慢心王の踏み台生活   作:匿名希望の金ピカ王

6 / 9
 感想沢山嬉しいです。
 評価も沢山嬉しいです。

 頑張って続きを書いたけど……この有様だよ。


 というわけで、どうぞ!


5ギル目 遊び心の転生者

『目覚めなさい』

「……ん?」

 

 目を覚ました私が見たのは、真っ白な天井。

 

「……知らない天井だ」

 

 そう言いたくなるのは、昔見たアニメの影響ね。

 

「……えっと、ここはどこかしら?」

 

 周囲には何もない、真っ白な空間。

 状況が理解できず、私は必死に記憶を呼び起こそうとしていた。

 

『ここは神の居城じゃ』

 

 そして、そんな私の目の前に、布一枚を纏ったような格好をしている、ヒゲの長いおじいさんが現れた。

 

「……ヴァルハラ?」

『いーや、どちらかといえば、『幻夢境(ドリームランド)』じゃな』

 

 おじいさんがそう告げると、景色は一変し、青空にたくさんの島が浮いている風景が、私を取り囲んだ。

 

 一瞬にして起こった非現実的な出来事に目を瞬かせていると、おじいさんが私に近づいてくる。

 ……その姿は、とても見慣れたものだった。

 

「……カップ麺早食い王?」

『失礼な奴じゃな。わしはノーデンじゃ』

 

 その姿は、私が趣味でやっているカードゲーム、『遊戯王』のモンスター、『旧神 ノーデン』のそっくりさんだった。

 

『わしは神じゃ』

「知ってる」

『……反応が薄いのう。もう少し驚いた顔が見たかったのじゃが……』

 

 本当に残念そうに落ち込むおじいさんに、なんだか居た堪れなくなる。

 

「いや、だって、カードの実体化なんて遊戯王の世界じゃ日常茶飯事だし」

『アニメに毒されすぎとりゃせんか!?』

 

 いや、だって……ねぇ?

 

「それで、そのノーデンが私に何の用? まさかカードの精霊とか言わないわよね」

 

 こんなおじいちゃんが私の精霊だなんてイヤね。どうせならヴェーラーちゃんがいいわ。

 

『ホンに失礼なやっちゃ。……もうよい。単刀直入に言うが、お主は死んだ』

「へぇ、そうなの……って、え?」

 

 死んだ? 私が? ……なんの冗談?

 

『お主は、遊戯王のショップ大会が終わったあと、対戦相手の少年が帰りに車に撥ねられそうになって、それを助けるために死んだのじゃ』

「……そうなの。そう言われれば……」

 

 確かに、今日大会があったことは覚えている。

 毎週通うカードショップで、いつもの人達に加えて新しい小学生のプレイヤーが1人いたことも覚えてるし、その子が帰りに、道路で信号無視の車に轢かれそうになったことも…………。

 

 ……あれ?

 

 

 …………そのあと、私は。

 

『その子を庇い、車に轢かれたのじゃよ』

「……そっか」

 

 そうだ。それで私は……。

 

「じゃあ、ここは?」

『言ったじゃろう? ここは神の居城。わしの家じゃ』

 

 神……死んだ私は、あの世に行くってことなのかな。

 

『いやいや、お主はあの世には行かんよ。わしはお主が気に入った。どれ、最近有名な転生でもさせてやろうと思うてな』

「転生?」

 

 それは、よく言うファンタジー的なあれ?

 

「特典つけたりする奴?」

『つけたりする奴』

「なんでもいいの?」

『何でも良い』

「わーい」

『全然喜んでないのじゃー』

 

 なんかめんどくさそう。

 

「でも、くれるって言うなら貰ってあげる。そうね、この3つでどう?」

『即決かい。……この内容じゃと、多少制限もかかるが良いかの?』

「もちろん。リミットレギュレーションなしでデュエリストは名乗れないわ」

『本物じゃのう』

 

 そんな軽いノリで、私は転生することになった。

 

『ほれ、付けてやったぞい』

「はいはーい。それじゃ、楽しいデュエル道を歩みましょうかね」

『あ、リリなのの世界には遊戯王はないぞい』

「……へ?」

『お主の持っておったカードは送ってやるが、デュエルはできぬのじゃ』

「……は?」

『ぐっどらっくじゃ!』

「はぁあああああああ!!??」

 

 ちょっと! 遊戯王のない世界なんて、私聞いてないんだけど!

