直、敵の姿を見るどころか余計にわからなくなった。解った事といえば、この少女は幸福とは言えない環境で生きており、それは俺にとって、とても守りたいと思える存在だと思ったんだ。
「姫、話してくれてありがとうな。おかげで決心がついたよ。」
「決心?なんの?」
これ以上は詮索されるから言えないな。これ以上の情報もなさそうだし、今日はこれで帰るとしよう。
このマンションの一室は監視部屋そのものだ。今まで姫に何の実害も無かったのは、あくまで監視が目的だったからだろう。もし俺が全ての機器を外せば、恐らくなんらかのアクションが起こるだろう。そんな危険な目にあわせる訳にはいかない。
「姫。そろそろ遅いし、帰るわ。今日は御馳走様な。」
「御粗末様です。…別にもっとゆっくりしていってもいいのだけれど…。」
この時の俺は認識がまだ甘かった。
「じゃあ、また明日な!」
「ええ、また明日ね。今日は楽しかったわ。」
帰り道。俺は歩いて来ていたので、少し近道を通ろうと思い、人気の少ない河川敷を歩いていた。ふと、前方に人影が見えた。どうやら女性のようで、俺は通報されないように(習性)、道の端を歩いてすれ違うようにする。
「これ以上関わるのはやめなさい」
冷たい、底冷えするような声だった。
俺が即座に振り返ると、もうそこには誰も居なかった。
帰りながら思考を巡らせる。
アレはなんだ?誰だ?敵なのか?監視してる奴か?敵の規模は?それよりも、あの一瞬で…どうやって消えた?
考えても何も答えは出ない。推測や仮定ばかりだ。イカン。まずは落ち着いて状況の整理と、姫の安否の確認だ。恐らく姫は無事だろう。監視をすると言うことは、ある程度の対象の安全も考えられているはず。
姫に電話してみる。あっさりとつながり、他愛もない会話をして切る。良かった!無事だ。次に家族の安否も心配になってきた。小町に電話する。
数コールで小町は出ると、今日は帰って来なくてよかったのに!と言われ、切られてしまう。まぁ無事ならいいか。
家に帰る前にやることが出来たな。
敵は俺の事をどれだけ知っているのだろうか?家族構成、友人関係、あ、友人は一人だけだった。まぁそんなに多くは知らないだろう。たとえ知ってても、絶対に知らない事もある。
そう、たとえば………『絶対に許さないノート』を作るぐらいの俺の陰鬱なところとかな!
俺は一人であの廃工場にいっ入った。た。
少し広い場所に来ると、振り返り静かに話しかける。
「さっきの奴…。いるんだろ?出てこいよ。」
入口の方の影の中から、さっきの女が出てきた。
何コレ!ホラーなの?バリバリ怖ぇよ!
けど、怖い気持ちを圧し殺して女と対峙する。
「なぁに?坊や。死にたいの?」
ここからは、非日常だ。感覚を切り替えろ!
さぁ、知ってることを全て話してもらおうか!
次回はあの人が出てきます!
お楽しみに。