東方晶蠍記   作:天翔青雷

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第三話 その役目は・・・

 人間が、やってきた。どうやら、餌をくれるらしい。

 サソリは危険な動物っていうイメージが強いけど、それは所詮イメージだけの話。実際、ほとんどの種の毒は弱く、食べ物も自分より小さな昆虫がメインだ。哺乳類だけでなく、ムカデやクモさえも天敵となる、どちらかといえば弱者にあたる。そのサソリである僕が真っ先に餌に飛びつくのは、もはや自殺行為だ。

 

「ヂヂヂヂヂッ!?」

 

 あれ?なんだか、餌を食べた虫たちの様子がおかしいような・・・?

 

「ヂヂヂヂヂ・・・」

 

 ・・・明らかに、異常。まるで殺虫剤でもかけられたかのように、虫たちが苦しみ、のた打ち回っている。・・・あ、一匹動かなくなった。死んだか?

 仲間、とは違うだろうけど、目の前で自分と同じような存在が死ぬのを見て何も感じないって言うのはどうなんだろう?

 

「ギ、ギギギ?(さて、どうしようか?)」

 

 それはさておき、餌を食べなければ、死ぬ。けれどこの餌は、明らかに危険だ。しかも、恐らく僕らの飼い主は、故意に虫に毒を食わせている。その理由は分からないけど、とにかく毒を食わせて何かをしようとしているのは確かだ。だったら、目的どおりに毒を食わないものは捨てられる可能性もある。まだ自我が覚醒したばかりの僕が、この場所以外で生きていくのは難しいだろう。

 

「ギギギ、ギギギギ。(となると、食うしかないか。)」

 

 もはや、一か八か。既にこの籠にいた虫の三分の一ほどを殺している毒餌を、僕は食べる。

 

「ギギ、ギギギギ!?」

 

 く、苦しい・・・。まさか、ここまで強い毒だったなんて。いや、毒の強さなんてよく分かんないけど。

 ・・・どうしよう。僕、死ぬかも・・・。


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