 う、嘘でしょ!? 私、何を励みに生きていけばいいのよ!!

 

 そんなこんなで転生した私は、出来もしないライディングデュエルのためにバイクに情熱を捧げることにしたのでした。めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 side ギル

 

 

「嫌よ」

 

 彼女の返答を聞き、俺はとりあえず安堵した。

 ……よし、このまま俺を嫌ってくれれば、とりあえずの目標は達成か。

 

 いや、まだだな……踏み台なら、もうひと押しってところか。

 

 

「なんだ、照れているのか? まあそれも仕方のないことだな。この最古にして唯一の英雄王、ギルガメッシュの寵愛を受ける事になるのだ。照れぬ方が不思議というもの」

「違うわよ」

 

 ……あれ。眉ひとつ動かさずに否定された。……これ、ちゃんと悪印象持たれてる?

 なんか、適当にあしらわれている気がするんだが。

 

「ねえ、これはどういうことかしら?」

「道化は引っ込んでいろ。貴様の発言は許しておらん」

「…………」

 

 アリサがムッス~~~~っとした顔になっている。が、ちゃんと黙ってくれるあたり、しっかり配下としての立場は弁えているようだ。……いや、そんな自覚持たなくていいんだが。

 

「……なんで私なの?」

 

 赤い少女が俺に聞く。なんでって……まさか素直に「お前が主人公だからだ」なんて言えるはずないよな……。

 

 ……さて、どうするか。

 

 

「……ふむ、人に惹かれることに理由が必要か?」

「は?」

 

 くっせェえええええ!! なんだこの臭いセリフ! 踏み台じゃねえよこれ! ただのいけ好かないナンパ男だよ!!

 

「なんかわかんないけど……随分節操無しなのね。……転生者まで狙ってくるなんて(ボソッ」

 

 

 少女が呆れたような顔で俯き、ブツブツと呟く。

 

 ……相手の反応がわからない以上、次の言葉を続けるのは危険だな。

 まずは、次の相手の行動を見てから……。

 

 

 

 

「私と決闘よ」

 

 

 

 

 …………ん?

 

「……ん?」

 

 

 ……なんだ? 決闘? なにそれ。血糖? 甘党なの?

 

 

「……おい、小娘。決闘とはどういうことだ?」

「私は十六夜流星よ。小娘じゃないわ。……貴方は私が欲しいんでしょ? 私は決闘に私自身を賭けるわ。どう? 悪くないでしょ?」

 

 不敵に笑い、そう告げる十六夜流星。

 ……うん、全くわからん。

 

「あら、もしかして自信ないの?」

 

 あっ、あかん……そんなこと言ったら……。

 

「愚弄するな、この我を誰だと思っている。……いいだろう。その決闘、受けて立つ」

 

 ほらぁ、こうなる。

 

 決闘って言っても、その内容もわからないし、相手の強さだって知らない。

 もし、魔法の撃ち合いなんて言われたら、敗北は確実だぞ。

 

 

「……その言葉、後悔しないことね。……でも今はダメね。アリサを巻き込むわけにはいかないもの」

「…………」

 

 ああ、そうだ。完全に忘れていた。そういえばアリサも隣にいたんだった。

 

「なんだ道化、いたのなら一声かければ良いものを」

「むぅううううう!!」

 

 ……一瞬アリサがなのはちゃんに見えたんだが、気のせいか?

