東方晶蠍記   作:天翔青雷

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第九話 結晶纏う蠍

ザクッ!

 

「ギギ、ギギギ。(よし、13匹目。)」

 

 永琳がいなくなった瞬間、僕は格下の虫を襲い始めた。けど、 別に空腹を感じているわけではない。

 

「ギギギ!(固まれ!)」

 

 僕は虫の体を引き裂いてその体液を浴び、結晶化させている。僕の尾針から出る毒液も体液の一種だから使えるけど、この方法は貧血になりかねない。だから、他の虫の体液を使っている。

 何故こんなことをしているかというと、天敵から身を守るためだ。飼い主がいなくなるということは、餌がもらえなくなるということ。そうなれば、僕達は自給自足をしなければいけなくなる。そしてこの場所には、サソリの天敵であるクモやムカデがいるのだ。今の内に結晶の鎧を纏っておかないと、僕が食われる。

 

「・・・ギギギ。(・・・なんだかなぁ。)」

 

 生き残るためには仕方がないとはいえ、自らアクラ・ヴァシムと同じ事をすることになるなんて。・・・だんだんと、普通のサソリから離れている気がする。・・・今更か。

 

「ギギ!(とりゃ!)」

 

 ・・・僕の尾針から飛び出した毒液が結晶化し、毒の槍になって虫を貫く。こんな芸当ができるサソリなんていないだろう。というか、アクラ・ヴァシムでさえもこんな暗殺者みたいなことはしない。というか、できない。

 

「ギ?ギギギギ・・・。(あれ?もしかして・・・。)」

 

 僕って、モンスター以上の怪物だったりする?


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