慢心王の踏み台生活   作:匿名希望の金ピカ王

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 続きました(失望)
 みなさんの期待が思いの他厚く、頑張って作りました。

 多分今回は期待通りにして、期待外れな結果になると思います(どっちや)

 では、どうぞ!







 あ、今日、ふと見たらこの作品がランキングに上がっていてびっくりしました!
 しかも8位! アイエエエエ!? ナンデ!? トップ10ナンデ!?

 みなさん、誠にありがとうございました!


3ギル目 不思議な横槍

 子供達の無邪気な笑い声をBGMに俺は目を覚ます。

 

「……チッ、煩わしい雑種共が。我の眠りを妨げるなど万死!」

 どうやら、目覚めは好調のようだ。

 

 

 ここはいつぞやの海鳴臨海公園……にある、黄金に輝くドーム状の遊具の中。名前わからんけど。

 一昨日辺りから、俺はここで寝泊まりしている。

 

 

 

 ……ん? 廃ビルはどうしたって?

 

 赤い汚れがこびり付いてしまった元居住は戻りたくない。

 

 その次に見つけた廃ビルだが、そこは確かに条件は良かった。

 

 壁も窓もあるし、まだ使えそうなデスクとか残ってたし、日当りは最高だし。

 

 

 ……でもただ一言、ただ一言だけ言わせてもらうと……。

 

「暑い」

 

 

 現在夏。まさか壁があるだけでこうも気温が変わるとは思いもしなかった。

 クーラーも扇風機もない今、暑さというのは何者よりも手強い敵だ。

 

 だから、その廃ビルは早々に出て、住居が無くなった俺は渋々この公園に舞い戻ってきた次第である。

 

 

 ……何故か、どっかの配下が慢心した王らしき誰かを探し回っているような気がするが気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

「……またいるのか」

 

 床がヒンヤリとしていて心地が良い、名も知らぬドームの中。俺は開いた穴から顔を覗かせる。

 視線の先にはブランコを漕ぐ少女の姿。

 

 ……そう、例の高町なのはという少女だ。

 

 

 

 俺は、まだ彼女に話しかける勇気がない。

 

 

 

 …………いや、普通そうだよね? だっていきなり俺の嫁とか言っちゃったんだよ!?

 

「…………ふん」

 

 あと、いつもは自分勝手な俺の体も、今回は何故か大人しくしているため、きっとこの選択は間違いではないはずだ。

 

 …………にしても。

 

 

「一体いつまで我は退屈せねばならん」

 

 ほんと、平和だなぁ……。

 

 今はなのはちゃんに見られたくないので迂闊に出られないし、面白そうな事探しに行こうと思っても難しいんだよ。

 暇を潰すには、今この場で出来そうなことに限られてるんだが……何も持ってない俺にできる楽しいことなんてないよなぁ。

 

 

 

 

 なんか、面白いものでも“出せない”かなぁ……。

 

 

 

 

 ポツリとその言葉を放ったその瞬間…………時空が、歪んだ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 side なのは

 

 

 ――うそつき。

 

 

 なのははもう、何度目かもわからないその呟きを漏らす。

 

 

 ――うそつき、うそつき。

 

 

 ブランコを一漕ぎする毎に、そう呟く。

 

 

 ――うそつき、うそつき、うそつき。

 

 

「……うそつき」

 

 

 

 最後に呟いて、なのはは無言でブランコから立ち上がる。

 

 ……俯いた顔を正面に向けるけど、そこには誰もいないの。

 

「……お城に連れてってくれるって、言ったのに」

 

 今日はもう帰ろう。ここに居ると、よくわからないけど胸が痛くなるの。

 

 

 そう思って、一歩前に踏み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、名前はわからない金色のドーム状の遊具に開いた穴から、金に輝く光が漏れ出して…………。

 

 

 

 

 

 ……大爆発を起こしたの。

 

 

 

 

「な、なんなの!?」

「ごほっ、ごほっ……な、なんだ? 何事だこれは?」

 

 モクモクと煙を上げる遊具の中から這い出してきたのは、見間違うことのない、金色の髪をした偉そうな男の子だったの。

 

 

「……ギル……君?」

 

 理解したと同時、なのはは走り出していた。

 

 

 

 

 

 side ギル

 

 

 あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!