 

「もう、嫁とか決闘とか……私抜きで面白そうな話を始めないで。……色々説明してもらうわよ。流星、ギルガメッシュ様」

「……っ!? アリサ、コイツのことを……!」

「その話はあとでね。取り敢えず、ここ以外の場所で話しましょう。流石に校門のど真ん中で長話をするのは遠慮したいわ」

 

 言われて気付いた。……これ、凄い視線を集めている。

 

「嘘、修羅場?」「三角関係?」「あれ、アリサ・ローウェルと転校生だよな?」「相手、まだ幼児じゃない?」「でもあの外人みたいな子カッコよくない?」など、ヒソヒソと声が聞こえてくる。…………流石に恥ずかしいな。

 

「……確かにそうね。なら、どこか公園にでも行きましょう。あそこならゆっくり話し合えるわ」

 

 流星がそう言って歩き出す。俺もそれに付いていく。

 

 ……公園と聞いて、何かを思い出しそうになったが、結局思い出せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ聞かせて頂戴。流星、あなたとギルガメッシュ様はどういう関係?」

「それより、アリサこそギルガメッシュの何なの?」

「……なんでなのははここに居るのかな?」

 

 

 ところ変わって海鳴臨海公園。ベンチの並ぶ休憩スペースにて、俺とアリサ、流星、そして何故かなのはちゃんの4人が集まっていた。

 

 ……位置関係は、並び合う二つのベンチに、俺となのはちゃんが向き合っている。

 

そして、なのはちゃんの“両端”にアリサと流星がそれぞれ座っている。

 

 

 うん、おかしいだろう? 何故か自然にこうなった。……死にそうな顔してるなのはちゃんには悪いけど、少し我慢してくれ。

 

 

(ギル君! これはどういうことなのぉ!?)

(ギル君ではない。……貴様を巻き込むつもりはなかったんだが……ホイホイ近づいてきた貴様が悪い)

(おーぼーな責任転嫁! なのははまた勝手にどっか行っちゃったギル君に文句言いに来ただけなのに!)

(わざわざ我の正面に座ったのが運の尽きだ)

(うわぁーーん! おうち帰りたいよォー!)

 

 なのはちゃんと俺がアイコンタクトで会話しているが、2人は構わずに問答を続ける。

 

 

「私の事はどうだっていいじゃない。でもそうね……強いて言うなら、ギルガメッシュ様は私の恩人であり、一生(の忠誠)を誓った人よ」

 

 唇に指を当て、妖艶な感じでアリサが告げる。……なんだその意味深な動作。

 

「へぇ、そう。私とギルガメッシュの関係は、貴女が知る通り、ただ結婚を迫られているだけよ。“ただ”……ね」

 

 流星が、なんでもないような感じで説明する。目は伏して、表情をほとんど動かしていない。……どこか余裕を感じさせる態度だ。

 

「そう……“ただ”なの」

「ええ、“ただ”よ(流石に転生者とか踏み台とか、どこまで知っているかわからないのに、教えられないわよね。……というか、アリサはもしかしてこの踏み台に騙されてる? ほんと、踏み台転生者なんてどうしようもないクズね……)」

「「…………(ゴゴゴゴゴゴ……)」」

 

 ……2人の背後に、阿修羅と般若が現れたような気がする。

 しかし、それは2人に挟まれたなのはちゃんの顔を青くするだけに終わる。

 

「あ、あの、2人とも落ち着いて……」

「「貴女こそ何なの?」」

「ヒィイイイ!!」

 

 あ、ヘイトがなのはちゃんに移った。

 

「貴女、当たり前のようにギルガメッシュ様に近づいてきたわよね? もしかして、彼の従者か何か? だとしたら私と同じ立場ね」

「違うわね、大方、彼に求婚でもされて困っていたんでしょう? だから文句を言いに来たのよ。貴女は私の方についたほうがいいわ」

(ヒィイイイ! どっちも怖いの!!)

