慢心王の踏み台生活   作:匿名希望の金ピカ王

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 まさか、私なんかの作品がここまで応援してもらえるなんて、全く思ってませんでした。

 皆様の期待に添えるように頑張って執筆をしていきたいと思います!

 これまで応援してくださりありがとうございます! そして……。
 これからも応援お願いします!


 …………とまあ、前書きで書く事が全くこれっぽっちも思い浮かばなかったので、こんなどーでもいい事書きまs(殴



 あ、そういえばあのオリ主君、退院したようです。


6ギル目 慢心王の食料事情

「握力……雑種どもの8倍と言ったところか……100m走も高飛びも、もはや人間レベルじゃないな。やはり頂点の王たるもの、この程度でなければならない。フハハハハ!!」

 

 よう。俺は今、山の中にある神社の裏手で、自身の身体能力の確認をしているところだ。

 

 最初は、この体妙にスペックいいよな。と言う何気ない疑問から始めたのだが……これが実にいい結果を弾き出す。

 

 

 まず、普通人には持ち上げられない大岩を、なんでもないかのように持ち上げる。

 

 走れば、10mはほぼ一足で移動できる。

 

 跳躍力も、軽々人を飛び越えられるレベルだし、まさか俺がバク宙を出来る日が来るとは思わなかった。

 

 

 まあそんな感じで、こりゃ慢心もするわ、ってレベルの肉体を有する俺。

 まだ幼い体だし、これから鍛えていけばもっと伸びるかな……って思ったんだけど。

 

 

「この我に鍛錬など必要ない」

 

 

 ですよねー。

 

 努力する慢心ってそれもはや慢心じゃねーよ。

 てなわけで、俺はどうやらこれ以上強くなれないらしい。

 

 だけど、今のままでも十分過ぎるくらいに強いし、特に問題はなさそうだ。

 

 

 

「……そろそろ帰るか」

 

 

 そう言い、俺はすぐ目の前にある神社に入った。

 

 

 俺は今、誰もいない神社に間借りさせてもらっているのだ。

 

 

 何故か板目の隙間から雑草が生えているが、「ふん、なかなか根性のあるやつだ」とか言って、慢心王がお気に召しているからよしとしよう。

 

 ……そろそろ、どうにか身分を確立させて、普通の家に住みたいな。

 

 ……いや、その前に。

 

 

「……腹が減った」

 

 食料の調達が、必要だ。

 

 

 

 

 

 

 side なのは

 

 

 キィ……キィ……とブランコが軋む。

 

「367……368……369……370」

 

 なのはは、一往復ごとに数を数えるだけの機械と化していた。

 

 

 ……退屈なの。

 

 前は、一日中こうしていてもなんとも思わなかったのに、いつからかこのブランコに座っているのが苦痛に思えてきたの。

 

 

 それもこれも、全部あの意地悪な金髪のせいなの。

 

 金髪許すまじなの。

 

 

 

 あの日、家族に否定されていたと勘違いしていたなのはに近づいて、なのはの誤解を解いてくれたギル君。

 ギル君と話していると、心の底から殺意が湧いてくるけれど、それと同時に別の衝動が湧き上がってくる事も感じていたの。

 

 それが何なのかはわからないけれど……嫌悪感とか、そういうのとは違うことは分かった。

 なのはは、ギル君のことをどう思ってるの?

 

 

 いつの間にかブランコの回数を数え忘れてるけど、そんなどうでもいいことより時間を有意義に使えそうな悩みが生まれたから別にいいの。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、こんな所で何をしてるの?」

「……え?」

 

 

 

 うんうんと唸って考え事をしていたら、急に誰かに話しかけられたの。

 

 

 黒髪黒目で、顔立ちは整っているけれど、ふとした瞬間に忘れそうなくらいにパッとしない男の子。

 

 

 ……あれ、この顔、どこかで見たことあるの。…………どこだっけ?

