慢心王の踏み台生活 作:匿名希望の金ピカ王
初めての投稿です。
ギル様スキーから始まりましたこの作品。
忙しい中の現実逃避で書いて、勢いのままに投稿しちゃいました。
続くかわかりませんが、もし続いたら、その時はよろしくお願いします。
『ねえ、あんた転生してくんない?』
目を覚まして真っ先に聞いた言葉はそのセリフだった。
……ここは、どこだ?
周囲を見渡す。……何もない。
床も壁も天井も、全てが真っ白な室内だ。
家具も、雑貨も何もないまっさらな空間。
窓も扉もない完全な密室。
ここがどこなのか、何故こんなところにいるのか……何も、思い出せない。
『ねえ、無視? そーいうの、ちょっと常識がなってないんじゃないかなぁ』
頭に直接声が響く。さっきも聞いた声だ。
「……お前は……誰なんだ?」
『なんだ、聞こえてんじゃん。だったらさっさと答えてくんない? 転生するの?しないの?』
何を言っているんだ……転生? 一体何の話を。
『だからさぁ、そ〜いうのはいいんだっての。いちいち説明とかめんどいし、あんたはただするかしないか選択するだけ。わっかんないかなぁ。神様が人間ごときの話に付き合う訳ないっしょ?』
神……? お前は神なのか?
『そうそう。私は神様で~す。人間が敬いひれ伏す偉い神様なんですよ。ってかさ、そんな神様に向かって“お前”ってさぁ、ちょっと生意気だよね? うん、ムカつくわお前』
頭の中で喋っていた奴が、ブツブツと独り言を漏らす。
……何を言っているのか、さっぱりわからない。
『……よし、決めた。お前は私の玩具だ』
そう宣言する声。
玩具……俺が?
「俺は人間だ」
『だから何? 私にとっては犬も人間もミジンコも全部ただの下等生物。玩具以下の価値しかないね。そういえばさ、今、神様連中がその玩具を色んな世界に転生させて遊ぶってのが流行ってんのよね。で、流行に乗り遅れるとかありえないし、私もやってみたい訳よ。それでさ、ほら、転生モノってよくいるじゃない? “踏み台”ってやつが』
俺が反応する間もなく喋り続ける声。……本当に、こちらの事はどうでもいいと思っているようだ。
『でもさぁ、転生した人間ども、ぜーんぜん踏み台っぽい事しないの。……まあ、自分から嫌われに行く人間なんて現実にいるわけないんだけどさ。っていうか、どんな馬鹿でもあの態度で人に好かれるとか思わないわよね』
転生モノ……よくネット小説なんかで見るジャンルのことだろう。
踏み台という単語は、二次創作物でよく聞く、「オレが主人公だ!」と妄想して暴走している奴の事だろう。
『だからさ、私思いついちゃったの』
そんな俺の考察はどうでもいい。何故、この声は急にこんな話を始めたのか。
『踏み台がいないんなら……』
その理由を知る前に……その声……神は、俺にとって最悪な……。
『“作っちゃえばいい”んだって』
人生を変える一言を、投げつけた。
まるで……使い捨ての折り紙で暇潰しをするような調子で……。
俺の人生は、決めつけられた。
『お前の見た目は……そうね、王道で『Fate』に出てくる慢心王! 能力も同じようにしてあげる。ああでも……性格とか態度が元のまんまだとダメね。いや、十分生意気だけど。そうね、言動も全部慢心王みたいに変換してあげる。どう? 完全完璧に“踏み台”! お前はヒロインに言い寄ってオリ主に消される愚かな転生者として生まれ変わるのよ! あはは! おっかしー! そうよ、これこれ。こういうのを私は見たかったのよ! お前、絶対私を楽しませなさいよ! お前の生きる価値なんてそのためぐらいしかないんだから!』
言い終わると同時、俺の視界は真っ黒に塗り潰された。
『舞台は……“魔法少女リリカルなのは”。原作知識がないと踏み台になれないし、付けといてあげる。ああ、そうそう。踏み台らしい行動しないと、私が殺すから。そのつもりでいなさい。……じゃあね』
その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。
「……ここはどこだ」
視界が明るくなるとそこは、見慣れない街の風景だった。
見たこともないビル群、聞いたこともない店名。
この街は……どこなんだ?
行き交う人に視線を向ける。
忙しなく早歩きをするサラリーマンはこちらに見向きもせず先を急ぐ。
買い物袋を手に下げた主婦は訝しげにこちらを伺う。
散歩中であろう老婆は目が合うとニコリと笑顔を向ける。
「……ここは……
何もかもが、わからない。
ここはどこなのか、そもそも何故俺はここに居るのか。
数分立ち尽くしているうちに、ボヤけていた記憶がだんだん鮮明になってくる。
「ああ、そうか……我は…………転生したのだったな」
記憶が蘇ると同時、知るはずのない知識まで思い浮かんでくる。
魔法……デバイス……ミッドチルダ……ベルカ……海鳴市。
「……そうか。ここは海鳴か。ふん、つまらん」
俺の口から出るのは、使った事もないような尊大な口調。
無意識のうちに出てくるその言葉は、まるで、どこぞの王様のような態度だ。
「そう言えば、あの神とかいう不愉快な声、我を慢心王と呼んでいたな。ほう、こういう事か」
確かに、この態度は慢心の極みだ。だが、俺の言動が偉そうになった程度で、一体何が変わるというのだろうか。よくわからない。
……が、そんな事より何よりまず。
「……我の寝床がないではないか」
あの神……なんにも用意せずに俺を送り出しやがった。
フツフツと感じていた恨み憎みが、加速度的に上昇していくのを感じる。
「……気に食わん」
まずは拠点となるところを探そう。
「この世界は…我が君臨するにふさわしいか」
果たして俺の住める空き家はあるのか……そう言ったつもりだった。
駄文で申し訳ございませんでした。
作者はあらゆる批評をお待ちしているので、物語への感想はもちろん、誤字脱字の指摘、文法ミスの指摘、その他色々お待ちしております。