 

 実際、なのはちゃんは道化扱いされたり、嫁扱いされたり、どっちの側にもつける立場なのだが……。

 まあ、焦りに焦りまくっているなのはちゃんにそんなことを考える余裕はなく……。

 

 

 

「……な、なのはは……ギル君の玩具なの!」

 

 

 

 とんでもないことを、口走った。

 

「……は?」

「……へ?」

「あっ! ち、違うの!! ぎ、ギル君がただ、なのはの事なんてその程度にしか思ってないってだけで、べ、別になのはがそれを認めてるとかそんなわけじゃ……! なのははただ、ギル君の(愉悦の)捌け口に使われたり(口論に負けて)泣かされたりしてるだけで……」

 

 

 ついでに、全てのヘイトを俺に押し付けやがった……!

 

 

「……我が王?」

「……踏み台?」

 

 そして…………世にも恐ろしい女の顔が、こちらに振り向いて………。

 

 

 

「「どういうことかしら?」」

 

 

 

 鬼が、いた。

 

 

 

「……ギル君ではない」

 

 違う。そうじゃない。

 

「……その小娘は、まあ、愉快な小動物だな」

「……小動物?」

「……小動物ね」

「しょ、小動物……」

 

 1人項垂れているが、構わず続ける。

 

「見ていて飽きぬから、最初は飼って傍に置いておこうとでも思ったのだが、存外抵抗が激しくてな。しょうがないから妥協して我の嫁になれと言ったのだ」

「どこをどう妥協したらそうなるの!?」

「やかましい。貴様は喋るな」

「なのは当事者なのに!?」

 

 ……うん、やはりなのはちゃんと話していると、周りの空気が浄化される気がする。

 現に、威圧感を出していた2人も、大分落ち着いてきたようだし……。

 

 

(飼おうとして……妥協して嫁? ギルガメッシュ様にとって、嫁っていうのはそれほど特別な称号でもないのかしら? だとしたら……何なのかしら。ここまで感情的になってた私……滑稽ね。これこそ道化にふさわしいわ)

 

(モブキャラも甚だしい私に対していきなり嫁と言っておきながら、メインヒロインへの扱いが雑ね。もしかして、俗に言うフェイ党とか言う奴? でも、それなら最初から向こう陣営になるように転生場所を選ぶはずだし……。こいつ、本当に踏み台なのかしら?)

 

 

 何かを悟ったような顔のアリサと、さも不満があるかのような顔をする流星。

 

 先に口を開いたのは、流星の方だった。

 

 

「ねえ、ギルガメッシュ」

「なんだ、嫁よ」

「……。まあ、いいわ。貴方、この世界についてどこまで知ってるの?」

「……なんの話をしているのかしら?」

「アリサにはいつか説明するわ。……で、どうなのギルガメッシュ」

 

 俺は、この質問がどんな意図でされたのか、全くわからなかった。

 なんだ、魔法少女って、世界の法則とか、そう言った壮大な設定を抱えてるのか?

 

 で、不自然に近づいてきた俺を不審に思ってるとか、そんな感じだろうか。

 

「我は世界全ての王。この我に知らぬことなどない」

 

 まあ、どっちにせよ、俺はこう答えるんだろうが。

 そう内心で苦笑いをしていると……流星は、こう続けた。

 

 

 

 

「なら、貴方の世界を見せてみなさい。……フィールド魔法発動『幻夢境(ドリームランド)』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界が――――変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず目に入るのは、見上げるほどの巨大な城。

天から降り注ぐ神々しい光に照らされ、神秘的に輝いている。

 

そして、周囲に浮かぶ小さな島の数々。

浮遊島というのだろうか。あちらの島に向かうには、空を飛ぶ以外の手段はなさそうだ。

 

 

そして、そんな非現実的な世界に、俺と……流星はいた。

 

 

「ここなら気兼ねなく話せるわ。なのはちゃんとアリサちゃんは申し訳ないけど、連れてこれなかったわ」

 

 

 そう言う流星の服装は、聖祥の制服から、黒いラインの入った赤いライダースーツに変わっていて、その左手には、扇型に広がった機械が取り付けられていた。

 

