東方晶蠍記   作:天翔青雷

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第十話 外に待ち受ける現実

 ・・・発見。身に血晶の鎧を纏った蠍は、天敵であるクモやムカデよりも強い。

 なんで分かったかといえば、襲ってきた天敵たちの迎撃に成功したからである。襲われたときは肝が冷えたけど、実際に戦って拍子抜けした。僕の天敵は、こんなにも弱い存在だったのかと。とりあえず、殺した虫の体液は鎧に変えて、残った肉は食ったけど。

 

「ギ、ギギギ。(さて、これからどうしようか。)」

 

 餌になる虫の数に限りがある以上、いつまでもこの建物の中にいるわけにもいかない。そろそろ、外の世界に出てみようか。蠍の僕じゃあ相手にもならないような外敵も多いだろうけど、ここで飢え死にするよりはマシだ。

 

「ギギギギギギギギ!!」

 

 とりあえず、土を掘る感覚で壁を引っ掻いてみる。もちろん爪、というか鋏にも鋭利な結晶を纏っているから、硬い壁だって削れる。・・・・・はず。

 

ガリガリガリガリ・・・・

 

「ギギ。(疲れた。)」

 

 壁を削ることはできたけど、硬い上に分厚すぎる。この壁に穴をあけるには、あと二日ほどかかりそうだ。まぁ、まだ虫は残っているし、蠍は絶食に耐えられる動物だから問題ないけど。最長で、一年の絶食に耐える種もいるらしいし。

 さて、今日の作業はこれくらいにして・・・

 

ドゴッ、ピシピシピシ・・・

 

 ・・・何だ?今、凄い振動がきたんだけど。というか、僕が削って脆くなった壁に、亀裂が入ってるんだけど・・・。折角だし、もう少し掘り進めて見るか?

 

パキッ

 

 ・・・止めた方がよさそうだ。崩れかねない。・・・ん?崩れる?もしかして、何もせずにここにいても、いずれ建物が崩れる?

 

ドゴッ!!

 

 何だ!?僕はもう何もしていないのに、壁に穴が空いたぞ!?・・・よく見たら、穴の向こうに熊みたいな生き物が・・・。

 

「グギャアアアァァァ!!」

 

 いや、違う。あれは熊なんてレベルの生き物じゃない。化け物だ。だって、赤色の熊なんて聞いたことが無いもん。・・・レッドベアーとか言うモンスターなら知ってるけど。

 ・・・もしかして、外にはあんな化け物が溢れてるの!?


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