 

 

 でも、折角ブランコに揺られた回数を数える以外の時間潰しを見つけたのに、それを妨害したこの子は万死に値するの。

 

 

 

 ……あ、今のギル君の口癖なの。

 

 

 

「こんな所で何してるの? 君1人だよね?」

 

 

 あっと、しまったの。ふとした拍子に忘れてたけどなのは、この子に話しかけられてたんだったの。

 

 

 ……えっと、1人で何してるのか、なの? 見てわかる通りブランコに乗ってるの。

 

 

「……今、ブランコで黄昏てるの」

「あ、そ……そうなんだ。……えっと、どうして1人でいるの?」

 

 

 急に不躾な質問になったの。1人でいることを責められると、こっちとしても色々答えにくいの。

 

 

「……君、1人で公園まで来たの?」

「1人なの」

 

 そして強いて言えば君も1人なの。

 

 

「……君、名前は? 僕は上津正義(かみつ せいぎ)。6歳だよ」

「……高町なのは、同じ年なの」

 

 

 名乗られたら名乗り返す。どこかの金髪に教えられたことを実践するのはなんか癪に障るけど、でも実際マナーだからやるの。

 

 

「そっか……お母さんとかは?」

「仕事中なの」

「……なのはちゃんを一人にして?」

「お母さんは喫茶店の店員さんだから、休日もお仕事あるし、大人が仕事中に子供を一人にしちゃうのはしょうがないことだと思うの」

 

 

 それが悪いことだとは思わないの。お母さんはお父さんの分まで頑張ってるし、なのははそれを応援したい。

 

 だから、お父さんが退院するまで、なのはは待ってる。

 

 ……ギル君のおかげで、なのはは自分のやりたいことをしっかり自覚できたんだし、やり遂げる覚悟もしてるの。

 

「……それ、寂しくない?」

「でも、お母さんに迷惑はかけられないから」

 

 かけられない、じゃなくて、かけたくないが正解だけど、面倒だから言い直さないの。

 

「そんなことはない!」

「にゃ!?」

 

 急に大声をあげられたらビックリするの! 何? どうしたの!?

 

「君が我慢する必要はないよ! 子供は親に迷惑をかけてもいいんだ! だから、なのはちゃんはもっとお母さんにわがままを言うべきなんだ!」

「…………(ポカーン)」

 

 

 なんか、今更なことを凄い熱弁されたの。

 

 

 子供は親に面倒をかけるもの。親は子供の面倒を見るもの。

 

 

 ……前にギル君に教えて……もらってないな。なのはが自分で気付いちゃった事なの。

 

 

「だから、なのはちゃんはもう我慢しなくていいんだ。今からでも遅くないよ。お母さんのところに行って、なのはちゃんの本心を打ち明けるんだ」

 

 

 なんか、わけのわからないことを言って手を差し伸べてくる…………名前忘れたの。

 

 でも、本心を打ち明けるって……なのはの本心はお母さんの役に立つことなの。

 それがなのはのやりたいことで、その結果一人になっちゃってるけど、これはなのはが自分で望んだこと。

 

 

 お母さんも、お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、みんな辛くて、悲しくて、とても努力してるの。

 それに、今一番辛いのはお父さんだから。

 

 

 なのはは、家族だから。家族と同じ大変さを背負いたいから、わがままは言いたくない。迷惑をかけるのは、なのはの本心じゃない。

 

 

「ほら、俺も一緒に付いて行くから。なのはちゃんは……一人じゃないんだよ」

 

 ……なんかもう、言ってることが的外れ過ぎて泣けてくるの。

 この子、きっと頭のおかしな子なんだろうな。かわいそうに……うぅっ……。

 

「もう、泣かなくてもいいんだよ。さあ、行こう」

「あの、別にいいです」

「……へ?」

 

 取り敢えず、変な人にあったら逃げるようにお母さんに言われてるから、なのははそそくさと公園をあとにしたの。

 

 

 後には、表情を固めて右手を突き出したまま動かない男の子だけが残ったの。

 

 

 

「……なんか、よくわからないけど気分が悪くなったの。こうなったら、ギル君に何かイタズラでもして気を紛らわすの!」

 

 そうと決まれば、あとはギル君を見つけるの。

 

 なのはは、人で賑わう市内方面に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side ギル

 

 

「げ、また来やがったな」

「ふん、また来てやったぞ、雑種。さあこの我に貢ぐがいい」

「もうオメエにやるリンゴはねえ!」

「……なにやってんの?」

 