 

「我の目の前に金色の次元の裂け目が出来たと思ったら何かが高速で飛んで地面に突き刺さって爆発した」

 

 な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起こったか分からなかった……。

 

 

「ごほっ、ごほっ……な、なんだ? 何事だこれは」

 

 爆発で巻き上がった砂煙から逃れようとドームを這い出す。

 ……結構激しめな爆発にもかかわらず、ダメージを受けてない俺の体と名も知らないドーム。スゲェ。

 

「……何が起きたにせよ、土煙が収まるまで中には入れんか。……しかし、今の現象は……?」

 

 何が起きたのかさっぱりではあるが、まずは原因の究明をして……。

 

 

 常識の外側の出来事に気を取られていた俺は、背後からの気配に気付けなかった。

 

 

「ちぇりお!」

「ぐふっ!?」

 

 背骨を貫く一撃が、俺の全身に響き渡る。

 ……まあ、あまり痛くないんだが。

 

「思い上がったな雑種。その手癖の悪さはもはや救いきれん愚かさだな……うつけもここまで来るといっそ清々しい」

「ふんっ、ギル君が悪いの! あとなのははうつけじゃないもん!」

「ギル君はやめろ!」

 

 振り返ると、それはやはりというか……怒った猫のように、側頭部の二本の尻尾を振り回しながら栗色の少女が頬を膨らませていた。

 

「……うそつき」

「我は嘘はつかん」

「……うそつき」

「くどいぞ雑種」

「…………」

 

 プクっと頬を膨らませるなのはちゃんと暫く睨み合う。

 

 俺の方は無表情で、なのはちゃんは「むー」と声を漏らしながらツインテールをピョコピョコと跳ねさせて。

 10秒後には根負けしたのか、「ふんっ」と口をへの字にしたなのはちゃんがそっぽを向いた。

 

「諦めが随分早いな」

「違うもん! 嫌いなギル君の顔を見たくないだけだもん」

「ギル君はやめよ」

「ツーンなの」

 

 今度は無視を決め込むつもりか。……なんだこの可愛い生き物。

 

「フハハハハ。運が良かったな雑種。今の我は機嫌がいい。……よかろう、暫し童女の戯れに付き合ってやる」

「……」

 

 なのはちゃんは答えず、頬を更に膨らませるだけだ。

 

 ……ふむ。

 

「プシュルルル……って、なにしゅるの!?」

 

 パンパンの頬に指を突き刺せば、面白いように空気が漏れる。

 手で頬を抑えながらなのはちゃんは耳まで真っ赤に染まっている。

 

 

「やはり貴様は面白い! しゅるの! か。しゅるの!」

「にゃぁああああ!!! 最低! 外道! イジメっ子!」

「フハハハハハハ!!! 至高! 王道! イジメっ子!」

 

 

 楽しそうで何よりです。

 

 

「鬼! 悪魔! ギル君!」

「王! 古代王! 英雄王! ギル君はやめよ!」

 

 

 

 子供っぽい言い合いはいつまでも続き、ついに13往復目に差し掛かったその時。

 

 

 

「おい! お前は一体何してるんだ!」

 

 

 男とも女ともつかぬ、なんとも言えぬアルトの声が公園に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……先程までの和気藹々とした子供の喧嘩の空気は引っ込み、今は、かなり剣呑に澱んだ雰囲気が場に立ち込めている。

 

 

 

 それは、俺と言い合っている途中のなのはちゃんの肩を掴んで、庇う様に背に隠した1人の少年と、何より…………。

 

 

「…………」

 

 

 この、如何にも機嫌を損ねたといわんばかりに、凶悪そのものの面構えをし、背後からドス黒いオーラが出ている(ように見える)俺……いや、我のせいだろう。

 

 

「……お前、この子に何をしていた」

 

 睨みで人を殺せそうな程の殺気を放つ我に対し、勇気あるその少年は尋ねる。

 

 ……まあ、気持ちはわからんでもない。

 さっきまでの状況。本人達はともかく、傍から見れば、確実に俺がなのはちゃんを泣かして笑っていたんだもんな。

 

 それは、今は困惑したような表情だが、さっきまでのなのはちゃんの涙目の表情を思い出せば理解できる。

 ……俺は絶対ニヤニヤしてただろうし。

 

 ただまあ、俺が理解したところで、実際に反応を示すのは……。

 

 

「貴様、我の道楽の邪魔をしておきながら、更に罪を重ねるか。もはや言い逃れはできんぞ雑種」

 

 我、の方なんだよなぁ……。

 

「道楽? 女の子を悲しませて何が道楽だ!」

「思い上がるなよ雑種。我は人類最古にして唯一の英雄王。王の行動は常に正しく、そして偉大! 我に泣かされる女がいるとは随分と幸せなことではないか。きっとそやつは感涙のあまり更に涙を枯らす事だろうな」

「泣かされて嬉しい訳ないだろう!」

「それは貴様の詭弁であろう。偉大なる我の言葉に感激を受けぬ者はおらぬ」

 

 

 

 相手は正しい事を言っている。……だが、こちらは正しさを「作ってしまう」慢心王。……これ、どう収拾付けるんだ?