 

「……この世界は、貴様が作り出したのか?」

「そうよ。私の能力の一つ、『フィールド』。貴方で言う固有結界のようなものよ」

「我でいうだと?」

「……知らないの? 貴方の外見と名前の元となったゲームでは、結構定番だと思うのだけど」

 

 知らない。ギルガメッシュという名前は転生してから初めて知ったものだし、この外見にも原作があることなんて、俺は知らない。

 

 そんな俺の思考に気付いたのか、流星は困ったような顔をした。

 

「……なるほどね。貴方、自分で望んでそんな態度を取っているわけじゃないのね」

「何を……」

 

 しまった、一番バレてはいけない奴にバレてしまった。……このままじゃ、俺は踏み台としての役目を果たせず、死んでしまう!

 

「……安心しなさい。このフィールドは、とある神縁の地。貴方を転生させた神はこのフィールド内に干渉できないわ」

「なっ、貴様……転生者のことを」

「そりゃ知ってるわよ。……私も転生者だから」

「な……っ!!」

 

 

 転生者……だとっ!? じゃあ、俺が主人公だと思っていたのは……全て間違い?

 

 

「……もしかして、気付いてなかった?」

「ば、バカを言うな! この我が知らぬことなどあるはずがない。何せ我は最古にして唯一の「はいはいわろすわろす」……無礼な、万死に値する!」

 

 俺の名乗りを遮り、「あははっ」と笑う流星。……なんというか、性格が変わってないか?

 

「まあ、そんなことはどうでもいいわ。貴方が何を思って私に声を掛けたのかは知らないけど……その、踏み台みたいな態度、続けなきゃいけないんなら、私も付き合ってやるわ」

「…………」

「ふふっ、私、こう見えても相手の心情を探るのが得意なのよ(というか、手札にヴェーラーとかオネストとかウサギとか握ってるかどうか知るためには相手の心を読むしかなかったというか……)」

 

 クールだった流星はどこに行ったのか、今いるのは、無邪気に笑う朗らかな少女だ。

 

 

「貴様……一体なんのつもりだ?」

 

 俺の踏み台のふりに合わせて、演技をするメリットがわからない。

 俺が失敗して殺されようが、この転生者にはなんの害もないはずだ。

 

 

「なんのつもり? うーん、なんだろ。……そうね、楽しそうだから、じゃないかな」

「楽しそう……だと?」

「そう。楽しそう。私が貴方を“踏み台だと思い込むフリをする”。それって、貴方を転生させた……“神を騙す”ってことじゃない? 最初は遊戯王のない世界なんてつまらない事ばかりだと思ってたけど……神様を騙すなんて滅多にないチャンスよね。この期にやっておかなきゃ、もう二度とできないわ」

 

 そう言って笑う流星を見ていて、俺は思った。

 

 

 ……ああ、そうか。この人…………愉悦を求める時の俺と同じ顔をしているのだ。

 

 

「ふはっ、フハハハハハ!! よい、よいぞ! 貴様、我と共に愉悦を求めるか」

「ええ、外道神父じゃなくてごめんねだけど、ここに、『愉悦部』を結成しましょうよ」

「愉悦部! なんと心踊る響きか! よかろう。貴様は我の腹心として召し仕えようではないか」

「げぇ、それは勘弁。私、誰の下にも付かない主義だし」

「ふん、その自分を曲げぬ姿勢も気に入った。そのうち貴様の身も心も我のものにしてやる。心して待つが良い」

「わー、たいへんね。奪われないように守らなきゃ」

 

 

 こうして、よくわからないうちに俺は、志を同じくする同志を見つけたのだった。

 

 

 ……踏み台ってなんだっけ。

 

 

 

