「ヂヂイイイィィィィィィ!?」
今日も籠の中に響く、断末魔の声。・・・半分は嘘だけど。今日はまだ、実際に死んだ虫は少ししかいない。ほとんどは苦しむだけで、生きている。苦しみの中で絶叫してるけど。
この前は虫の死骸にも毒が残ってたせいで何度か酷い目にあったけど、それでも僕は生きている。能力のおかげで。
ちなみに、あれから数日は普通の餌を与えられた。どうやら、毎日毒を食わされるわけではないらしい。・・・で、暫くは平穏な生活を送れると思ってたんだけど・・・。
「ヂヂ!ヂヂヂイ!」
今度は飼い主が、虫たちの体に注射器を刺している。見たところ、毒の類を注射してるわけではない、というか、逆。虫たちの体液を抽出している。もしかして、飼い主が求めているものは、虫が作り出した抗体?
「ギギッ!?(痛っ!?)」
何かと思ったら、僕の体にも注射器が刺されている。ここで体液を結晶化させることもできるけど、そんな特異なことをすれば追放されかねない。だから、ちょっと・・・いや、かなり痛いけど、我慢する。今、ここを追い出されたら、本当に死んでしまう。死ぬよりは、痛い思いをしたほうがマシだ。
「・・・あの人が視察に来るまで、後五日。もう少し数が増えないと、虚偽の報告がバレそうねぇ。」
・・・いや、虚偽の報告なんてするなよ。
ただ、どうやら話を聞く限り、飼い主の言う「あの人」とやらは虫殺しを推奨しているわけではないらしい。この実験も、解毒剤か何かを作るために渋々やっているのだろう。・・・それを、今の飼い主に任せた時点でアウトな気がするが。この飼い主、虫の扱いがぞんざいだし。毒だけでなく、注射でも何匹かが殺されている。恐らく、臓器を傷つけたのだろう。
「ギギ、ギギギギギ?(さて、『あの人』とやらは気付くのかね?)」
虐げられた、虫たちの現状に。このままだといつか、虫の怨霊とか出てくると思うぞ。そもそも、怨霊が実在するのかどうかが疑問だが。