 いつもの様に商店街で食料調達(カツアゲ)をしていると、誰かが俺に声をかけてきた。

 振り向くと、そこには買い物袋を下げた流星の姿があった。

 

「なんだ、貴様か。見ればわかるだろう? 王は雑種からの献上品を受け取る義務がある」

「商品だっての」

「黙れ雑種、今は貴様の話など聞いておらん」

「んだと? コラ」

「王への敬意が足りておらんな。この雑種は随分と教養がなっておらぬようだ」

「マジでムカつくな、お前……」

「貴様ほどではない、雑種」

「言うじゃねえか……ガキ」

「……仲いいわね、貴方達」

 

 八百屋のおっさんとは短い仲でも無いからな。お互い、どの程度の距離感で話せばいいのかがよく分かっている。

 

 

「まあ、同意の上ならそれでいいんだけど……ちょっとギル、こっち来なさい」

「なっ、何をする! 貴様この王に気安く……お、おい! 引っ張るな!」

 

 聞く耳持たぬと言わんばかりに俺の袖を引っ張る流星に連れられ、俺は商店街を離れていった。

 

 

「……なんだったんだ? ありゃあ」

 

 

 そして、おっさんの呟きは、商店街の賑わいに掻き消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様、なんのつもりだ。この我をコケにしたこと、理由によっては……「フィールド魔法発動」だから聞けと言っているだろう!」

 

 

「『幻夢境(ドリームランド)』」

 

 

 ――また世界が、変わった。

 

 

 目の前の風景は、フワフワと浮かぶ小さな島々。

 そして、大きな城に変わった。

 

 

「……またここか。貴様もつくづく芸がない」

「ほっといてよ。ここが一番落ち着くんだから」

「ふん……まあいい。だが、何の目的で我をこの空間に連れ込んだ?」

 

 商店街で偶然会ったから、ってだけじゃなさそうだな。

 なんとなくそう思い、俺は流星の事情を聞いてみる。

 

 すると、流星は呆れ返った表情で答える。

 

「あのね……かの有名な慢心王様が一介の八百屋で恐喝紛いの物乞い何かしてたら、誰でも引き止めるわよ」

「物乞いだと? 貴様、我を愚弄するか!」

「いや、100%物乞いだったわよねぇ」

「そんなわけあるか! あれは雑種共からの貢物を受け取ろうとしていただけだ!」

 

 そーだそーだ。決してひもじいわけじゃ無いんだよ。…………無いんだよ。

 

「……まあ、アンタが折れるとも思わないし、取り敢えずそれでいいや。でもギル。アンタ、そんなにお金に困ってるの?」

 

 ……随分ストレートだな、コイツ。

 

「ふん、この世界は余すことなく我のもの。この世全てが我の玉座であり、財でもある。居住や金銭など、そんな固定概念に囚われる必要性など皆無!」

「あぁ……無いわけね」

「無いのではない! 全てが我のものなのだ!」

 

 

 流石に往生際の悪い慢心王である。いや、もう諦めてますけどね。ここで折れる俺ならもっと気苦労も減るのに……。

 

 

「……はぁ、これは……教えちゃった方がいいのかしら」

 

 

 未だに「ぐぬぬ」と言いながらも貧乏を認めようとしない俺に、流星がため息をつき、小声でボソリと呟くのが聞こえた。

 

 

 

「……『王の財宝(ゲートオブバビロン)』の、使い方」

 

 

 

 その名前を聞いた瞬間、俺は少しだけ……胸の奥に違和感を感じた。

 

 何か……俺に、『何か』が足りないような…………。

 

 『王の財宝』……それが、俺の求める『何か』を示すものなのか…………。

 

 

 

「……いや、このままの方が面白そうだからやめとこ」

「おい」

 

 

 何か、とても大切なことが流星の娯楽のために後回しにされた気がする。

 

 

「呼び止めて悪かったわね。ほら、お詫びにこれあげるから機嫌直して。それじゃ!」

「なっ、待て! 貴様!」

 

 

 俺が呼び止めるも、流星は「亜空間物質転送装置!」と叫んで、フッと目の前から消えてしまった。……なんだ今の現象は。

 

 