「ねえ、ギル」

「なんだその呼び方は」

「別にいいでしょ。長いし」

「……ふん、好きにしろ」

「やたっ! あ、じゃあ……折角だし、ここで決闘しましょう」

「……何?」

「私のフィールドは全て、ライディングフィールドになってるの。だから……バイクレースよ」

「……我はバイクを持ってない」

「いや、あるでしょ」

「だから…………何だ、この金ピカのセンスがいいバイクは」

「貴方が今自分で出したんでしょうに……」

「なんだそれは。……ふん、まあいい。こいつは我に使われたいようだな」

「……(自覚なしで使ってるんだ、まあいいや)。よーし、クレナイ。『遊星号』を出して」

『了解です、マスター』

「な、なんだそれは?」

「これ? 私のデバイス」

『初めまして。マスターのデバイスをしております、クレナイと申します。普段は腕輪、セットアップ中はデュエルディスクとなってます』

「そ、そうか……」

「ま、そんなことはいいでしょ。今は目の前の決闘よ。いーい? 勝った方が……負けた方に命令権一回!」

「ふん、よかろう。この我のドライビングテクニック、見せてやる」

「「勝つのは……」」

 

「「我(私)だ!!!」」

 

 

 

 

「「ライディング……デュエル!」」

 

 

 

 

 俺達がこのフィールドを出たのは、これから3時間後のことである。

 ……現実では1秒もかかっていないというのだから驚きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんか飽きちゃった」

「あら、流星。もう帰るの?」

「ええ、アリサは?」

「……そうね、私もそろそろ帰ろうかしら。……なのはちゃんだっけ? またね」

「へっ? あ、うん。アリサちゃんも、バイバイ、なの」

 

 ふと席を立った流星が、俺を見る。

 

「そうだ、ギル。12桁の数字を言ってみて」

「なんだ、藪から棒に…………○○○○××××△△△△だ」

「ありがと。じゃあね」

 

 ……なんだったんだあいつ。

 

「……じゃあ、私も帰るわ(ギルって、いつの間にそんな呼び方をする仲になったのかしら……)」

 

 仏頂面で席を立って、アリサが消える。

 

「……ギル君、今日は一段と疲れたの」

「ギル君はやめよ。……我もだ。こんなに疲れたのはいつぶりか」

 

 ほんの些細な思いつきで始めた張り込みが、まさかこんな形になるとは思わなかった。

 

 

 だが……一人でも理解者がいるというのは、存外気が楽なものだな。

 

 慢心王の真似をして、俺は心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌日~

 

 

「愉悦教に寄付を」

「麻婆教に寄付を」

「外道教に寄付を」

 

「もう二度と宝くじなんて買わないんだからぁあああああああああああ!!!!!」

 

 

 海鳴の街に、“徒歩”で追いかけてくる3人の神父と、“バイクでの全速力”で逃げ回る少女の声が響き渡った。

 

 

 

 なお、どこかの天才少女が広げた新聞には、12桁の番号で当たり外れを判定する宝くじの当選番号が載っていて、その一等が、偶然にも昨日十六夜流星がギルガメッシュに聞いた番号と一致していたのだが、それはきっと関係の無い話である。

そう思い、天才少女は新聞を閉じた。

 




 修羅場の末、どんどん仲間が増えていく。

 ……あれ、踏み台ってなんだっけ?


 というわけで、ついに『ハーレム』タグ解禁です。
 ……“オリ主ハーレム”だったらいいな(願望)


 そして、謎の美少女転校生の正体が明らかに!!

 彼女は……転生者だった!!(ナ、ナンダッテー

 そして……デュエリストだった!!(ナ、ナンダッテー


 驚いたか! 驚いたであろう! まさか予想もつかなかっただろう!
 いや、嘘は言わなくてもいいんだ。わかっている。諸君が内心驚きっぱなしなのはわかっているから。
 それは恥じることではないんだ(慈愛の眼差し)


 さて、踏み台、小動物、天才、なんかバイクと合体しそうな人の4人のコンタクト回! 一見地味なようで歴史的な回となりました。
 私的には一番見ごたえありません(をい)

 というわけで、次話に期待!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。