 明らかに俺が引くのが正解なんだが……この体は素直に引かないだろうな。

 

 ……というか、ここで引ける様な体ならこんな苦労しねえよ。

 

「お前のせいでこの子は嫌がっていたぞ!」

「さっきの問答は単なる暇潰しよ。嫌がっていたのは、そういう素振りを演じていただけだろう? そいつは我の認める“道化”だからな」

「……やっぱ嫌いなの」

「ほらみろ! やはり嫌がってるじゃないか!」

 

 あぁ……どんどん深みに嵌っていく……。

 

 

 修羅場か? これが修羅場ってやつか? いや、今の俺もお前らもそんな年じゃねーだろ。

 

 

「ええい、煩わしい! さっきから何なのだ貴様は! 親切に問いに答えてやれば不躾にも否定しかして来ぬではないか!! 学が無いにしても無礼過ぎるぞ!」

「黙れ! お前みたいな人を傷付ける事しかできない奴を、俺は絶対に許さない!」

「……ソーダソーダ」

「おい、小娘ェ! 貴様今どっちに付こうか悩んだ末、渋々そっちに寝返ったな!?」

「ベーっだ」

「大丈夫、俺が君を守るから」

「……雑種ゥ! 汚い手で俺の嫁に触るなぁ!!」

「んにゃ!?」

「お前……やっぱりテンプレか……!」

 

 

 あーあー、ここは昼ドラですか? そうか、この世界の原作は昼ドラか。

 ……こういうドロドロは、俺が求めたものと違う。

 

 

「貴様、どうやら断罪されたいらしいな」

「やれるもんならやってみろよ……! 俺はこの日まで、ずっと努力してきた! ただ胡座をかいていただけのお前には負けない!」

 

 なんで俺、努力してない設定? いや、してないけどさ。

 胡座じゃなくて、足組んで頬杖ついてたけどさ。

 

 

「まだ未完成だけど……でもやるしかないか……」

 

 

 なんか少年がブツブツ言ってる。あぁ……やっぱ修羅場とか苦手だわ。

 どうせあれだろ? このあとそこの“木の陰”から。

 

 

「左手に『魔力』を……右手に『気』を……」

 

 

 この泥棒猫! って、新しい女キャラとかの……。

 

 

「混ざれ……混ざれ……」

 

 

 “横槍”が入るんだろう?

 

 

「で、できた。練習の時以上だ! よし、これでお前を……ゴフッ!!」

「……ん?」

「……え?」

 

 

 …………。

 

 

 

 “木の陰”から、“槍”が飛んできました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……興が削がれた」

 

 仁王立ちして腕を組む俺は、飛んできた槍が金色の粒子に変わっていくのを眺めつつ、倒れ伏す少年に注意を向ける。

 

 ……死んでないよね?

 

「ぐっ……うぅ……」

 

 あ、大丈夫だ。死んでない。

 

「ふん、今回は仕留め損なったが、次はこうはいかんぞ。次会う時まで覚えていろ。雑種」

 

 この俺、瀕死の相手に対しても変わらずこの調子である。

 ……どこか小物臭い捨て台詞だったのは、黙っておこう。

 

 

 そして、背を向けて公園を去る威風堂々とした俺の姿。

 

 

 

 公園に残ったのは、痙攣している少年と、未だ呆然としているなのはちゃんだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……で、結局あの槍はなんだったんだ?

 

「不思議な事もあるものだ。やはり世界は我を飽きさせん」

 




 はい、なのはたそ再臨おめ!

 ギル様公園デビューおめ!

 オリ主! 爆! 誕! おめぇえええええ!!!


 色々おめでたい回となりました!


「オリ主マダー」という皆様の声援が、ヒーローを呼んでくれました!

 オリ主きた! これで勝る!
 やったねなのちゃん、踏み台が消えるよ!

 オリ主に期待していた皆様、どうぞ感想欄にご記入を!
 私はあらゆる罵詈雑言をお待ちしております!

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