 消えかかっている『夢幻境』の中で、俺は『デビルコック先生の秘伝ハングリーバーガー!』と書かれたハンバーガーの包み紙をクシャッと握り締めた。

 

 なお、その時俺の手の中から、悲鳴の様な声が上がったような気がしたが、気のせいだと思い込むことにした。

 ……これ、『食べられる』ハンバーガーなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 指を囓られたので捨てました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後、街中にて。

 

「あ、ギル君」

「ギル君ではない! ……っと、何だ小娘、貴様か」

「あからさまに残念そうな顔しないで欲しいの! これでも女の子なんだから結構ショックなんだよ!」

「なんだ、女扱いして欲しいのか。なら我の嫁になれ」

「お断りなの!」

 

 

 道端でバッタリ出くわしたなのはちゃんと、最早お約束にまでなってしまったコントが開始する。

 ……だが、今日はあまり調子でないんだよなぁ。できればまた今度にして欲しい。

 

「面倒な奴だな。嫁になる気が無いのならわざわざ話しかけてくるな。目障りだ」

「ギル君にとって話しかけてくる人=お嫁さん候補なの?」

「そうだ」

「まさかの正解だった!?」

 

 面倒だから適当に相槌を打っていたら、コントが続いてしまった。うーん、どうすりゃ帰ってくれるかな。

 

「我は今機嫌が悪い」

「いつも悪そうだけど」

「……今日はいつも以上に悪いんだ」

「まあ、確かに心なしそう見えるの」

「……ならば我の近くにいたらどうなるかなど明白だろう。無駄に儚い命を散らす前に、疾く去れ」

 

 試行錯誤しようとした結果、慢心王はどストレートを選択した模様。

 

 

「チッ、あの忌々しいバイク女のせいで食料を調達し損ねた上に、まさか食い物に喰われかけるなぞ、洒落にもならん。あいつは次見つけたら必ず殺す……」

 

 

 ストレートじゃねえ、ただの愚痴になってる……。大丈夫か慢心王。

 

 

「……もしかして、お腹すいてるの?」

 

 おっと、ここでなのはちゃんの指摘が炸裂。図星を刺された俺はどうする!

 

「…………我はお腹が空いたぞ」

 

 

 それはまさか! 正直に答えた!?

 

 

「なら、なのはのとこのお店に行くの!」

「……なんだと?」

 

 あれ、これはなのはちゃんから意外な提案。一体どう言う風の吹き回しだろうか。

 

「……生憎持ち合わせは無い」

「なのはが奢るよ! お小遣いくらいはちゃんとあるの! それに、お客さんとして入るのなら、まだ迷惑をかけたうちに入らないもんね!」

 

 にこやかに笑うなのはちゃん。……君は天使か!

 

「……ほう、貴様のような小生意気な雑種にも王を敬う気持ちがあったとは驚きだ。その敬意を評し、我の嫁にしてやっても良いぞ?」

「いや、いらないの。……それより! 早く『翠屋』に行くの!」

「おいっ! 押すな!」

 

 

 その後、なのはちゃんに強引に連れられ、俺は喫茶『翠屋』へ向かうことになった。

 

 

「翠屋はね、なのはのお母さんと、お姉ちゃんと……あと、とっても強いお兄ちゃん(・・・・・)がいるの。……ギル君、『紹介』してあげるね? にゃはは」

「ギル君では……まあ、食事の招待に免じて今回だけは許してやろう。フハハハハハ!!」

 

 

 この世界に転生してから初めて、まともな料理を食べられると知って、これまで以上にご機嫌だった俺は…………。

 

 

 

 

 

後ろから押してくるなのはちゃんが、今まで見たこともないほどに満面の笑顔を浮かべていたことに、一切気が付かなかった。

 




 嘘予告

「まさか……我を裏切ったのか! 小娘!」
「ふふふ、世界の摂理は弱肉強食……。騙される方が悪いの」

「なんだか……何かが起こりそうな予感がしてならないの……」
「行くぞ、これからここは戦場になるだろう」

「ばかな……早すぎる!」
「なんで……貴方がここに!?」

「信じられん……この我が……相手の力量を読み違えていた……?」

「貴様……!」
「お前……!」
 

 次回、ラスボス戦『魔王の兄は魔人』をお楽しみに。

 ※嘘予告です

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