狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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ここのところ、会話文が減った気もしますが、気にしちゃいけない。まぁ、自分はそういう文章も嫌いじゃないですけど。


第40話

 教室の窓側に女子達が円になって集まっていた。ある子は椅子に座り、ある子は立っていた。みんな放課後一緒にクレープを食べに行くはずだったメンバーだった。昼休みに止めに入ったあの子はいなかった。でもしよりはいた。窓を背にし、椅子に横向きで座っている。

 

 同じクラスにもなったけど、夕佳とは形だけ。友達なんかじゃないってば。頭の中からそんなしよりの声が聞こえてくる。

 

 ……まさか。中学のときからずっと一緒にいてくたんだから。しよりはそんなことを言ったりしない。思ってもいない。大丈夫、大丈夫……。わたしは必死に不安を振り払おうとする。が、考えれば考える程不安が膨らんだ。

 

 もし、違っていたら…………。信じてもいいんだって思っていたのはわたしだけだったら…………。

 

「へぇ、そうなんだ」

「ねぇ、じゃあしよりはどう思う?」

 

 周りの女子の視線がしより一点に集まる。けれど、しよりの視線は周りのどの子にも向いていなかった。口が半開きのまま見ているのは女子の間をすり抜けてその先の……。

 あ、マズい。わたしの左足が反射的に一歩下がる。

 

 しよりと、目が合っちゃった…………。

 

 しよりはわたしをじっと見つめながら立ち上がり、わたしの方へ片足を前に出した。

 その瞬間、押さえつけていた恐怖心が一気に弾けた。しよりがこっちに来る。

 

 頭が真っ白になった。

 

『ねぇ、じゃあしよりはどう思う?』

 同じクラスにもなったけど、夕佳とは形だけ。

『ねぇ、じゃあしよりはどう思う?』

 友達なんかじゃないってば。

『ねぇ、じゃあしよりはどう思う?』

 

 来ないで。聞きたくない。知りたくないものを知ってしまうかもしれないなら、わたしは何も聞きたくない。

 

 もう自分がどこにいるのかも分からなくなって、気が付いたら階段を駆け下りていた。遠くで微かに勢いよく教室の扉が開けられる音としよりがわたしの名前を呼んでいるのが聞こえたがわたしはかまわず走り続けた。その勢いのまま昇降口に進入する。下駄箱の前には先に1人いて、急にわたしがやって来た音でビクッと肩を震わせた。桐原君だった。

 

「っ! て、篠宮さん……? ど……」

「邪魔! どいてっ!」

 

 桐原君を突き飛ばし、上履きを放り込んでわたしは雨の振る昇降口の外へそのまま飛び出した。

 

 みんなどうして教室に残ってたんだろう。桐原君だって真っ直ぐ帰るならもっと早く学校を出ているはず。わたしを待ってたから? わたしのことを気にして? そんなありえなくもない話がちらっき、胸がズキリと痛んだ。


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